100 / 160
更にその後。
魔女狩り狩りのついでに、領土争い。
しおりを挟む
小春日和の中、ルーマニアで作って貰った2頭引きの戦車を使い、再び真っ赤に染められたセレッサと共にリカ=セニ州へ。
クロアチア州の紋章が入った旗をたなびかせて、真っ赤なドレスで、黒い大鳥を伴って。
怖いわ、神話をこう再現して使うなんて。
「大丈夫ですかしら、こう、モルガン様と誤解されかねない事をして」
《寧ろ喜んでいるさ、ココにモルガン・ル・フェイが広まるとなれば、それに例えロッサ・フラウと統合されても本質は変わらんだろう》
「それ、逆に、ロッサ・フラウまでとんでもない事に」
《ふふふふ、お前も神になるか?》
「遠慮しておきます、大変そうなので」
《まぁ、大変は大変だな、人も神も大変な時代だ》
「ですね」
《さっさと平定させてしまおう》
「はい」
本来なら、単なる人ならココで時間を掛けなければならない。
使える者かどうか情報を探り、調べ、殺すか生かすかを考える。
けれどココでは神の力を使って、ガンガン殺していく。
と言うかココでもまだ私に殺しをさせてくれないから、主にルツとアーリスとセレッサが殺す、私はお飾り。
『はい、じゃあ譲渡の書類にサインして』
ローシュが城門を割いて、後は僕らが制圧して、ルツが作った書類にサインさせて終わり。
魔法が使えない場所でも魔道具なら使える、魔法で破れない門の中だって油断してる所を、門を破って正面突破。
「はい、では印章の指輪も渡して下さい、それと首もお願いしますね」
《そんな、助けると言ったじゃないか!》
『誰を、って言ったっけ?』
「いいえ、アナタだけが助かるか、アナタだけが死んで皆が助かるか」
コレはどっちを答えても、領主を殺すんだけど。
《家族を、助けてくれ》
「分かりました、最後にご家族に合わせて差し上げますから、ちゃんと説明して下さいね」
《分かった》
コレで、もし自分だけを助けろって言ったら、家族の前に引きずり出して殺す。
それで恩を着せて、アルモスを頼らせて、仲間にする。
この手が使え無さそうだったら殺すか、有能なら薬を使う。
危ない違法な薬、コレはパッツィ家が処分に困ってたから引き取った物、拷問と薬を使って使い捨てにする予定。
「では、そろそろ」
《ただ殺されっ》
『武器を渡したのは誰かな?』
コレも想定内。
反乱してくれるなら早い方が良い、裏切れば直ぐに殺されるって分かる筈だし。
「言わないなら皆殺しですよ、諫めず武器を渡せばどうなるか、考えなかったんですか。死にたいなら自分でどうぞ、自決するか、この地の平定の助けになるか」
『移送されるか他に逃げるか、ココで死ぬか、其々に好きにして良いよ。殺すのが目的じゃなくて、この地の平定の為、戦を無くす為に来たんだから』
『そんな事が、叶うのでしょうか』
「叶えるんです、裏切りさえなければ叶う簡単な事です、田畑を肥やす方がまだ難しい。ですけどお好きにどうぞ、敵地に逃げても構いません、そこで歯向かえば殺しますが。説得してくれるなら見逃します、さ、お好きにどうぞ」
『私が、渡しました』
「奥様なら仕方無いですけど、お子さんにも死んで欲しいんですか?」
『いえ、お願いします、どうか』
「なら懇意にしてる領地へ行き、領地を奪われたと仰りに行って下さい。お子さんは大事ですよね?」
『はい、ですからどうか』
「では、良く言って聞かせて下さい、皆さんに」
『字は読めるよね、はい』
逃げるかココで自決するか、ロッサ・フラウに保護されるか。
保護されたいなら赤い馬に着いて行け、逃げるなら直ぐに逃げろ、自決するなら今直ぐ死ね。
《それで、そのロッサ・フラウは》
『ザダル州も含め、周辺を平定する、戦の無い地にすると』
《統一する気か》
『そうとは、聞いてません、ザダル州の事だけを言ってらっしゃいました』
《で、俺に保護しろと?》
『子を守る為に来ました、後はもう、お好きにして下さい』
《縛って転がしておけ》
そう盾になり何なり役に立つかと思ったが。
「はい、では譲渡の書類にサインして下さい」
城門を裂き、一瞬で制圧され、書類にサインさせられる事に。
魔法が使えない筈の場所なのにも関わらず、一瞬で正門を破られ、正面突破され。
《貴様、どうやって》
「こう、しました」
赤いドレスの女が、指を一振りしただけで。
《なっ》
俺の両足が。
『あっ、縛らないとサインの前に死んじゃうよ』
「はい、生かしてあげるから、サインして下さい」
その女が鞭を振るうと、俺の足を縛った様な感覚が。
『ほら、早くしないと皆殺しになっちゃうよ?』
《ウチの者は、そんな脅しには屈しない》
「お城も印章の指輪も、本当は別に要らないんですよ、コレはアナタ達を生かす為の口実。城も家族も消して、何も無かったかの様にしても良いんですよ」
《では、何故》
「勿体無いじゃないですか、産み育てるのも城を作るのも、凄く大変。けどまぁ書類は無くても良いけど有ったら楽、ただそれだけですよ、生きてさえいればどうにもなりますから」
《それで俺が助かるとでも言うのか?この足で》
「あら、助かりたいなら先ずはサインを、それから印章の指輪も渡して下さい」
《ウチの子供達は、どうなる》
「アナタ次第です、さ、どうぞ」
書いたとしても、指輪を渡したとしても、俺の命は無いだろう。
《コレで、首もか》
「いえ、アナタは役に立つので生かします、治して差し上げますからご家族とお話をどうぞ」
そうして本当に俺は治され、家族とも会える事に。
《逆らうな、俺らが敵う相手じゃない》
一瞬で門を裂き、一瞬で俺の両足を切り落とし、瞬く間に傷を治した。
ココにそんな事を出来る人間が居るなんて聞いて無い、それこそ他国でも。
そんな事を出来るのは、神だけだ。
「あら、珍しい」
ローシュが活躍すればする程、神性の力が増して、広がって。
領主達は閉じ籠もる。
けど中には頑張って向かって来る者も居る。
《アレは、ウドビナの旗だ》
「ソチラの、ゴスピチとは?」
《グラチャツを一緒に攻める予定だった》
「そう仲良く出来ますかね」
《仲良くは無いが、そのまま向こうは南下、俺はザダルを落としたらスプリトで合流するってだけだ》
「それから?」
《最南端のツァヴタットまで行き、俺はドゥブロヴニク、アイツはザダルを統治する予定だった》
「成程、じゃあ強いんですね」
《人間の中ではな》
それでもセレッサの前では虫以下、一声鳴くだけで馬が怯えて逃げて行く。
それでも馬を降りて向かって来る者には、咆哮を直接浴びせる。
セレッサの咆哮を浴びちゃうと、身体中から血を吹き出して死ぬ。
「コレで引かないのは愚か者よね」
《何なんだ、今のは》
「指向性の超音波、かと、卵を良く振ると中がグチャグチャになるでしょ?」
《した事も無いが、そうか、魔法とは違うのか》
「正解、まぁ、私も無いけど。振ると白身と黄身が逆転するらしいわよ、人力だと」
《竜なら壊すのか》
「殻もね、アレでも手加減してくれてるのよ、顔が判らないと晒す意味が無いから」
凄いでしょ、って顔で振り向いた。
『うん、凄い凄い』
「凄い、偉いわセレッサ、もう少しだけ頑張ってね」
頷く代わりにフンって鼻を鳴らして、もう一吼え。
僕も帰ったら練習するつもり。
《弓も効かぬのか》
「滑りが良くて頑丈ですから、ねー」
《たった、コレだけで》
「アナタは賢い生き証人、良く見て良く覚え、しっかり伝えて下さいね」
《ぁあ、分かった》
逆らう気配も無いまま、彼は味方になった。
名前は、えーっと。
『マティアス・ヴニッチ、で宜しかったですかね』
《盲目王、アルモス候か》
『王では無いですし、王になるつもりもありません』
《何でだ》
『国を独立させれば更に分離します、目指すはユーゴスラビア王国全ての平定。統一や支配が目的では無いんです、あくまでも全土の平定、平和なるモノを目指してるだけですよ』
私の名が知られているのは、内戦を誘発する為、偽一神教者が流布しての事らしい。
そうして敵意が上手く循環する様に、私達は仕向けられていた。
争えば食糧も人も減る、そうして困れば自分達が更に付け入る隙が出来る、と。
《結局、操られてただけかよ、クソが》
「ただ一神教を誤解しないで下さい、利の有る教えも確かに存在しています。悪いのは悪用した者、神にも天使にも罪は無いんです、寧ろ嘆いてらっしゃいますから」
『アナタは何でも信じるのですね』
「人間以外なら直ぐに信じますわ」
《アンタは、どっちなんだ、神なのか人なのか》
「どう、神と人を分けるのか教えて頂けます?」
《死なない、いや、殺しても死なない。いや、そも神は死にそうにもならん、ならアンタは神だな》
「モルガン・ル・フェイをご存知かしら」
《何処の神だ》
『妻曰く、ブリテン王国やドイツ等で知られている有能な女神、だそうですよ』
《こんなんだって言うのか?》
『寧ろ赤き女神ヴァハ、軍神、闘神だそうで』
「だそうで」
《それが何で人間の厄介事に手を出すんだ》
「偽一神教の愚行を止める、ついでに」
《ついでに殺しまくるのか》
「私は殺してないですよ?」
《全く、どうせアンタも操ろうとしてるだけじゃないのか?》
「ではその疑いを晴らす方法を教えて下さい、直ぐにして差し上げますから」
《他の神を出せよ》
「だそうで」
《お前が幾つまで寝小便をしてたか言ってやろうか、6才の冬の終わりだったかね》
《なっ、コレは》
『私達の紋章に描かれている大鷲、トゥルル様ですよ』
《それともいつ女を知ったか、その女の名も》
《分かった、止めてくれ、悪かったよクソが》
「理解が早くて助かりますわ」
《はぁ、もう寝る、じゃあな》
「お疲れ様でした、では私も」
『少し良いかな』
「はい、何か」
『私も少し疑っていたんです、すみません』
「妥当なので問題無いですわ、お気になさらず」
『今日、初めて他の領主と命の取り合いを警戒せず、話し合う事が出来ました。ありがとうございます、希望が持てました』
「いえいえ、では、失礼致しますね」
『あぁ、おやすみロッサ』
神の割には俗物的で、人の割には有能が過ぎる。
人なのか神なのか、それとも半神なのだろうか。
《寝る前に口説かせて下さい、ローシュ》
「ルツ、誰か相手を探して来ましょうか?」
《アナタがアシャを引き合いに出すので、比べてみたんですが、圧倒的にアナタが良いと思える部分が出たのでお伝えしますね》
「私のセリフを無視したわね?」
《アシャなら調べようとしたかどうか、信じてくれたかどうか、それこそ生半可な優しさから調査を中止したかも知れない。そして領地を欲しがり、私に統治させてたかも知れない。アナタが信じてくれて、領地も要らないと言ってくれて嬉しかった、だから好きです》
「じゃあアシャと私が同じ選択を」
《答えが同じでも理由が違う筈、本当に嬉しかったんです、ありがとうございます》
「真実が違ってたら喜べないんじゃない」
《だから私に予測を伝えなかった、そうした優しい所も好きです》
「だから、アシャや他の転移者も」
《こうした問答も優しさから、自己の利益や好意より相手を優先する、そうした部分も好きです。凄く悲しいですけど、好きです》
「溜まってる?」
《解決するまで我慢します、好意から抱かれたい、抱きたいので》
「じゃあ拒絶するのね」
コレは、少し、想定外と言うか。
《あの、凄く嬉しいんですが》
「初恋を引き摺ってるだけ、ヤれないから執着しちゃしてるだけ、ならヤれば諦めがつくかも知れない」
《逆に執着するかも知れませんよ?》
「なら試してみましょうか」
《それは》
「じゃあ振り解いて逃げたら?」
《無理です、拒絶なんて》
「なら不本意にも襲われるのね、好きな人に」
《手伝って貰う程度では》
「諦められる?」
《無理です、何が有っても》
あの時から無条件に触れる事も、触れられる事も無かったのに。
拒絶なんて出来無い、考えただけでも胸が痛むのに。
「ルツ、本当に溜まってるだけなら幾らでもしてあげるから」
優しい声色で残酷な事を言われ、胸が張り裂けそうになった。
けれどココは本当に拒絶しないと、体目当てだとしか思われなくなる筈。
《無理です、すみません、本当に愛して欲しいんです》
「そう、分かった、おやすみなさい」
さっきまで有った感触も、温もりも、匂いも直ぐに消えてしまった。
私も消えてしまいたい、あの時に失敗しなければ、まだココにローシュは居てくれたのに。
『気になるなら僕が様子見に行こうか?』
「いえ、コレで好きじゃなくなってくれたら良いんだし、そのままにしておいて」
今にも泣き出しそうな、苦しそうで悲しそうな顔をされ、愛されたいと。
コレは罪悪感と言うのかしら。
『ほら、気にしてる』
「何で、何が良いのか、ならどうしてあんな事をしたのか分からない」
何故好きなのか、何が好きなのか、どうしてあんな事をしたのか。
それらの材料は揃っている、
なのに分からない。
整合性が取れない。
整合性が無いとしか思えない。
バラバラでくっ付かない。
『今、どんな気持ち?』
「モヤモヤして、痛んで、少し揺らいでる。少し惹かれてるし、本気なんだと驚いてるし、けど分からない。そこまで好きなら、あのルツが愚かな事をするのが分からない」
『13才でも?』
「50過ぎよ?」
『何も知らない童貞だよ?』
「ならアーリスも童貞だったら、あんな事をする?」
『しない』
「ほらぁ」
『だって情愛とか性行為が危ないって思っても無かったもん、身内に手を出すなってだけで、良いとか悪いとかも知らなかったもん』
「怖くて避けるって事?」
『だと思う』
「あのルツが?」
『うん、だって気持ちは目に見えないし形が無いから、本当に有るか不安だったんだと思う』
「あのルツが」
『眠そう、もう寝ようローシュ、おやすみ』
クロアチア州の紋章が入った旗をたなびかせて、真っ赤なドレスで、黒い大鳥を伴って。
怖いわ、神話をこう再現して使うなんて。
「大丈夫ですかしら、こう、モルガン様と誤解されかねない事をして」
《寧ろ喜んでいるさ、ココにモルガン・ル・フェイが広まるとなれば、それに例えロッサ・フラウと統合されても本質は変わらんだろう》
「それ、逆に、ロッサ・フラウまでとんでもない事に」
《ふふふふ、お前も神になるか?》
「遠慮しておきます、大変そうなので」
《まぁ、大変は大変だな、人も神も大変な時代だ》
「ですね」
《さっさと平定させてしまおう》
「はい」
本来なら、単なる人ならココで時間を掛けなければならない。
使える者かどうか情報を探り、調べ、殺すか生かすかを考える。
けれどココでは神の力を使って、ガンガン殺していく。
と言うかココでもまだ私に殺しをさせてくれないから、主にルツとアーリスとセレッサが殺す、私はお飾り。
『はい、じゃあ譲渡の書類にサインして』
ローシュが城門を割いて、後は僕らが制圧して、ルツが作った書類にサインさせて終わり。
魔法が使えない場所でも魔道具なら使える、魔法で破れない門の中だって油断してる所を、門を破って正面突破。
「はい、では印章の指輪も渡して下さい、それと首もお願いしますね」
《そんな、助けると言ったじゃないか!》
『誰を、って言ったっけ?』
「いいえ、アナタだけが助かるか、アナタだけが死んで皆が助かるか」
コレはどっちを答えても、領主を殺すんだけど。
《家族を、助けてくれ》
「分かりました、最後にご家族に合わせて差し上げますから、ちゃんと説明して下さいね」
《分かった》
コレで、もし自分だけを助けろって言ったら、家族の前に引きずり出して殺す。
それで恩を着せて、アルモスを頼らせて、仲間にする。
この手が使え無さそうだったら殺すか、有能なら薬を使う。
危ない違法な薬、コレはパッツィ家が処分に困ってたから引き取った物、拷問と薬を使って使い捨てにする予定。
「では、そろそろ」
《ただ殺されっ》
『武器を渡したのは誰かな?』
コレも想定内。
反乱してくれるなら早い方が良い、裏切れば直ぐに殺されるって分かる筈だし。
「言わないなら皆殺しですよ、諫めず武器を渡せばどうなるか、考えなかったんですか。死にたいなら自分でどうぞ、自決するか、この地の平定の助けになるか」
『移送されるか他に逃げるか、ココで死ぬか、其々に好きにして良いよ。殺すのが目的じゃなくて、この地の平定の為、戦を無くす為に来たんだから』
『そんな事が、叶うのでしょうか』
「叶えるんです、裏切りさえなければ叶う簡単な事です、田畑を肥やす方がまだ難しい。ですけどお好きにどうぞ、敵地に逃げても構いません、そこで歯向かえば殺しますが。説得してくれるなら見逃します、さ、お好きにどうぞ」
『私が、渡しました』
「奥様なら仕方無いですけど、お子さんにも死んで欲しいんですか?」
『いえ、お願いします、どうか』
「なら懇意にしてる領地へ行き、領地を奪われたと仰りに行って下さい。お子さんは大事ですよね?」
『はい、ですからどうか』
「では、良く言って聞かせて下さい、皆さんに」
『字は読めるよね、はい』
逃げるかココで自決するか、ロッサ・フラウに保護されるか。
保護されたいなら赤い馬に着いて行け、逃げるなら直ぐに逃げろ、自決するなら今直ぐ死ね。
《それで、そのロッサ・フラウは》
『ザダル州も含め、周辺を平定する、戦の無い地にすると』
《統一する気か》
『そうとは、聞いてません、ザダル州の事だけを言ってらっしゃいました』
《で、俺に保護しろと?》
『子を守る為に来ました、後はもう、お好きにして下さい』
《縛って転がしておけ》
そう盾になり何なり役に立つかと思ったが。
「はい、では譲渡の書類にサインして下さい」
城門を裂き、一瞬で制圧され、書類にサインさせられる事に。
魔法が使えない筈の場所なのにも関わらず、一瞬で正門を破られ、正面突破され。
《貴様、どうやって》
「こう、しました」
赤いドレスの女が、指を一振りしただけで。
《なっ》
俺の両足が。
『あっ、縛らないとサインの前に死んじゃうよ』
「はい、生かしてあげるから、サインして下さい」
その女が鞭を振るうと、俺の足を縛った様な感覚が。
『ほら、早くしないと皆殺しになっちゃうよ?』
《ウチの者は、そんな脅しには屈しない》
「お城も印章の指輪も、本当は別に要らないんですよ、コレはアナタ達を生かす為の口実。城も家族も消して、何も無かったかの様にしても良いんですよ」
《では、何故》
「勿体無いじゃないですか、産み育てるのも城を作るのも、凄く大変。けどまぁ書類は無くても良いけど有ったら楽、ただそれだけですよ、生きてさえいればどうにもなりますから」
《それで俺が助かるとでも言うのか?この足で》
「あら、助かりたいなら先ずはサインを、それから印章の指輪も渡して下さい」
《ウチの子供達は、どうなる》
「アナタ次第です、さ、どうぞ」
書いたとしても、指輪を渡したとしても、俺の命は無いだろう。
《コレで、首もか》
「いえ、アナタは役に立つので生かします、治して差し上げますからご家族とお話をどうぞ」
そうして本当に俺は治され、家族とも会える事に。
《逆らうな、俺らが敵う相手じゃない》
一瞬で門を裂き、一瞬で俺の両足を切り落とし、瞬く間に傷を治した。
ココにそんな事を出来る人間が居るなんて聞いて無い、それこそ他国でも。
そんな事を出来るのは、神だけだ。
「あら、珍しい」
ローシュが活躍すればする程、神性の力が増して、広がって。
領主達は閉じ籠もる。
けど中には頑張って向かって来る者も居る。
《アレは、ウドビナの旗だ》
「ソチラの、ゴスピチとは?」
《グラチャツを一緒に攻める予定だった》
「そう仲良く出来ますかね」
《仲良くは無いが、そのまま向こうは南下、俺はザダルを落としたらスプリトで合流するってだけだ》
「それから?」
《最南端のツァヴタットまで行き、俺はドゥブロヴニク、アイツはザダルを統治する予定だった》
「成程、じゃあ強いんですね」
《人間の中ではな》
それでもセレッサの前では虫以下、一声鳴くだけで馬が怯えて逃げて行く。
それでも馬を降りて向かって来る者には、咆哮を直接浴びせる。
セレッサの咆哮を浴びちゃうと、身体中から血を吹き出して死ぬ。
「コレで引かないのは愚か者よね」
《何なんだ、今のは》
「指向性の超音波、かと、卵を良く振ると中がグチャグチャになるでしょ?」
《した事も無いが、そうか、魔法とは違うのか》
「正解、まぁ、私も無いけど。振ると白身と黄身が逆転するらしいわよ、人力だと」
《竜なら壊すのか》
「殻もね、アレでも手加減してくれてるのよ、顔が判らないと晒す意味が無いから」
凄いでしょ、って顔で振り向いた。
『うん、凄い凄い』
「凄い、偉いわセレッサ、もう少しだけ頑張ってね」
頷く代わりにフンって鼻を鳴らして、もう一吼え。
僕も帰ったら練習するつもり。
《弓も効かぬのか》
「滑りが良くて頑丈ですから、ねー」
《たった、コレだけで》
「アナタは賢い生き証人、良く見て良く覚え、しっかり伝えて下さいね」
《ぁあ、分かった》
逆らう気配も無いまま、彼は味方になった。
名前は、えーっと。
『マティアス・ヴニッチ、で宜しかったですかね』
《盲目王、アルモス候か》
『王では無いですし、王になるつもりもありません』
《何でだ》
『国を独立させれば更に分離します、目指すはユーゴスラビア王国全ての平定。統一や支配が目的では無いんです、あくまでも全土の平定、平和なるモノを目指してるだけですよ』
私の名が知られているのは、内戦を誘発する為、偽一神教者が流布しての事らしい。
そうして敵意が上手く循環する様に、私達は仕向けられていた。
争えば食糧も人も減る、そうして困れば自分達が更に付け入る隙が出来る、と。
《結局、操られてただけかよ、クソが》
「ただ一神教を誤解しないで下さい、利の有る教えも確かに存在しています。悪いのは悪用した者、神にも天使にも罪は無いんです、寧ろ嘆いてらっしゃいますから」
『アナタは何でも信じるのですね』
「人間以外なら直ぐに信じますわ」
《アンタは、どっちなんだ、神なのか人なのか》
「どう、神と人を分けるのか教えて頂けます?」
《死なない、いや、殺しても死なない。いや、そも神は死にそうにもならん、ならアンタは神だな》
「モルガン・ル・フェイをご存知かしら」
《何処の神だ》
『妻曰く、ブリテン王国やドイツ等で知られている有能な女神、だそうですよ』
《こんなんだって言うのか?》
『寧ろ赤き女神ヴァハ、軍神、闘神だそうで』
「だそうで」
《それが何で人間の厄介事に手を出すんだ》
「偽一神教の愚行を止める、ついでに」
《ついでに殺しまくるのか》
「私は殺してないですよ?」
《全く、どうせアンタも操ろうとしてるだけじゃないのか?》
「ではその疑いを晴らす方法を教えて下さい、直ぐにして差し上げますから」
《他の神を出せよ》
「だそうで」
《お前が幾つまで寝小便をしてたか言ってやろうか、6才の冬の終わりだったかね》
《なっ、コレは》
『私達の紋章に描かれている大鷲、トゥルル様ですよ』
《それともいつ女を知ったか、その女の名も》
《分かった、止めてくれ、悪かったよクソが》
「理解が早くて助かりますわ」
《はぁ、もう寝る、じゃあな》
「お疲れ様でした、では私も」
『少し良いかな』
「はい、何か」
『私も少し疑っていたんです、すみません』
「妥当なので問題無いですわ、お気になさらず」
『今日、初めて他の領主と命の取り合いを警戒せず、話し合う事が出来ました。ありがとうございます、希望が持てました』
「いえいえ、では、失礼致しますね」
『あぁ、おやすみロッサ』
神の割には俗物的で、人の割には有能が過ぎる。
人なのか神なのか、それとも半神なのだろうか。
《寝る前に口説かせて下さい、ローシュ》
「ルツ、誰か相手を探して来ましょうか?」
《アナタがアシャを引き合いに出すので、比べてみたんですが、圧倒的にアナタが良いと思える部分が出たのでお伝えしますね》
「私のセリフを無視したわね?」
《アシャなら調べようとしたかどうか、信じてくれたかどうか、それこそ生半可な優しさから調査を中止したかも知れない。そして領地を欲しがり、私に統治させてたかも知れない。アナタが信じてくれて、領地も要らないと言ってくれて嬉しかった、だから好きです》
「じゃあアシャと私が同じ選択を」
《答えが同じでも理由が違う筈、本当に嬉しかったんです、ありがとうございます》
「真実が違ってたら喜べないんじゃない」
《だから私に予測を伝えなかった、そうした優しい所も好きです》
「だから、アシャや他の転移者も」
《こうした問答も優しさから、自己の利益や好意より相手を優先する、そうした部分も好きです。凄く悲しいですけど、好きです》
「溜まってる?」
《解決するまで我慢します、好意から抱かれたい、抱きたいので》
「じゃあ拒絶するのね」
コレは、少し、想定外と言うか。
《あの、凄く嬉しいんですが》
「初恋を引き摺ってるだけ、ヤれないから執着しちゃしてるだけ、ならヤれば諦めがつくかも知れない」
《逆に執着するかも知れませんよ?》
「なら試してみましょうか」
《それは》
「じゃあ振り解いて逃げたら?」
《無理です、拒絶なんて》
「なら不本意にも襲われるのね、好きな人に」
《手伝って貰う程度では》
「諦められる?」
《無理です、何が有っても》
あの時から無条件に触れる事も、触れられる事も無かったのに。
拒絶なんて出来無い、考えただけでも胸が痛むのに。
「ルツ、本当に溜まってるだけなら幾らでもしてあげるから」
優しい声色で残酷な事を言われ、胸が張り裂けそうになった。
けれどココは本当に拒絶しないと、体目当てだとしか思われなくなる筈。
《無理です、すみません、本当に愛して欲しいんです》
「そう、分かった、おやすみなさい」
さっきまで有った感触も、温もりも、匂いも直ぐに消えてしまった。
私も消えてしまいたい、あの時に失敗しなければ、まだココにローシュは居てくれたのに。
『気になるなら僕が様子見に行こうか?』
「いえ、コレで好きじゃなくなってくれたら良いんだし、そのままにしておいて」
今にも泣き出しそうな、苦しそうで悲しそうな顔をされ、愛されたいと。
コレは罪悪感と言うのかしら。
『ほら、気にしてる』
「何で、何が良いのか、ならどうしてあんな事をしたのか分からない」
何故好きなのか、何が好きなのか、どうしてあんな事をしたのか。
それらの材料は揃っている、
なのに分からない。
整合性が取れない。
整合性が無いとしか思えない。
バラバラでくっ付かない。
『今、どんな気持ち?』
「モヤモヤして、痛んで、少し揺らいでる。少し惹かれてるし、本気なんだと驚いてるし、けど分からない。そこまで好きなら、あのルツが愚かな事をするのが分からない」
『13才でも?』
「50過ぎよ?」
『何も知らない童貞だよ?』
「ならアーリスも童貞だったら、あんな事をする?」
『しない』
「ほらぁ」
『だって情愛とか性行為が危ないって思っても無かったもん、身内に手を出すなってだけで、良いとか悪いとかも知らなかったもん』
「怖くて避けるって事?」
『だと思う』
「あのルツが?」
『うん、だって気持ちは目に見えないし形が無いから、本当に有るか不安だったんだと思う』
「あのルツが」
『眠そう、もう寝ようローシュ、おやすみ』
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発
ハーフのクロエ
ファンタジー
アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる