【完結】かつて憧れた陰キャ美少女が、陽キャ美少女になって転校してきた。

エース皇命

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第18話 小説がヒットするとか聞いてない

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 せっかく発足した文芸部を守るには、少しでも早く部誌を発行する必要があった。

 当然ながら、最初の掲載小説に俺と清衣すいのものは間に合わず、R18なシーンには修正をしっかりと加えた夢菜ゆめなの小説を掲載することにした。

 最後には続編制作に関するアンケート用紙も挟んでいる。

 これを全校生徒分印刷するのはさすがに多すぎるので、最初は100部刷って感触を確かめることにした。

 まあ、急に出てきた文芸部の素人が書いた小説を読んでくれる生徒なんているわけないが――。

 そう思うのは、大間違いだ。

 なんといっても、今回の掲載小説を書いたのは、トップ・オブ・トップの美少女生徒会長、立花たちばな夢菜なのだから!

「図書館前に100部ほど、私の書いた短編小説『生徒会長と僕』を配置していますので、興味があればぜひ読んでみてください」

 校内放送で彼女の告知が流れた瞬間、教室にどよめきが走る。

 ――あの生徒会長が書いた小説。

 それだけで話題性は十分だった。

 夢菜ファンは――というか全校生徒のほとんどがそうだが――放課後になるとすぐさま図書室へ駆け出し、初版の100部を争うという事態に。

 もっと刷ってもよかったのかもなと思いつつ、図書室の前で夢菜ファンたちの戦争を見守った。



 部誌を発行してから3日。

 初版を勝ち取った生徒が他の生徒に布教したのか、それとも転売したのか。
 クラスのほとんどの生徒が夢菜の小説の内容について話していた。

 それはつまり、全校規模で同じようなことが起こっているということだろう。

 『生徒会長と僕』は学校中で話題となり、大ヒット。

 物語の今後の方向性について、真剣に考察し始める熱狂的なファンまで現れた。

「凄まじい人気だな」

「そうね。自分の人気を侮ってたわ」

 続編及び長期連載が期待されている文芸部の部誌。

 夢菜と一応部長の俺は、二人きりの部室で話し合いをしていた。

 部室を使うなんて久しぶりだ。
 これから活動が忙しくなりそうな予感がするので、積極的に使っていこうということになった。

「他の部員の小説も早く読みたいって声も上がってるのよ。あんたも静野しずのさんも、早く書き上げなさいよね」

「俺の小説はもう少しで書き終わりそうだし、清衣のも一緒に書き上げて――」

「は? 今、『一緒に』って言った?」

「行き詰ってたらしいから手伝ってるんだ。といっても、俺はただ世界観とかキャラクターとかをちょっと考えるだけだけど――」

「私の時は手伝うなんて一言もいってくれなかったわよね? 差別してるの?」

「そういうわけじゃない。ファンタジーは世界観とかがいろいろ複雑で難しいだろ?  それに、夢菜は俺の助けなんかなくても完成度の高い小説を書いてヒットさせたし――」

「そんなことはどうでもいいの! いい? 私は続編を作らないといけなくなったの。手伝いなさいよね!」

「……はい」



 清衣と夢菜。
 二人の小説を手伝うことになったせいで、自分の作品を書き上げるだけの時間及び余裕はなかった。

 というわけで、夏休み前最後の部誌は、夢菜の小説の続編と清衣のデビュー作『カズーとスーイ』の掲載となった。

『聞いた? 生徒会長の小説の続編出るらしいよ?』

『えー、やばーい! 絶対読も!』

『なんか他の部員の新作もあるらしいよ~』

 期待値が異常なほどに高まっている状況を見て、ビジネスチャンスを見出したのか、夢菜が部誌第2号を300円で販売することを発表。

 感触を確かめて徐々に値上げしていくつもりらしい。

 そこで上げた収益は生徒会の予算及び文芸部の予算に充てられるとのこと。

 学校としても悪くない話なので、意外とすんなり許可が下りた。

 初版の発行は300部。

 そして売り上げは9万円。

 即完売。

 相変わらず夢菜の人気は凄まじい。

 夢菜の続編目当てで買うような生徒がほとんどだったが、実際に読み終わった生徒たちからの話だと、どうやら清衣のファンタジーがかなり好評らしい。

「清衣ちゃんもかなり人気だからね~。注目の美少女がゴリゴリのファンタジー書いてるって超話題になってるよ」

 部員全員が集まった文芸部の部室。

 こうして全員集合は久しぶりだ。

 琥珀こはくは脚を大きく広げて椅子に座りながら、清衣の腰をツンツンとつついている。

「夢菜の続編もそうだし、清衣のデビュー作も盛大にヒットしたってことか」

「そうそう、特に清衣ちゃんのデビュー作は男子に人気なんだって」

「ファンタジーだもんな」

「あたしも読んだよ。普段小説とか全然読まないけど、清衣ちゃんのやつはめっちゃ面白かった」

「……ありがと」

 さっきから称賛されっぱなしの清衣は、顔を赤らめながら笑顔を作った。

「夢菜、どうしたの? さっきから何も言わないけど」

 ここで琥珀が夢菜に話を振る。

 珍しいことに、ここまでずっと夢菜は無言を貫いていた。

「別に」

「ふーん、もしかして、清衣ちゃんに嫉妬してる~?」

「そんなわけないでしょ! 私だってあの小説読んだし、面白いと思ったから……」

「ありがと。夢菜ちゃんの続編面白かったよ。また続きが読みたいな」

「……別に、嬉しいとか思ってないんだから」

 ほんの少し照れたような顔で、夢菜が呟く。

 ツンデレっぽいし、やっぱりチョロい。



 翌朝。

 昨日の熱狂ムードはどこに行ったのか、ホームルーム前の教室は静まり返っていた。

 ――清衣がいないな……。

 いつもは俺より早く来てる清衣が教室にいない。

 そして――。

『聞いた? 清衣ちゃんって中学の時陰キャだったんだって』

 心臓が破裂したかと思った。

『なんか立花生徒会長が言ってたらしいよ。同じ中学校だったんだって』

『じゃあ結構信憑性高いじゃん』

『それな~』

 清衣は教室にいなかったが、彼女の生徒鞄が机の隣に置いてあることはわかった。

 ――教室に入ってきて、過去の噂が広まっていることを知り、逃げ出した。

 そんな可能性が、頭をよぎる。

 気づけば走り出していた。

 早く清衣を、見つけなくてはならない。
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