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第3話「木漏れ日の薬瓶」
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王都の南側、職人たちが多く暮らす地区の一角。
大通りから少し入った石畳の路地に、その店はひっそりと佇んでいた。蔦の絡まるレンガ造りの建物。その一枚板の扉には、素朴な文字でこう書かれている。
『木漏れ日の薬瓶』
ここが、エリオットがなけなしの資金をすべてはたいて手に入れた、彼の城だった。
一階が店舗兼調合室、二階がささやかな居住スペースになっている。決して広くはないが、窓から差し込む陽光が、古い木の床を温かく照らしていた。
あの日、カイゼルに助けられた後、エリオットは決意した。
この王都で、自分の力で生きていくのだと。そして、どうせなら祖母から受け継いだ知識を活かせる仕事をしたいと思った。
Ωとして覚醒したことで、彼の五感は驚くほど鋭敏になっていた。
特に嗅覚の変化は著しく、人の魂香はもちろん、道端に咲く小さな花の香り、焼きたてのパンの匂い、遠くの雨の気配まで、あらゆるものを鮮明に感じ取ることができる。
この能力は、薬草の繊細な調合において、この上ない武器となった。
開店して一月。
店の評判は、まだほとんどない。それでも、時折迷い込んでくる客のために、エリオットは心を込めて薬を調合した。
「こんにちは。何かお探しですか?」
からん、とドアベルが鳴り、エリオットはカウンターの奥から顔を上げた。
入ってきたのは、疲れた顔をした中年の女性。手に大きな洗濯籠を抱えている。
「ああ、いや……。ただ、とても良い香りがしたものでね。何の店かと思って」
女性は、店内にふわりと漂う穏やかなハーブの香りに目を細めた。
それは、エリオットが客をリラックスさせるために、毎日焚いているブレンドハーブの香りだった。
「ここは、薬草店です。お客様の体調や気分に合わせて、ハーブティーや香薬をお作りしています」
エリオットが微笑むと、女性は少し驚いたように目を見開いた。
彼のΩとしての魂香は、普段は極力抑えている。それでも、隠しきれない清らかな香りが、無意識のうちに相手の警戒心を解いてしまうのだ。
「まあ、薬草店……。実は、最近どうも肩こりがひどくてね。夜もあまり眠れないんだよ」
女性はそう言ってため息をついた。
エリオットは彼女の魂香に、そっと意識を集中させる。彼女の魂香は、まるで硬くこわばった麻紐のように、あちこちがささくれ立って緊張していた。過労と心労が原因だろう。
「でしたら、こちらのハーブティーはいかがでしょう。カモミールとリンデンを主に、少しだけオレンジピールを加えてあります。心と体をほぐして、安らかな眠りを誘う効果があるんですよ」
エリオットは、ガラス瓶に入ったハーブの茶葉を、小さな袋に詰めて手渡した。
「まあ、ありがとう。いくらだい?」
「いえ、お代は結構です。開店したばかりの、ささやかなお試し品ですから。もし気に入っていただけたら、またお越しください」
その言葉に、女性は何度も頭を下げて帰っていった。
利益にはならない。けれど、エリオットの心は温かかった。自分の知識が誰かの助けになった。その事実が、何よりの喜びだった。
数日後、その女性が二人の友人を連れて再び店を訪れた。
「ここのハーブティーを飲んだら、本当にぐっすり眠れたのよ!」
「私の悩みも聞いてもらえないかしら?」
それを皮切りに、「木漏れ日の薬瓶」には、少しずつ客が訪れるようになった。
頭痛に悩むパン屋の主人。恋の悩みを抱える仕立て屋の娘。赤ん坊の夜泣きに困っている若い母親。
エリオットは、一人ひとりの話を丁寧に聞き、彼らの魂香に耳を澄ませた。
人の魂香は、その人の心と体の状態を正直に映し出す。
怒っている人の魂香は焦げ付くように尖り、悲しんでいる人の魂香は冷たい雨のように湿っている。
エリオットは、それらを繊細に感じ取り、その魂香を優しく包み込んで癒すような薬草を調合していった。
彼が作るハーブティーやポプリ、塗り薬は、不思議とよく効いた。
それは、ただ薬草の知識があるからではない。エリオット自身の清らかで優しいΩの魂香が、調合の過程で薬草に溶け込み、特別な癒やしの力を与えているからだということに、彼自身はまだ気づいていなかった。
店の評判は、口コミでゆっくりと、しかし着実に広がっていく。
「あの店の薬は、まるで魔法のようだ」
「店主の青年が、天使様みたいに優しい人なのよ」
そんな噂が、職人街の井戸端会議でささやかれるようになった頃。
エリオットの生活も、少しずつ安定してきた。初めて自分の力で稼いだお金で、温かいスープとパンを買って食べた夜は、嬉しくて少しだけ泣いた。
誰にも虐げられることのない、穏やかな日々。
自分の手で作り上げた、ささやかな居場所。
エリオットは、生まれて初めて「幸せ」という感情を噛みしめていた。
そんなある日の夕暮れ時。
店じまいの準備をしていたエリオットの耳に、重厚なドアベルの音が響いた。
「申し訳ありません、本日はもう……」
言いかけて、エリオットは言葉を失った。
そこに立っていたのは、見覚えのある長身の男だった。
上質な黒いマントのフードを目深にかぶり、顔はよく見えない。しかし、彼が纏うあの鋼のように鋭く気高い魂香は、一度感じたら忘れられるものではない。
「……騎士団長、閣下?」
思わず、かすれた声が出た。
男――カイゼル・フォン・アードラーは、フードの奥から静かな視線をエリオットに向けた。
「……私のことが、わかるのか」
「その……魂香に、覚えがありましたので」
カイゼルは、少しだけ驚いたように眉を上げた。
彼の魂香は、その強大さゆえに普段は特殊な魔道具で厳重に抑制されているはずだった。それを感じ取れる者は、ごく一握りの感覚の鋭い者だけだ。
「そうか。……ここは、薬草店だったな」
カイゼルは、店の中をゆっくりと見回した。彼の視線が、棚に並んだ色とりどりのハーブの瓶の上を滑っていく。
「噂を聞いて、来てみた。どんな難病でも癒す、不思議な薬を作る者がいると」
「いえ、そんな大げさなものでは……。僕はただ、皆さんのちょっとした不調を和らげるお手伝いをしているだけです」
エリオットは、緊張でこわばる手をカウンターの下でぎゅっと握りしめた。
なぜ、この国の騎士団長が、こんな場末の薬草店に?
一月前の、あの路地での出来事が頭をよぎる。自分の正体が、バレてしまったのだろうか。
カイゼルは、そんなエリオットの不安を見透かすように、静かに口を開いた。
「単刀直入に言おう。……君に、作ってほしい薬がある」
彼の声には、切実な響きがこもっていた。
カイゼルは、抑制の魔道具をはめている方の手首を、もう片方の手で強く押さえている。その指先が、かすかに震えているのが見えた。
「どのような、薬を?」
エリオットが尋ねると、カイゼルはしばらくの間、ためらうように沈黙した。
やがて、彼は意を決したように、重い口を開く。
「……魂香を、鎮める薬だ」
その言葉に、エリオットは息をのんだ。
魂香を鎮める。それはつまり、彼の魂香が制御下にないということを意味していた。
完璧なαと謳われるこの人が、そんな悩みを抱えているなど、誰が想像できるだろう。
エリオットは、カイゼルの魂香に再び意識を集中させた。
鋼のように鋭く気高い香りの奥。そのさらに奥深く。まるで固い氷の壁に覆われた中心に、押さえつけられ荒れ狂うマグマのような熱い奔流があるのを、エリオットは感じ取った。
それは、悲鳴を上げている魂香だった。
強すぎる力に振り回され、出口を求めて暴れている。そして、それを必死に押さえつけようとする、持ち主の悲痛な意志も。
『この人は、ずっと一人でこれと戦ってきたんだ』
その孤独と苦しみが、痛いほどに伝わってくる。
気づけば、エリオットは口を開いていた。
「……わかりました。お作りします」
その言葉に、カイゼルの蒼氷の瞳がわずかに見開かれた。
「僕にできるかどうかわかりませんが、全力を尽くします。……ですから、あなたの魂香のことを、もっと詳しく教えていただけますか?」
それは、医者が患者を診るような、純粋な探求心から出た言葉だった。
この人の苦しみを、少しでも和らげてあげたい。その一心だった。
エリオットは、相手が誰であるかとか、過去にどんな因縁があったかなど、すべて忘れていた。ただ、目の前で助けを求めている一人の人間に、手を差し伸べたいと思ったのだ。
カイゼルは、エリオットの真っ直ぐな瞳を、しばらく黙って見つめていた。
やがて、彼は小さく、ほとんど聞こえないような声でつぶやいた。
「……ああ」
それは、長い孤独の果てに、ようやく見つけた一筋の光に触れたような、か弱く、そして安堵に満ちた響きを持っていた。
木漏れ日のように穏やかな時間が流れる小さな店で、二つの孤独な魂が、静かに出会った瞬間だった。
大通りから少し入った石畳の路地に、その店はひっそりと佇んでいた。蔦の絡まるレンガ造りの建物。その一枚板の扉には、素朴な文字でこう書かれている。
『木漏れ日の薬瓶』
ここが、エリオットがなけなしの資金をすべてはたいて手に入れた、彼の城だった。
一階が店舗兼調合室、二階がささやかな居住スペースになっている。決して広くはないが、窓から差し込む陽光が、古い木の床を温かく照らしていた。
あの日、カイゼルに助けられた後、エリオットは決意した。
この王都で、自分の力で生きていくのだと。そして、どうせなら祖母から受け継いだ知識を活かせる仕事をしたいと思った。
Ωとして覚醒したことで、彼の五感は驚くほど鋭敏になっていた。
特に嗅覚の変化は著しく、人の魂香はもちろん、道端に咲く小さな花の香り、焼きたてのパンの匂い、遠くの雨の気配まで、あらゆるものを鮮明に感じ取ることができる。
この能力は、薬草の繊細な調合において、この上ない武器となった。
開店して一月。
店の評判は、まだほとんどない。それでも、時折迷い込んでくる客のために、エリオットは心を込めて薬を調合した。
「こんにちは。何かお探しですか?」
からん、とドアベルが鳴り、エリオットはカウンターの奥から顔を上げた。
入ってきたのは、疲れた顔をした中年の女性。手に大きな洗濯籠を抱えている。
「ああ、いや……。ただ、とても良い香りがしたものでね。何の店かと思って」
女性は、店内にふわりと漂う穏やかなハーブの香りに目を細めた。
それは、エリオットが客をリラックスさせるために、毎日焚いているブレンドハーブの香りだった。
「ここは、薬草店です。お客様の体調や気分に合わせて、ハーブティーや香薬をお作りしています」
エリオットが微笑むと、女性は少し驚いたように目を見開いた。
彼のΩとしての魂香は、普段は極力抑えている。それでも、隠しきれない清らかな香りが、無意識のうちに相手の警戒心を解いてしまうのだ。
「まあ、薬草店……。実は、最近どうも肩こりがひどくてね。夜もあまり眠れないんだよ」
女性はそう言ってため息をついた。
エリオットは彼女の魂香に、そっと意識を集中させる。彼女の魂香は、まるで硬くこわばった麻紐のように、あちこちがささくれ立って緊張していた。過労と心労が原因だろう。
「でしたら、こちらのハーブティーはいかがでしょう。カモミールとリンデンを主に、少しだけオレンジピールを加えてあります。心と体をほぐして、安らかな眠りを誘う効果があるんですよ」
エリオットは、ガラス瓶に入ったハーブの茶葉を、小さな袋に詰めて手渡した。
「まあ、ありがとう。いくらだい?」
「いえ、お代は結構です。開店したばかりの、ささやかなお試し品ですから。もし気に入っていただけたら、またお越しください」
その言葉に、女性は何度も頭を下げて帰っていった。
利益にはならない。けれど、エリオットの心は温かかった。自分の知識が誰かの助けになった。その事実が、何よりの喜びだった。
数日後、その女性が二人の友人を連れて再び店を訪れた。
「ここのハーブティーを飲んだら、本当にぐっすり眠れたのよ!」
「私の悩みも聞いてもらえないかしら?」
それを皮切りに、「木漏れ日の薬瓶」には、少しずつ客が訪れるようになった。
頭痛に悩むパン屋の主人。恋の悩みを抱える仕立て屋の娘。赤ん坊の夜泣きに困っている若い母親。
エリオットは、一人ひとりの話を丁寧に聞き、彼らの魂香に耳を澄ませた。
人の魂香は、その人の心と体の状態を正直に映し出す。
怒っている人の魂香は焦げ付くように尖り、悲しんでいる人の魂香は冷たい雨のように湿っている。
エリオットは、それらを繊細に感じ取り、その魂香を優しく包み込んで癒すような薬草を調合していった。
彼が作るハーブティーやポプリ、塗り薬は、不思議とよく効いた。
それは、ただ薬草の知識があるからではない。エリオット自身の清らかで優しいΩの魂香が、調合の過程で薬草に溶け込み、特別な癒やしの力を与えているからだということに、彼自身はまだ気づいていなかった。
店の評判は、口コミでゆっくりと、しかし着実に広がっていく。
「あの店の薬は、まるで魔法のようだ」
「店主の青年が、天使様みたいに優しい人なのよ」
そんな噂が、職人街の井戸端会議でささやかれるようになった頃。
エリオットの生活も、少しずつ安定してきた。初めて自分の力で稼いだお金で、温かいスープとパンを買って食べた夜は、嬉しくて少しだけ泣いた。
誰にも虐げられることのない、穏やかな日々。
自分の手で作り上げた、ささやかな居場所。
エリオットは、生まれて初めて「幸せ」という感情を噛みしめていた。
そんなある日の夕暮れ時。
店じまいの準備をしていたエリオットの耳に、重厚なドアベルの音が響いた。
「申し訳ありません、本日はもう……」
言いかけて、エリオットは言葉を失った。
そこに立っていたのは、見覚えのある長身の男だった。
上質な黒いマントのフードを目深にかぶり、顔はよく見えない。しかし、彼が纏うあの鋼のように鋭く気高い魂香は、一度感じたら忘れられるものではない。
「……騎士団長、閣下?」
思わず、かすれた声が出た。
男――カイゼル・フォン・アードラーは、フードの奥から静かな視線をエリオットに向けた。
「……私のことが、わかるのか」
「その……魂香に、覚えがありましたので」
カイゼルは、少しだけ驚いたように眉を上げた。
彼の魂香は、その強大さゆえに普段は特殊な魔道具で厳重に抑制されているはずだった。それを感じ取れる者は、ごく一握りの感覚の鋭い者だけだ。
「そうか。……ここは、薬草店だったな」
カイゼルは、店の中をゆっくりと見回した。彼の視線が、棚に並んだ色とりどりのハーブの瓶の上を滑っていく。
「噂を聞いて、来てみた。どんな難病でも癒す、不思議な薬を作る者がいると」
「いえ、そんな大げさなものでは……。僕はただ、皆さんのちょっとした不調を和らげるお手伝いをしているだけです」
エリオットは、緊張でこわばる手をカウンターの下でぎゅっと握りしめた。
なぜ、この国の騎士団長が、こんな場末の薬草店に?
一月前の、あの路地での出来事が頭をよぎる。自分の正体が、バレてしまったのだろうか。
カイゼルは、そんなエリオットの不安を見透かすように、静かに口を開いた。
「単刀直入に言おう。……君に、作ってほしい薬がある」
彼の声には、切実な響きがこもっていた。
カイゼルは、抑制の魔道具をはめている方の手首を、もう片方の手で強く押さえている。その指先が、かすかに震えているのが見えた。
「どのような、薬を?」
エリオットが尋ねると、カイゼルはしばらくの間、ためらうように沈黙した。
やがて、彼は意を決したように、重い口を開く。
「……魂香を、鎮める薬だ」
その言葉に、エリオットは息をのんだ。
魂香を鎮める。それはつまり、彼の魂香が制御下にないということを意味していた。
完璧なαと謳われるこの人が、そんな悩みを抱えているなど、誰が想像できるだろう。
エリオットは、カイゼルの魂香に再び意識を集中させた。
鋼のように鋭く気高い香りの奥。そのさらに奥深く。まるで固い氷の壁に覆われた中心に、押さえつけられ荒れ狂うマグマのような熱い奔流があるのを、エリオットは感じ取った。
それは、悲鳴を上げている魂香だった。
強すぎる力に振り回され、出口を求めて暴れている。そして、それを必死に押さえつけようとする、持ち主の悲痛な意志も。
『この人は、ずっと一人でこれと戦ってきたんだ』
その孤独と苦しみが、痛いほどに伝わってくる。
気づけば、エリオットは口を開いていた。
「……わかりました。お作りします」
その言葉に、カイゼルの蒼氷の瞳がわずかに見開かれた。
「僕にできるかどうかわかりませんが、全力を尽くします。……ですから、あなたの魂香のことを、もっと詳しく教えていただけますか?」
それは、医者が患者を診るような、純粋な探求心から出た言葉だった。
この人の苦しみを、少しでも和らげてあげたい。その一心だった。
エリオットは、相手が誰であるかとか、過去にどんな因縁があったかなど、すべて忘れていた。ただ、目の前で助けを求めている一人の人間に、手を差し伸べたいと思ったのだ。
カイゼルは、エリオットの真っ直ぐな瞳を、しばらく黙って見つめていた。
やがて、彼は小さく、ほとんど聞こえないような声でつぶやいた。
「……ああ」
それは、長い孤独の果てに、ようやく見つけた一筋の光に触れたような、か弱く、そして安堵に満ちた響きを持っていた。
木漏れ日のように穏やかな時間が流れる小さな店で、二つの孤独な魂が、静かに出会った瞬間だった。
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