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第13話「僕らの食卓」
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番いの儀式から1年の月日が流れた。
カイ・フォン・アークライトの名は、今や王国で知らぬ者はいない。
彼の考案する新しい料理は貴族の食卓だけでなく、少しずつ街のレストランにも広まり、王国の食文化そのものを豊かに変えつつあった。
カイは王宮の料理顧問という名誉職を与えられていたが、本人はそれを少し気恥ずかしがっていた。
彼にとって一番大切な仕事は、今も昔も愛する番であるリアムのために毎日の食事を作ることだったからだ。
一方で、カイを虐げていたグレイフォード辺境伯家は惨めな末路を辿っていた。
オルコット侯爵の失脚に際し、彼と癒着していたことやカイへの虐待の事実が明るみに出たことで国王の怒りを買ったのだ。
爵位と領地は取り上げられ、一家は王都の片隅で細々と暮らしているという。
カイはその話を聞いても何も感じなかった。
彼らはもう、カイの人生とは何の関係もない遠い世界の住人だった。
穏やかな昼下がり。
カイはアークライト家の陽当たりの良いリビングで、ソファに座るリアムの膝を枕にうたた寝をしていた。
リアムは騎士団の報告書に目を通しながら、時折眠るカイの柔らかな髪を優しく撫でる。
その穏やかな時間を破るように、カイがふと寝ぼけ眼でつぶやいた。
「……お店、やりたいな……」
「ん? 何か言ったか?」
リアムが書類から顔を上げる。
カイはゆっくりと身体を起こした。
「お店、です。レストラン。そんなに大きくなくていいんです。街の人が誰でも気軽に立ち寄れて、お腹いっぱい美味しいものを食べて笑顔で帰っていくような……そんな小さなお店」
それはカイがずっと胸の中に温めていた夢だった。
前の人生で自分が働いていたレストランも、そんな場所だった。
「あなたの料理の腕なら、すぐに王都一の評判になるだろうな」
リアムが微笑む。
「そんなつもりは……。ただ俺、料理で人を幸せにするのが好きみたいなんです。リアム様を幸せにできたみたいに、もっとたくさんの人を幸せにできたらなって」
少し照れながら言うカイを、リアムは愛おしそうに見つめた。
「……そうか」
リアムは読んでいた書類をテーブルに置くと、カイの身体をぐっと引き寄せその唇に優しいキスを落とした。
「お前の夢なら、俺が必ず叶える」
「リアム様……」
「騎士団を辞めて、店の用心棒でもやろうか」
「ふふ、そんなことしたら国王陛下に怒られますよ」
二人は顔を見合わせて笑い合った。
窓から差し込む陽光が、幸せそうな二人を優しく照らしている。
カイの居場所は、もう凍える物置部屋ではない。
この愛する人の腕の中だ。
そしてこれから作っていく、たくさんの笑顔が集まる温かい食卓だ。
二人の未来は始まったばかり。
その食卓には、これからも数え切れないほどの美味しい料理と、幸せな笑い声が溢れていくのだろう。
カイ・フォン・アークライトの名は、今や王国で知らぬ者はいない。
彼の考案する新しい料理は貴族の食卓だけでなく、少しずつ街のレストランにも広まり、王国の食文化そのものを豊かに変えつつあった。
カイは王宮の料理顧問という名誉職を与えられていたが、本人はそれを少し気恥ずかしがっていた。
彼にとって一番大切な仕事は、今も昔も愛する番であるリアムのために毎日の食事を作ることだったからだ。
一方で、カイを虐げていたグレイフォード辺境伯家は惨めな末路を辿っていた。
オルコット侯爵の失脚に際し、彼と癒着していたことやカイへの虐待の事実が明るみに出たことで国王の怒りを買ったのだ。
爵位と領地は取り上げられ、一家は王都の片隅で細々と暮らしているという。
カイはその話を聞いても何も感じなかった。
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「……お店、やりたいな……」
「ん? 何か言ったか?」
リアムが書類から顔を上げる。
カイはゆっくりと身体を起こした。
「お店、です。レストラン。そんなに大きくなくていいんです。街の人が誰でも気軽に立ち寄れて、お腹いっぱい美味しいものを食べて笑顔で帰っていくような……そんな小さなお店」
それはカイがずっと胸の中に温めていた夢だった。
前の人生で自分が働いていたレストランも、そんな場所だった。
「あなたの料理の腕なら、すぐに王都一の評判になるだろうな」
リアムが微笑む。
「そんなつもりは……。ただ俺、料理で人を幸せにするのが好きみたいなんです。リアム様を幸せにできたみたいに、もっとたくさんの人を幸せにできたらなって」
少し照れながら言うカイを、リアムは愛おしそうに見つめた。
「……そうか」
リアムは読んでいた書類をテーブルに置くと、カイの身体をぐっと引き寄せその唇に優しいキスを落とした。
「お前の夢なら、俺が必ず叶える」
「リアム様……」
「騎士団を辞めて、店の用心棒でもやろうか」
「ふふ、そんなことしたら国王陛下に怒られますよ」
二人は顔を見合わせて笑い合った。
窓から差し込む陽光が、幸せそうな二人を優しく照らしている。
カイの居場所は、もう凍える物置部屋ではない。
この愛する人の腕の中だ。
そしてこれから作っていく、たくさんの笑顔が集まる温かい食卓だ。
二人の未来は始まったばかり。
その食卓には、これからも数え切れないほどの美味しい料理と、幸せな笑い声が溢れていくのだろう。
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