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第11話「氷を溶かす、愛の告白」
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数日が過ぎた。フィオの店の前には、相変わらずレオの騎士が遠巻きに警護を続けていたが、フィオは一度も外に出なかった。彼は部屋の中で、ずっと考え続けていた。そして、ようやく自分の本当の気持ちに整理をつけた。
会って、話さなければ。自分の正直な気持ちを、伝えなければ。
意を決したフィオは、部屋の隅に立てかけてあった一本の傘を手に取った。それは、以前、雨の日にレオが「次に会う時まで」と、店に置いていったものだった。彼との繋がりは、まだここにある。
フィオは店の扉を開け、警護の騎士たちが驚くのを尻目に、真っ直ぐ王宮へと向かった。
当然のことながら、王宮の門は平民であるフィオを簡単には通してくれない。衛兵に止められ、押し問答になっていると、そこへ一人の男性が駆け寄ってきた。レオの側近だった。
「フィオ殿!お待ちしておりました。陛下がお会いになられます。こちらへ」
彼は、全てを察していたかのように、フィオを中へと導いた。レオが、フィオがいつ来てもいいようにと、前もって衛兵に話を通してくれていたのだ。その事実に、フィオの胸がまた熱くなる。
通されたのは、広大で豪華な皇帝の執務室だった。部屋の中央で、レオが窓の外を見ながら一人で立っている。数日会わないうちに、彼はまた『氷帝』の仮面を被り、以前よりもさらに痩せて、孤独な影を背負っているように見えた。
フィオの入ってきた気配に、彼はゆっくりと振り返る。その青い瞳が、フィオの姿を捉えて、悲しげに揺らいだ。
「…フィオ。来てくれたのか」
フィオは、手にしていた傘をぎゅっと握りしめると、覚悟を決めて口を開いた。
「レオさん…ううん、レオンハルト陛下。…ごめんなさい」
最初に口から出たのは、謝罪の言葉だった。
「僕は、あなたの気持ちを考えずに、酷いことを言いました。あなたが僕を騙していたわけじゃない。ただ、僕と本当の意味で向き合いたかっただけだっていうこと、今は分かります」
フィオは一歩、レオに近づいた。
「驚いたのは、本当です。あなたが、僕の手の届かない、遠い世界の人間なんだって思ったら、怖くなった。でも、一人であなたのことを考えているうちに、気づいたんです」
フィオは、まっすぐにレオの目を見つめて、自分の正直な気持ちをぶつけた。
「あなたが皇帝陛下でも、ただのレオでも、僕が惹かれたあなた自身は、何も変わらない。僕は、あなたの隣にいたいです。あなたの宝物を修理する、ただの修理屋としてでもいい。それでも、あなたの笑顔が一番近くで見られる場所に、僕はいたいんです」
その言葉は、まるで魔法のように、レオの心の氷を完全に溶かしていった。彼の青い瞳から、一筋の涙が静かにこぼれ落ちた。
「…フィオ」
レオは数歩でフィオとの距離を詰めると、その細い体を、壊れ物を抱きしめるように強く、強く抱きしめた。
「君がいなければ、私の世界は色を失ってしまう。皇帝という立場は、私から多くのものを奪った。感情を殺し、孤独に耐えることだけが、私の生きる術だった。でも、君と出会って、私の世界は色づいたんだ。君の笑顔が、君の優しさが、私の凍てついた心を溶かしてくれた」
レオはフィオの肩に顔を埋め、震える声で告白した。
「愛している、フィオ。私の唯一の宝物は、どんな古代遺物でもない。君だ。君だけなんだ」
フィオも、レオの背中にそっと腕を回し、力強く抱きしめ返した。
「僕も…僕も、あなたが好きです、レオ」
二人の心は、ようやく一つに結ばれた。
しばらくして、落ち着きを取り戻したフィオは、ふと工房長のことを思い出した。
「あの、お店を襲わせた工房長の処分は…」
レオに尋ねると、彼は冷たい声で「国家反逆罪として、極刑も考えている」と答えた。しかし、フィオは静かに首を横に振った。
「待ってください。彼を罰することは当然だと思います。でも、彼の錬金術の才能は本物です。国のために、その才能を活かす道は、ないのでしょうか」
自分を陥れようとした相手でさえ、その才能を惜しみ、慈悲を求める。そのフィオのどこまでも深い優しさに、レオは再び心を打たれた。
「…フィオ。君は、本当に…」
レオは愛しさが込み上げてくるのを抑えきれず、フィオの唇に、そっと自分の唇を重ねた。それは、雨上がりの虹のように、優しくて温かいキスだった。
工房長の処分は、フィオの願い通り、辺境の地で国のための魔道具開発に従事させるという、才能を活かす形での減刑となった。その慈悲深い判断に、レオへの民衆の信頼はさらに厚くなったという。
会って、話さなければ。自分の正直な気持ちを、伝えなければ。
意を決したフィオは、部屋の隅に立てかけてあった一本の傘を手に取った。それは、以前、雨の日にレオが「次に会う時まで」と、店に置いていったものだった。彼との繋がりは、まだここにある。
フィオは店の扉を開け、警護の騎士たちが驚くのを尻目に、真っ直ぐ王宮へと向かった。
当然のことながら、王宮の門は平民であるフィオを簡単には通してくれない。衛兵に止められ、押し問答になっていると、そこへ一人の男性が駆け寄ってきた。レオの側近だった。
「フィオ殿!お待ちしておりました。陛下がお会いになられます。こちらへ」
彼は、全てを察していたかのように、フィオを中へと導いた。レオが、フィオがいつ来てもいいようにと、前もって衛兵に話を通してくれていたのだ。その事実に、フィオの胸がまた熱くなる。
通されたのは、広大で豪華な皇帝の執務室だった。部屋の中央で、レオが窓の外を見ながら一人で立っている。数日会わないうちに、彼はまた『氷帝』の仮面を被り、以前よりもさらに痩せて、孤独な影を背負っているように見えた。
フィオの入ってきた気配に、彼はゆっくりと振り返る。その青い瞳が、フィオの姿を捉えて、悲しげに揺らいだ。
「…フィオ。来てくれたのか」
フィオは、手にしていた傘をぎゅっと握りしめると、覚悟を決めて口を開いた。
「レオさん…ううん、レオンハルト陛下。…ごめんなさい」
最初に口から出たのは、謝罪の言葉だった。
「僕は、あなたの気持ちを考えずに、酷いことを言いました。あなたが僕を騙していたわけじゃない。ただ、僕と本当の意味で向き合いたかっただけだっていうこと、今は分かります」
フィオは一歩、レオに近づいた。
「驚いたのは、本当です。あなたが、僕の手の届かない、遠い世界の人間なんだって思ったら、怖くなった。でも、一人であなたのことを考えているうちに、気づいたんです」
フィオは、まっすぐにレオの目を見つめて、自分の正直な気持ちをぶつけた。
「あなたが皇帝陛下でも、ただのレオでも、僕が惹かれたあなた自身は、何も変わらない。僕は、あなたの隣にいたいです。あなたの宝物を修理する、ただの修理屋としてでもいい。それでも、あなたの笑顔が一番近くで見られる場所に、僕はいたいんです」
その言葉は、まるで魔法のように、レオの心の氷を完全に溶かしていった。彼の青い瞳から、一筋の涙が静かにこぼれ落ちた。
「…フィオ」
レオは数歩でフィオとの距離を詰めると、その細い体を、壊れ物を抱きしめるように強く、強く抱きしめた。
「君がいなければ、私の世界は色を失ってしまう。皇帝という立場は、私から多くのものを奪った。感情を殺し、孤独に耐えることだけが、私の生きる術だった。でも、君と出会って、私の世界は色づいたんだ。君の笑顔が、君の優しさが、私の凍てついた心を溶かしてくれた」
レオはフィオの肩に顔を埋め、震える声で告白した。
「愛している、フィオ。私の唯一の宝物は、どんな古代遺物でもない。君だ。君だけなんだ」
フィオも、レオの背中にそっと腕を回し、力強く抱きしめ返した。
「僕も…僕も、あなたが好きです、レオ」
二人の心は、ようやく一つに結ばれた。
しばらくして、落ち着きを取り戻したフィオは、ふと工房長のことを思い出した。
「あの、お店を襲わせた工房長の処分は…」
レオに尋ねると、彼は冷たい声で「国家反逆罪として、極刑も考えている」と答えた。しかし、フィオは静かに首を横に振った。
「待ってください。彼を罰することは当然だと思います。でも、彼の錬金術の才能は本物です。国のために、その才能を活かす道は、ないのでしょうか」
自分を陥れようとした相手でさえ、その才能を惜しみ、慈悲を求める。そのフィオのどこまでも深い優しさに、レオは再び心を打たれた。
「…フィオ。君は、本当に…」
レオは愛しさが込み上げてくるのを抑えきれず、フィオの唇に、そっと自分の唇を重ねた。それは、雨上がりの虹のように、優しくて温かいキスだった。
工房長の処分は、フィオの願い通り、辺境の地で国のための魔道具開発に従事させるという、才能を活かす形での減刑となった。その慈悲深い判断に、レオへの民衆の信頼はさらに厚くなったという。
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