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第9話「真実の光、運命の刻印」
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俺の無実が証明され、エリアス王子の陰謀が白日の下に晒されたことで、王城は新たな局面を迎えていた。
シルヴァーナ王国に対しては、アステル王国から正式な抗議が行われ、両国間の緊張は一気に高まった。
エリアス王子は、この事件の責任を問われ、王位継承権を剥奪されたと聞いた。
自業自得とはいえ、ゲームのシナリオとはまったく違う結末に、俺は歴史の大きなうねりの中にいることを実感していた。
俺を陥れようとした宰相をはじめとする重臣たちも、カイによってその不正を暴かれ、失脚した。
空いた席には、カイが信頼を置く若く有能な貴族たちが新たに着任した。
アステル王国は、この事件をきっかけに、より強固で公正な国へと生まれ変わろうとしていた。
そして俺は、地下牢から解放され、再び王城厨房での穏やかな日常を取り戻していた。
以前と違うのは、城の誰もが俺に対して敬意を払うようになったことと、カイが以前にも増して片時も俺のそばを離れようとしなくなったことだ。
「リヒト、味見をさせてくれ」
「リヒト、今日の夕食はなんだ?」
厨房での仕事中も、カイは当たり前のように俺の隣にいる。
その距離の近さに、周りの料理人たちはもう慣れたもので、生暖かい視線を俺たちに送るだけだった。
事件を経て、俺とカイの間の壁は、完全に取り払われていた。
俺はもう、彼から逃げようとは思わない。
彼が俺をどれほど大切に想ってくれているか、その身を賭して証明してくれたからだ。
俺の心は、とっくの昔に、この不器用で真っ直ぐな騎士団長のものになっていた。
その夜、俺はカイに誘われて、彼の私室を訪れていた。
二人きりになるのは、あのヒートの夜以来だ。
緊張で、心臓が少しだけ早くなる。
「リヒト、改めて礼を言う。お前が、俺を信じて真実を話してくれたおかげで、国を救うことができた」
「俺の方こそ……助けてくれて、ありがとうございました。あなたがいなければ、俺は今頃……」
お互いに見つめ合い、どちらからともなく微笑み合う。
部屋に満ちる、穏やかで温かい空気。
カイはゆっくりと立ち上がると、俺の前にひざまずいた。
そして、懐から小さな箱を取り出す。
「リヒト・アシュフィールド」
改まった低い声で、カイが俺の名前を呼ぶ。
その蒼い瞳は、どこまでも真剣だった。
「俺は、お前を愛している。俺の、たった一人の運命の番だ。どうか、俺と正式な番になって、これからの人生を、共に歩んではくれないだろうか」
箱の中には、青い薔薇をかたどった美しい銀の指輪が収められていた。
月の光を浴びて、キラキラと輝いている。
それは、ゲームのタイトルにもなっていた『青薔薇』。
この国では、永遠の愛を誓う象徴とされている花だ。
「……はい」
涙で視界がにじむ。
俺は、震える声で答えた。
「喜んで……。俺も、あなたを愛しています、カイ」
俺の返事を聞いて、カイの顔が、くしゃりと嬉しそうにほころんだ。
彼は指輪を手に取ると、優しく俺の左手の薬指にはめてくれる。
ひんやりとした感触が、指に馴染んだ。
「ありがとう、リヒト……!」
カイは俺を力強く抱きしめた。
俺も、彼の背中に腕を回す。
もう、何の迷いもなかった。
この人の腕の中が、俺の帰る場所なのだ。
その夜、俺たちは再び体を重ねた。
前回のようなヒートに浮かされた衝動的なものではなく、お互いの愛を確かめ合うような、どこまでも優しく深い交わりだった。
「リヒト……綺麗だ……」
カイは、俺のうなじに残された番の刻印や、体中に散らばる昨夜の愛の痕跡を、愛おしそうに指でなぞる。
その熱い視線に、俺の肌が粟立つのを感じた。
「お前のすべてが、欲しい」
ささやきとともに、再び彼の熱が俺の中を満たしていく。
何度も繰り返される愛の行為の中で、俺たちの魂は、溶け合うように一つになっていった。
そして、絶頂の瞬間。
カイは、俺のうなじに、再び深く牙を立てた。
前回よりも強く、確かな刻印。
それは、二人が永遠に離れることのない、運命の番となった証だった。
「……これで、お前は名実ともに、俺のものだ」
汗ばんだ額に、優しいキスが落とされる。
俺は、満たされた幸福感の中で、カイの首筋に腕を回し、そっとささやき返した。
「……うん。俺は、あなたのものです」
悪役令息の運命は、もうどこにもない。
俺は、この世界で、愛する人と共に、新たな人生を歩み始めるのだ。
窓の外では、満月が、祝福するように俺たちを照らしていた。
シルヴァーナ王国に対しては、アステル王国から正式な抗議が行われ、両国間の緊張は一気に高まった。
エリアス王子は、この事件の責任を問われ、王位継承権を剥奪されたと聞いた。
自業自得とはいえ、ゲームのシナリオとはまったく違う結末に、俺は歴史の大きなうねりの中にいることを実感していた。
俺を陥れようとした宰相をはじめとする重臣たちも、カイによってその不正を暴かれ、失脚した。
空いた席には、カイが信頼を置く若く有能な貴族たちが新たに着任した。
アステル王国は、この事件をきっかけに、より強固で公正な国へと生まれ変わろうとしていた。
そして俺は、地下牢から解放され、再び王城厨房での穏やかな日常を取り戻していた。
以前と違うのは、城の誰もが俺に対して敬意を払うようになったことと、カイが以前にも増して片時も俺のそばを離れようとしなくなったことだ。
「リヒト、味見をさせてくれ」
「リヒト、今日の夕食はなんだ?」
厨房での仕事中も、カイは当たり前のように俺の隣にいる。
その距離の近さに、周りの料理人たちはもう慣れたもので、生暖かい視線を俺たちに送るだけだった。
事件を経て、俺とカイの間の壁は、完全に取り払われていた。
俺はもう、彼から逃げようとは思わない。
彼が俺をどれほど大切に想ってくれているか、その身を賭して証明してくれたからだ。
俺の心は、とっくの昔に、この不器用で真っ直ぐな騎士団長のものになっていた。
その夜、俺はカイに誘われて、彼の私室を訪れていた。
二人きりになるのは、あのヒートの夜以来だ。
緊張で、心臓が少しだけ早くなる。
「リヒト、改めて礼を言う。お前が、俺を信じて真実を話してくれたおかげで、国を救うことができた」
「俺の方こそ……助けてくれて、ありがとうございました。あなたがいなければ、俺は今頃……」
お互いに見つめ合い、どちらからともなく微笑み合う。
部屋に満ちる、穏やかで温かい空気。
カイはゆっくりと立ち上がると、俺の前にひざまずいた。
そして、懐から小さな箱を取り出す。
「リヒト・アシュフィールド」
改まった低い声で、カイが俺の名前を呼ぶ。
その蒼い瞳は、どこまでも真剣だった。
「俺は、お前を愛している。俺の、たった一人の運命の番だ。どうか、俺と正式な番になって、これからの人生を、共に歩んではくれないだろうか」
箱の中には、青い薔薇をかたどった美しい銀の指輪が収められていた。
月の光を浴びて、キラキラと輝いている。
それは、ゲームのタイトルにもなっていた『青薔薇』。
この国では、永遠の愛を誓う象徴とされている花だ。
「……はい」
涙で視界がにじむ。
俺は、震える声で答えた。
「喜んで……。俺も、あなたを愛しています、カイ」
俺の返事を聞いて、カイの顔が、くしゃりと嬉しそうにほころんだ。
彼は指輪を手に取ると、優しく俺の左手の薬指にはめてくれる。
ひんやりとした感触が、指に馴染んだ。
「ありがとう、リヒト……!」
カイは俺を力強く抱きしめた。
俺も、彼の背中に腕を回す。
もう、何の迷いもなかった。
この人の腕の中が、俺の帰る場所なのだ。
その夜、俺たちは再び体を重ねた。
前回のようなヒートに浮かされた衝動的なものではなく、お互いの愛を確かめ合うような、どこまでも優しく深い交わりだった。
「リヒト……綺麗だ……」
カイは、俺のうなじに残された番の刻印や、体中に散らばる昨夜の愛の痕跡を、愛おしそうに指でなぞる。
その熱い視線に、俺の肌が粟立つのを感じた。
「お前のすべてが、欲しい」
ささやきとともに、再び彼の熱が俺の中を満たしていく。
何度も繰り返される愛の行為の中で、俺たちの魂は、溶け合うように一つになっていった。
そして、絶頂の瞬間。
カイは、俺のうなじに、再び深く牙を立てた。
前回よりも強く、確かな刻印。
それは、二人が永遠に離れることのない、運命の番となった証だった。
「……これで、お前は名実ともに、俺のものだ」
汗ばんだ額に、優しいキスが落とされる。
俺は、満たされた幸福感の中で、カイの首筋に腕を回し、そっとささやき返した。
「……うん。俺は、あなたのものです」
悪役令息の運命は、もうどこにもない。
俺は、この世界で、愛する人と共に、新たな人生を歩み始めるのだ。
窓の外では、満月が、祝福するように俺たちを照らしていた。
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