悪役令嬢の兄に転生!破滅フラグ回避でスローライフを目指すはずが、氷の騎士に溺愛されてます

水凪しおん

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第19話 二つの心、一つの誓い

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 サイラスは、一命を取り留めた。

 あの後、王子の覚悟に心を動かされた一部の兵士が反旗を翻し、グランヴェル侯爵は捕らえられた。すぐに王宮の治癒魔術師が駆けつけ、サイラスは最悪の事態を免れたのだ。

 それから数日間、俺は彼の側につきっきりで看病をした。
 王宮の一室で、白いシーツに横たわる彼は、まだ顔色が悪く、静かに寝息を立てているだけだった。

 彼の眠る顔を見つめながら、俺は自分の気持ちと向き合っていた。

 穏やかなスローライフを夢見ていたはずだった。面倒なことには関わらず、平穏に、静かに生きていきたい。そう願っていたはずなのに。

(今では、サイラスがいない人生なんて、考えられない……)

 彼が死ぬかもしれないと思った時の、あの絶望感。胸が張り裂けそうになるほどの痛み。もう二度と、あんな思いはしたくなかった。

 俺は、彼と共に生きたい。
 危険な陰謀に巻き込まれたって構わない。ただ、この人の隣で、彼を守り、支えたい。
 それが、俺の新しい願いになっていた。

 スローライフとは、ほど遠いかもしれない。でも、心の底から満たされるような、温かい幸せが、そこにはある気がした。

 サイラスが目を覚ましたのは、それから三日後の朝だった。

「……アシェル?」

 掠れた声で俺の名を呼ぶ彼に、俺は思わず駆け寄った。

「サイラス! 気がついたのか!」

「ああ……。俺は、助かったのか」

「当たり前だろ! 俺が誰だと思ってるんだ」

 軽口を叩きながらも、声が震えるのを止められなかった。生きている。彼が、生きている。その事実だけで、涙が出そうだった。

 しばらくの沈黙の後、俺は意を決して、彼の前に跪いた。
 そして、彼の手を、両手でそっと握りしめた。

「サイラス。……あんたが言ったこと、覚えてるか?」

「……ああ」

「俺も、同じ気持ちだ。俺も、あんたを愛してる。だから、もう二度と、俺を庇って死のうだなんて思うな」

 俺の告白に、サイラスは少しだけ目を見開いた。そして、そのアイスブルーの瞳から、一筋の涙が静かにこぼれ落ちた。

「……お前から、その言葉が聞けるとはな」

 彼は弱々しく微笑むと、俺の手を力強く握り返した。

「約束する。もう、お前を置いていったりはしない」

 二人の心が、ようやくはっきりと通じ合った瞬間だった。

 部屋に差し込む朝の光が、俺たちを優しく照らしていた。

 回復したサイラスから、グランヴェル侯爵の背後に、さらなる黒幕がいる可能性を聞かされた。まだ、すべてが終わったわけではない。

 しかし、俺たちはもう一人ではなかった。

「すべての陰謀に、決着をつけよう。二人で」

「ああ、もちろんだ」

 俺たちは固く誓い合った。愛する人を、そしてこの国の未来を守るため、最後の戦いに挑むことを。
 俺たちの新しい物語は、まだ始まったばかりだ。
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