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第7話「君と、未来を変えるための覚悟」
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僕の祈りが通じたのか、その翌朝、カイは静かに目を開けた。
「……アキト?」
かすれた声で僕の名前を呼んだ彼に、僕は「カイ!」と叫んで抱きついた。涙と鼻水でぐしゃぐしゃになりながら、何度も何度も彼の名前を呼んだ。
「よかった……本当に、よかった……!」
「君が……看病してくれたのか」
カイは弱々しく微笑みながら、僕の髪を優しく撫でた。その手の温かさに、僕はまた涙が溢れそうになるのを必死でこらえた。
しばらくして落ち着きを取り戻した僕を見て、カイは覚悟を決めたように口を開いた。
「……話さなければならないことがある」
僕は黙ってうなずいた。彼の隣に椅子を引き寄せ、その手を取る。もう、何を聞いても大丈夫だというように。
カイは、すべてを打ち明けてくれた。
彼がいた未来。そこでは僕は自分の「創成魔法」の力を制御できず、周囲から疎まれ孤立していたこと。唯一の理解者であるはずだったカイも僕の苦しみに気づいてやれず、ただ遠くから見ていることしかできなかったこと。そして孤独と恐怖の果てに僕の魔力が暴走し、世界は修復不可能なほどに崩壊してしまったこと。
「俺は……何もできなかった。君がたった一人で苦しんでいるのを、ただ見ていることしか……。君が暴走したあの日、俺は君を止めるどころか、恐怖で動けなかったんだ。その結果、君も、世界も、すべてを失った」
カイの声は、深い後悔に震えていた。
「荒廃した世界で、俺は何年もかけて禁断とされた時間魔術を研究した。すべてを捨てて、たった一度だけ過去へ渡るために。君を……君がまだ誰にも蔑まれていない、ただの不器用な少年に過ぎなかった時代へ」
彼の話を聞きながら、僕はただ彼の痛みを想像することしかできなかった。彼がどれほどの後悔と絶望を抱えて、この時代にやってきたのか。
「最初は、使命感だけだった。君を正しく導き、暴走を未然に防ぐこと。それが未来の俺が過去の俺に託した、唯一の贖罪だったから」
カイは一度言葉を切り、僕の目を真っ直ぐに見つめた。その青い瞳が、熱を帯びて揺らめいている。
「でも、違った。君と過ごすうちに……君の不器用な優しさや、ひたむきさに触れるうちに、俺は……使命なんかじゃなく、心から君を愛するようになっていた。この手で君を守りたい。君の笑顔が見たい。ただ、それだけを願うようになった」
遺跡で彼が告げた「愛してる」という言葉は、本心だったのだ。
「本当にすまない、アキト。君を騙すような形になってしまって」
彼は申し訳なさそうに眉を下げた。僕は、首を横に振った。
「謝るのは、僕の方だ」
僕は握りしめていた彼の手に、自分の手を重ねた。
「僕が、弱かったから。未来で、あんたやみんなに、そんな辛い思いをさせた。ごめん……」
「君のせいじゃない!」
カイが、強い口調で僕の言葉を遮った。
「君は悪くない。悪いのは、君の力を理解しようとせず君を孤立させた、俺たちの方だ」
彼の言葉に、僕は救われた気がした。
「カイ……僕、もう逃げないよ」
僕は顔を上げ、彼の瞳をしっかりと見つめ返した。
「あんたが未来から来てくれた理由が、よく分かった。一人で背負わせてごめん。これからは僕も一緒に戦う。崩壊なんてしない、僕たちが幸せに暮らせる未来を、二人で創るんだ」
それは僕の生涯で、最も強い覚悟を込めた誓いだった。僕の言葉を聞いたカイの瞳から、一筋の涙が静かにこぼれ落ちた。それは彼がこの時代に来て、初めて見せる涙だった。
「……ありがとう、アキト」
彼は僕の手を強く、強く握り返した。その手はまだ少し冷たかったけれど、確かに力が込められていた。
僕たちは初めて本当の意味で心を通わせた。偽りの婚約者ではなく、未来を変えるためのパートナーとして。そして、互いを愛し合うたった一人の恋人として。
これから僕たちをどんな困難が待ち受けているか分からない。でも、もう怖くはなかった。隣にカイがいる。彼と一緒なら、どんな運命にだって抗える。
僕たちはどちらからともなく顔を寄せ、そっと唇を重ねた。それは未来への誓いを込めた、初めての口づけだった。
「……アキト?」
かすれた声で僕の名前を呼んだ彼に、僕は「カイ!」と叫んで抱きついた。涙と鼻水でぐしゃぐしゃになりながら、何度も何度も彼の名前を呼んだ。
「よかった……本当に、よかった……!」
「君が……看病してくれたのか」
カイは弱々しく微笑みながら、僕の髪を優しく撫でた。その手の温かさに、僕はまた涙が溢れそうになるのを必死でこらえた。
しばらくして落ち着きを取り戻した僕を見て、カイは覚悟を決めたように口を開いた。
「……話さなければならないことがある」
僕は黙ってうなずいた。彼の隣に椅子を引き寄せ、その手を取る。もう、何を聞いても大丈夫だというように。
カイは、すべてを打ち明けてくれた。
彼がいた未来。そこでは僕は自分の「創成魔法」の力を制御できず、周囲から疎まれ孤立していたこと。唯一の理解者であるはずだったカイも僕の苦しみに気づいてやれず、ただ遠くから見ていることしかできなかったこと。そして孤独と恐怖の果てに僕の魔力が暴走し、世界は修復不可能なほどに崩壊してしまったこと。
「俺は……何もできなかった。君がたった一人で苦しんでいるのを、ただ見ていることしか……。君が暴走したあの日、俺は君を止めるどころか、恐怖で動けなかったんだ。その結果、君も、世界も、すべてを失った」
カイの声は、深い後悔に震えていた。
「荒廃した世界で、俺は何年もかけて禁断とされた時間魔術を研究した。すべてを捨てて、たった一度だけ過去へ渡るために。君を……君がまだ誰にも蔑まれていない、ただの不器用な少年に過ぎなかった時代へ」
彼の話を聞きながら、僕はただ彼の痛みを想像することしかできなかった。彼がどれほどの後悔と絶望を抱えて、この時代にやってきたのか。
「最初は、使命感だけだった。君を正しく導き、暴走を未然に防ぐこと。それが未来の俺が過去の俺に託した、唯一の贖罪だったから」
カイは一度言葉を切り、僕の目を真っ直ぐに見つめた。その青い瞳が、熱を帯びて揺らめいている。
「でも、違った。君と過ごすうちに……君の不器用な優しさや、ひたむきさに触れるうちに、俺は……使命なんかじゃなく、心から君を愛するようになっていた。この手で君を守りたい。君の笑顔が見たい。ただ、それだけを願うようになった」
遺跡で彼が告げた「愛してる」という言葉は、本心だったのだ。
「本当にすまない、アキト。君を騙すような形になってしまって」
彼は申し訳なさそうに眉を下げた。僕は、首を横に振った。
「謝るのは、僕の方だ」
僕は握りしめていた彼の手に、自分の手を重ねた。
「僕が、弱かったから。未来で、あんたやみんなに、そんな辛い思いをさせた。ごめん……」
「君のせいじゃない!」
カイが、強い口調で僕の言葉を遮った。
「君は悪くない。悪いのは、君の力を理解しようとせず君を孤立させた、俺たちの方だ」
彼の言葉に、僕は救われた気がした。
「カイ……僕、もう逃げないよ」
僕は顔を上げ、彼の瞳をしっかりと見つめ返した。
「あんたが未来から来てくれた理由が、よく分かった。一人で背負わせてごめん。これからは僕も一緒に戦う。崩壊なんてしない、僕たちが幸せに暮らせる未来を、二人で創るんだ」
それは僕の生涯で、最も強い覚悟を込めた誓いだった。僕の言葉を聞いたカイの瞳から、一筋の涙が静かにこぼれ落ちた。それは彼がこの時代に来て、初めて見せる涙だった。
「……ありがとう、アキト」
彼は僕の手を強く、強く握り返した。その手はまだ少し冷たかったけれど、確かに力が込められていた。
僕たちは初めて本当の意味で心を通わせた。偽りの婚約者ではなく、未来を変えるためのパートナーとして。そして、互いを愛し合うたった一人の恋人として。
これから僕たちをどんな困難が待ち受けているか分からない。でも、もう怖くはなかった。隣にカイがいる。彼と一緒なら、どんな運命にだって抗える。
僕たちはどちらからともなく顔を寄せ、そっと唇を重ねた。それは未来への誓いを込めた、初めての口づけだった。
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