劣等生の俺を、未来から来た学院一の優等生が「婚約者だ」と宣言し溺愛してくる

水凪しおん

文字の大きさ
9 / 14

第8話「忍び寄る影、狙われた創成魔法」

しおりを挟む
 カイとの間で未来を変えるという共通の覚悟を固めてから、僕たちの日常は新たな意味を持ち始めた。カイは僕の魔力制御訓練を続けながらも、彼が知る「未来の知識」を駆使して僕の暴走を引き起こす可能性のある要因を一つずつ潰していった。
 僕もまた、自分の「創成魔法」と真剣に向き合うようになった。それはもはや恐れるべき力の象徴ではなく、カイと未来を守るための希望の力だと信じられるようになったからだ。

 二人の絆は日ごとに深まり、学院内での僕たちの関係も少しずつ受け入れられ始めていた。特に、古代遺跡での一件で僕が仲間たちを結果的に救った形になったことで、僕を「劣等生」と呼ぶ声はほとんど聞こえなくなっていた。ゼノンでさえ、僕と顔を合わせると気まずそうに視線を逸らすだけになった。
 穏やかな日々。このまま何事もなく未来を変えられるのではないか。そんな淡い期待を、僕たちは抱き始めていた。

 しかし、運命はそう簡単には僕たちを解放してはくれなかった。
 僕が持つ伝説級の「創成魔法」。その存在が、ある者たちの耳に入ってしまったのだ。

「最近、学院の周辺で不審な魔力の動きが感知されている」

 ある日の放課後、カイが険しい表情で僕に告げた。

「未来の記録にはなかったことだ。だが、嫌な予感がする。アキト、しばらくは一人で行動するな。必ず俺のそばにいろ」

 カイの警告は、現実のものとなった。
 数日後、学院の周囲に張られていた強力な結界が、何者かによって破壊されるという事件が起きた。それは学院始まって以来の異常事態だった。

 侵入者の正体は、禁断の魔術を研究し世界を裏から支配しようと企む闇の組織「ウロボロス」だった。彼らは僕の「創成魔法」の力を嗅ぎつけ、その力を奪い世界を意のままに作り変えようと画策していたのだ。

「まさか、この時代に彼らがこれほど活発に動いていたとは……」

 カイは未来の知識の綻びに、苦々しく顔を歪めた。

「どうやら、俺が過去に来たことで歴史が少しずつ変わり始めているらしい」

 闇の組織は巧妙だった。彼らは学院に協力者を潜ませ、僕に関する情報を収集していた。そして僕が精神的に最も孤立し弱くなる瞬間を狙って、罠を張ってきたのだ。

 それは、僕とカイの些細な喧嘩がきっかけだった。訓練のことで少し意見が食い違い、僕は「少し頭を冷やす」と言ってカイの制止を振り切り、一人で中庭に出てしまった。それが敵の思う壺だった。
 中庭に足を踏み入れた途端、周囲の景色がぐにゃりと歪み、僕は見知らぬ薄暗い空間に囚われてしまった。幻術を使った結界だ。

「創成魔法の器よ。我々と共に来い」

 ローブを深く被った男たちが、僕を取り囲む。彼らの体からは、邪悪で冷たい魔力が立ち上っていた。

「お前の力は、世界を意のままに作り変えることができる。我々に従えば、お前を劣等生と蔑んだこの世界に、復讐させてやろう」

 男は、甘い言葉で僕の心の弱さにつけ込もうとする。

「うるさい! 誰がお前たちなんかに!」

 僕は杖を構え魔法を放とうとする。だが、体が動かない。金縛りの術だ。

 絶体絶命。そう思った時、僕が囚われている結界の外から、カイの怒りに満ちた声が響き渡った。

「アキトに触るな、下衆どもが!」

 声と同時に、凄まじい衝撃が結界を揺るがす。カイが未来の知識で僕の危機を察知し、駆けつけてくれたのだ。

「カイ様だけじゃありませんわ!」

「劣等生をいじめていいのは、俺様だけだ!」

 カイの後ろには、僕たちを心配して駆けつけてくれたクラスメイトたち、そして、なぜかゼノンまでいた。

「未来の知識だけが武器じゃない。君がこの時代で築いた絆も、立派な力だ」

 カイは僕に聞こえるようにそう言うと、仲間たちと共に組織の男たちに応戦し始めた。

 カイと仲間たちが、僕を守るために必死に戦ってくれている。僕だけが、こんなところで無力なままでいられるか。
 僕は金縛りに抵抗しながら、必死に魔力を練り上げた。カイが教えてくれた制御の方法を思い出す。焦るな。怒りに身を任せるな。守りたいものを、強くイメージしろ。

 ――守りたいもの。
 僕の脳裏に、カイの笑顔が浮かんだ。僕を励ましてくれる仲間たちの顔が浮かんだ。
 そうだ。僕の力は、復讐のためなんかじゃない。僕の大切な人たちを守るためにあるんだ。
 僕の心に応えるように、体の奥から温かい力が湧き上がってくる。それは破壊の奔流ではない。優しく、力強い、生命の輝きそのものだった。

「これが、僕の力だ!」

 僕が叫ぶと、金縛りの術が内側から弾け飛んだ。僕は自由を取り戻し、僕を捕らえていた組織の男たちと対峙する。

「今度は、僕がみんなを守る番だ」

 僕は杖を構え、カイの隣に立った。背中を預け合える仲間がいる。そして何より、愛する人がそばにいる。もう、僕は一人じゃない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

俺が王太子殿下の専属護衛騎士になるまでの話。

黒茶
BL
超鈍感すぎる真面目男子×謎多き親友の異世界ファンタジーBL。 ※このお話だけでも読める内容ですが、 同じくアルファポリスさんで公開しております 「乙女ゲームの難関攻略対象をたぶらかしてみた結果。」 と合わせて読んでいただけると、 10倍くらい楽しんでいただけると思います。 同じ世界のお話で、登場人物も一部再登場したりします。 魔法と剣で戦う世界のお話。 幼い頃から王太子殿下の専属護衛騎士になるのが夢のラルフだが、 魔法の名門の家系でありながら魔法の才能がイマイチで、 家族にはバカにされるのがイヤで夢のことを言いだせずにいた。 魔法騎士になるために魔法騎士学院に入学して出会ったエルに、 「魔法より剣のほうが才能あるんじゃない?」と言われ、 二人で剣の特訓を始めたが、 その頃から自分の身体(主に心臓あたり)に異変が現れ始め・・・ これは病気か!? 持病があっても騎士団に入団できるのか!? と不安になるラルフ。 ラルフは無事に専属護衛騎士になれるのか!? ツッコミどころの多い攻めと、 謎が多いながらもそんなラルフと一緒にいてくれる頼りになる受けの 異世界ラブコメBLです。 健全な全年齢です。笑 マンガに換算したら全一巻くらいの短めのお話なのでさくっと読めると思います。 よろしくお願いします!

美人王配候補が、すれ違いざまにめっちゃ睨んでくるんだが?

あだち
BL
戦場帰りの両刀軍人(攻)が、女王の夫になる予定の貴公子(受)に心当たりのない執着を示される話。ゆるめの設定で互いに殴り合い罵り合い、ご都合主義でハッピーエンドです。

ハッピーライフのために地味で根暗な僕がチャラ男会計になるために

ミカン
BL
地味で根暗な北斗が上手く生きていくために王道学園でチャラ男会計になる話 ※主人公へのいじめ描写ありのため苦手な方は閲覧ご注意下さい。

【完結】俺の愛が世界を救うってマジ?

白井のわ
BL
総受け、受けのキスで変身するヒーローもの。 受け)天音レン、16歳、ごく普通の高校生だった、小柄な体格が悩み、真っ直ぐな性格。 攻め1)緑山ヒスイ、16歳、レンの幼なじみで親友、穏やかで一途な性格、小さい頃からレンのことが好き。 攻め2)赤木コウイチ、17歳、レン達の1つ上の先輩、熱血漢なリーダー、ヒーローに憧れている。 攻め3)黄川ダイキ、17歳、陽気な性格、趣味はゲーム、お姉ちゃんっこ。 攻め4)青岩アサギ、17歳、冷静な性格、恋愛ごとには疎い、可愛いものが好き。 攻め5)黒野キョウヤ、28歳、レンの体調管理と心のケアを担当する医師、面倒見が良い。

転生場所は嫌われ所

あぎ
BL
会社員の千鶴(ちずる)は、今日も今日とて残業で、疲れていた そんな時、男子高校生が、きらりと光る穴へ吸い込まれたのを見た。 ※ ※ 最近かなり頻繁に起こる、これを皆『ホワイトルーム現象』と読んでいた。 とある解析者が、『ホワイトルーム現象が起きた時、その場にいると私たちの住む現実世界から望む仮想世界へ行くことが出来ます。』と、発表したが、それ以降、ホワイトルーム現象は起きなくなった ※ ※ そんな中、千鶴が見たのは何年も前に消息したはずのホワイトルーム現象。可愛らしい男の子が吸い込まれていて。 彼を助けたら、解析者の言う通りの異世界で。 16:00更新

「禍の刻印」で生贄にされた俺を、最強の銀狼王は「ようやく見つけた、俺の運命の番だ」と過保護なほど愛し尽くす

水凪しおん
BL
体に災いを呼ぶ「禍の刻印」を持つがゆえに、生まれた村で虐げられてきた青年アキ。彼はある日、不作に苦しむ村人たちの手によって、伝説の獣人「銀狼王」への贄として森の奥深くに置き去りにされてしまう。 死を覚悟したアキの前に現れたのは、人の姿でありながら圧倒的な威圧感を放つ、銀髪の美しい獣人・カイだった。カイはアキの「禍の刻印」が、実は強大な魔力を秘めた希少な「聖なる刻印」であることを見抜く。そして、自らの魂を安定させるための運命の「番(つがい)」として、アキを己の城へと迎え入れた。 贄としてではなく、唯一無二の存在として注がれる初めての優しさ、温もり、そして底知れぬ独占欲。これまで汚れた存在として扱われてきたアキは、戸惑いながらもその絶対的な愛情に少しずつ心を開いていく。 「お前は、俺だけのものだ」 孤独だった青年が、絶対的支配者に見出され、その身も魂も愛し尽くされる。これは、絶望の淵から始まった、二人の永遠の愛の物語。

追放オメガ聖帝の幸せな結婚〜クールなスパダリ騎士に拾われて溺愛されるまで〜

あきたいぬ大好き(深凪雪花)
BL
ノルディーナ王国の聖帝サーナは、教皇のありもしない嘘のせいで聖宮から追放されてしまう。 行く当てがないサーナが国境に向かうと、そこで隣国ルミルカ王国の騎士であるムーシュと出会う。ムーシュから諸事情により偽装結婚を提案されて、サーナは期限付きの偽装結婚ならばよいと承諾し、一時的に保護してもらうことに。 異国暮らしに慣れていく中で、やがてムーシュから溺愛されるようになり……?

処理中です...