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第10話「新しい世界の始まりは、本当の口づけから」
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闇の組織との戦いから、数ヶ月が過ぎた。あの事件の後、僕は自身の力を完全に制御できるようになった。「創成魔法」は世界を無に帰す危険な力ではなく、失われたものを再生させ、傷ついたものを癒す希望の力として国中に知れ渡ることとなった。僕を「劣等生」と呼ぶ者は、もう学院のどこにもいなかった。
そして僕とカイの関係も、大きく変わっていた。カイが僕を「婚約者」と呼ぶのは相変わらずだったが、それはもう未来を変えるための口実ではなかった。僕たちは誰がどう見ても、深く愛し合う恋人同士だった。カイの過保護っぷりは健在だったけれど、以前のような強引さはなくなり、彼の愛情表現はどこか不器用で、それがまた愛おしかった。
やがて、卒業の季節がやってきた。
澄み渡る青空の下、学院の卒業式が執り行われる。答辞を読むのは、もちろん卒業生総代のカイだ。壇上に立つ彼はいつも通り完璧で、眩しいほどに輝いていた。僕は卒業生たちの席から、誇らしい気持ちで彼を見つめていた。
式が終わり、生徒たちが名残惜しそうに語り合う中、カイが僕のところへやってきた。
「アキト、少し二人で話がしたい」
彼はそう言うと僕の手を取り、学院の裏にある一番星がよく見える丘へと連れて行ってくれた。そこは僕たちがまだぎこちなかった頃、カイの魔術訓練によく付き合わされた思い出の場所だった。
夕暮れの光が、僕たちを優しく包み込んでいる。
「卒業、おめでとう、カイ」
僕が言うと、彼は「ああ、君もな」と微笑んだ。
しばらくの沈黙の後、カイが改まった様子で僕に向き直った。その手には、小さなベルベットの箱が握られている。
「アキト」
彼が僕の名前を呼ぶ声が、少しだけ震えていることに気づいた。
「俺が最初に君を婚約者と呼んだのは、未来を変えるためのただの方便だった。君を縛り付け、俺の管理下に置くための我儘な嘘だった」
僕は黙って、彼の言葉の続きを待つ。
「だが、今は違う」
カイは、僕の目の前で片膝をついた。そしてその箱をぱかりと開けて僕に差し出した。中には銀色のシンプルな指輪が、夕日の光を浴びてキラキラと輝いていた。指輪の内側には、小さな青い宝石が埋め込まれている。彼の瞳と同じ色だ。
「これは、嘘じゃない。俺の、本当の気持ちだ。未来も、過去も、現在も。俺のすべては、君と共にある。だから……俺と、本当に結婚してくれないか?」
それは、改めてのプロポーズだった。僕の心は幸福感でいっぱいになった。涙が溢れてきて、目の前のカイの顔が滲んで見える。
「……僕で、いいの?」
「君がいいんだ。君じゃなきゃ、だめなんだ」
それは、僕がかつて絶望の淵にいた時、彼がかけてくれた言葉と同じだった。
僕は涙でぐしゃぐしゃの顔のまま、満面の笑みでうなずいた。
「はい……喜んで」
カイは安堵したように柔らかな表情を浮かべると、僕の左手の薬指にそっと指輪をはめてくれた。サイズは、驚くほどぴったりだった。
彼は立ち上がり、僕を優しく抱きしめる。
「愛してる、アキト。永遠に」
「僕も……僕も、愛してるよ、カイ」
僕たちは、どちらからともなく顔を寄せた。
あの夜、医務室で交わした切ない誓いの口づけじゃない。
これは新しい世界の始まりを祝う、どこまでも甘く、幸せに満ちた、本当の口づけだった。
祝福するように、一番星が空でまたたき始めた。未来から始まった僕たちの恋は、こうして永遠の愛へと姿を変えたのだ。
そして僕とカイの関係も、大きく変わっていた。カイが僕を「婚約者」と呼ぶのは相変わらずだったが、それはもう未来を変えるための口実ではなかった。僕たちは誰がどう見ても、深く愛し合う恋人同士だった。カイの過保護っぷりは健在だったけれど、以前のような強引さはなくなり、彼の愛情表現はどこか不器用で、それがまた愛おしかった。
やがて、卒業の季節がやってきた。
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彼はそう言うと僕の手を取り、学院の裏にある一番星がよく見える丘へと連れて行ってくれた。そこは僕たちがまだぎこちなかった頃、カイの魔術訓練によく付き合わされた思い出の場所だった。
夕暮れの光が、僕たちを優しく包み込んでいる。
「卒業、おめでとう、カイ」
僕が言うと、彼は「ああ、君もな」と微笑んだ。
しばらくの沈黙の後、カイが改まった様子で僕に向き直った。その手には、小さなベルベットの箱が握られている。
「アキト」
彼が僕の名前を呼ぶ声が、少しだけ震えていることに気づいた。
「俺が最初に君を婚約者と呼んだのは、未来を変えるためのただの方便だった。君を縛り付け、俺の管理下に置くための我儘な嘘だった」
僕は黙って、彼の言葉の続きを待つ。
「だが、今は違う」
カイは、僕の目の前で片膝をついた。そしてその箱をぱかりと開けて僕に差し出した。中には銀色のシンプルな指輪が、夕日の光を浴びてキラキラと輝いていた。指輪の内側には、小さな青い宝石が埋め込まれている。彼の瞳と同じ色だ。
「これは、嘘じゃない。俺の、本当の気持ちだ。未来も、過去も、現在も。俺のすべては、君と共にある。だから……俺と、本当に結婚してくれないか?」
それは、改めてのプロポーズだった。僕の心は幸福感でいっぱいになった。涙が溢れてきて、目の前のカイの顔が滲んで見える。
「……僕で、いいの?」
「君がいいんだ。君じゃなきゃ、だめなんだ」
それは、僕がかつて絶望の淵にいた時、彼がかけてくれた言葉と同じだった。
僕は涙でぐしゃぐしゃの顔のまま、満面の笑みでうなずいた。
「はい……喜んで」
カイは安堵したように柔らかな表情を浮かべると、僕の左手の薬指にそっと指輪をはめてくれた。サイズは、驚くほどぴったりだった。
彼は立ち上がり、僕を優しく抱きしめる。
「愛してる、アキト。永遠に」
「僕も……僕も、愛してるよ、カイ」
僕たちは、どちらからともなく顔を寄せた。
あの夜、医務室で交わした切ない誓いの口づけじゃない。
これは新しい世界の始まりを祝う、どこまでも甘く、幸せに満ちた、本当の口づけだった。
祝福するように、一番星が空でまたたき始めた。未来から始まった僕たちの恋は、こうして永遠の愛へと姿を変えたのだ。
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