劣等生の俺を、未来から来た学院一の優等生が「婚約者だ」と宣言し溺愛してくる

水凪しおん

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番外編1話「優等生が孤独だった頃」

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 世界は、灰色だった。空は鉛色の雲に覆われ、かつて緑豊かだった大地はひび割れ、生命の気配はほとんどない。崩壊した建物の残骸が、墓標のように点在している。これがアキトの『創成魔法』が暴走した後の、俺の故郷だった。

 俺、カイ・エストリアは、瓦礫の山の上に一人座り、ただ虚空を見つめていた。生き残った人々は地下のシェルターでかろうじて暮らしている。だが、そこにも希望はない。誰もが、ただ絶望の中で息をしているだけだった。
 すべての元凶はアキトだ。誰もがそう言って、彼を呪った。
 だが、本当にそうだろうか。彼をそこまで追い詰めたのは、俺たちではなかったか。

 あの日、俺は見ていた。規格外の力に悩み、周囲から「怪物」と恐れられ、アキトが日に日に孤立していく姿を。俺は学院一の優等生という自分の立場に胡座をかき、彼に手を差し伸べようとはしなかった。ただ「気の毒な劣等生」だと、心の中で彼を見下していただけだった。彼がどれほど孤独で、自分の力に怯えていたかも知らずに。

 そして、運命の日が来た。些細なきっかけで彼の感情が爆発した。彼の涙と共に溢れ出した魔力は世界を無慈悲に破壊し、彼自身をも飲み込んで消えていった。
 俺は、何もできなかった。彼の悲痛な叫び声が、今も耳から離れない。

 後悔だけが、俺を苛んだ。なぜ、気づいてやれなかった。なぜ、手を差し伸べてやらなかった。優等生などというくだらないプライドが、俺の目を曇らせていたのだ。
 俺は、禁断とされる時間魔術の研究に没頭した。すべてを償うために。もし、もう一度だけやり直せるのなら。

 何年も、何十年もかかった。多くの犠牲を払い、俺はついにたった一度だけ過去へ渡る術を見つけ出した。すべてを捨てて、俺という存在そのものを賭けて過去へ旅立つ。
 旅立ちの前夜、俺は廃墟となった魔術学院を訪れた。そこは俺が彼と出会い、そして彼を見捨てた場所だ。
 ひび割れた中庭に立ち、灰色の空を見上げる。

「アキト」

 俺は、彼の名を呼んだ。返事はない。分かっている。彼はもう、どこにもいないのだから。
 それでも、俺は誓った。この胸に刻みつけるように。

「今度こそ、俺が君を見つけ出す。誰よりも先に、君の手を取る。君の孤独も、その力の痛みも、すべて俺が受け止める。だから……」

 だから、今度こそ君を必ず幸せにする。

 俺は過去へと飛んだ。愛しい君が、まだ「劣等生」と笑われていた、あの日に。
 すべては君の笑顔を取り戻すために。たったそれだけが、俺の生きる理由だった。
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