温泉旅館の跡取り、死んだら呪いの沼に転生してた。スキルで温泉郷を作ったら、呪われた冷血公爵がやってきて胃袋と心を掴んで離さない

水凪しおん

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エピローグ「ぬくもりの在り処」

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 あれから、数年の歳月が流れた。
 アオイは、すっかり「リヒトバーン公爵様のパートナー」として、温泉郷に住む人々や領民たちから心から慕われる存在になっていた。彼の優しい人柄と、温泉郷をより良くしようと常に努力する姿勢は、多くの人々の尊敬を集めている。

 クロードもまた、かつての「氷の華」の面影はなく、領民の声に真摯に耳を傾ける、穏やかで愛情深い領主として敬愛されていた。彼の的確な判断力とアオイの柔軟な発想力が合わさった統治は、リヒトバーン領を国で最も豊かで住みやすい場所へと変えていった。

 ある晴れた日の午後。
 二人は、お気に入りである一番最初の露天風呂を貸し切りにして、のんびりと湯に浸かっていた。
 柔らかな日差しが水面に反射して、きらきらと輝いている。

「なんだか、夢みたいだなあ」
 アオイが、気持ちよさそうに目を細めながら呟いた。
「まさか、沼だった俺が、こうして公爵様のパートナーになるなんて、転生したばかりの頃は想像もつかなかったよ」
「ふふ、お嫁さんでも構わないが?」
 クロードが、楽しそうにアオイの言葉をからかう。すっかり板についた軽口に、アオイは少し頬を膨らませた。
「もう、クロードさん!」
「私にとっては、君だから良かったんだ。他の誰でもない、アオイだったから」
 クロードはそう言うと、アオイの体を優しく引き寄せ、その唇をそっと塞いだ。
 もう慣れたはずのキスなのに、触れるたびに胸の奥が温かくなる。この人がくれる愛情が、どれだけ深くて、かけがえのないものかを改めて思い知らされる。

 唇が離れた後、アオイはクロードの逞しい胸に、こてんと頭を預けた。
「……ありがとう、クロードさん。僕を見つけてくれて」
「礼を言うのは、こちらのほうだ。君が、私に生きる意味と温もりを教えてくれた」

 湯けむりの向こうには、二人が作り上げた温泉郷の活気あふれる営みが見える。子供たちの楽しそうな声、湯治客たちの穏やかな笑顔、働く人々の活気。
 その全てが、二人の愛の結晶だった。

 絶望の沼の底から始まった、奇跡の物語。
 孤独だった二つの魂が出会い、寄り添い、そして一つの大きな愛を育んだ。
 ここが、二人が見つけた、そして作り上げた、永遠のぬくもりの在り処。
 物語はここで終わるけれど、二人の温かい日々は、これからもずっと、この祝福の温泉郷と共に続いていく。
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