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第2話「氷の鬼神との再会」
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目が覚めた時、俺は誰かに体を揺さぶられていた。
「おい、起きろ。こんな場所で死ぬ気か」
低く、体の芯に響くような声。ゆっくりと瞼を開けると、視界いっぱいに広がったのは、漆黒の制服と昨日見かけた銀髪の男の顔だった。
雨はいつの間にか上がっていたが、夜の空気はまだ冷たい。彼は俺の顔を無遠慮に覗き込み、氷のような青い瞳をわずかに細めた。
「……お前、昨日の……」
彼は俺を覚えていたらしい。それよりも、なぜ彼がここにいるのだろうか。
「……あなたは……」
「エヴァン・ライオネルだ」
その名前に、心臓が跳ねた。エヴァン・ライオネル。その名を知らぬ者は、この国にはいないだろう。竜騎士団を率いる最強の騎士にして、敵味方から「氷の鬼神」と恐れられる存在。昨日俺が感じ取った途方もない瘴気と疲労の正体は、彼が潜り抜けてきた数多の戦場の証だったのだ。
「なぜ、ここに……?」
「……お前の側にいると、なぜか頭痛が和らぐ」
エヴァンは、ぶっきらぼうにそう言った。彼の言葉の意味が理解できず、俺はただ瞬きを繰り返す。
「昨夜、お前の横を通り過ぎた後、ここ数年で一番まともに眠れた。ほんのわずかな時間だがな」
彼の声には、かすかな苛立ちと、それ以上の戸惑いが滲んでいた。
「まさかとは思ったが……やはりお前のせいか」
「え……?」
「お前、何者だ」
問い詰められ、俺は正直に答えるしかなかった。
「ルカ、と申します。神官、でした……。今は、追放された身ですが」
「神官?」
エヴァンは眉をひそめた。彼の視線が、俺の全身を品定めするように動く。俺の内に、何かを探しているようだった。
「お前の力は何だ。治癒か?」
「いえ……治癒の力は、ありません。俺にできるのは、穢れを祓うことだけです。だから、役立たずだと……」
そう口にした瞬間、聖域での屈辱が蘇り声が震える。俯く俺を見て、エヴァンは何かを納得したように小さく息を吐いた。
「穢れ祓い……なるほどな。俺を蝕むこの瘴気を、お前は無意識に浄化していたというわけか」
瘴気。彼が長年苦しめられてきた頭痛や不眠の原因は、その身に蓄積し続けた濃密な瘴気のせいだったのだ。俺の力は怪我を治せない。けれど、その苦しみの根源を取り除くことができるのかもしれない。
「……立てるか」
「え?」
「立てと言っている」
有無を言わさぬ口調に、俺は慌てて体を起こそうとするが、衰弱しきった体は言うことを聞かなかった。ふらついた俺の腕を、エヴァンが強い力で掴んで支える。彼の手は、氷の異名とは裏腹に驚くほど熱かった。
その瞬間、彼の腕から奔流のように黒い瘴気が俺の体へと流れ込んでくるのが分かった。しかしそれは苦痛ではなく、まるで乾いた大地が水を吸い込むような、ごく自然な感覚だった。
「っ……!」
エヴァンが、息を呑むのが分かった。彼の表情が、ほんの少しだけ和らいでいる。長年、彼の眉間に刻まれていた深い皺が、かすかに薄れたように見えた。
彼は確信したのだろう。俺の力が、彼にとって唯一の救いになるということを。
エヴァンは掴んだ俺の腕を離すことなく、氷の瞳で俺を射抜いた。その瞳には、獲物を見つけた獣のような強い光が宿っていた。
「見つけたぞ」
彼の唇が、冷たく、そしてどこか歓喜に満ちた言葉を紡いだ。
「おい、起きろ。こんな場所で死ぬ気か」
低く、体の芯に響くような声。ゆっくりと瞼を開けると、視界いっぱいに広がったのは、漆黒の制服と昨日見かけた銀髪の男の顔だった。
雨はいつの間にか上がっていたが、夜の空気はまだ冷たい。彼は俺の顔を無遠慮に覗き込み、氷のような青い瞳をわずかに細めた。
「……お前、昨日の……」
彼は俺を覚えていたらしい。それよりも、なぜ彼がここにいるのだろうか。
「……あなたは……」
「エヴァン・ライオネルだ」
その名前に、心臓が跳ねた。エヴァン・ライオネル。その名を知らぬ者は、この国にはいないだろう。竜騎士団を率いる最強の騎士にして、敵味方から「氷の鬼神」と恐れられる存在。昨日俺が感じ取った途方もない瘴気と疲労の正体は、彼が潜り抜けてきた数多の戦場の証だったのだ。
「なぜ、ここに……?」
「……お前の側にいると、なぜか頭痛が和らぐ」
エヴァンは、ぶっきらぼうにそう言った。彼の言葉の意味が理解できず、俺はただ瞬きを繰り返す。
「昨夜、お前の横を通り過ぎた後、ここ数年で一番まともに眠れた。ほんのわずかな時間だがな」
彼の声には、かすかな苛立ちと、それ以上の戸惑いが滲んでいた。
「まさかとは思ったが……やはりお前のせいか」
「え……?」
「お前、何者だ」
問い詰められ、俺は正直に答えるしかなかった。
「ルカ、と申します。神官、でした……。今は、追放された身ですが」
「神官?」
エヴァンは眉をひそめた。彼の視線が、俺の全身を品定めするように動く。俺の内に、何かを探しているようだった。
「お前の力は何だ。治癒か?」
「いえ……治癒の力は、ありません。俺にできるのは、穢れを祓うことだけです。だから、役立たずだと……」
そう口にした瞬間、聖域での屈辱が蘇り声が震える。俯く俺を見て、エヴァンは何かを納得したように小さく息を吐いた。
「穢れ祓い……なるほどな。俺を蝕むこの瘴気を、お前は無意識に浄化していたというわけか」
瘴気。彼が長年苦しめられてきた頭痛や不眠の原因は、その身に蓄積し続けた濃密な瘴気のせいだったのだ。俺の力は怪我を治せない。けれど、その苦しみの根源を取り除くことができるのかもしれない。
「……立てるか」
「え?」
「立てと言っている」
有無を言わさぬ口調に、俺は慌てて体を起こそうとするが、衰弱しきった体は言うことを聞かなかった。ふらついた俺の腕を、エヴァンが強い力で掴んで支える。彼の手は、氷の異名とは裏腹に驚くほど熱かった。
その瞬間、彼の腕から奔流のように黒い瘴気が俺の体へと流れ込んでくるのが分かった。しかしそれは苦痛ではなく、まるで乾いた大地が水を吸い込むような、ごく自然な感覚だった。
「っ……!」
エヴァンが、息を呑むのが分かった。彼の表情が、ほんの少しだけ和らいでいる。長年、彼の眉間に刻まれていた深い皺が、かすかに薄れたように見えた。
彼は確信したのだろう。俺の力が、彼にとって唯一の救いになるということを。
エヴァンは掴んだ俺の腕を離すことなく、氷の瞳で俺を射抜いた。その瞳には、獲物を見つけた獣のような強い光が宿っていた。
「見つけたぞ」
彼の唇が、冷たく、そしてどこか歓喜に満ちた言葉を紡いだ。
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