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出会い
45話
しおりを挟むしばらく飛と過ごしていると、こちらの方に向かってくる人影が蓮花の目に入った。どこかで見たことがあるような、と考えていたが近づく人の顔が分かり蓮花は驚いた。
こちらに颯爽と向かってきた人物。それは雲嵐だった。
「探しましたよ、こちらにいらしたんですね」
「――時間切れか」
「おや、珍しいですね。あなたが女人と一緒にいらっしゃるとは」
飛は雲嵐の姿を認めると肩を竦めて言った。
どうやら飛の影に隠れて蓮花の姿が見えなかったのか、そばに来て初めて飛の横に座る蓮花を見つけたようだ。口振りに反してさほど驚いていない気がしたのは表情に出にくいだけなのだろうか。
「あの、先日の宴ではお手数をおかけ致しました。覚えてらっしゃらないかもしれませんが、転びかけた所を助けていただいた者です」
一応その場でも話したのだが、あの時はあまり事を大袈裟にしないように小さな声で話していた。そのせいで聞こえていない可能性があると気付いたので、礼を欠くよりはしつこいくらいに言って置く方が吉だと考えた蓮花は改めて雲嵐に礼を告げる。
蓮花の言葉を聞いて雲嵐も、どの事か思い至ったようで、あの時の、と零す。
「礼には及びませんよ、あれは災難でしたね。もしかして貴女が柳 蓮花様ですか?」
「はい、綉礼様からの文を届けていただいてありがとうございました」
そういえば綉礼からの文も雲嵐経由で届いたのだと気付き慌てて再び礼をする。
「こちらこそ、綉礼がお世話になっているようで。お友達になったと喜んでいましたよ。あの子のあんなに楽しそうな顔は久しく見ていませんでしたから」
「そう、ですか……」
「おい」
にこやかに話す雲嵐だが、何となく違和感を感じる。しかしその違和感が何かわかる前に飛が雲嵐に声を掛ける。雲嵐は飛に目をやり困ったように眉を寄せる。
「そう怒らないでください。ちょっとした八つ当たりですよ。すいません、蓮花さん」
「わかっているなら余計にタチが悪い」
「八つ当たり?」
雲嵐の口から八つ当たりという単語が出てきた事と今の話の流れの繋がりがいまいちピンと来ず蓮花の頭の中には疑問符が浮かんだ。
「こいつは自分の好きな人が自分以外に喜ばされてるのが気に食わないんだよ」
「雲嵐様の好きな人――って。今の流れからすると……え、綉礼様!?」
まさかの事実に思わず大きな声を出してしまう。そんな声を聞いても雲嵐が照れたり慌てたりする様子は見えなかった。
「雲嵐は仕事はできるが性格が少し歪んでいてな」
「なんて失礼なことを吹き込むんですか。私は純粋な気持ちで綉礼を見守っているだけです。あと人の気持ちを勝手にばらすのはいかがかと思いますが」
にこやかな表情は変わらないのになんだか圧を感じる。向けられている飛はなんでもないような顔をしているのに、横にいる蓮花の方がたじろいでしまう。
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