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動乱
79話
しおりを挟む市場で偶然会った蓮花と李星。李星は蓮花の荷物の量を見て少し驚いた顔をした。
「今日はお前一人で買い物か? にしては量がすごいけど」
「こんなに買うつもりはなかったんだけど気付いたらこんなにいっぱいになっちゃってたの」
「ほら貸せよ、暇だから持ってってやるよ」
そういうと蓮花の腕に抱えられていた一際大きな包みを李星は掴む
「そんな、悪いわ。そんなに遠くないし大丈夫よ」
「そんなに遠くないんだったらいいだろ」
したり顔で笑う李星に蓮花も笑い、素直にお願いすることにした。
「俺がこっちに帰ってきてから蓮花と会うのもまだ二回目か。もっと頻繁に見かけると思ったのに全然会わねえな」
「最近は宮廷の仕事が忙しくて……。李星は鍛冶屋の仕事どう?」
「順調だよ。修行先で顧客も増やしてきたし」
「え! すごいわね!」
昔の李星は色白で細身で女の子によく間違われるような子だった。蓮花は隣を歩く李星を横目で見る。
鍛冶屋は火と鉄をを扱うため肌は黒く焼けて、筋肉もしっかりついている。女の子に間違われるどころか、きっと人気もあるだろう。
「すっかり大人の男の人ね。こんなところ見られたら李星の恋人に怒られちゃうわ」
「……そんなのいねえよ」
からかうように笑うと李星は少し口をとがらせて返す。
「蓮花は……どうなんだよ」
「私に恋人がいるかってこと? いないわよ、いたらいいんだけどね~」
「前に明苑がなんか言ってただろ、そいつは?」
李星の言葉に蓮花は明苑があの時、ぽろっと零していた事を思い出した。
「私のことはいいの! それより蘭翠の嫁入りが大事だからそっちをどうにかしなくちゃ」
「答えになってないだろ。そいつのこと好きなのかよ」
李星は立ち止まり蓮花を見つめる。蓮花はいつになく神妙な顔をしている李星に戸惑う。
「それは……私にもよく分からないの」
「なんだよそれ。なんで急に出てきたやつを好きになってんだよ」
「だからまだ好きってわけじゃ」
「俺にしとけよ」
李星の言葉を訂正しようとしたが、続けて発せられた言葉に思わず言葉を失う。
「そんなやつやめて俺と結婚しろよ。俺は鍛冶屋だし、食うのには困らない。お前の家族のことだって助けてやれると思う」
「李星、やめてよそんな冗談――」
「冗談じゃない、俺は本気だ。ずっと蓮花が好きだった。俺、肝心な所で茶化してたから嘘だって思うのも分かる」
「そんな……全然知らなかった」
蓮花は突然の告白に頭が真っ白になった。いつも冗談めかしてからかってくる事はあったがいつも笑って終わっていた。てっきり李星は反応が面白くてやっているのだと思っていた。
しかし蓮花を見つめる李星の目は今まで見たことないほど熱っぽい。経験の少ない蓮花でも李星の本気の心がわかった。
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