芙蓉は後宮で花開く

速見 沙弥

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朝議

96話

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 突然の発表に朝議の間は騒然としていた。突然亡くなった泰龍と飛龍。それまで紅龍が後継者として名前が上がることはほぼなかった。それほどまでに飛龍が泰龍の跡を継ぐことは確実視されていた。

 だからこそ、紅龍と渧淳を怪しく思うものがいるのは当然のことだった。
 
「お待ちください! 紅龍皇子が皇位に就かれるのは分かります。しかし何故梠尚書が後見人なんでしょうか。今まで梠尚書が紅龍皇子と親しくしていた気配はありませんでしたが」

 耐えきれず尚書の一人が立ち上がり物申す。紅龍はその尚書に目をやり答える。

「梠尚書は母上とは昔から家族ぐるみで交流があったそうだ。その関係で定期的に私のことを気にしてくれていた。そうですよね、母上」
「え、ええ……。いつも渧淳様は良くしてくださっています」

 立ち上がった尚書は自分の立場を顧みず、皆の頭に浮かんだ疑問をぶつける。

「それにしても今回の皇帝陛下、飛龍皇子の訃報はあまりにも急すぎます。まるで――」
「まるで誰かが裏で糸を引いているよう、ですね」

 隣にいた別部署の尚書も渋い顔をしてその言葉を繋げる。
 その言葉を聞いた渧淳は得意気な笑みを浮かべた。

「それは随分な言い草ですね。その言い方は一連の出来事を私が引き起こしたように聞こえましたが……気のせいでしょうか」
「いえ、気のせいではありません。私は怪しくて仕方がありませんよ。そもそも陛下がお倒れになられた原因も毒、飛龍皇子の宴でも毒を盛られたと言うではありませんか。その給仕をしたものが誰かの指示を受けていてもおかしくありません」

 最初に声を上げた尚書は口ごもったが、隣の尚書は毅然と言い返した。

「一体なんの証拠があって私を疑うのか――給仕係は自分の罪を認めて処刑されたと聞いています。まあ、生きていたとして私と繋がる証拠はないと思いますがね」

 動揺する様子もなくそう言い放つ渧淳に、証拠がないため言い返せずに黙り込む尚書たち。


 その時――突如入口の扉がゆっくりと開き、外の光が部屋の中に差し込んだ。
 入室の声もかからなかった為、何事かと皆がそちらへ視線を向ける。そして全員が自分の目を疑った。

 そこには死んだはずの泰龍と飛龍が並び立っていた。
 
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