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朝議
105話
しおりを挟む時は少し遡り、飛龍達が朝議の間へと踏み込む直前に戻る。
蓮花は飛龍に付き従い朝議の間の入口付近まで来ていた。ここから正念場を迎える飛龍をせめて見送るためだ。
大人しく部屋で待っておこうかと思ったが皇后が現れて皇帝を見送るので一緒にと誘ってくれたのだ。
初めて対面したら皇后はとても綺麗で品が良く言葉を交わすことさえ恐れ多いと思ってしまうほどだった。
恐縮する蓮花に飛龍を助けてくれてありがとうと優しく微笑みかけてくれた。皇后が皇帝陛下を魅了する唯一の女性なのも納得する。
泰龍と皇后が入口付近で仲良く談笑しているので、飛龍も蓮花と少し話す時間が出来た。
「本当に済まない。こんな事に巻き込んでしまって」
「気にしないでください。私の力が役に立って良かったって本当に思ってるんです」
辛そうな顔をして謝る飛龍に笑って見せる蓮花。飛龍は蓮花の頬に大きな手を添える。
突然の接触に蓮花は驚いたが飛龍の手の温かさにほっとする。数日前の毒に苦しんでいた時の熱さとは違う。
「文にも書いたが全て終わったらゆっくり話す時間をくれないか」
蓮花はその言葉で宴の前に貰った文にそのようなことが書いてあったことを思い出す。
「もちろんです」
蓮花はにこやかに答える。飛龍は安堵した様子で蓮花の頬から手を離す。
そろそろ乗り込もうかと言う頃、蓮花はなんだか胸騒ぎがして最後まで入口付近で見守りたいと飛龍にお願いした。
「これから時間がかかるから別室で待っていた方がいいんじゃないか?母上は横の部屋で待たれるようだが」
「やっぱりここでお待ちするのはご迷惑でしょうか……」
蓮花の格好なら侍女に扮していても問題ないが、長丁場になることから皇后と一緒に待っていてはどうかと飛龍は提案した。
「蓮花がしんどくなければ大丈夫だよ。立っているのが辛くなったら母上の元で休むんだ」
「ありがとうございます!」
蓮花は飛龍に頭を下げ入口の際で待つことにした。
皇后は蓮花に笑いかけ横の部屋へと去っていき、泰龍と飛龍は朝議の間へと足を踏み入れた。
その後は梠尚書と晏貴妃の悪行の証拠を皆の前で露呈させてゆく。
順調に事が進んでいるように見えたため、蓮花は自分の取り越し苦労だったかと息を吐こうとした時だった。
玉座の傍に立っていた梠尚書がゆらりと動きを見せた。彼の懐から出た刃と陽の光が反射し蓮花の目を刺激する。
蓮花は梠尚書が動き出すのと同時に足が床を蹴っていた。
「飛様!」
それは頭で考えるよりも体が動いていた。
飛龍を守りたい――守らなければ。蓮花の頭にはただそれだけが浮かんでいた。
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