帰還勇者の盲愛生活〜異世界で失った仲間たちが現代で蘇り、俺を甘やかしてくる~

キョウキョウ

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ハヤトの新しい仕事

第21話 新しい職場へ

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「早速だけど、その警備会社に行ってもらう。そこまで彼が案内してくれるだろう」

 剛はそう言って、これまで黙って控えていた男性に視線を向けた。扉付近で静かに立っていた男性が一歩前に進み、ハヤトに向けて深々と頭を下げた。

「シールド・エージェント警備保障株式会社の社長を務めております、安元やすもと圭吾けいごと申します。以後、お見知りおきを」

 低く、しかし通る声で男性は名乗った。身長180センチはあろうかという体格に、トレーニングで鍛えられた体躯。年の頃は40代前半だろうか。短く刈り上げた髪と引き締まった顔には、厳しい経験を乗り越えてきた風格が漂っていた。

 まさか、社長だったなんて。しかも、こんなに丁寧な挨拶をされるとは。ハヤトは慌てて席から立ち上がり、頭を下げて丁寧に返した。

「佐藤隼人です。これから、よろしくお願いします」
「では、詳細は移動中にお話しします。お車をご用意しておりますので」

 安元社長の言葉に、ハヤトは頷き、剛に向き直った。

「行ってくる」
「うん。頼んだぞ、ハヤト」

 剛は彼の肩を軽く叩いた。その仕草には、友情と信頼が込められていた。二人の間に流れる空気は、長年の絆を物語っていた。

 ハヤトは安元社長に続いて会議室から出た。

「こちらです」

 廊下を進みながら、安元社長は紳士的にハヤトを案内した。

「あ、はい」

 社長に、こんなに丁寧に案内されるなんて。ハヤトは、ソワソワした気持ちで彼についていく。

 エレベーターを降り、ビルの地下駐車場へと向かうと、黒塗りの高級セダンが待機していた。運転手が車の横で直立不動で待っており、彼らが近づくと素早くドアを開けた。

「お先にどうぞ」

 安元社長に譲られて、ハヤトは後部座席に乗り込む。続いて安元社長も乗り込み、彼の隣に座った。運転手がドアを閉め、すぐに運転席へと回り込んだ。

 車が都心を走り始めると、安元社長は警備会社の状況を説明し始めた。

「我が社は身辺警護を専門としており、主に鉄村グループや関連会社から依頼を受けています」

 元警察官や元自衛官、元格闘家などを中心に構成されており、特に要人警護の分野では高い評価を得ているという。

「これまで重大な事故は一度もなく、クライアントからの信頼も厚いのですが……」

 安元社長の表情が曇った。

「先日の海外での事件は、我々にとって初めての大きな失態でした。内部から裏切り者が出たことは、会社にとって致命的な問題です」

 剛からも聞いた話を、より詳しく聞いていくハヤト。安元社長は事件の詳細、その後の対応、そして現在進行中の組織改革についても包み隠さず話した。

「そこまで俺に話しても大丈夫なのですか?」

 就職することを決めたとはいえ、聞いても大丈夫な話なのか。ハヤトが不審に思って尋ねると、安元社長は穏やかに微笑んだ。

「貴方のことは、剛様が信頼しているお仲間だと伺っています。それだけで、話しても大丈夫だと判断しました」

 彼の目には、真摯な光が宿っていた。

「それに、これからやっていただく人員の教育にも、それらの情報を知っておいてもらったほうが良いでしょう」
「なるほど」

 話を聞いて、ハヤトは頷く。安元社長の言葉には誠実さが感じられ、彼自身も会社の改革に本気で取り組もうとしていることが伝わってきた。

 そんな会話を交わしながら、車は東京の中心部から少し離れた地域へと向かい、やがて別の立派なビルの前に到着した。そのビルは高さこそ鉄村グループの本社ほどではなかったが、洗練されたデザインと堅牢な作りが印象的だった。

「ここが、シールド・エージェント警備保障株式会社のオフィスです」

 安元社長に案内され、ハヤトはビルの中へと足を踏み入れた。エントランスは質素ながらも無駄のない機能的な空間で、訪問者を迎える受付カウンターとセキュリティゲートが設置されていた。

「佐藤さんのIDカードは後ほど発行します。今日は私の権限で中に入りましょう」

 安元社長は専用のカードをかざし、セキュリティゲートを開けた。エレベーターで数階上がり、廊下を進んでいくと、大きなガラス窓のある部屋の前に到着した。

 「こちらが、我が社のトレーニングルームです」

 安元社長はドアを開け、ハヤトを中へと招き入れた。

 そこは警備会社の社員たちがトレーニングに励む、広々とした空間だった。体育館ほどの広さがあり、マット敷きの格闘技エリア、ウェイトトレーニングのセクション、そして奥には射撃訓練用のシミュレーションエリアまで設置されていた。

 鍛え上げられた肉体を持つ男たちが、黙々と汗を流している。静かな空間に、時折聞こえる重りの音や、マットに倒れる音だけが響いていた。

 その場にいた数人が、安元社長の姿に気づき、トレーニングを中断して近づいてきた。

「ここにいるのは、我が社でもトップクラスの実績を持つ者たちです」

 安元社長が誇らしげに紹介する。彼らは会釈をして、静かに並んだ。

「鈴木は警視庁特殊部隊の元隊員。佐々木は、元プロ格闘家で全日本チャンピオンの経験もある。田中は元自衛隊で精鋭部隊に所属していました」

 安元社長は一人一人を紹介していった。元警察官、元格闘家、元スポーツ選手など、荒事に対処した経験や卓越した身体能力を持つ者ばかりだった。その中でも特に実力が認められた、精鋭中の精鋭だという。

 彼らのハヤトを見る目に、好奇心と共に、わずかな疑念も浮かべていた。社長が連れてきた男は、一体何者なのか。

 安元社長は、そんな彼らの表情を察したのか、にっこりと微笑んだ。

「皆さん、こちらは佐藤隼人さんです。本日から我が社の一員として、特に皆さんと一緒に再教育対象者の指導を担当していただく方です」

 その言葉に、男たちの間に小さなざわめきが広がった。彼らの顔には明らかな戸惑いが浮かんでいる。自分たちよりも若く、特別な経歴も持たないように見える男が、自分たちと一緒に対象者を指導していくのだと聞かされたから。

「安元社長、すみません」

 元格闘家の佐々木と紹介された男が手を上げて、問いかける。彼の声は丁寧だったが、その目には明らかな疑問が浮かんでいた。佐藤隼人という人物の名前など聞いたことがなくて、実力も未知数。どういう人物なのか。

「佐藤さんのご経歴を、少しお聞かせいただけませんか?」

 そう問われて、安元社長どう話そうかと困ってしまう。彼も、詳しいことはあまり知らないから。ただ、剛から実力は確かだと。そして、安元社長はハヤトに視線を向けた。

「まずは彼らに、佐藤さんの実力を見せてもらえないでしょうか」

 その提案に、ハヤトは一瞬戸惑いを見せた。しかし、すぐに彼の表情は落ち着きを取り戻した。それが一番、手っ取り早いか。

「わかりました」

 紹介してもらった者たちの体つきや雰囲気を観察して、多分大丈夫だと思ったからハヤトは静かに頷き、ジャケットを脱ぎながら一歩前に出た。

「できることをお見せします。お相手、よろしくお願いします」
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