処刑から始まる私の新しい人生~乙女ゲームのアフターストーリー~

キョウキョウ

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王子視点

王子の10年③

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 マリアの問題を処理してから、8年の月日が経っていた。

 国内は混乱を極め、結局は内乱が勃発してしまっている酷い状況。内乱を起こした者たちの主張によると、王族による国の舵取りが上手く行っておらず国民が貧窮している。今の王に、国を任せておけないとのこと。

 内乱を引き起こしている者達には賛同者が多く、一大勢力と化していた。中には、貴族の協力者も居て戦況は拡大。事態が、なかなか収まらないでいた。

 そんな状況の中、信じられないような情報を手に入れた。どうやら、処刑したはずのイザベラが実は、今もまだ生きているという噂。

 何故、彼女は生きているのか。あの処刑からどうやって生き残ったのか、別人ではないのか。色々と考えたが、イザベラが生きているのならば俺は、彼女に国へ戻って来て欲しかった。今の俺は、誰かの助けが必要だった。
 
 思い返してみれば、イザベラを処刑してしまったあの時から徐々に俺の人生は狂い始めていたんだ。彼女を取り戻しさえすれば。イザベラを、元の婚約者という位置に戻すことが出来たなら。俺の人生は、再び正常に戻るはず。

 その関係こそが本来の通りの未来だったはず。イザベラに国へ戻ってきてもらい、我が王妃になってもらえれば、今まで上手く行かなかったことが元通りになるような気がする。国の混乱も、そうすれば元に戻るのではないか。



 絶望していた俺に、内乱についての問題を解決するための僅かな望みが見えた。

 速やかにイザベラを取り戻すために、俺は今では少なくなった信頼できる部下だけ引き連れて、イザベラが処刑の後に逃げこんだと言われている隣国に向かった。



 イザベラの居場所はすぐに突き止められた。なぜなら、彼女は美しい容姿のままで今も幸せに暮らしているらしい。彼女と交流を持った人たちは、イザベラを絶賛していた。

 あんなに親切な人は他に居ない。見た目が美しいのに、心までも美しい人だった。魔法の才能に溢れていて、困っている人を魔法で助けてくれたらしい。その国では、イザベラは英雄と呼ばれるほどの有名人になっているらしい。

 そんなイザベラの活躍した噂を辿って行くと、現在の彼女が生活している場所まで容易に特定することが出来た。



 俺はイザベラを探して、とある村へとやってきた。

 時間は夕方。辺りは暗くなっていき、本当なら翌日を待って訪問するべきだろう。けれども俺は、一刻も早くイザベラを我が国に連れ戻したかった。完全に辺りが暗くなる前になんとか、森の中にあるという一軒家を見つけ出した。そこが彼女の住む家だろうと、確信を持った。

「はぁ、ふぅ……。あれが……ッ」

 到着したときには呼吸も荒くなって、疲労困憊だった。だけど、彼女と再会できるという事実に胸が熱くなって、急いで家のドアをノックしていた。早く、イザベラと再会したい。

「どちら様でしょうか?」

 10年ぶりに聞いた、イザベラの美しい声だ。10年の月日が経ったというのに、彼女の声は何も変わっていないようだった。俺は、ちゃんと彼女の声を覚えていた。昔の記憶が、どんどん蘇ってくる。

「イザベラ! 居るのだろう、開けてくれ」

 早く彼女と会いたい、という逸る気持ちが抑えきれなかった。そして、気がつくと俺は激しく戸を叩いていた。
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