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第28話 見極める ※商人モーリス視点
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ある日、会って話がしたいとストランド伯爵家に呼び出された。私は何人か部下を連れて、伯爵家の屋敷に向かった。急ぎの商談だろうか。
最近、ストランド伯爵家に関する色々な噂を聞いていた。
先日行われた、とある社交界で事件があったらしい。その事件には伯爵家の令嬢が関係しているという。すぐに情報は規制されたので、事件の詳細に関して、世間には知られていない。
私は、社交界の事件について少し調べてみた。
信用できる情報筋から聞いた話によると、王子の不倫が発覚したという。伯爵家の令嬢が事実を暴露したらしい。
数日後、ストランド伯爵家の長女とリカード王子の婚約破棄が発表された。破棄の理由は公表されなかった。
ストランド伯爵家の当主は激怒しただろう。婚約した相手が不倫していたなんて。それで、事実を隠したまま婚約まで破棄されるとは。
伯爵家と王族との関係も、今回の事件で悪化したと思う。
リカード王子との婚約により、王家との繋がりが出来たストランド伯爵家の恩恵を我が商会も得ようと思っていた。だけど、婚約は破棄された。王家との関係も不和が生じたはず。
これは、雲行きが怪しいな。
この辺りで伯爵家に見切りをつけて、別のお得意様を探すべきだろうか。伯爵家に巻き込まれないよう、早めに離れたほうがよさそうな気配があった。
さらに数日後、ストランド伯爵家の次女がリカード王子と婚約するかもしれない、という噂が流れた。
どういうことなんだろう。伯爵家の当主は、少し変わった人物ではある。だけど、それを考慮しても理解するのが難しい展開だった。
長女の婚約破棄を撤回するんじゃなくて、長女の代わりに次女が婚約するなんて。
ストランド伯爵家の不可解な動きを見て、早く離れたほうが良さそうという思いが高まった。
そんなタイミングで、私は呼び出された。
ちょうど良かった。直接、会って見極めようと思った。今後、ストランド伯爵家と関係を続けるべきか、ここで切り離すべきか。その選択は、商会の運命を大きく左右することになるだろう。
そんな覚悟を持って屋敷を訪れたのに、私を呼び出したのは当主様じゃなかった。案内された先で待っていたのは、伯爵家の長女様だった。
長年、ストランド伯爵家と取引を続けてきた。しかし、伯爵家の令嬢である彼女と顔を合わせるのは今回が初めて。
人と会って話すのが嫌い、だと聞いていたのだが。
「よく来てくれました。どうぞ、座って」
「ッ! ど、どうも。お気遣い頂き」
例の少女は、先に部屋の中で待っていた。キレイな笑顔を浮かべて。
少女の顔を見た瞬間、背中に汗が流れる。これは、油断できない相手だ。まるで、老練な商人を相手にしているような感覚があった。私なんかよりも、ずっと年上だと思うような迫力。まだ、ずっと若い小娘相手に感じるようなプレッシャーではない。
だけど、この感覚は間違っていないと思う。侮らずに、用心しなければ食われる。
彼女と向き合うように、私は席に座る。部下を席の後ろに控えさせて、黙っておくように指示した。下手に動かれたら、大失敗しそうだから。
「ごきげんよう。私、ナディーンと申します」
「ご丁寧に、ありがとうございます。私は、モーリスと申します」
「お父様から、モーリスさんの商会のお話は聞いております。いつもストランド家を助けて頂いているのよね」
「恐縮です」
リカード王子は、これほどの女性を突き放したのか。
もしかすると、王子は恐れたのかな。彼女のような人物を王妃にしてしまったら、権力を奪われるかもしれないと警戒して。
この女性を制御するのは、かなり難しそうだ。だから、権力を脅かされないように婚約を破棄して遠くへ追いやった、とか。
少し話しただけで、そう感じた。ナディーンお嬢様は、そう考えてしまうぐらいの女傑だった。
彼女との会話は、ごく普通に続いていく。今はまだ。
「そこで、モーリスさんにお願いがありますの」
「何でしょうか?」
お願い、と聞いて少し身構えてしまう。
「実は私、旅行しようと思っているの」
「なるほど。それで、旅行の準備を当商会に依頼したい、ということでしょうか?」
「そうなのよ。外国にも行くつもりなので、護衛を頼める冒険者と案内人も紹介してくれると、助かります」
「わかりました。急いで用意しましょう」
目的地や予定、ルートや要望を聞き出していく。話し合いは順調に進んだ。だが、これだけで話は終わりじゃないだろう。
彼女は笑顔で、こう続けた。
「それと、もう一つ。モーリスさんに大事なお話がありますの」
「伺いましょう」
大事な話と彼女が口にした瞬間に私は、来た、と思った。これが今回の話し合いの本題のようだ。
最近、ストランド伯爵家に関する色々な噂を聞いていた。
先日行われた、とある社交界で事件があったらしい。その事件には伯爵家の令嬢が関係しているという。すぐに情報は規制されたので、事件の詳細に関して、世間には知られていない。
私は、社交界の事件について少し調べてみた。
信用できる情報筋から聞いた話によると、王子の不倫が発覚したという。伯爵家の令嬢が事実を暴露したらしい。
数日後、ストランド伯爵家の長女とリカード王子の婚約破棄が発表された。破棄の理由は公表されなかった。
ストランド伯爵家の当主は激怒しただろう。婚約した相手が不倫していたなんて。それで、事実を隠したまま婚約まで破棄されるとは。
伯爵家と王族との関係も、今回の事件で悪化したと思う。
リカード王子との婚約により、王家との繋がりが出来たストランド伯爵家の恩恵を我が商会も得ようと思っていた。だけど、婚約は破棄された。王家との関係も不和が生じたはず。
これは、雲行きが怪しいな。
この辺りで伯爵家に見切りをつけて、別のお得意様を探すべきだろうか。伯爵家に巻き込まれないよう、早めに離れたほうがよさそうな気配があった。
さらに数日後、ストランド伯爵家の次女がリカード王子と婚約するかもしれない、という噂が流れた。
どういうことなんだろう。伯爵家の当主は、少し変わった人物ではある。だけど、それを考慮しても理解するのが難しい展開だった。
長女の婚約破棄を撤回するんじゃなくて、長女の代わりに次女が婚約するなんて。
ストランド伯爵家の不可解な動きを見て、早く離れたほうが良さそうという思いが高まった。
そんなタイミングで、私は呼び出された。
ちょうど良かった。直接、会って見極めようと思った。今後、ストランド伯爵家と関係を続けるべきか、ここで切り離すべきか。その選択は、商会の運命を大きく左右することになるだろう。
そんな覚悟を持って屋敷を訪れたのに、私を呼び出したのは当主様じゃなかった。案内された先で待っていたのは、伯爵家の長女様だった。
長年、ストランド伯爵家と取引を続けてきた。しかし、伯爵家の令嬢である彼女と顔を合わせるのは今回が初めて。
人と会って話すのが嫌い、だと聞いていたのだが。
「よく来てくれました。どうぞ、座って」
「ッ! ど、どうも。お気遣い頂き」
例の少女は、先に部屋の中で待っていた。キレイな笑顔を浮かべて。
少女の顔を見た瞬間、背中に汗が流れる。これは、油断できない相手だ。まるで、老練な商人を相手にしているような感覚があった。私なんかよりも、ずっと年上だと思うような迫力。まだ、ずっと若い小娘相手に感じるようなプレッシャーではない。
だけど、この感覚は間違っていないと思う。侮らずに、用心しなければ食われる。
彼女と向き合うように、私は席に座る。部下を席の後ろに控えさせて、黙っておくように指示した。下手に動かれたら、大失敗しそうだから。
「ごきげんよう。私、ナディーンと申します」
「ご丁寧に、ありがとうございます。私は、モーリスと申します」
「お父様から、モーリスさんの商会のお話は聞いております。いつもストランド家を助けて頂いているのよね」
「恐縮です」
リカード王子は、これほどの女性を突き放したのか。
もしかすると、王子は恐れたのかな。彼女のような人物を王妃にしてしまったら、権力を奪われるかもしれないと警戒して。
この女性を制御するのは、かなり難しそうだ。だから、権力を脅かされないように婚約を破棄して遠くへ追いやった、とか。
少し話しただけで、そう感じた。ナディーンお嬢様は、そう考えてしまうぐらいの女傑だった。
彼女との会話は、ごく普通に続いていく。今はまだ。
「そこで、モーリスさんにお願いがありますの」
「何でしょうか?」
お願い、と聞いて少し身構えてしまう。
「実は私、旅行しようと思っているの」
「なるほど。それで、旅行の準備を当商会に依頼したい、ということでしょうか?」
「そうなのよ。外国にも行くつもりなので、護衛を頼める冒険者と案内人も紹介してくれると、助かります」
「わかりました。急いで用意しましょう」
目的地や予定、ルートや要望を聞き出していく。話し合いは順調に進んだ。だが、これだけで話は終わりじゃないだろう。
彼女は笑顔で、こう続けた。
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