30 / 49
第30話 認識の差 ※商人モーリス視点
しおりを挟む
その後、細かな部分を色々と話し合った。基本的に全て私に任せてくれるという。驚いたことに、利益の一割しか要求してこなかった。
「材料費や人件費なども全て商会に受け持ってもらうつもりだけど、よろしい?」
「それは、もちろんです」
「それなら、私が受け取る利益は売上の一割で十分ですわ」
「さようでございますか」
ナディーンお嬢様は、商売のことを分かっているようだな。それに、必要な費用の確認までしてきて、抜け目ない。
ストランド伯爵家の令嬢であるナディーンお嬢様との初対面は、無事に終わった。
私は、お嬢様から依頼された旅行準備の案件と、新たな魔法道具の設計書を商会に持ち帰る。とても緊張する話し合いだったが、得るものも非常に多かった。
ナディーンお嬢様との出会いで、我が商会の今後の展望が少し見えた気がする。
***
「モーリス! おい、モーリス!」
「どうした、ニック? そんなに慌てて」
部屋に駆け込んできた男性は、商会が雇っている魔法使いのニック。商会で扱う、商品の生産などを任せている頼りになるパートナーだ。
彼が、こんなに慌てているのは珍しかった。何か事件が起きたのか。もしかして、ナディーンお嬢様から受け取った設計書に何か問題が?
「こいつは、本物だぞ! 凄すぎるッ!」
彼の手には、魔法道具の設計書が握られている。やはり、そんなに興奮するような代物だったのか。
「そんなにスゴイのか?」
「ちゃんと効果を発揮する魔法道具を作ることが出来た。疲労軽減効果もバッチリ」
「それで、その魔法道具は量産できそうか?」
「む……。それなんだが」
効果は確認できた。なら、量産することは出来るのか。それが大事だ。尋ねると、彼は表情を暗くする。
ニックが、表情を曇らせた理由を説明してくれた。
「ある程度の実力がある魔法使いなら道具を作成できる、と言っていたらしいな」
「あぁ。ナディーンお嬢様から、そう聞いているが?」
「とんでもない。この魔法道具を作るためには、ちゃんと魔法について理解している実力者じゃないと難しいぞ」
「商会で雇っている魔法使いだと、何人ぐらいが作成できそうだ?」
「これを作成できるのは、俺を含めて三人だな。それ以外は、少し難しい」
「三人だけか。少ないな」
「しかも、一つ作り上げるのに五時間ぐらいは必要になる」
「む。そんなにか……」
それは、困った。せっかく設計書を受け取ったのに、量産できないなんて。商品を用意できないと、売上を伸ばすことは出来ない。
しかし、ニックほどの実力者でも難しいのか。彼は、元宮廷魔法使いという肩書を持つ実力者だ。商会で雇っている他の魔法使いも、腕利きばかり。それでも作るのが難しいなんて。
「わかった。ナディーンお嬢様に相談してみるよ」
「頼んだ。こっちも、もう少し設計書を読み込んでみる」
新たに発覚した、ナディーンお嬢様との認識の差。魔法の研究者として有名な彼女だが、もしかすると噂以上に凄い人なのではないか。
実際に会って話をしてみた時に感じた、とてつもない迫力。年齢に見合わない知性と落ち着き。ただの貴族令嬢ではない。
やはり、彼女との関わりは大事にしていくべきだろう。
これから先は、ストランド伯爵家の当主よりも、ナディーンお嬢様を優先するべきだな。そういう意識で、商会は彼女と関わっていくことを決めた。
そして、魔法道具の作成に関する問題についてナディーンお嬢様に報告した。そうすると、すぐに対応策をまとめた資料を送ってくれた。
お嬢様から受け取った資料をニックに渡すと、魔法道具の作成に関する問題はすぐ解消した。こうして、商会で取り扱う新たな魔法道具の量産が可能になった。
「材料費や人件費なども全て商会に受け持ってもらうつもりだけど、よろしい?」
「それは、もちろんです」
「それなら、私が受け取る利益は売上の一割で十分ですわ」
「さようでございますか」
ナディーンお嬢様は、商売のことを分かっているようだな。それに、必要な費用の確認までしてきて、抜け目ない。
ストランド伯爵家の令嬢であるナディーンお嬢様との初対面は、無事に終わった。
私は、お嬢様から依頼された旅行準備の案件と、新たな魔法道具の設計書を商会に持ち帰る。とても緊張する話し合いだったが、得るものも非常に多かった。
ナディーンお嬢様との出会いで、我が商会の今後の展望が少し見えた気がする。
***
「モーリス! おい、モーリス!」
「どうした、ニック? そんなに慌てて」
部屋に駆け込んできた男性は、商会が雇っている魔法使いのニック。商会で扱う、商品の生産などを任せている頼りになるパートナーだ。
彼が、こんなに慌てているのは珍しかった。何か事件が起きたのか。もしかして、ナディーンお嬢様から受け取った設計書に何か問題が?
「こいつは、本物だぞ! 凄すぎるッ!」
彼の手には、魔法道具の設計書が握られている。やはり、そんなに興奮するような代物だったのか。
「そんなにスゴイのか?」
「ちゃんと効果を発揮する魔法道具を作ることが出来た。疲労軽減効果もバッチリ」
「それで、その魔法道具は量産できそうか?」
「む……。それなんだが」
効果は確認できた。なら、量産することは出来るのか。それが大事だ。尋ねると、彼は表情を暗くする。
ニックが、表情を曇らせた理由を説明してくれた。
「ある程度の実力がある魔法使いなら道具を作成できる、と言っていたらしいな」
「あぁ。ナディーンお嬢様から、そう聞いているが?」
「とんでもない。この魔法道具を作るためには、ちゃんと魔法について理解している実力者じゃないと難しいぞ」
「商会で雇っている魔法使いだと、何人ぐらいが作成できそうだ?」
「これを作成できるのは、俺を含めて三人だな。それ以外は、少し難しい」
「三人だけか。少ないな」
「しかも、一つ作り上げるのに五時間ぐらいは必要になる」
「む。そんなにか……」
それは、困った。せっかく設計書を受け取ったのに、量産できないなんて。商品を用意できないと、売上を伸ばすことは出来ない。
しかし、ニックほどの実力者でも難しいのか。彼は、元宮廷魔法使いという肩書を持つ実力者だ。商会で雇っている他の魔法使いも、腕利きばかり。それでも作るのが難しいなんて。
「わかった。ナディーンお嬢様に相談してみるよ」
「頼んだ。こっちも、もう少し設計書を読み込んでみる」
新たに発覚した、ナディーンお嬢様との認識の差。魔法の研究者として有名な彼女だが、もしかすると噂以上に凄い人なのではないか。
実際に会って話をしてみた時に感じた、とてつもない迫力。年齢に見合わない知性と落ち着き。ただの貴族令嬢ではない。
やはり、彼女との関わりは大事にしていくべきだろう。
これから先は、ストランド伯爵家の当主よりも、ナディーンお嬢様を優先するべきだな。そういう意識で、商会は彼女と関わっていくことを決めた。
そして、魔法道具の作成に関する問題についてナディーンお嬢様に報告した。そうすると、すぐに対応策をまとめた資料を送ってくれた。
お嬢様から受け取った資料をニックに渡すと、魔法道具の作成に関する問題はすぐ解消した。こうして、商会で取り扱う新たな魔法道具の量産が可能になった。
97
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢扱いで国外追放?なら辺境で自由に生きます
タマ マコト
ファンタジー
王太子の婚約者として正しさを求め続けた侯爵令嬢セラフィナ・アルヴェインは、
妹と王太子の“真実の愛”を妨げた悪役令嬢として国外追放される。
家族にも見捨てられ、たった一人の侍女アイリスと共に辿り着いたのは、
何もなく、誰にも期待されない北方辺境。
そこで彼女は初めて、役割でも評価でもない「自分の人生」を生き直す決意をする。
復縁は絶対に受け入れません ~婚約破棄された有能令嬢は、幸せな日々を満喫しています~
水空 葵
恋愛
伯爵令嬢のクラリスは、婚約者のネイサンを支えるため、幼い頃から血の滲むような努力を重ねてきた。社交はもちろん、本来ならしなくても良い執務の補佐まで。
ネイサンは跡継ぎとして期待されているが、そこには必ずと言っていいほどクラリスの尽力があった。
しかし、クラリスはネイサンから婚約破棄を告げられてしまう。
彼の隣には妹エリノアが寄り添っていて、潔く離縁した方が良いと思える状況だった。
「俺は真実の愛を見つけた。だから邪魔しないで欲しい」
「分かりました。二度と貴方には関わりません」
何もかもを諦めて自由になったクラリスは、その時間を満喫することにする。
そんな中、彼女を見つめる者が居て――
◇5/2 HOTランキング1位になりました。お読みいただきありがとうございます。
※他サイトでも連載しています
私、今から婚約破棄されるらしいですよ!舞踏会で噂の的です
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
デビュタント以来久しぶりに舞踏会に参加しています。久しぶりだからか私の顔を知っている方は少ないようです。何故なら、今から私が婚約破棄されるとの噂で持ちきりなんです。
私は婚約破棄大歓迎です、でも不利になるのはいただけませんわ。婚約破棄の流れは皆様が教えてくれたし、さて、どうしましょうね?
妹のことが好き過ぎて婚約破棄をしたいそうですが、後悔しても知りませんよ?
カミツドリ
ファンタジー
侯爵令嬢のフリージアは婚約者である第四王子殿下のボルドーに、彼女の妹のことが好きになったという理由で婚約破棄をされてしまう。
フリージアは逆らうことが出来ずに受け入れる以外に、選択肢はなかった。ただし最後に、「後悔しないでくださいね?」という言葉だけを残して去って行く……。
もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」
婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。
もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。
……え? いまさら何ですか? 殿下。
そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね?
もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。
だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。
これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。
※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。
他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
王太子妃(仮)でしたが、聞いたこともない予言のせいで追放されました。ですから、今さら呼び戻されても困ります。
實藤圭
ファンタジー
王太子妃候補として、真摯に王子リオネルを愛し、支えてきたクラリス。
だが、王太子妃となるための儀式、婚礼の儀の当日、リオネルと聖女ミラによって、突如断罪され、婚約を破棄されてしまう。
原因は、教会に古くから伝わる「神託」に書かれた“災いの象徴”とは、まさにクラリスのことを指している予言であるとして告発されたためであった。
地位も名誉も奪われ、クラリスは、一人辺境へと身を寄せ、心静かに暮らしていくのだが……
これは、すべてを失った王太子妃(仮)が、己の誇りと歩みを取り戻し、歪められた“真実”と向き合うため、立ち上がる物語。
婚約破棄されたら、実はわたし聖女でした~捨てられ令嬢は神殿に迎えられ、元婚約者は断罪される~
腐ったバナナ
ファンタジー
「地味で役立たずな令嬢」――そう婚約者に笑われ、社交パーティで公開婚約破棄されたエリス。
誰も味方はいない、絶望の夜。だがそのとき、神殿の大神官が告げた。「彼女こそ真の聖女だ」と――。
一夜にして立場は逆転。かつて自分を捨てた婚約者は社交界から孤立し、失態をさらす。
傷ついた心を抱えながらも、エリスは新たな力を手に、国を救う奇跡を起こし、人々の尊敬を勝ち取っていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる