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助けてくれる人
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王城の執務室に入ると、イシステア王が部下を伴い待ち構えていた。部屋に入った瞬間に、アンセル様は口を開いていた。
「父上、今回の件は誤解なんだ」
いきなり本題に入って、弁解を始める。王子とはいえ、あまりに失礼な態度に私は驚く。待機している王の部下たちも厳しい表情を浮かべている。当然だろう。
そして、王も無表情だった。
恋によって、冷静さを欠いているアンセル様。いや、もともとコミュニケーション能力が低かったわね。だから、自分の話を優先しようとする。
今までなら、なんとかなってきた。だけど、この場では致命的な失敗だろう。
「誤解?」
「ジョスリーヌは、私を支えてくれた大事な人なんた。だから、彼女が居なくなると困る。王子としての勤めを果たせなくなるんだ。だから、彼女を罰するのを止めてほしいのです」
まだ、ヒロイン女を助けようと思っていたらしい。彼女を助けるよりも先に、自分の立場が危ういことを自覚したほうが良いと思う。彼は、何も気付いてないようね。
そのことを、誰からも指摘してもらえない。今までのツケを払わされていた。
「……お前が、それほどまでに愚かであったとは」
「ッ!?」
イシステア王が言葉を吐き出す。そして、第一王子である彼を失望した目で見ていた。
「そのジョスリーヌとかいう女に誑かされたのか。そんなことで、責務を放り出してしまうなんて」
「ち、違いますッ! ジョスリーヌの支えがあったからこそ、今まで王になるという重責を背負ってこれたのです! 彼女が居たから、私は王になるという覚悟を持てたのです!」
そんな覚悟を打ち明ける王子に、イシステア王は冷めた目を向ける。
「勝手に覚悟を決めたらしいが、それは無意味だな。お前の王位継承権を剥奪する。お前が王になることはない」
「な、なぜですかッ!?」
イシステア王の宣言に、慌てふためく元第一王子となったアンセル様。
「学園の卒業パーティーの件については既に、報告を受けて知っている。そんなことをしでかして、まだ王になれると思っていたのなら愚か者だな」
「で、ですが! 私が王にならなければ、イシステア王国は崩壊してしまう!」
なんて思い上がった発言だろうか。そんなことを考えていたとは。しかも、それをイシステア王に面と向かって告げるとは。案の定、王が激怒する。
「自惚れるなッ! お前一人が居なくなったとしても、王国が滅びることなどあり得ない!」
「私は、今まで王国を支えるために一生懸命働いてきました! それを無視する、というのですか!?」
ヒートアップする両者。だけど、圧倒的にイシステア王が正しくて、アンセル様が間違っている。
王は、激怒しながらも理性的に会話を続けた。
「確かにお前は優秀だった。しかし、一人で全て抱えていた。自分勝手に無茶して、それを重圧などと言い訳して」
「ちが、ちがう……そんなこと……」
その通りだ。能力はあるから、全て一人で問題を片付けてしまう。今まで、それでなんとかなってきた。でも、この先も続けていたら、いつか破綻していただろう。
何度も警告してきたのに、彼は私の話など聞かないでスルーし続けてきた。だから、こうなってしまったのも自業自得。哀れみなど微塵もない。
「周りの支援にも一切感謝せず、女に誑かされて責務を放棄までして……ッ!」
「支援……? ジョスリーヌのこと、ですか?」
「違うッ! お前の婚約相手だったアンジェリーク嬢のことだ!」
「……彼女が?」
私の名前を聞いて、驚いた顔をするアンセル様。やっぱり、何も分かっていなかったのね。そうだろうと思っていたけれど。
イシステア王の視線が、私の方に向いた。
「今まで、この愚かな息子を支えてくれて感謝する」
「いえ、私は何も。優秀な方々が助けてくれたので」
周りに助けてもらったのは本当だ。色々な人と良い関係を築き、助けてもらった。そして、乙女ゲームのシナリオという脅威を突破することも出来た。
なので私は、心の底から助けてくれた彼らに感謝している。
「父上、今回の件は誤解なんだ」
いきなり本題に入って、弁解を始める。王子とはいえ、あまりに失礼な態度に私は驚く。待機している王の部下たちも厳しい表情を浮かべている。当然だろう。
そして、王も無表情だった。
恋によって、冷静さを欠いているアンセル様。いや、もともとコミュニケーション能力が低かったわね。だから、自分の話を優先しようとする。
今までなら、なんとかなってきた。だけど、この場では致命的な失敗だろう。
「誤解?」
「ジョスリーヌは、私を支えてくれた大事な人なんた。だから、彼女が居なくなると困る。王子としての勤めを果たせなくなるんだ。だから、彼女を罰するのを止めてほしいのです」
まだ、ヒロイン女を助けようと思っていたらしい。彼女を助けるよりも先に、自分の立場が危ういことを自覚したほうが良いと思う。彼は、何も気付いてないようね。
そのことを、誰からも指摘してもらえない。今までのツケを払わされていた。
「……お前が、それほどまでに愚かであったとは」
「ッ!?」
イシステア王が言葉を吐き出す。そして、第一王子である彼を失望した目で見ていた。
「そのジョスリーヌとかいう女に誑かされたのか。そんなことで、責務を放り出してしまうなんて」
「ち、違いますッ! ジョスリーヌの支えがあったからこそ、今まで王になるという重責を背負ってこれたのです! 彼女が居たから、私は王になるという覚悟を持てたのです!」
そんな覚悟を打ち明ける王子に、イシステア王は冷めた目を向ける。
「勝手に覚悟を決めたらしいが、それは無意味だな。お前の王位継承権を剥奪する。お前が王になることはない」
「な、なぜですかッ!?」
イシステア王の宣言に、慌てふためく元第一王子となったアンセル様。
「学園の卒業パーティーの件については既に、報告を受けて知っている。そんなことをしでかして、まだ王になれると思っていたのなら愚か者だな」
「で、ですが! 私が王にならなければ、イシステア王国は崩壊してしまう!」
なんて思い上がった発言だろうか。そんなことを考えていたとは。しかも、それをイシステア王に面と向かって告げるとは。案の定、王が激怒する。
「自惚れるなッ! お前一人が居なくなったとしても、王国が滅びることなどあり得ない!」
「私は、今まで王国を支えるために一生懸命働いてきました! それを無視する、というのですか!?」
ヒートアップする両者。だけど、圧倒的にイシステア王が正しくて、アンセル様が間違っている。
王は、激怒しながらも理性的に会話を続けた。
「確かにお前は優秀だった。しかし、一人で全て抱えていた。自分勝手に無茶して、それを重圧などと言い訳して」
「ちが、ちがう……そんなこと……」
その通りだ。能力はあるから、全て一人で問題を片付けてしまう。今まで、それでなんとかなってきた。でも、この先も続けていたら、いつか破綻していただろう。
何度も警告してきたのに、彼は私の話など聞かないでスルーし続けてきた。だから、こうなってしまったのも自業自得。哀れみなど微塵もない。
「周りの支援にも一切感謝せず、女に誑かされて責務を放棄までして……ッ!」
「支援……? ジョスリーヌのこと、ですか?」
「違うッ! お前の婚約相手だったアンジェリーク嬢のことだ!」
「……彼女が?」
私の名前を聞いて、驚いた顔をするアンセル様。やっぱり、何も分かっていなかったのね。そうだろうと思っていたけれど。
イシステア王の視線が、私の方に向いた。
「今まで、この愚かな息子を支えてくれて感謝する」
「いえ、私は何も。優秀な方々が助けてくれたので」
周りに助けてもらったのは本当だ。色々な人と良い関係を築き、助けてもらった。そして、乙女ゲームのシナリオという脅威を突破することも出来た。
なので私は、心の底から助けてくれた彼らに感謝している。
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