乙女ゲームとは違う世界~新たな人たちと関係を築いて、私は生き残る~

キョウキョウ

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それは本当に優秀なのか

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「私は大きな過ちを犯しました。それは認めます。ですが、だからといって王位継承権を剥奪するなど酷すぎます!」

 アンセル様は、まだ認められないらしい。

 どうやら彼は今回の件について、それほど大きな問題だと認識していないらしい。ただの失敗なのに、立場を奪うなんて酷いなどと訴えている。

 どう考えたって当然の処置だろうと思うけれど。彼は現状を理解していないのね。私は彼が必死に弁解する様子を見つめながら、早く諦めれば良いのにと思っていた。

 これ以上は続けても、イシステア王の考えが変わることが無いのは明らかなのに。それも、分かっていないのか。

 黙ったまま、その様子を眺め続ける。

「それに! 私が王位を継がなければ、他の誰が王になれるのですか!? 他の誰が役目を果たせるのでしょうか?」
「それなら、ダリオンやコーネフが居る。彼らがダメなら、クレモンも居るだろう。お前以外の候補など、大勢いるぞ」

 イシステア王が第二、第三王子の名前を挙げる。彼以外にも、王位継承の候補者は多くいた。何故か目を見開いて、驚いた表情のアンセル様。

「ダリオンやコーネフなど、ダメです! 彼らでは王など務まりません! それに、クレモンなんて以ての外! 奴は、怠惰で無責任な奴です。彼らよりも、私のほうがよっぽど相応しい! 今までの働きで、それは明らかでしょう! それをなぜ父上は理解してくださらないのですか!?」

 自分以外は無能だと貶して、自分以外はありえないとアピールするアンセル様。

 そんな彼の言葉を聞いて顔をしかめるイシステア王。当然の反応だろう。理解していないのはアンセル様だけ。自分の働きが王国に貢献してきたと勘違いをしている。そう錯覚している。

「お前が考えている以上に、あの子達は優秀だぞ」
「いいえ! 私以上に優秀な者など居ません! 今まで王国を支えてきた私の働きが無くなれば、酷い未来が待ち構えていますよッ!」

 どうしても自分が優秀だと信じ込んでいるようだ。自分が居たから、王国民が穏やかで平和な日々を過ごしてきたと思っている。

 そうじゃない。

「確かにお前は現状の課題を見つけて解決する、発想力に長けている。だが、それだけ。計画を立てて、準備をして、実際に行動する。その全てを他の者達に丸投げしてきた。それなのに、成果だけは自分のものにして。そして勝手に責任を感じていた。自分勝手な悩みを一人で抱えていた」
「……」

 イシステア王の言葉を聞いて、アンセル様は黙り込む。

 その現状に気づいてはいたのかしら。それとも、思いがけない言葉に困惑しているのか。彼の考えは、やっぱり分からない。

「お前は頭も悪くない。いつか自分の問題に気づいてくれると信じてきた。だが、私の目が節穴だった。もう少し早く、ちゃんとした判断を下すべきだった。だから今、お前の王位継承権を剥奪するのだ。理解したか?」
「……」

 アンセル様はうなだれて、もう何も言わなくなった。
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