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改めて自己紹介を
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注文客に豚骨ラーメン(チャーシュー大盛り)が遅れた事を平謝りしてから、コールは再び店に戻った。時間内に届けられなければ無料というサービスのため、ポカをやらかした場合は給料から差っ引かれる。今回ついでにチャーハンまで付いてたのは間違いなくあの娘の件だだろう。
裏口から入ると、バックヤードには頭からタオルを被り、コールの服を着た彼女がいた。ぶかぶかの手足を折り曲げているのが、思わず叫びながら転がりたくなるほどに可愛い。スカート捲りまでしておいて何だが、あの時は強姦一歩手前なのを見せられて気が動転していたのだ。
「この服、お借りしているわ」
「うん……いや、いいんだけど。お袋のは借りなかったのか?」
(開口一番、臭いだの汚いだのって風呂に放り込んでたからな。森で数日彷徨ってたっぽいし、そこはしょうがないんだけど)
「あんな無礼な中年女性と同じものに袖を通すぐらいなら、裸の方がマシだと言ったら、こっちと好きな方選べと」
(俺のはいいのか? と言うか下着は……)
どうでもいいが、コールとしては物凄く気になる。普段着慣れてる自分の服だけに、女の子らしいラインが際立って落ち着かない。
「勝手に連れてきておいて何だけど、家主は俺じゃないんだから事を荒立てないでくれ」
「分かっております……迷惑をかける前に出て行くつもりですので」
「どこに?」
「……」
行くあてがあるのなら、山賊に襲われるまで小屋でままごとなんてしていないだろう。むすっとして黙り込んだ彼女だったが、グーッと腹の虫が鳴いて顔が真っ赤になる。何日も食べず空腹に慣れてしまっても、ここは飯屋だ。直に食べられると判断して体も安心したんだろう。
「俺も、腹減ったな」
「店主が賄いをご馳走してくれると言うので、ここで待っていたのですわ……ところで」
コールがおかもちを開けると、怪訝な顔をされる。中からあの小鳥……ナイチンゲールが出てきたのだ。今回戻る時についてきたがっていたので結局連れてきてしまったが、本当は不衛生だから内緒だ。
「こいつ、あんたの事心配してたみたいだからさ。店の中飛び回られたり糞されても困るから見ておいてくれよ」
「すぐ死ぬんだから、責任持てませんわよ」
「すぐったって、今日明日じゃねえだろ。いいじゃん、こいつのおかげで俺が助けに行けたんだし、恩を返すと思ってさ」
そう言って肩に載せてやれば、嫌そうにしながらも振り払わなかった。ナイチンゲールは父が賄い飯を持ってくるまで、『かわいいオーガスティン』を歌っていた。割と賢いみたいで母には気に入られていたが、きちんと鳥籠に入れておく事を約束させられた。
「ほら、冷める前に食え」
「サンキュー、親父」
丼鉢を二人分持ってきた父は、テーブルに置くと、突っ立ったままの彼女の頭をタオルでガシガシ拭く。いきなりの不躾な行為に、抗議の声が上がった。
「何しますの!? 無礼だわ」
「濡れたまんまじゃ風邪引くだろ。あと食う前に髪はまとめとけ」
睨み付けられてもどこ吹く風で、父はタオルをちゃちゃっと髪に巻き付けた。金髪が全て収納されてしまったが、こめかみやうなじから覗く解れ毛が色っぽい。
「これは、何ですの?」
「ラーメンだよ」
父がさっさと引っ込んでしまったので、コールが後を引き継いで疑問に答える。ラーメンなんて、見るのも食べるのも初めてなのだろう。フォークはないのかと聞かれて箸と蓮華の使い方を教えてやる。
「早く食わねえと、伸びるぞ」
「伸びる……??」
「麺が汁を吸って膨張するんだ。あんまり旨くないから、さっさと食うに限る」
戸惑う彼女を椅子に座らせ、「いただきます」と手を合わせると、お手本とばかりにズズーッと豪快に啜り、丼を傾けてスープを飲む。彼女ほどではないがコールも空腹だったので、ようやく人心地つける事ができた。ふと視線を感じると、信じられないといった表情を向けられていた。
「なんてお行儀の悪い……麺を音を立てて啜るなんて!」
「はあ? ここじゃこれが普通だ」
「これだって、使っていないじゃありませんか!」
蓮華を振りかざされ、コールは頭を掻いて困惑する。ここは冒険者などの荒くれ者が立ち寄る店だ。初めての客は大抵紹介者と共に来店するので、食べ方もレクチャーされる。確かに麺を啜る習慣は馴染みのないものだが、ラーメンに限ってはそれが許される……と父に聞いた。
説明を聞いても、彼女は納得いかないようで頬を膨らませている。
「まあ、好きに食えばいいさ。麺だって絶対啜らなきゃいけない決まりもないし」
「そうさせていただきます……あら!」
蓮華でお上品にスープを掬って飲んだ彼女の表情が変わる。ラーメン初心者が見せるこの反応が、コールは好きだった。今日の賄いは店で一番人気の……そしてコールが彼女を助けるためにダメにしたラーメンだ。
「おいしい……クリーミーで未知な味わいね。これは何のスープかしら?」
「豚骨。豚の骨を煮込んで出汁を取ったものだよ」
「豚……」
珍しい食材は魔法陣を使って世界中から仕入れているが、家畜や手頃な野菜は村人から買い取っている。まだまだ得体の知れないラーメン店ではあるけれど、近所付き合いは大事にして信頼関係を築いておけと、常日頃から言われてきた。
「その豚も、愛情持って育てられてきたのを見てる。だから旨いラーメンにして全部食うってのが俺たちなりの礼儀なのさ」
「先ほどの『いただきます』も、命をいただくという意味なのね? ……豚飼いなんて卑しい職業だと思ってたけれど、豚がこんなにもおいしい料理の材料になるのなら、飼育するのは尊い事だわ」
何か豚飼いに因縁でもあるのか、しみじみ呟くと少女は改めてスープを味わった。
「そう言やお互い、まだ名乗ってなかったよな」
今更な事実に気付きながらも、コールは替え玉を追加するために席を立つ。一方、彼女の方は音を立てずに食べようとするため、伸び始めた麺と今なお格闘中だ。
「このお店の事ならあなたが出かけている間に聞きましたわ。ラーメン屋【煉獄】――店主が御父上の『グルタ=パガトリー』様で、先ほどの口うるさ……奥様が『マクル』様だと。
そしてあなたが跡継ぎで御子息の、『コール』様」
「そんな大層なもんじゃねえよ。あんたから見りゃただの平民さ」
様付けで呼ばれると何だかくすぐったい。実際にはうちはただの平民ではないのかもしれないが、あくまで役所に登録された情報に従えば間違ってはいない。
「わたくしから、って……」
「その振る舞いから言って、どう考えても貴族令嬢だろ。なんで森で彷徨ってたのかは知らないが」
獰猛な獣や山賊が出没する危険な森を、世間知らずなお嬢様が護衛も荷物も持たずにうろつくなんて自殺行為だ。恐らく何らかの処罰により追放されたのだとは思うが……関わるべきではなかったのかもしれない。
(でも、こんな可愛い子が何も知らないまま賊に襲われて死ぬなんて、ほっとけないよなぁ)
驚くべき技術であっても玩具を後生大事に持ち歩く無垢さにも危うさを感じる。だが無知は罪とは言え、それは命をもってして償うべきものだろうか? そこを一介のラーメン屋が判断していいものかは不明だが、少なくとも保護した以上は知る権利があるように思えた。
コールが指摘してから無言で箸を進めていた少女だったが、麺を完食した後は覚悟を決めたようで、教わった通りに「ご馳走様でした」と手を合わせる。コールはそれに軽く応えつつも、二杯目に手を付けた。
「そうですわね……お世話になったのですから、わたくしの素性はお話しておくべきです。その上でどう対処されようとも受け入れましょう」
「んな固くなるなって。あんたからすれば平民ってのは住む世界が違うだろうが、旨いもんを旨いと思えるのは人類共通のはずだぜ」
軽口を叩くと少女から緊張感が抜け、クスクス笑われた。口元に手をやる慎ましやかな笑い方にドキリとする。こいつはもしかして、かなり高位の貴族なのでは……と思いつつ、照れ隠しにスープを飲み干そうとする。
「確かにラーメンは絶品でした。だからこそ、あなたたちを信用するのです。
改めて自己紹介を……わたくしはドラコニア帝国第一皇女、カトリシア=フォン=ドラコニアと申します」
ブーッ!!
思わぬ正体に、口に含んだスープを噴き出してしまった。
(帝国の姫様じゃねーか!!)
平民の自分は直接見た事はおろか、帝都で出回っている肖像画すら知らないので気付けなかった。だが、あり得ない……どうして皇帝が溺愛している皇女殿下が森に!?
何の冗談だと笑い飛ばしてやりたいが、あまりにも大真面目な様子はとても演技しているようには見えない。とりあえず本物かどうかはさておき、事情を聞いてみる事にした。
裏口から入ると、バックヤードには頭からタオルを被り、コールの服を着た彼女がいた。ぶかぶかの手足を折り曲げているのが、思わず叫びながら転がりたくなるほどに可愛い。スカート捲りまでしておいて何だが、あの時は強姦一歩手前なのを見せられて気が動転していたのだ。
「この服、お借りしているわ」
「うん……いや、いいんだけど。お袋のは借りなかったのか?」
(開口一番、臭いだの汚いだのって風呂に放り込んでたからな。森で数日彷徨ってたっぽいし、そこはしょうがないんだけど)
「あんな無礼な中年女性と同じものに袖を通すぐらいなら、裸の方がマシだと言ったら、こっちと好きな方選べと」
(俺のはいいのか? と言うか下着は……)
どうでもいいが、コールとしては物凄く気になる。普段着慣れてる自分の服だけに、女の子らしいラインが際立って落ち着かない。
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「分かっております……迷惑をかける前に出て行くつもりですので」
「どこに?」
「……」
行くあてがあるのなら、山賊に襲われるまで小屋でままごとなんてしていないだろう。むすっとして黙り込んだ彼女だったが、グーッと腹の虫が鳴いて顔が真っ赤になる。何日も食べず空腹に慣れてしまっても、ここは飯屋だ。直に食べられると判断して体も安心したんだろう。
「俺も、腹減ったな」
「店主が賄いをご馳走してくれると言うので、ここで待っていたのですわ……ところで」
コールがおかもちを開けると、怪訝な顔をされる。中からあの小鳥……ナイチンゲールが出てきたのだ。今回戻る時についてきたがっていたので結局連れてきてしまったが、本当は不衛生だから内緒だ。
「こいつ、あんたの事心配してたみたいだからさ。店の中飛び回られたり糞されても困るから見ておいてくれよ」
「すぐ死ぬんだから、責任持てませんわよ」
「すぐったって、今日明日じゃねえだろ。いいじゃん、こいつのおかげで俺が助けに行けたんだし、恩を返すと思ってさ」
そう言って肩に載せてやれば、嫌そうにしながらも振り払わなかった。ナイチンゲールは父が賄い飯を持ってくるまで、『かわいいオーガスティン』を歌っていた。割と賢いみたいで母には気に入られていたが、きちんと鳥籠に入れておく事を約束させられた。
「ほら、冷める前に食え」
「サンキュー、親父」
丼鉢を二人分持ってきた父は、テーブルに置くと、突っ立ったままの彼女の頭をタオルでガシガシ拭く。いきなりの不躾な行為に、抗議の声が上がった。
「何しますの!? 無礼だわ」
「濡れたまんまじゃ風邪引くだろ。あと食う前に髪はまとめとけ」
睨み付けられてもどこ吹く風で、父はタオルをちゃちゃっと髪に巻き付けた。金髪が全て収納されてしまったが、こめかみやうなじから覗く解れ毛が色っぽい。
「これは、何ですの?」
「ラーメンだよ」
父がさっさと引っ込んでしまったので、コールが後を引き継いで疑問に答える。ラーメンなんて、見るのも食べるのも初めてなのだろう。フォークはないのかと聞かれて箸と蓮華の使い方を教えてやる。
「早く食わねえと、伸びるぞ」
「伸びる……??」
「麺が汁を吸って膨張するんだ。あんまり旨くないから、さっさと食うに限る」
戸惑う彼女を椅子に座らせ、「いただきます」と手を合わせると、お手本とばかりにズズーッと豪快に啜り、丼を傾けてスープを飲む。彼女ほどではないがコールも空腹だったので、ようやく人心地つける事ができた。ふと視線を感じると、信じられないといった表情を向けられていた。
「なんてお行儀の悪い……麺を音を立てて啜るなんて!」
「はあ? ここじゃこれが普通だ」
「これだって、使っていないじゃありませんか!」
蓮華を振りかざされ、コールは頭を掻いて困惑する。ここは冒険者などの荒くれ者が立ち寄る店だ。初めての客は大抵紹介者と共に来店するので、食べ方もレクチャーされる。確かに麺を啜る習慣は馴染みのないものだが、ラーメンに限ってはそれが許される……と父に聞いた。
説明を聞いても、彼女は納得いかないようで頬を膨らませている。
「まあ、好きに食えばいいさ。麺だって絶対啜らなきゃいけない決まりもないし」
「そうさせていただきます……あら!」
蓮華でお上品にスープを掬って飲んだ彼女の表情が変わる。ラーメン初心者が見せるこの反応が、コールは好きだった。今日の賄いは店で一番人気の……そしてコールが彼女を助けるためにダメにしたラーメンだ。
「おいしい……クリーミーで未知な味わいね。これは何のスープかしら?」
「豚骨。豚の骨を煮込んで出汁を取ったものだよ」
「豚……」
珍しい食材は魔法陣を使って世界中から仕入れているが、家畜や手頃な野菜は村人から買い取っている。まだまだ得体の知れないラーメン店ではあるけれど、近所付き合いは大事にして信頼関係を築いておけと、常日頃から言われてきた。
「その豚も、愛情持って育てられてきたのを見てる。だから旨いラーメンにして全部食うってのが俺たちなりの礼儀なのさ」
「先ほどの『いただきます』も、命をいただくという意味なのね? ……豚飼いなんて卑しい職業だと思ってたけれど、豚がこんなにもおいしい料理の材料になるのなら、飼育するのは尊い事だわ」
何か豚飼いに因縁でもあるのか、しみじみ呟くと少女は改めてスープを味わった。
「そう言やお互い、まだ名乗ってなかったよな」
今更な事実に気付きながらも、コールは替え玉を追加するために席を立つ。一方、彼女の方は音を立てずに食べようとするため、伸び始めた麺と今なお格闘中だ。
「このお店の事ならあなたが出かけている間に聞きましたわ。ラーメン屋【煉獄】――店主が御父上の『グルタ=パガトリー』様で、先ほどの口うるさ……奥様が『マクル』様だと。
そしてあなたが跡継ぎで御子息の、『コール』様」
「そんな大層なもんじゃねえよ。あんたから見りゃただの平民さ」
様付けで呼ばれると何だかくすぐったい。実際にはうちはただの平民ではないのかもしれないが、あくまで役所に登録された情報に従えば間違ってはいない。
「わたくしから、って……」
「その振る舞いから言って、どう考えても貴族令嬢だろ。なんで森で彷徨ってたのかは知らないが」
獰猛な獣や山賊が出没する危険な森を、世間知らずなお嬢様が護衛も荷物も持たずにうろつくなんて自殺行為だ。恐らく何らかの処罰により追放されたのだとは思うが……関わるべきではなかったのかもしれない。
(でも、こんな可愛い子が何も知らないまま賊に襲われて死ぬなんて、ほっとけないよなぁ)
驚くべき技術であっても玩具を後生大事に持ち歩く無垢さにも危うさを感じる。だが無知は罪とは言え、それは命をもってして償うべきものだろうか? そこを一介のラーメン屋が判断していいものかは不明だが、少なくとも保護した以上は知る権利があるように思えた。
コールが指摘してから無言で箸を進めていた少女だったが、麺を完食した後は覚悟を決めたようで、教わった通りに「ご馳走様でした」と手を合わせる。コールはそれに軽く応えつつも、二杯目に手を付けた。
「そうですわね……お世話になったのですから、わたくしの素性はお話しておくべきです。その上でどう対処されようとも受け入れましょう」
「んな固くなるなって。あんたからすれば平民ってのは住む世界が違うだろうが、旨いもんを旨いと思えるのは人類共通のはずだぜ」
軽口を叩くと少女から緊張感が抜け、クスクス笑われた。口元に手をやる慎ましやかな笑い方にドキリとする。こいつはもしかして、かなり高位の貴族なのでは……と思いつつ、照れ隠しにスープを飲み干そうとする。
「確かにラーメンは絶品でした。だからこそ、あなたたちを信用するのです。
改めて自己紹介を……わたくしはドラコニア帝国第一皇女、カトリシア=フォン=ドラコニアと申します」
ブーッ!!
思わぬ正体に、口に含んだスープを噴き出してしまった。
(帝国の姫様じゃねーか!!)
平民の自分は直接見た事はおろか、帝都で出回っている肖像画すら知らないので気付けなかった。だが、あり得ない……どうして皇帝が溺愛している皇女殿下が森に!?
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