うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo

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第1章 中立自由都市エラリア

爽やかイケメンとくれば、基本超いい人かクズなようです

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僕達に声をかけてきた青年。
彼を見て思うことは、素直にカッコイイ。
いや、転生した僕だって見た目はそんなに悪くない⋯⋯と思いたい。
だけど、目の前に立つ彼は明らかに現世では、トップモデルクラスだ。

栗色の髪に、彫りのある整った甘いマスク。
細身の長身だが、その右手には体躯に似合わない2メートル程の槍を携えている。
機動を重視した防具は、傍目にも高級感が溢れており、合わせて機能美も兼ね備えていた。

その、彼の後ろに控えるメンバーも一目でその質の高さが見て取れる。
しっかりした装備に、鍛えられた肉体。
魔法使いなのだろうか?後ろに控える数名の女性メンバーは誰もが美女揃いで、町を歩くだけで皆が振り向くだろう。

ま、僕はイスカが世界で1番可愛いと思っているから問題ないけどね。

「やぁ、ベス。もう一回聞かせてくれよ。誰がこの町を守るって?」

涼やかな声は、言葉の内容が悪くなければ心地よいものに聞こえただろう。
しかし、発せられる言葉を聞いた瞬間に僕は確信する。

あ、これはクズタイプのイケメンだと。

つまり残念なイケメン。それに付き従う彼らも、きっと人間性において残念なんだ。

うん、日本ならラブラブ結婚会見した数年後に、スキャンダルでなんとか砲をぶち込まれることだろう。



しかし、ベスと青年の確執はそれなりに深いものがあるようだ。



「この町を守るのは、僕達!それと、他のギルドメンバーだ。力不足でお払い箱になった君に、この町を守るなんて豪語する資格なんてあるのかい?」



あからさまな挑発。しかし、その挑発を受けてもベスは言い返さないどころか、視線を反らして歯を固く噛みしめるだけだ。



「ふん、言い返さないのか。この僕、ミュラーが率いるエラリアが誇るA級パーティー『城壁の守護者』の元リーダー様のくせにね」



クスクスと、ミュラーの後ろに控える団員たちから嘲笑の笑いが沸き起こる。



「俺を馬鹿にしている暇があったら、ワイバーンに備えろよ」



ようやくベスは苦々しい声で反論する。

ベスの言葉を聞いたミュラーは、キザな動きで髪をかき上げると手をヒラヒラとさせた。



「君みたいな負け犬に言われなくてもそうさせてもらうよ」



ミュラーはそう告げると、作戦を練りあげている他のパーティーが密集する場所まで歩を進めると、凛とした声を張り上げた。



「聞いてくれ、みんな!皆も聞いている通り、このエラリアにはワイバーンの群れが近づいてきている。我ら『城壁の守護者』は、この恐るべき驚異から町を守るべく、力の限り戦う所存だ!」



さすがA級パーティー、他の冒険者を前にしての演説は堂に入っているものがあり、堂々としている。



「そこで、皆にも協力を仰ぎたい!我々には強大な魔法を使えるメンバーが揃っている。──しかしだ!彼女達の魔法は強大でも術式を展開するためには相応の時間を要する。そこで、皆にはなるべく前線でワイバーンの注意を引きつつ、可能な限り弱らせてもらいたい。我らでこの美しい町を、自由と平和を愛する町を守るのだ!!」



うぉぉぉっ!!



冒険者達の地鳴りのような歓声が響く。

冒険者達の反応を見る限り、その実力は折り紙つきのものなのだろう。

ただ、何なのだろう。

この嫌な感じは。



なんとなく首がムズムズするような不快感を感じて僕は首を掻いた。



「はぁ、仕方ないか。俺よりもあいつがリーダーの方がパーティーもうまく回るもんな」



「ユズキさん。私達もミュラーさん達を助けるように頑張りましょう!」



ミュラーの堂々とした演説を聞いたベスは争うことをやめ、イスカも感化されてしまっているようだ。



確かに、さっきの演説は味方を鼓舞するにはピッタリだと僕も感じる。でも、そこにモヤモヤとする違和感が残っているのも事実だった。



「よし!俺達はなるべくワイバーンを弱らせるために前に出るぞ!」



幾人かのパーティーが、装備を整えると慌ただしく城門を超えて堀にかかる橋を渡っていく。

弓や魔法を得意とするメンバーは、どうやら視界を確保しやすい城壁の上へと上がっていくようだ。



さて、僕達はどこに行くべきか。

僕だけの戦闘力であれば、戦いに参加するためには前方に出た方がいいかもしれない。だけど、イスカを伴うとなれば無茶をすることはできない。

イスカのレベルは『レベル譲渡』によって14まで引き上げられているはずだ。



「イスカ、レベルを確認したいけどいいかな」



僕の問いにイスカは頷く。



「はい!いくつかスキルも覚えたので役に立てると思いますよ」



胸の前で小さくガッツポーズを取りながら、ドヤ顔で耳をピコピコとさせる動きは、可愛いことこの上ない。



さて、スキルはと。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





イスカ



種族:エルフクォーター



性別:女



年齢:25



レベル:14



職業:魔法剣士



スキル:『生活魔法』、『薬草学』、『危険察知』、『初級魔法』、『魔法矢マジックアロー』、『魔力付与マジックエンチャント』、『魔力障壁』、『重攻撃ヘビースラッシュ』、『剣舞踊ソードロンド』、『加速』





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





僕はイスカの職業が村人から魔法剣士へと変わっていることに気付く。

どうやら、転職のために特別な儀式が必要になるというわけではないのだろうか。



スキルを確認すると、やはりというべきか遠距離攻撃を行うためには魔法に頼るしかなさそうだ。

そして、僕はというとパーティーの強化には適しているが、これまた遠距離攻撃を持っているわけでもなく、魔法を使って飛行する相手を狙うことも難しい。跳躍してワイバーンを叩き落とすことも可能だが、避けられると効率も悪い。



「僕達は安全を取って城壁に行こう。広い場所は動き回るのにはいいけど、一斉に襲われたらカバーが難しいから」



僕の提案にイスカも同意する。



「分かりました。上に上がったら試しに魔法を使っても良いですか?実践前に実力を見ておきたいです」



勿論、初の実践で魔法を使うことはリスクが大きい。

魔力譲渡のスキルを持っている僕がいれば、一通りスキルを試すこともできるだろう。



僕達が歩きだそうと城壁に向かおうとしたが、その歩みは後ろからかかるミュラーの声によって止められることとなった。



「あれ?そこの君たちは見ない顔だけど。新入りかい?」



あまり声はかけられたくないが、無視をするわけにはいかない。



「はい、僕達は城壁でお手伝いしようかと」



余り気のない返事の僕に、ミュラーはふぅんと呟くと僕よりもイスカの方をジロジロと見つめ始めた。

これだけで気分が悪いのだが、そこはこの町のA級パーティーが相手だ。

新人の僕達が争ったところで良いことはない。

できれば、このまま去っていってほしいのだけど⋯⋯



僕の思いも虚しく、ミュラーはニヤニヤと僕の顔を見ると笑った。



「ふぅん。エルフのクォーターといえども見た目だけはなかなかだな。そんな彼女をわざわざパーティーに組むなんて、君も見た目に惹かれた口なのかい」



いきなり、僕の怒りを買うようなことを告げてくる。



「見た目に惹かれていることは否定しないけど、そこだけにしか興味のなさそうな貴方と僕は違う」



棘のある言葉を、新入りが生意気に言ったものなのだから、それはもうミュラーの顔はみるみるうちに不機嫌になる。



「新入りが調子に乗るもんじゃない。そうだ、そんなに血気盛んなら前線に出て彼女に良いところでも見せたらどうだ」





じりり



まただ。首元に忍び寄る不快感。

ムズムズとして、僕はまた首を掻く。



「──ほら早く、前に行ってワイバーンと戦ってこい。そうすれば、君はこの町を守る英雄の一員になれるんだぞ」



何故か苛ついたようにミュラーは声をかけてくる。

なんだ、それは。確かにミュラー達は力のあるパーティーなのだろう。そのリーダーが、新人に対して前線に行けということ自体に違和感を感じる。



「くっ、経験ある僕がこんなに提案してあげているのに動かないなんて。こんな偏屈なやつが相手だと、君も疲れるだろう。名前はなんていうんだい?」



こんな奴に答える必要はない!

そう心の中で思うが、イスカはミュラーに怯える風もなく容易く口を開いた。



「⋯⋯イスカです」



その言葉を聞いて、ミュラーはニヤリと笑う。



「イスカ、君のパートナーは頑固で物わかりが悪い。そんなやつと一緒にいることはない。そうだ!僕達のパーティーに来たらどうだい?僕達なら、君のことをしっかりとフォローしてあげられる。それが、君にとっても最善の道であるはずなんだ」



よくもまぁ、僕の前でこんなにも口を開けるものだ。

わざわざ、エルフクォーターであることを下に見る発言をしたやつにイスカが気を許すはずがない。



僕はそう高を括ったが、イスカは何故か少し戸惑っているように見える。



じりり



また首の後ろがむず痒くなる。

そう自覚した時、突然頭にセラ様AIの声が響き渡った。



『警告、スキル攻撃を受けています。一定間攻撃を受けたことによりスキル『解析』を使用できるようになりました。また、敵の攻撃に対応するため、『能力値譲渡』ができるようになりました』



スキル攻撃!



セラ様AIの声に僕は急いで、『解析』をイスカにかける。



「──!」



僕の網膜にイスカの状態が投影される。

そこには驚くべきことが書かれていた。





【状態異常】 『懐柔』





慌てる心を抑えつつ、『懐柔』について詳しく検索をかけてみる。





『懐柔』:対象の心に働きかけ、意思を誘導することができる。また、回数を重ねるごとに対象の意思を奪い、隷属させることができる。対象が正気を取り戻すと、2度とスキルをかけることはできない。



これだ!

僕は、ベスやイスカの反応と、自分に感じた不快感の正体を知る。



「ベスさん!イスカ!」



僕の突然の大声に、二人ともビクッと身体を震わせる。

ミュラーが怪訝な顔をするが、それは無視だ。

僕は脳内でセラ様AIが促すままにスキルを使う。



『抵抗値譲渡!』



覚えたてのスキルである能力値の譲渡。

僕のスキルでは、状態異常を治すことはできなない。

それならば、ミュラーのスキルが効かないくらいに抵抗値を上げてしまえばいい。



相変わらず、レベルのおかげか体内から力が抜けていく感覚はほんの少し。

僕の右手から青い光が放たれると、ベスとイスカを覆う。



「⋯⋯私が貴方のパーティーに参加することはありません!特にクォーターであることを下に見てる貴方の所なんて御免です!」



「なんで、俺はミュラーの考えが1番だと思ったんだ?おい、ミュラー。そのやり方だとお前のパーティー以外に甚大な被害が出るぞ!」



憑物が落ちたかのように、イスカはしっかりと拒絶の意思を示し、ベスも先程のミュラーの作戦に異を唱える。

ベスの状態までは確認していなかったが、やはり先の不可解な言動が直ったことを考えると、ミュラーのスキルによる攻撃を受けていたのだろう。



「な、なんだ!お前らいきなり」



いきなり、スキルが解除されたことに焦ったミュラーが驚愕する。



「おい!お前先程何か魔法を使っただろう!それで、お前はこいつらを洗脳したんだな!」



言いがかりも甚だしい。しかし、得てしてクズなやつは自分の悪事を他人になすりつけようとする。

だけど、僕だって善人ではない。やられたら、そりゃあやり返したくもなる。

特にイスカに対する仕打ちは、僕の逆鱗に触れた。



「洗脳なんて言いがかりだ。長年ベスさんや皆を『懐柔』してきたんだろ。そっちの方が質が悪いよ」



僕の『懐柔』というスキル名をあげたことで、明らかにミュラーの挙動は怪しくなる。



「で、デタラメだ!おい、誰かこいつを取り押さえろ!A級パーティーの言うことに異を唱えるなんて、僕達の輪を乱そうとしているぞ!」



ミュラーが、明らかに僕を排除しようと懐柔の状態異常がかかった仲間たちに声をかける。



「あぁ、勿論だ!」

「ミュラー様の言うことを聞かない不届き者は、制裁が必要ですわ」



『解析』のスキルを持つ僕の目に映るのは、『懐柔』『懐柔』『懐柔』⋯⋯と、もう目に映るギルドメンバーが全員、状態異常を掲げているのだから恐ろしい。



まさか、町全体にスキルを⋯⋯?



嫌な予感が本当であるならば、恐るべき能力だ。

でも、僕にだって付け入る隙はある。



『セラ様AI』



僕は答えてくれると信じて脳内のセラ様AIに話しかける。



『なんでしょう?』



程なく返事が来る。



『正気に戻った二人から抵抗値を回収して、皆が正気に戻るだけの抵抗値を自動オートで割り振ることはできる?』



一見無茶な問いに、セラ様AIは当然といったように自信に満ちた声をかけてくれる。



『勿論です。正気に戻った対象から抵抗値を回収し、再び『懐柔』を受けている人物に抵抗値を譲渡しましょう。私の計算では3分程でギルドメンバー及び町民に対する『懐柔』状態を取り除くことができると予測されます』



勿論OKだ。



「フハハッ、これでお前達も終わりだよ。A級パーティーやギルドメンバー全員を『解呪ディスペル』することはできないだろう!」



高らかに、勝利を確信するミュラーに対して、正気に戻ったベスとイスカが身構える。



おっと、ミュラーよ。僕のスキルは『解呪ディスペル』のような高尚なものじゃないぞ。

喰らってしまうなら、喰らわないくらいレベルや能力をあげてしまえばいいという。

レベルを上げて物理で殴るの防御バージョンだ。



「なんだ!?俺はなんかミュラーのスキルを食らってたのか?」



「何故、あの人の言う言葉が心地よいと思ったのか。吐き気がします!」



ジリジリと僕らの周りに包囲網が形成されつつある。

しかし、僕は慌てることなく右手に魔力を集中する。



「『抵抗値譲渡』!!」



高らかに叫び右手を掲げる。

青い軌跡が奔流となり、天に駆け上がる。

その光の軌跡に、イスカやベスは勿論、周囲に迫るギルドメンバー、ミュラーだけでなく、技を出した本人である僕自身絶句する。



身体の中、例えるなら手首から先が鉛を着けられたかのように、力が他者へ譲渡される感覚が伝わってくる。

青い光の柱はおよそ100メートル空中へ駆け上ると、パッと分かたれ光の矢となって地上に降り注いだ。



「くっ!」

「カッ!」

「ハッ!」



光が地上のギルドメンバーを貫くと、皆一様に一瞬動きを止める。

その後、光は再び彼らの体内から抜け出すと今や球状となって遥か頭上に輝く青い球へと戻っていった。

降り注ぐ光は、人を貫き正気へと戻すと再び次のターゲットを探して球へ還っていく。



「なんで俺は、前線に出ようとしたんだ?」

「おい、A級パーティーというならお前たちこそ前に出るべきじゃないか?」

「ワイバーンの前に出るなんて自殺行為だ!俺はごめんだ」

「いやっ!死にたくない!」



皆正気に戻っていくが、それが絶対的に良かったとは言えない状況だ。

なぜなら、ミュラーの言葉に盲目的に従っていたためか、ギルドのメンバー達は本来やりたくもない配置にも文句を言わずに従っていた。しかし、その洗脳状態が解かれることは、一種のパニック状態を引き起こしてしまっていた。



特に、ミュラーの率いるパーティー『城壁の守護者』にかかっていた状態異常が解かれると、その結果は酷いものだった。



ある者は頭を抱え、ある者は後悔の念でもあるのか涙を流した。女性メンバーは自分の身体を抱きしめると、羞恥の念に駆られたのかその場にうずくまってしまう。

ミュラーがパーティーに対して行わせてきたことが、正気に戻ったことでパーティーの団員たちに自責の念を生ませているのだ。



やりすぎてしまったか?



これから控えるワイバーンとの戦闘を考えると、無用な混乱を与えてしまっただけではないのか?

僕自身後悔の念が頭をもたげる。



そんな僕の肩をポンと叩く人物がいた。

ベスだ。



「ありがとな」



彼はそう小さく僕の耳に声をかけると、ズイと前へ出た。

そこには、ミュラーの言葉に卑屈になっていた姿はない。

背筋はシャンと伸び、気迫が漲っている。



「聞け!これよりワイバーン討伐は、このベスが指揮を執る!!『城壁の守護者』の団員には暫定的に俺の指揮下に入ってもらう!」



ミュラーの声とは異なり、ビリビリと肌を焦がすような熱気。その熱量がベスの声には宿っていた。



こうして、僕達のエラリア防衛戦は始まるのだった。
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