うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo

文字の大きさ
73 / 166
第3章 城壁都市ウォール

女神様がついてくるようです

しおりを挟む
「はぁっ、落ち着きますぅ」

 女神様であるセラ様と、思いもよらず再会した後、僕達はセラ様を連れて宿屋へと戻ってきていた。
 時間はまだ深夜で夜明けは遠い。

 小ぢんまりとした室内に、ちろちろと揺らめくあまり質の良くない光源の元、ちょこんと椅子に腰掛ける少女の姿をしている女性が、まさか創造神であるとは誰も信じないだろう。
 そんなセラ様は、温めた白湯を一口飲み込むと、緊張から解かれ安堵したように相貌を崩した。

「それにしても⋯⋯宿って窓から入るんですね!初めて知りました!」

 人3人がいるだけで、窮屈感を感じさせてしまう室内。
 それなりにベッドは大きい物が2つ並んでいるのだが、それは身体の大きな魔族に対応するための物なのだろう。
 しかし、肝心の部屋の広さは大きなものでないため、ベッドが2つ占拠するだけで、かなりの窮屈感を感じてしまう。

「えっと、セラ様⋯⋯決して宿というものは窓から入るものではなくてですね──」

 寝間着姿で窓から飛び出して行った僕達だ。
 玄関から入るのも憚られたため、仕方なく跳躍して窓から室内に戻ったのだが、苦肉の策を普通のことと信じられてしまうと困ってしまう。
 身振り手振りで説明しているイスカだが、僕はその間にセラ様に下った処遇について考えてしまう。

 本当に、人族一生分を自分の世界で過ごすことになる?
 勿論、セラ様のクシャミが膨大な力を含み、様々な影響を与えていた事は事実だろう。
 何しろ、僕という一人の人生を壊してしまったことと、アマラ様の世界のスキルを僕に付与してしまったことだ。
 それが、かなりの大事というのであれば、何かしらの罰が降っても仕方がない。
 しかし、その処分の内容がこれだとすると、その関連性には疑問が残った。

「セラ様?」

 僕はようやく、宿には玄関から入るということを説明し終えたイスカのタイミングを見計らって、セラ様に声をかけた。

「どうしました?」

 僕は小首を傾げるセラ様の前に跪く。

「かしこまらないで下さい。ここでは、身体は人族。王族でもないのですから、横に座って下さい」

 セラ様の背中の翼は消えていた。
 聞いたところ、自由に出し入れできるそうだ。

 少し緊張してしまうが、僕は言われるがままに椅子に座るセラ様の横。ベッドに腰をかける。イスカにも座るよう促して、僕とイスカは隣り合うように座った。

「あの、不敬でなければ聞いてもよいでしょうか?何故処分が人族の一生を下界で過ごすことに決まったのですか?」

 僕の質問に、セラ様は少し慌てたように頬を赤く染めた。

「え、えっとぉ。ほら、私って少し常識がないじゃないですか」

 うん、それは分かった気がする。

「勿論、私が新米すぎる神であることもあるのですが、私の力は余りにも影響が強いらしくて⋯⋯今回のことは、力の制御ができていない状態で神界にいることは危険だと。下界へと降りて、自分の力の影響が世界にどのような影響を与えるのかを知り、力を制御する術を学ぶこと。あと、信仰の対象であるのだから、この世界の営みを学んでこいという判断みたいです」

 うーん。でも、それなら何故セラ様は地球にも干渉していたのだろうか?
 初めてお会いした時は神様達が地球は共同で管理していると言っていた気がするけど⋯⋯。
 僕が頭でそんなことを考えていたが、セラ様は僕の顔を見ると自虐的な笑みを浮かべた。

「実は、この世界に降り立つ前にこの身体に入ったとき、色々と制約を受けていまして。実は思考を読む力は封印されているのです。曰く──、神の力に頼ることなく、相手の考えていることを読み取る機微を身に付けろと。ですので、まだまだ察することが苦手なので、お考えは口に出して頂けると助かります。あ、でも!ちゃんとユズキさんが何を考えているか、察することができるように努力しますから!」

 最後は力強く言い放つセラ様。
 まぁ、察することと内容を言い当てることは、必ずしも一致はしないのだけど、セラ様にとっては人の思考を推し量りたいというのは、この世界に降ろされた目的と合致はしている。

「分かりました」

 僕は次の言葉を続けようとしたが、その言葉は人差し指を突き出し、少し頬を膨らませたセラ様によって遮られた。

「ここでは、女神はお休みです。二人共敬語はなしにしてください」

「そ、そんな!女神様に対してできないです!」

 イスカが慌てたように、立ち上がる。
 そりゃそうだ、この世界を創った神様に対等に接しようというものなら、僕の前世でも地域や場所によったら不敬罪で吊るし上げられかねない。

 ──だけど

「分かった。よろしく、えーっと、セラさん?」

「セラ。で、いいですよ。ユズキさん」

 隣でイスカが絶句した顔を見せているが、僕はセラ様のお願いを叶えることにした。

「ほら、イスカ。えっと、セラ⋯⋯の受けている処罰って何だっけ?」

 その言葉を聞いたイスカがハッとする。

「人族分の生をこの世界で全うすること」

「でしょ?だったら、僕達だってセラの事を人族として接してあげないと、この世界に降り立った意味がなくなってしまうよ」

 僕の言葉を聞いて、かなり渋い顔をするイスカ。
 それもそうか、イスカの生まれ育ったクルトスの町には、セラ様を奉るセフィラム教の教会はなかったが、一家としてはセフィラム教を信仰していたと聞いたことがあった。
 そりゃあ、創造神で信仰対象の神が眼前に降り立ったのであれば、いくら神様のお願いともいえども、わかりましたと了承することは難しい。

 そこら辺りは、特に宗教観を大事にしていない僕とは違って受け入れにくいものなのかもしれない。
 一応、仏教だし両親の墓も寺にあるのだけど、普通にクリスマスやハロウィンなんかも楽しんだりするしね。

「ん~、分かりました。でも、せめてセラ──さんと呼んでいいですか?」

 イスカの言葉にセラ様の顔が明るくなった。

「勿論です!」

 よし、それなら話を進めよう。

「え~と、セラは地球は神様達が共同で管理しているって言ったけど、どういうことなのかな?」

 質問されたセラ様は、コクリと白湯をもう一口飲み込むと小さな口を開いた。

「えっと、地球がある世界は神達にとっては研修兼実験室のようなものなのです」

 実験という言葉を聞いて、少なからず実験動物的な印象を受けたが、セラ様は言葉を続ける。

「ほら、普通の世界は多種族で成り立っているから、争いや戦争があった時に団結して戦うのです。でも、地球では争うべき他の種族がいないにも関わらず、永遠に同族内で争いを行っている。それは、何故なのかを研究、分析するために神様達が共同で管理、運営しているんです」

 うーん、確かに。
 異世界っていえば、策謀があったとしても大体が人と魔族の争いを構図としているもんね。
 それに比べたら、人族しかいないのに争いあっている地球の人類は、神様達にとったら稀有な世界なのかもしれない。

「流石ユズキさんです。そんな激動の世界から来られていたなんて」

「そこ、関心してるけど、僕は普通のサラリーマンとして働く社員だったって説明したよね」

 僕のツッコミにイスカはエヘヘと笑った。
 素直に可愛い。

「なるほど⋯⋯。あれ?じゃあ、この世界は今誰が管理しているの?」

 僕の言葉を聞いたセラ様が、ビシッと背筋を伸ばす。
 この感じは⋯⋯

「えっとぉ。アマラ先輩です⋯⋯」

 うん、そんな感じがしていた。
 しかも、セラ様はアマラ様の世界のスキルを僕に与えてしまった為、負い目もあるだろう。

「人族一生分の時間なんて、あっと言う間だから任せておきなさいって⋯⋯私、死ぬときは棺にアマラ先輩の好きそうなお菓子を一杯詰め込んでもらいます。死んだら神の世界に持って行きますぅ」

 それは、地球の習慣ではないだろうか。
 それは、そうとして。

「セラは、レベルはいくつなの?」

 僕が、質問するとセラ様は困り顔を見せた。

「えっと⋯⋯レベルはないです。いや、あるといえばあるのですが──基本的に、この世界で私は人族以上のことはできませんが、代わりに絶対的に私を傷つけることはできないようになっています」

 なんだろう?
 よく分からない例えだが、防御力はカンストしていると捉えて良いのだろうか?

「自衛の為の身を守る範囲の殺生はできますが、力は人族の平均的な女性以上の力は出せません。ただ、人族としての生を終えるまで死ぬことはないんです」

 ──少し、呪いにも似ているな。

 そう思ってしまった僕は、セラ様が心の声を聞けなくなっていることに少し安堵した。

「ということは、勿論行くあても──」

 イスカがハッとしたように、口元に手を当てる。
 その表情を見て、セラ様の瞳が潤みだす。
 この表情に僕達は早くも弱い。

「そうなんですよ!この世界で私を知っている人なんて二人だけ!私を連れて行ってくれませんか!」

 思わず立ち上がったセラ様に片手ずつ掴まれた僕とイスカは、その迫力に圧されて、ただ頷く他なかった。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

Shining Rhapsody 〜神に転生した料理人〜

橘 霞月
ファンタジー
異世界へと転生した有名料理人は、この世界では最強でした。しかし自分の事を理解していない為、自重無しの生活はトラブルだらけ。しかも、いつの間にかハーレムを築いてます。平穏無事に、夢を叶える事は出来るのか!?

世界一簡単にレベルアップ ~魔物を倒すだけでレベルが上がる能力を得た俺は、弱小の魔物を倒しまくって異世界でハーレム作る事にしました~

きよらかなこころ
ファンタジー
 シンゴはある日、事故で死んだ。  どうやら、神の手違いで間違って死んでしまったシンゴは異世界に転生することになる。  転生する際にオマケに『魔物を倒すだけでレベルが上がる』能力を貰ったシンゴ。  弱小の魔物を倒してレベルを上げ、異世界でハーレムを作る事を企むのだった。

異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?

よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ! こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ! これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・ どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。 周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ? 俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ? それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ! よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・ え?俺様チート持ちだって?チートって何だ? @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。

神々に見捨てられし者、自力で最強へ

九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。 「天職なし。最高じゃないか」 しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。 天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。 地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。 俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。 だけど悔しくはない。 何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。 そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。 ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。 アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。 フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。 ※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん
ファンタジー
 誰もが魔力をもち魔法が使える世界で、アンナリーナはその力を持たず皆に厭われていた。  運命の【ギフト授与式】がやってきて、これでまともな暮らしが出来るかと思ったのだが……  与えられたギフトは【ギフト】というよくわからないもの。  だが、そのとき思い出した前世の記憶で【ギフト】の使い方を閃いて。  これは少し歪んだ考え方の持ち主、アンナリーナの一風変わった仲間たちとの日常のお話。  冒険を始めるに至って、第1章はアンナリーナのこれからを書くのに外せません。  よろしくお願いします。  この作品は小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...