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第3章 城壁都市ウォール
そろそろ突撃するようです
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ベイルベアーとの戦闘から約1時間。
僕達は、『マーキング』スキルによって示された方角を歩き続けてきた。
そのお陰で一直線にリズとフーシェに向かって歩いて来たはずだ。
しかし、その一方で僕は指し示す光の動きに少し違和感を感じていた。
「ねぇ、その光。緑と白はたまに動くのに、青と黒はほとんど方角が変わらないんだけど」
僕の右手に浮かぶ『マーキング』によって出現した、レベルを具現化したサイコロにも似たキューブ達。
緑はイスカ、少し灰色を足したような白色はローガン。この2つの光は僕の掌を時計に見立てると、手首側6時の方向に寄り添うように光っている。
その反対、12時の方向。僕達三人が目指しているリズとフーシェを示す青と黒のキューブは、ほとんど方向が動くことはなかった。
「これ、お二方とも動かれてないってことですね」
セラ様が僕の感じていた不安を口にする。
──そうだ。動いていないということは、動けない理由があるのだ。
リズとフーシェいう高レベルペアの組み合わせで、動かないということはまずありえない。
特にフーシェは、僕達と合流することを優先したがるはずだ。
よほどの高レベルモンスターと遭遇しない限り、あの二人が遅れを取ることはないだろう。
特にリズは、この魔大陸『レーベン』では『魔王』を務めており、レベルだって60を超えている。
戦闘向きのスキルをほとんど持たないといっても、その隠蔽能力や阻害魔法のスキルは総じて高く、戦闘向きのフーシェと組めばバランスはとても良いはずだ。
「これ、死んでいることはない⋯⋯よね?」
恐る恐るといった風に、エアが右手の上で光るキューブ達を指差して質問してきた。
『マスター、大丈夫です。マーキングがされているということは、生きているということを証明しています』
僕の不安を和らげるように、セライが脳内から回答してくれる。
「大丈夫だよ。この光が点いている限り生きていることを教えてくれているんだ」
僕の言葉にエアがほっとしたような顔になる。
「ん?」
突如、前方を指していた、フーシェを示す黒いキューブが位置を変える。そして、いきなり僕の掌中央にキューブは位置すると、フルフルと動きを止めた。
「きゃっ、なんです?」
突然の動きに、セラ様もビックリしたようだ。
黒いキューブは、僕が立ち止まっても方角を指し示すことはない。
「これって、もしかして頭上?」
──!
僕達が頭上を見上げると、小柄な1つの影が音もなく落ちてきた。
かなりの高度から落ちてきた影は、地面が近づくに連れみるみる大きくなると、僕達の前方5メートルにストッという、着地音だけを響かせて舞い降りた。
「フ──」
僕が喜びの声をあげるよりも早く、フーシェは風のように駆けると僕に飛びつくと、口元をその小柄な掌で塞いだ。
「──しっ。ここは、もう敵に近い」
耳元で囁くようなフーシェの声には、緊張感が含まれ、再会を喜ぶ雰囲気にはなかった。
「──こっち」
フーシェに腕を引かれて、僕達は巨木の裏へと身を隠す。
そこまで来て、辺りを注意深く見回した後フーシェはそっと僕の身体にしがみつく。
「──寂しかった」
フーシェの小柄な身体は僕の背中に手を回すと、声を詰まらせた。
初対面だと、その声には感情が動いていないように思うかもしれない。だけど、数ヶ月一緒にいる僕には、フーシェの抱く寂しいという言葉が、抑揚以上に大きなものとして感じることができた。
「遅くなってごめんね」
そっと背中をさすってあげると、フーシェは落ち着いたのか、コクンと頷くとゆっくりと身体を離した。
「ユズキ、リスフィルが」
僕は小さく頷き返す。
ここにいないということは、リズはきっと囚われているのだ。
「ジェイク達に捕まったんだね」
「ん。フーシェを逃そうとして──。フーシェ達は『勇者』の近くに転移したみたい。ここから先にアジトがあって、近づきたいけどフーシェ一人じゃ敵わない」
フーシェは背中側にある大樹を指差す。
「フーシェさん、無事で良かった。でも、リズさんのことが心配です」
事情を知らないセラ様が、誤ってリズの名前を口にしてしまう。
「え?リスフィル?リズ?」
混乱したような表情のエアに、しまったと思うが口にしてしまわれたものは仕方ない。
「リスフィルの愛称がリズなんだよ。混乱させたらごめん」
我ながら苦しい言い訳だが、エアは納得したのかそれ以上の追求はしてこなかった。
僕の反応に、やらかしてしまったことに気づいたのか、セラ様がしまったという風な表情を見せ、フーシェは、「私は間違えないように気をつけたのに」という、不満そうな顔を見せる。
「そうだ、リスフィルは無事なのか?」
僕の言葉にフーシェは首を横に振る。
僕のスキル『マーキング』が示すのだから、生命は無事だろう。
しかし、傷つけられているかまでを知ることができない。
「ん。ここから100メートル先くらいから『危険察知』が最大級の危険を知らせてくる。多分、罠。容易には近づけない」
そうか、だからフーシェは木の上で様子を探っていたんだ。
『マスター。このマーキングに『伝言』を込めてイスカさんとローガンさんに飛ばしますか?』
脳内のセライが話しかけてくる。
『どういうこと?』
『スキル『マーキング』は、対象に『レベル譲渡』を遠隔から届けることができます。そこに、『伝言』を込めれば、この位置をお二人に届けることもできるでしょう』
そんなスキルがあるなら早く言ってほしい。
その僕の心の声を見抜くセライは、更に言葉を重ねてくる。
『このタイミングで申し出たのは、一つはマスターのスキルが回復していないため、魔獣との遭遇の時にレベル低下をすることを恐れました。そして、2つ目が重要なのですが、このスキルはエアさんや、セラ様の反応を見れば分かると思いますが可視化されてます。もし、人目に触れてしまえば警戒されるでしょう』
『なるほど、フーシェと合流はできたしリズは捕まっている。ならば、イスカとローガンには合流を促しても問題ないと』
『その通りです。ちなみに『マーキング』で送れるレベルは5まで、普通の『レベル譲渡』は、スキルアップによって最大50譲渡できるようになりました』
「50!?」
思わず口に出してしまった。
「き、急にどうしたんですか!」
「ん。ユズキが壊れた?」
「え、なに何?どうしたの?」
三者三様、驚きの反応を示させてしまった。
「い、いや。なんだかスキルがパワーアップしたみたいなんだけど」
チラッと見ると、フーシェが分かりやすく瞳を輝かせている。
「ん。やってみたい」
鼻息が聞こえそうな程の意気込みだ。
『ちなみに、今のマスターのレベルは回復して60です』
うーん。回復は速くなってはいるが、『マーキング』でイスカとローガンに5レベルずつ送ると、僕のレベルは50。『勇者』が待ち構えている状況では、全力の支援は避けたい所だ。
しかも、囚われているリズの状況が分からない今、時間をかけることは危険でしかない。
『分かった、二人には『マーキング』で1ずつレベルを送って。『伝言』も頼むよ』
『了解、マスター』
僕は、二人に対して『伝言』を込める。
「『マーキング』」
右手に集中すると、緑、白、黒、青の4つの光が右手に生み出される。
「ん。なんか可愛い」
初めてスキルを見るフーシェが、興味津々で覗き込む。
「これで、イスカとローガンにこの場所を知らせるよ。よし、行って」
僕が右手をそっと高くかざすと、緑と白のキューブはコロコロと回転をすると、見えない檻が外れたかのように掌から飛び出した。
光はクルクルと螺旋を描くように、宙を転がりながら高く舞い上がる。
それは、妖精が戯れて踊っているようにも見えた。
「この子、昨日の子だよね?」
四人で光を見送った後、エアがフーシェを見ると僕に声をかける。
「そうだよ。半魔族のフーシェ、僕の仲間だよ」
僕の紹介にフーシェがにぱにぱと、両手でピースを作る。
「ラーメンの人だ」
「ら、ラーメンの人って⋯⋯そんな覚えられ方」
うん、エアは真っ先におかわりしていたから仕方ないね。
「と、よく分からない人」
「はひぇ~、ずっと見てたのに。よくわからない人はフーシェちゃん酷いです」
今度はセラ様が涙目だ。
「ここには、初めて同士の人がいるけど大丈夫。みんな敵対するような関係じゃないよ」
ここで全員のことを分かるのが、僕だけという完全に急造パーティーの様相。
エアにとっては、僕のことを人間と知ってビックリだし、セラ様も見た目は完全に人間だ。
フーシェからすれぱ、セラ様は宿屋で顔を見たぐらい。
セラ様は、僕とフーシェのことは知っているけれど、エアとフーシェから知られてはいない。
さて、このメンバーでリズを助けなければいけないのだが、正直セラ様は完全な戦力外。そして、そもそもこの戦いに女神さまを巻き込んでいいのかとも思ってしまう。
だが、魔獣も出る恐れのある森で待っててもらうことも危険だった。
「あ、あの⋯⋯私はレベル25だけど、ユズキさんは見てもらったから分かると思うけど、とてもじゃないけどこの森の魔獣とは戦えない。少し怯ませる程度の足止めが精一杯、ゆ、『勇者』は怖いけど一緒に連れて行って──」
少し震えながら、エアは決心したかのように小さく声を振り絞った。
「分かった。でもセラとエアは後ろに隠れていて。先頭は僕とフーシェで行くよ」
僕はフーシェに向き直る。
「ん。却下」
見れば、フーシェは両手で胸の前にバツ印を作っている。
「え?さっき一人は危険だったって言ってたじゃないか」
僕の言葉に、フーシェは頷く。
「そう。でも、ユズキのスキルがレベルアップしたって聞いた。50⋯⋯譲渡できるレベルでしょ?」
普段、ぽーっとしていることも多いフーシェだが、流石に戦闘のことになると、踏んだ場数は比べることができない程の先輩だ。
「ん。だから貸して。レベル50」
まるで迫ってくるようにフーシェは僕にすり寄ってくる。
その仕草に、鬱蒼と茂る森の中、いつもより濃く見えるフーシェの紫色の瞳からは、半魔族の『魔』を感じさせるような気がした。
僕達は、『マーキング』スキルによって示された方角を歩き続けてきた。
そのお陰で一直線にリズとフーシェに向かって歩いて来たはずだ。
しかし、その一方で僕は指し示す光の動きに少し違和感を感じていた。
「ねぇ、その光。緑と白はたまに動くのに、青と黒はほとんど方角が変わらないんだけど」
僕の右手に浮かぶ『マーキング』によって出現した、レベルを具現化したサイコロにも似たキューブ達。
緑はイスカ、少し灰色を足したような白色はローガン。この2つの光は僕の掌を時計に見立てると、手首側6時の方向に寄り添うように光っている。
その反対、12時の方向。僕達三人が目指しているリズとフーシェを示す青と黒のキューブは、ほとんど方向が動くことはなかった。
「これ、お二方とも動かれてないってことですね」
セラ様が僕の感じていた不安を口にする。
──そうだ。動いていないということは、動けない理由があるのだ。
リズとフーシェいう高レベルペアの組み合わせで、動かないということはまずありえない。
特にフーシェは、僕達と合流することを優先したがるはずだ。
よほどの高レベルモンスターと遭遇しない限り、あの二人が遅れを取ることはないだろう。
特にリズは、この魔大陸『レーベン』では『魔王』を務めており、レベルだって60を超えている。
戦闘向きのスキルをほとんど持たないといっても、その隠蔽能力や阻害魔法のスキルは総じて高く、戦闘向きのフーシェと組めばバランスはとても良いはずだ。
「これ、死んでいることはない⋯⋯よね?」
恐る恐るといった風に、エアが右手の上で光るキューブ達を指差して質問してきた。
『マスター、大丈夫です。マーキングがされているということは、生きているということを証明しています』
僕の不安を和らげるように、セライが脳内から回答してくれる。
「大丈夫だよ。この光が点いている限り生きていることを教えてくれているんだ」
僕の言葉にエアがほっとしたような顔になる。
「ん?」
突如、前方を指していた、フーシェを示す黒いキューブが位置を変える。そして、いきなり僕の掌中央にキューブは位置すると、フルフルと動きを止めた。
「きゃっ、なんです?」
突然の動きに、セラ様もビックリしたようだ。
黒いキューブは、僕が立ち止まっても方角を指し示すことはない。
「これって、もしかして頭上?」
──!
僕達が頭上を見上げると、小柄な1つの影が音もなく落ちてきた。
かなりの高度から落ちてきた影は、地面が近づくに連れみるみる大きくなると、僕達の前方5メートルにストッという、着地音だけを響かせて舞い降りた。
「フ──」
僕が喜びの声をあげるよりも早く、フーシェは風のように駆けると僕に飛びつくと、口元をその小柄な掌で塞いだ。
「──しっ。ここは、もう敵に近い」
耳元で囁くようなフーシェの声には、緊張感が含まれ、再会を喜ぶ雰囲気にはなかった。
「──こっち」
フーシェに腕を引かれて、僕達は巨木の裏へと身を隠す。
そこまで来て、辺りを注意深く見回した後フーシェはそっと僕の身体にしがみつく。
「──寂しかった」
フーシェの小柄な身体は僕の背中に手を回すと、声を詰まらせた。
初対面だと、その声には感情が動いていないように思うかもしれない。だけど、数ヶ月一緒にいる僕には、フーシェの抱く寂しいという言葉が、抑揚以上に大きなものとして感じることができた。
「遅くなってごめんね」
そっと背中をさすってあげると、フーシェは落ち着いたのか、コクンと頷くとゆっくりと身体を離した。
「ユズキ、リスフィルが」
僕は小さく頷き返す。
ここにいないということは、リズはきっと囚われているのだ。
「ジェイク達に捕まったんだね」
「ん。フーシェを逃そうとして──。フーシェ達は『勇者』の近くに転移したみたい。ここから先にアジトがあって、近づきたいけどフーシェ一人じゃ敵わない」
フーシェは背中側にある大樹を指差す。
「フーシェさん、無事で良かった。でも、リズさんのことが心配です」
事情を知らないセラ様が、誤ってリズの名前を口にしてしまう。
「え?リスフィル?リズ?」
混乱したような表情のエアに、しまったと思うが口にしてしまわれたものは仕方ない。
「リスフィルの愛称がリズなんだよ。混乱させたらごめん」
我ながら苦しい言い訳だが、エアは納得したのかそれ以上の追求はしてこなかった。
僕の反応に、やらかしてしまったことに気づいたのか、セラ様がしまったという風な表情を見せ、フーシェは、「私は間違えないように気をつけたのに」という、不満そうな顔を見せる。
「そうだ、リスフィルは無事なのか?」
僕の言葉にフーシェは首を横に振る。
僕のスキル『マーキング』が示すのだから、生命は無事だろう。
しかし、傷つけられているかまでを知ることができない。
「ん。ここから100メートル先くらいから『危険察知』が最大級の危険を知らせてくる。多分、罠。容易には近づけない」
そうか、だからフーシェは木の上で様子を探っていたんだ。
『マスター。このマーキングに『伝言』を込めてイスカさんとローガンさんに飛ばしますか?』
脳内のセライが話しかけてくる。
『どういうこと?』
『スキル『マーキング』は、対象に『レベル譲渡』を遠隔から届けることができます。そこに、『伝言』を込めれば、この位置をお二人に届けることもできるでしょう』
そんなスキルがあるなら早く言ってほしい。
その僕の心の声を見抜くセライは、更に言葉を重ねてくる。
『このタイミングで申し出たのは、一つはマスターのスキルが回復していないため、魔獣との遭遇の時にレベル低下をすることを恐れました。そして、2つ目が重要なのですが、このスキルはエアさんや、セラ様の反応を見れば分かると思いますが可視化されてます。もし、人目に触れてしまえば警戒されるでしょう』
『なるほど、フーシェと合流はできたしリズは捕まっている。ならば、イスカとローガンには合流を促しても問題ないと』
『その通りです。ちなみに『マーキング』で送れるレベルは5まで、普通の『レベル譲渡』は、スキルアップによって最大50譲渡できるようになりました』
「50!?」
思わず口に出してしまった。
「き、急にどうしたんですか!」
「ん。ユズキが壊れた?」
「え、なに何?どうしたの?」
三者三様、驚きの反応を示させてしまった。
「い、いや。なんだかスキルがパワーアップしたみたいなんだけど」
チラッと見ると、フーシェが分かりやすく瞳を輝かせている。
「ん。やってみたい」
鼻息が聞こえそうな程の意気込みだ。
『ちなみに、今のマスターのレベルは回復して60です』
うーん。回復は速くなってはいるが、『マーキング』でイスカとローガンに5レベルずつ送ると、僕のレベルは50。『勇者』が待ち構えている状況では、全力の支援は避けたい所だ。
しかも、囚われているリズの状況が分からない今、時間をかけることは危険でしかない。
『分かった、二人には『マーキング』で1ずつレベルを送って。『伝言』も頼むよ』
『了解、マスター』
僕は、二人に対して『伝言』を込める。
「『マーキング』」
右手に集中すると、緑、白、黒、青の4つの光が右手に生み出される。
「ん。なんか可愛い」
初めてスキルを見るフーシェが、興味津々で覗き込む。
「これで、イスカとローガンにこの場所を知らせるよ。よし、行って」
僕が右手をそっと高くかざすと、緑と白のキューブはコロコロと回転をすると、見えない檻が外れたかのように掌から飛び出した。
光はクルクルと螺旋を描くように、宙を転がりながら高く舞い上がる。
それは、妖精が戯れて踊っているようにも見えた。
「この子、昨日の子だよね?」
四人で光を見送った後、エアがフーシェを見ると僕に声をかける。
「そうだよ。半魔族のフーシェ、僕の仲間だよ」
僕の紹介にフーシェがにぱにぱと、両手でピースを作る。
「ラーメンの人だ」
「ら、ラーメンの人って⋯⋯そんな覚えられ方」
うん、エアは真っ先におかわりしていたから仕方ないね。
「と、よく分からない人」
「はひぇ~、ずっと見てたのに。よくわからない人はフーシェちゃん酷いです」
今度はセラ様が涙目だ。
「ここには、初めて同士の人がいるけど大丈夫。みんな敵対するような関係じゃないよ」
ここで全員のことを分かるのが、僕だけという完全に急造パーティーの様相。
エアにとっては、僕のことを人間と知ってビックリだし、セラ様も見た目は完全に人間だ。
フーシェからすれぱ、セラ様は宿屋で顔を見たぐらい。
セラ様は、僕とフーシェのことは知っているけれど、エアとフーシェから知られてはいない。
さて、このメンバーでリズを助けなければいけないのだが、正直セラ様は完全な戦力外。そして、そもそもこの戦いに女神さまを巻き込んでいいのかとも思ってしまう。
だが、魔獣も出る恐れのある森で待っててもらうことも危険だった。
「あ、あの⋯⋯私はレベル25だけど、ユズキさんは見てもらったから分かると思うけど、とてもじゃないけどこの森の魔獣とは戦えない。少し怯ませる程度の足止めが精一杯、ゆ、『勇者』は怖いけど一緒に連れて行って──」
少し震えながら、エアは決心したかのように小さく声を振り絞った。
「分かった。でもセラとエアは後ろに隠れていて。先頭は僕とフーシェで行くよ」
僕はフーシェに向き直る。
「ん。却下」
見れば、フーシェは両手で胸の前にバツ印を作っている。
「え?さっき一人は危険だったって言ってたじゃないか」
僕の言葉に、フーシェは頷く。
「そう。でも、ユズキのスキルがレベルアップしたって聞いた。50⋯⋯譲渡できるレベルでしょ?」
普段、ぽーっとしていることも多いフーシェだが、流石に戦闘のことになると、踏んだ場数は比べることができない程の先輩だ。
「ん。だから貸して。レベル50」
まるで迫ってくるようにフーシェは僕にすり寄ってくる。
その仕草に、鬱蒼と茂る森の中、いつもより濃く見えるフーシェの紫色の瞳からは、半魔族の『魔』を感じさせるような気がした。
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