うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo

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第5章 戦争

不穏な雰囲気が感じられるようです

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『かんぱーい!』

 賑やかなトナミカの酒場に、仲間とベス達の声が湧き上がった。

 馬車に揺られて夕方前には町に着いた僕達は、早々に宿を決めると、時間を合わせて酒場でベス達と落ち合うことを決めた。
 宿は、前回ローガンに宿泊代を奢ってもらった温泉宿だ。宿の名前は、オーナーの出身地から取って『叢雲』という。
 出費は大きいが、セラ様まで同じ部屋に泊まるとなると、大人数が泊まれる和室を完備している『叢雲』でなければ、部屋を分けなければいかなかったからだ。
 さすがに、前回泊まったスイートクラスの『夕凪』という部屋に比べると、落ち着いた布団を敷けるタイプの和室は、一晩の値段も下がったが、それでも相場の数倍高いことは言うまでもない。

 ちなみに、部屋を予約するときは『譲渡士』の姿で女性になっておいた。
 3人女性に男一人という絵面は、かなり目立ってしまいそうだったからだ。

 勿論、酒場に向かう際には姿は戻している。
 女性の姿になった僕が現れたら、ベスは卒倒するだろう。

「さて、とりあえず馬車の中では気を反らしたけど、一体何があったんだ?」

 冷えたエールを喉に流し込んだベスが、開口一番聞いてきたことは、やはり昼間の続きだった。

「昼は話を逸してくれてありがとう。ベスさんだから言うよ。ちょっと用事があってレーベンに渡ってたんだよ」

 僕の言葉に、ベスとサユリは目を丸くした。
 だが、次の瞬間には手で顔を抑えたベスは天井を仰いだ。

「カーッ!このタイミングでレーベンに渡ってたのかよ。そりゃ、こっちの動きを分かってないわけだ」

 周囲を気遣う様に、ベスは声を殺しながら叫んだ。

「うちらな、グリドール帝国の提案によって集められてん。レーベンの魔王が倒れた、その功績はうちらの勇者が倒したから、今のうちに人族の天敵である魔族を倒したろってな」

 やはり、おかしい。

 時間的に、長距離通信手段でもなければ、グリドール帝国が諸国に招聘をかける時間などなかったのだ。
 それに、ジェイクに至っては、この町に戻っているのかすらも怪しい。

 整理してみよう。
 ジェイク達が、リズが死んだことを確認したのは、8日前だ。僕達がリビアンでエアと分かれて、レーヴァテインに着いたのが3日前。ゴフルの屋敷とレーヴァテイン城でそれぞれ一泊なので2日を過ごしている。
 これだと、船でレーベンと大陸に移動する5日を考えれば、下手をすればジェイク達はまだ海の上の可能性さえあるのだ。

「その召集がかかったのはいつなのですか?」

「あの規模を考えたら、1ヶ月以上前には声をかけないと参集できないだろうな。ただ、元々あいつらは西方諸国連合に向けて戦いの準備をしていたから、動き出しは早かったのかもしれん」

「エラリア方面に向けてた軍を、突然目標を魔大陸に変えたってことですか?」

 イスカの言葉にサユリが頷いた。

「そや。それが一番しっくりくんねん。で、金輪際西方諸国連合とはやり合わんから、魔大陸に派兵せいって。それがあいつらの言い分やねん」

 サユリが、クルクルとフォークにパスタを巻きつけると、口に放り込んだ。

「うまー。流石トナミカやん、初めて海の幸ちゅーのを食ってみたけど、こりゃ美味いわ」


「でも、それって虫が良くないですか?グリドールはそれまで本気でエラリア方面に進軍しようとしていたのでしょう?最悪約束を反故にする可能性もありますよね」

 僕の言葉にベスは頷いた。

「そう、そこなんだ。そのため、西方諸国連合は、まずは軍を派遣しない方針を決定した」

「ん。それって、グリドールは怒るんじゃ?⋯⋯もしかして、ベス達がいるのって、軍の代わり?」

「おっ、フーシェちゃん。当たりや!せやで、いきなり、軍出せっちゅーのは準備があるから無理やと、でも元々身軽な冒険者であるうちらなら出せるっちゅーわけやな」

 サユリがご明察と言わんばかりに、人差し指でフーシェを指さした。

「アルティナさんがいないのって、何か理由があるんですか?」

「あいつは、『城壁の守護者』本隊の準備をしているのさ。頭がいいから、物資や装備の準備、遠征もろもろの用意をしてから後から来るんだ。俺達は、先遣隊として本隊の受け入れ準備のために来たんだ」

 なるほど、確かにいきなり『城壁の守護者』クラスの大所帯がトナミカに入ることはなかなかに大変だ。

「ま、西方のお偉いさん達もホントはグリドールとやり合いたくないねん。万が一、グリドールが魔大陸を制圧してもうたら最悪や。海上まで押さえられたら、西方もジリ貧やかんね。でも、正規軍も減らしたくない。難儀なもんやなー、その点、金出しゃ動くウチラは使いもんとしてはえーってこっちゃ」

 ケラケラとサユリは笑うと、クイッとお猪口2入った酒を飲み干した。

「カーッ!喉が焼けるように美味いっ!お、店員はん、これおかわりや!」

 いい感じに酔ってきたサユリが、ギアを上げてきたようだ。

「まぁ、こっちの話はそんなとこだ。グリドールは正規軍が強いが、西方は魔物が多く出ることやダンジョンが数多く存在することから、冒険者達が強いんだ。グリドールにも名前が知れてる『城壁の守護者』が、帝国の息がかかったミュラーからの呪縛を解いて参加となれば、帝国相手にもいい感じの牽制にはなるだろ?」

 ベスはニヤリと笑うと、豪快にエールをあおった。

「ちなみに、グリドールが魔大陸へと攻め込む予定は?」

 僕の質問に、酒を浴びるように飲んでいたベスの瞳が、一気に酔いが覚めたように鋭くなった。

「ユズキ、えらく細かいことを聞くな。レーベンに行ってたというが、まさか、向こうの魔族と親交があるとかいうなよ?」

 ベスの瞳には疑問が浮かんでいたが、敵意は向けられていないことに気付いた僕は、小さな声でベスに話しかけた。

「ここでは話せない。ギルドに行こう」

 僕の言葉に、ベスのジョッキを運ぶ手の動きが止まった。
 どんな反応が来るだろう?

 僕は身構えたが、ベスから返ってきたのは面白がる様な視線だった。

「はっ、面白くなってきやがった。どうもきな臭いと思ってたからな。おい、サユリ!行くぞ!」

 酒によってトロトロに溶けた様な表情のサユリの背中をバシッとベスが叩いた。

「ヒッ!隊長やりすぎや!」

「気付しないと、夜中まで寝るだろう?仕事だよ仕事。ただでさえ、今回の人選はアルティナから白い目で見られてるんだからな。お前がしっかりしてくれないと、俺に濡れ衣が来るからな」

 サユリはベスの言葉に、まだ回らない頭をクルクルと回すと、肩を解すように動かした。

「カーッ!長旅で、そのまま夢の中に行けると思うてたのに、なんやマジな話になるんかい。しゃーないなー」

 なんだかんだ、仲がいいな。
 二人のやり取りを、僕は微笑ましく見つめていたが、突然僕の服は、セラ様の小さな手によって引っ張られた。

「どうかした?」

 僕の言葉に、ジュースだけ楽しんでいたセラ様はコクリと頷いた。

「ちょっと気になることがあるんです。教会まで行きたいのですが、良いですか?」

 セラ様の瞳は、真剣に何かを考えている様に見えた。

「いいけど、ベス達の話の後じゃ不味いのかな?」

「はい、なるべく早くの方が良いと思います。護衛にイスカさんをお借りしても良いですか?」

 セラ様がイスカを指さしたが、そこには良い加減にほろ酔いとなったイスカが顔を赤くしながら立っていた。

「うーん、あの状態はまずくない?」

「そこはほら、能力値譲渡で酒を分解しておきましょう」

 サラッと怖いことをセラ様は言い出したが、それだけ理由があるのだろう。
 僕は周囲を見回すと、イスカの肩に手を置きながら、能力値譲渡を流し込んだ。

 トロンとした瞳に、みるみる内に活力が漲り生気が戻ってくる。

「ふぁぁっ!いきなり思考ががクリアに!」

 サユリと同じ様に、布団にダイブできると信じていたイスカを正気に戻すのは忍びないが、セラ様の要件は急を要すようだ。

「なぁ、隊長。今度からウチもあれで起こしてな」

「無茶言うなよ」

 僕を指さしてベスに抗議するサユリを横目に、僕はセラ様の護衛のことについて話した。

「分かりました。任せて下さい」

 酔いを無理矢理覚まされたことに、一言の文句もなくイスカは力強く両手で握りこぶしを作った。

 流石、理解のある未来の嫁さんだ。

「ん。私はユズキと一緒?」

 こちらも、少しだけ顔を赤くしたフーシェが僕の顔を見上げている。

「あぁ、フーシェの存在が重要になる話だからね。ギルドに入る前に酔いが覚めなければ、イスカにやったやつをやることになるけど⋯⋯」

 フーシェはコクコクと頷くと、勢いよく親指を突き立てた。若干怪しいので、ギルド前で酔いを完全に覚まさせてもらおう。

 こうして僕達は、酒場の外に出ると、イスカとセラ様は教会へ。
 僕とフーシェ、ベスとサユリはトナミカギルドに向けて歩き始めた。








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