うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo

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第5章 戦争

問題事が起こりそうです

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 僕達が桟橋に着くと、船は丁度係留ロープを投げ込んでいるところだった。
 船の上からは屈強な船員が黙々と作業を行っている。

「ありゃ、軍属の動きだな。統率が取れすぎている」

 ベスが船を停める作業を行う船員達の動きを見て呟いた。

「下手な刺激はできないね。私は前に出るけど貴方達はどうする?」

「ユズキさん、私達は顔を知られてます。少し物陰から様子を見ますか?」

 イスカの言葉に僕は頷いた。

「エレナさん、僕達の目当ての人物が出てくるか見守りたいので、あのコンテナの陰に隠れていますね」

 エレナは頷くと、桟橋に向かって歩き出す。

 僕とイスカとフーシェ。そして、ベスとサユリが二手に分かれてコンテナの陰に身を潜めた。

 船からタラップが降りてくると桟橋と繋がり、数人の男性が船から降りてきた。
 その先頭を歩くリーダー格の男性は、船員というよりは、その優雅な佇まいから貴族の様な立ち振る舞いを感じさせた。

 陸地側からは、こちらも先程エレナとやり取りをしていた『蒼天の灯台ブルートーチ』の男性と数人が近づいていく。

 彼らは接触すると、身振り手振りで話し合いを始めた。
 その様子を後ろから監督するようにエレナが油断なく監視を行っている。

 数分すると、エレナの仲間が小走りにエレナの元へ駆け寄ると、何か慌てた様子で話し始めた。

「ん。なんだか嫌な予感」

 フーシェがポツリと呟く。
 どう見ても、交渉が上手くいかなかった感じだ。
 勇者であるジェイク達の姿は未だ確認はできない。

「イスカ、『魔法矢マジックアロー』の準備。フーシェも直ぐに飛び出せるようにしておいて」

 イスカとフーシェが緊張した面持ちで頷いた。

「僕は『譲渡士』の姿になっておくよ。唯一ジェイク達に顔がバレてないから」

 そう言うと、僕は意識を内面へと向ける。
 直ぐに、『譲渡士』のセライの意識と融合し、身体に変化がおとずれた。

「ん。その姿のユズキはいい香りがする。同じ女として、少し嫉妬するかも」

 フーシェは私にいたずらっぽい笑みを浮かべた。こう見ると、レーヴァテインの出来事から、フーシェの表情は更に豊かになったようだ。
 イスカも私の気持ちに気付いたのか、嬉しそうにフーシェの頭を撫でた。

「ん。二人共何か考えてるでしょ」

 不思議そうな顔でフーシェは私とイスカの顔を交互に見つめると、少し困った様な表情となった。

 さて、『譲渡士』になった今、意識が身体に引っ張られるのはいつものことだ。
 幸い、この場所はベス達からは死角となっているので、私がいきなり変身したのは見えていない。

「私は、それとなく桟橋に向かうね。二人はこのままここで待機して。私が合図したら、行動していいわ。船の人達が攻撃してきても、まずはトナミカの人を守ることを優先して」

「──同じ人族同士で争うなんてことが起こらないといいのですが」

 悲しそうな表情を見せるイスカだが、男性の慌てぶりから、簡単に落とし所が見つかるとは思えない。

「私もそう願っているけど──。もしジェイク達が出てきたら、フーシェは不利だからジェイクとは距離を取って。軍船なら、乗っている兵士達の質も高いはず。油断せずにね」

 そう言って私は立ち上がると、女性の姿となってスカートとなった両太ももに違和感を感じた。
 スカートの上から違和感に触れると、そこには小型のダガーが装着されているらしく、男性の姿の際、腰に下げていた剣の姿は消えていた。

「さすが、『最適化オプティマイズ』。セライも気が利いてるよ」

 確かに、見た目は華奢な女性が剣を腰に装備していると浮いてしまうはずだ。
 私は苦笑すると、スカートを軽くはたくとコンテナの陰から歩きだした。

「──です!」

「だが──、それ──飲めない。必要な物資を積んだら、一度湾外に出てもらうしかないね」

 エレナ達に近づくに連れ、会話が聞き取れるようになってきた。

 周囲には、ギルド職員や冒険者達の姿も多く、同じく冒険者の服装をしている私が紛れても、違和感はそうなかった。
 私は話しかけやすそうな、若い青年の冒険者の姿を見つけると、近寄って声をかけた。

「すみません、揉め事ですか?」

 自分で言うのもなんだけど、美人と言って過言ではない容姿の私に、いきなり声をかけられた青年は驚いた様に顔を赤くした。

 ごめんね。男性の方が素なんだけど。
 なんて、心の中で謝りつつ話しかける。

「あぁ。あの大きな船が入港してきたんだが、要件がメチャクチャなんだ。自分たちは、グリドール帝国のお抱えの船だ。一週間程で本国から、このトナミカに大船団が来るため、その受け入れのためにここに滞在させろって言ってるのさ」

「助けを求めて入船してきたって聞きましたけど」

「だから厄介なんだよ。普通、正規の手続きをしていない船で、まして助けを求めて来たのなら、補給を終えたらすぐに出港さ。あんな大型船が入ったらいつまでたっても桟橋が使えない。本当なら、入港までの間は湾外待機で小舟で手続きをしに来なきゃいけないのに、あいつらバックに帝国がついてるからって、やりたい放題しやがって」

 忌々しげに毒づく青年の横顔には憤りが見えた。

 確かに20万人の戦力を集結させようとしていることから、少しぐらいの無理難題は吹っかけられるだろうという算段なのだろう。
 僕は、相手の立場を考えない自己中心的なやり口に腹を立てたが、今のところはエレナの対応を見守るしかなかった。

「『蒼天の灯台ブルートーチ』は、町から治安維持と外国船の対応に対して、一部権限を委託されているんだが、相手は帝国だろ?やりにくいと思うな。リーダーのエレナは通常の手続きで済ませたいところだろうが、帝国のやつら、やたらプライドが高いからな。不穏な雰囲気に、みんな集まって来てるのさ」

 明らかに、硬い表情でエレナと仲間たちが話をしている。その様子を眺めていた船側のリーダーらしき男が、船の方を向いて何やら慌てた表情を見せた。
 程なく、船から降りてきた板から一人の人影が見えた。

 板を踏みしめて降りるその姿に、私の心はざわついた。
 いくらローガンから頼まれているとは言え、リズを痛めつけた相手を眼前にして、平静でいられる程に私は人格ができてはいない。

「──?どうした、怖い顔して」

 青年が、私の表情に少し戸惑いながら声をかける。
 私は、慌てて作り笑顔を見せると、青年に両手を振った。

「何でもないです!ごめんなさい、色々教えてくれてありがとうございました!」

 私は呼び止められる前に青年に大きく頭を下げると、その場を離れた。
 野次馬で集まってきた人混みに飛び込み、エレナの近くまで進んでいく。

 リーダー格の男性の慌てぶりから、勇者であるジェイクが出てくる予定ではなかったはずだ。
 しかし、彼が出てきたということは、交渉の難航に業を煮やしたのだろう。

 私は、ウォールで出会った時のジェイクの自分本位の振る舞いを思い出していた。

 ざわつく胸の内を押さえながら、私はそれとなく野次馬の最前列まで身を乗り出すと、事の行方を見守ることにした。
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