うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo

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第5章 戦争

海戦 4

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 遠くから腹底へと響く様な砲声が聞こえてくる。

 砲声は一発だけではなく、間断なく連続的にレグナント号まで響いてきた。
 最早、トルルージュをグリドール軍が沈めようとしていることは明白だった。

 ニンムスが望遠鏡を手に取ると、歯ぎしりをしながら、その様子を眺めた。
 トルルージュの周囲の空間がチカチカと明滅する。

「イスカ!攻撃じゃ!対物理障壁で少しは保つじゃろうが、あの物量ではおしまいじゃ!」

 いよいよ恐れていたことが起こったと、イスカは悲嘆したが、このままエレナ達が死んでしまうことは避けなければならない。

「──はい!」

 イスカは感情を押し殺すと、弓を番える動作へと移る。
 魔素を魔力に変換すれば、強大な力が右手の指先へと集中した。
 煌めく様な白光を纏い、『魔法矢マジックアロー』が顕現した。
 ここから狙えるのは、望遠鏡を覗いてロックオンできた艦船だけだ。魔力を少し複雑に練り上げ、『追跡矢ホーミングアロー』へと変換する。

「──撃ちます!」

 右手の指先から自然と力を抜く。
 圧縮された莫大な魔力は開放されると、一直線にグリドール海軍の頭上まで駆け上がった。
 次の瞬間、光はパッと一瞬瞬いたかと思うと、蜘蛛の子を散らす様に突然に弾けた。

「着弾したぞ!」

 光が降り注ぐのを確認したビビが望遠鏡を覗き込み叫んだ。
 しかし、トルルージュに降り注ぐ砲弾の数が減っているようには思えない。
 敵の艦船が多すぎるのだ。

「艦長!接近してくれ」

 ニンムスの言葉にビビは正気を疑うかの様に眼を見開いた。

「正気かい!?いくらレグナントの足が速いからって言っても、火の粉に突っ込むようなもんだよ!この船は、あんたのとことは違って、障壁なんて持っちゃいないんだよ!?」

「障壁なら⋯⋯ワシが貼る!」

 ビビの言葉に、ニンムスが覚悟を持った声で答えた。

「グリドールが来たら、トナミカの次はレーベンじゃ!今のグリドール軍を見よ!交渉もなく、一方的な砲撃をしてきたではないか!」

「艦長!いくつかの船がこちらに向かっています!」

 マストの見張り台から、身を乗り出して望遠鏡を覗き込んでいた見張り役の船員が叫んだ。

「──ああっ!もう。もう少し、このクラーケンの海域を怖がってくれてもいいのにね!」

 ビビはイライラしながら、頭を搔くと船員たちへ振り返った。

「アンタ達!高速戦闘の準備だよ!いいかい、ニンムス?アタシ達は正面からの撃ち合いはやらないよ。船を守るのと攻撃はギルドマスターと、イスカ達が担うんだよ」

「はいっ!」
「ん。了解」

 イスカとフーシェがビビの言葉に返事を返す。

「アタシが舵を握るよ。アンタ達、振り落とされるんじゃないよ!あと、ドグを呼んできなっ!アレを使うよ!」

 ビビの言葉に船員たちに緊張が走る。
 慌てて数人の船員がドグを呼ぶために走り出した。

「アレって?」

 イスカの言葉に、ビビはウインクを返した。

「アレって言えば、勿論⋯⋯奥の手だよ」

 そう言うと、ビビは船を操舵するために舵を握る。

「トルルージュが的になってるのを、アタシ達が受け持つよ。『魔導機関』に炉を入れな!」

 ビビが叫ぶと、弾けた様に船員の一人が船につけられた鐘を、力いっぱい引っ張った。

 ガランガラン

 けたたましい音が響き渡る。
 一瞬の間が空いたかと思うと、次の瞬間、ゴウンッと船体全体が細かく震える様に振動した。

「魔導機関!始動完了!」

 船員の報告に、ビビは頷くと腕をまくり上げた。

「いいねいいね!行くよっ、アンタ達!!」

 次の瞬間、文字通り弾かれた様にレグナント号は前進を始めた。

「ん。凄いっ!」

 体感速度で今までの巡航速度の3倍は感じられた。

「あぁ!30ノット以上は出てるからね!」

「普通の帆船の4倍くらい出ておるの!ワシみたいに小柄な者は吹き飛ばされそうじゃわい!」

 ビリビリと船体が共振しながら、海上を滑る様にレグナント号は進んでいく。

「発射!」

 近づいてきたグリドールの船に向かって、イスカが『魔法矢マジックアロー』を放った。『追跡矢ホーミングアロー』とは違う一直線に飛んだ矢の軌道は、グリドールの船のメインマストを貫いた。

 続けてイスカが矢を放つ。

 近づいてきた船を確実にイスカは狙い撃ち、マストを貫くと航行不能へと追い込んだ。
 レグナント号との速力差と、イスカによってマストを撃ち抜かれたことで、あっと言う間に数隻のグリドール船の姿が小さくなった。

「この速度、保って30分だからね!アンタ達、それまでになんとかするんだよ!」

 ビビが舵を切ると、その動きに呼応するかの様に屈強な魔族の船員達がマストを操った。
 文字通り船と人が一体となって、レグナント号は軋みを上げながら、右へ左と的を絞らせない様に航行すると、トルルージュへと近づいていく。

 トルルージュは、最早障壁のほとんどが破壊されている。

「あっ!!」

 バリンッと、ガラスに似た音を立ててトルルージュの障壁が破られ、グリドールの放った砲弾が甲板へと被弾した。
 トルルージュは航行を続けてはいるが、グリドールに向かって明確な反撃をしていない。

 扇状に広がったグリドール軍の艦船から逃げる様に、トルルージュはその巨体を走らせる。

「こ、この速度の動力は何なんですか!」

 イスカが、続けざまに矢を放つ。

「魔核を材料にした補機だよ!親父の知り合いのイカれた技術屋がつけたのさ!効果はこの通り、でもすぐ熱暴走するからね。ドクの氷魔法でキンキンに冷やさないと、今度はこの船が燃え上がるっていうシロモノさ!」

「なんじゃ!まだまだ赤子かと思うておったが、お主、なかなかにイカれておるな!」

 ニンムスが甲板上のロープで身体を固定させながら叫んだ。ギュッと紐を結ぶと、ニンムスは揺れる甲板で仁王立ちした。

「よし!魔法障壁を展開するぞ!ビビ、突撃するのじゃ!」

 ニンムスの言葉にビビが悪い笑みを浮かべた。

「よし!左舷煙幕弾用意!突撃するよ!」

 ビビの言葉に呼応するかの様に
 高波を乗り上げたレグナント号が艦首を上げた。

 ニンムスによって張られた薄緑色の障壁を纏いながら、レグナント号はトルルージュとグリドール軍の間に立ちふさがる様に突撃を開始した。





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