うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo

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第5章 戦争

防衛戦(山) 8

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「す、凄い⋯⋯」

 僕の前後に広がった、まるで街道の様に開けてしまった森を見つめたセラ様から感嘆の声があがった。
 いまだ風に吹かれた細かい枝が、ようやくパラパラと地上へ落下してくる。

 ──やったわ!成功のようね。今度はそこが火で燃えにくくするために、水を撒いて。終わったら、なるべく直ぐに戻ってきてほしいの。

 脳内に念話で話しかけてきたリズの声が届く。

「大忙しですね」
「仕方ないよ。これで少しでも進軍が遅らせられるといいんだけど」

 僕は前後にできた緩衝帯に向かって、今度は水魔法を準備する。
 直ぐに魔力を練り上げると、僕は前後に『水光アクアレイ』を発射した。

 軽く地面をえぐりながら進んだ『水光アクアレイ』は、緩衝帯を充分に湿らせると、更には大地が吸収しきれなかった水の流れを産み、小川の様な流れを作った。
 逃げ場所を求めた水は、下を走る街道に向かって流れ落ちる。

「よし、行こう」

 僕は再びセラ様を抱きかかえると移動を開始した。
 陽も昇った時間帯でもあるため、それほど帰り道に時間は要さなかった。
 まもなくテントが見えてくる。

「戻ったよ」

 テントに入ると、中にはリズとベス、それに数人の本部要員しか残っていない。

「ユズキ、凄い音がしたぞ!この地図の上にもバカでかい光の筋が走ったのを見たぞ」

 ベスが興奮気味に盤上の『万象のまなこ』を指差した。

「ユズキ、お帰りなさい。貴方のお陰で、山側に展開しようとしていたグリドール軍のほとんどが渓谷側へと向かってきたわ。さっきの一撃を警戒したのね」

「あの一撃で、進軍を止めてくれたら良かったんだけど」

 僕の言葉にローガンは力なく首を振った。

「まず無理でしょうな。命令を守らなければその場で打首どころか、本国の親類共々牢屋送りでございましょう。酷い場合は、奴隷落ちにされます」

「⋯⋯そんな国なのに、国は栄えるのですね」

 セラ様が沈痛な面持ちで言葉を吐いた。

「裏を返せば、ここで活躍すれば一躍成り上がれることも事実なのです。特に、グリドールは負けなしですからな。圧倒的な武力で周囲に攻め入っては土地を増やし、それらを報奨として分け与えて来たのです。他国と裏切りには厳しくとも、内政はしっかりしているのですよ」

 ローガンはため息をついた。
 話している間にも光は進軍を進め、ついに光の先端は渓谷の入り口と接触した。

「あっ!!」

 パパッとグリドール側の光が明滅したかと思うと、いくらかの光が消えてしまった。

「前哨陣地の待ち伏せだな。待ち伏せがうまくいったようだ」

 ベスが、渓谷に隠れる光を指差しながら興奮気味に話す。
 隠れる光は、明らかにグリドール軍の兵士一人が放つ光の数倍は大きい。

「ちょっと確認しておきたいんだけど、勿論ベス達の戦力は、この光っている数で全員なのよね?」

 リズは渓谷に沿って光るいくつかの光の集まりを指さした。

「──あぁ、嘘を言っても仕方ないからな。俺たち『城壁の守護者』、それからトナミカの兵を合わせても700人くらいしかいない」

「そんな!20万に対して、700人なんですか!」

 セラ様は驚愕したように口元を覆った。
 リズの方は、圧倒的な戦力差を耳にしながらも、取り乱すことはなかった。
 渓谷と光の位置、そしてグリドールの動きを見ると静かに口を開いた。

「ベス、貴方は実際グリドール軍の何人を相手にできると思う?」

 試す様な表情のリズに、ベスは重々しく顔をあげる。

「2万人だ。それもこちらは、相当数の戦力を失うかつ、街道を完全に潰してだな」

 ベスは最後の罠を仕掛けた所を指差すと、苦々しげに言い放った。

「そうね、私も同意見だわ。でも、それはこのバカでかい光の柱が悪さをしなかったらってことが条件になるわね」

 リズは10本のレベル100を超える光の柱を指差した。
 光は一定間隔にグリドールの陣地に点在しており、進軍に合わせて進んでいる。

「あっ!」

 渓谷側の、陣地から数個の光が消えた。

「クソッ!見つかったか!!撤退しろ!」
「もう念話を送ったわ。一つ後ろの陣地に後退させるわよ」

 リズの言葉が終わる前に、生き残った光が退却を開始する。

「──僕が、出ようか?」

 進軍を進めるグリドールと、一つ二つと味方側の減っていく光。
 人を殺すことは怖い。
 僕は、戦争をするためにこの世界に来たわけじゃない。
 ゲームの様に、光っていた命の灯火は、消えると決して蘇ることはない。

 その現実に、カタカタと無自覚に身体が震えた。
 情けないとは思うが、どうしてもグリドール側の兵にも、守るべき家族がいるのだと思うと、その生命を圧倒的な力で奪ってしまうことに、心が追いついてくれるとは思わなかった。

「ユズキさん──」

 セラ様が僕の手を握る。
 不思議だが、手を握られるとフッと身体の震えが止まった様な気がした。

「──バカね。私がユズキを前に出す訳はないわ、それこそがグリドールの狙いよ」

 リズはそう言うと、セラ様の肩に手を置いた。

「ユズキが前に行くと言うことは、セラが一人ぼっちになるということ。その分断を、アマラとやらが放っておくと思う?かと言って、セラを連れては、ユズキは前線で思うように戦えない」

「ハッ、俺だってユズキ一人に戦線を負わせることなんてしないよ」

 ベスが僕の肩を叩くと笑った。

「ですが、このままではこちらの兵が失われ続けるのも、また事実ですぞ。一体どうなさるおつもりで⋯⋯って、まさか!!」

 ローガンは、リズが地形の一部を指で線をつける様になぞったのを見て驚嘆した。

「まさか!この街道全てを潰してしまうおつもりですか!!」

 ローガンの言葉にリズは笑顔を見せた。

「ご明察!トナミカに続く道はこれ一本。この道を封鎖すれば、文字通りトナミカは干上がってしまうわ。だから、完全には私達もこの道を潰せない。──そう思っている、敵の逆をつくのよ」

 リズは笑みを見せると、念話を送った。

 ──さぁ、全部の罠を発動させるのよ!!




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