うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo

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第5章 戦争

最後の戦い 1

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 一瞬の浮遊感。
 その感覚が消え、両足に大地の感触が戻った時、僕達はルドミナス島に転移を完了した。
 転移の際、僕は『譲渡士』のセライとの融合は解いていた。
 スキル『女神の調律』を解除した今、『譲渡士』の姿より、万能に対応できるユズキの姿の方が都合が良かったためだ。

「みんないる?」

 リズの手によって転移した僕達は、互いの無事を確認するように姿を確認しあった。

「ユズキさん!ここです!」
「えぇ」 
「ん」
「はいっ!!」

 次々と声が挙がり、木陰や物陰から皆が集まってくる。

「ここは?」

「ルドミナス島の端よ。といってもルドミナス島自体が一周数キロ程度の小さな島だから、さほど中心部からも遠くないわ」

 リズは膝についた埃を払うと、顔を曇らせた。

「どうやって、お父様がこの島を転移させたのかは分からないけど、はっきり言えることは、まともな方法じゃないことだけは確かね」

 そうだ。
 短距離での転移でも莫大な魔力が必要なことを考えれば、島ごとの転移などは前代未聞だろう。

「急ぎましょう、またメーシェが『消失エリミネーション』を撃たないうちに」

 イスカの言葉に僕は頷いた。

「えぇ、元々この島は外敵から本島を守るための、砦の役割を果たしているの、数百メートルで砦が見えてくるはずよ」

 そう言うと、リズは先導するように暗闇の森の中を駆け出した。
 その後をセラ様を背に乗せた僕、イスカ、フーシェの順に続く。

「待って、『万象のまなこ』を使うわ」

 森が開ける前にリズは立ち止まると、スキルを使って敵戦力の確認を行う。
 リズは直ぐにスキルを解くと小さく頷いた。

「大半の兵は海岸に、だけど強力な力が砦の中に配置されている。特徴的な波動は、お父様とメーシェであることに違いないわ」

 リズはそう言うと、森の先から見えた石造りの砦を見上げた。

「幸い、砦に防御魔法はかかっていない。でも、普通に進んでいれば時間がかかるわ。この砦、私が知っている時よりも大きくなってる」

「分かった、メーシェの位置は?」

 リズは直ぐに『情報共有』のスキルを発動させた。
 直接脳内に、リズが得た情報が受け渡されると、メーシェとメナフの波動を感じることができた。

「ここより少し北東、距離は300メートルくらい⋯⋯よし、いける!」

 僕は距離を確認した後に、イスカとフーシェを見た。

「これから、ガイアスピアーで砦の石造りを吹き飛ばす。メーシェに『消失エリミネーション』を撃たせないように、一直線に向かおう。ガイアスピアーは直ぐに消すから、フーシェが先行して敵に牽制。イスカは僕と共に魔法でフーシェを援護。リズはセラ様を守って最後尾についてほしい」

「そうね、砦をちまちま攻略していたらトナミカが危ないわ」
「分かりました」
「ん。オッケー」 

 僕はセラ様を振り返る。
 セラ様は、頑張ってついていきます!と、両手でガッツポーズを作っていた。
 リズは少し緊張した面持ちであったが、大きく息を吐き出すと、覚悟を決めた様に顔をあげた。

「行きましょう、お父様を止めなければ」

 僕は頷くと魔力を組み上げる。
『女神の調律』を発動してない今、桁違いの魔素が身体の中へと集まっていく。イスカ、フーシェ、リズにはレベル99までの『レベル譲渡』は行っているが、セラ様にはそもそも適応できるレベルという概念がなかったため、レベル譲渡は行うことができなかった。

「『ガイアスピアー』!」

 叫ぶと同時に、地面から一本の巨大な土の槍が出現する。
 槍の先は、砦の積み上げられた石壁を大音響で吹き飛ばすと、一直線にメナフとメーシェのいる場所まで壁を貫いていく。
 充分な深さまでガイアスピアーが届いたことを確認すると、僕はガイアスピアーに込めた魔力を吸い取った。
 巨大な質量は、魔力を失ったことでサラサラと砂の様に崩れ始めた。
 この力は『略奪者プレデター』のセライのものだ。
 さて、これで突入口はできた。

「行くぞ!」

 僕の号令に、作戦通り先頭にフーシェが立った。

「敵襲!!」

 ガイアスピアーによって穿たれた穴の奥から、砦の中に待機していた魔族の声が聞こえる。

「シッ!」

 穴に飛び出してきた敵をフーシェが一刀のもとに斬り伏せる。
 敵は、次に魔法で炎を生み出すと、穴の中を駆ける僕達を燃やし尽くそうと火魔法を一斉に放ってきた。

「『凍てつく北風ノーザンウインド』!」

 隣のイスカが炎に向かって魔法を放つ。
 難易度が水魔法より桁違いに高い氷魔法が生み出されると、風の塊が迫りくる炎を吹き飛ばし、一瞬で穴の内側を氷で覆ってしまった。

「世界樹のエルフの知識が教えてくれるんです」

 少しイスカは照れくさそうに笑うと、金色に輝く自分の右眼を指差した。どうやら、彼女は覚醒進化で世界樹と繋がったことで、自由にエルフの知の結晶を自在に引き出すことができるようになったようだ。
 更に数十メートル駆けると、今度はリズが大声をあげた。

「皆止まって!!」

 慌てて先頭のフーシェが急ブレーキをかける。
 穴の先には敵は見えない。
 だが、リズは緊迫したように、人影のいない穴の先を見つめると口を開いた。

「相変わらず、人を罠にはめるのが好きね。イズお姉様」  

 リズが口を開いた瞬間だ。
 突如何もない空間がグラリと歪むと3人の人影が現れた。
 長身の女性、それと曲刀をダラリと両手に下げた色白い男、もう一人は屈強な身体を持ち合わせた2メートルは超える体躯をもった大男だ。

「あら、よく私の仕掛けた罠に気付くことができたのね。落ちこぼれの妹のくせに」

 リズがイズと呼んだ魔族は、口元に怪しげな笑みを浮かべると手に持っていた扇を軽やかな手付きで広げて口元を覆った。

「リズ、あいつらは?」

 僕の言葉にリズは少し緊張した様子で口を開いた。

「私の姉のイズよ。曲刀を持った男は兄のクロース、もう一人はドミナントで肉弾戦最強と呼ばれる戦士、ストムスよ」

「あら、ドミナントから追放されてあまりに長いから、すっかり姉や兄の顔を忘れたものとばかり思っていたわ」

 イズはそう言うと、リズを蔑む様な目で睨んだ。

「それに⋯⋯意地汚い人族や、鬱陶しいエルフ。半端の紛い物を集めてお父様に歯向かうなんて、なんて愚かな。でも、いいの。その愚かな妹を躾けるのが姉である私の役目なのですもの」

 クックックッと笑いを抑え切れなくなったのか、イズは身体を小刻みに震わした。その様子を見ていたリズであったが、彼女は一呼吸置いて気持ちを落ち着かせると、イズを挑発するように目元を上げた。

 そして、素早く念話で僕達に作戦を伝えると、今度は哀れみを込めた目でイズを睨みつけた。

「あら、その言葉はそっくり返すわ。──それにお姉様、残念ですが口元を覆っても寄る年波には勝てないわよ。いつまで若いつもりでいるのかしら」

 リズの言葉を聞いたイズは、突然の罵倒に石像の様に固まったかと思うと、次の瞬間烈火如く魔力を放出すると、怒りの声をあげた。

「この汚らわしい魔族の面汚しめ!ここでお前達を葬り、お父様への捧げ物にしてやろう!」

 バッとイズが手を振ると、曲刀を持ったクロースと、手にナックルをはめたストムスが一瞬で距離を詰めてきた。

 その一撃を、僕とイスカが受け止める。
 息をつかせない連撃の中、僕はリズの話しかけてきた念話が現実にならないことを願いつつ、イズの立ちはだかる奥に注意を向けていた。
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