うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo

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第5章 戦争

最後の戦い 9

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 メーシェが腕を突き出した状態で、なんとか上体を起こしていた。

「今だよ!」

 メーシェの振り絞った声が僕の耳に届いた。

『──セライ!』

『マスター!分かってるよ!』  

 僕の呼びかけにセライが応えた。

『残存魔力集中。超広範囲殲滅魔法陣形成──』

 僕が剣を振るうと、地面に今まで見たことのない程大規模な魔法陣が描き出された。

『展開術式内、位相空間固定』

 司令塔を失い、魔法陣の外へと漏れだそうとした肉塊が魔法陣の縁まで達すると、見えない力によって弾かれた。

「この──ガキがぁっ!」

 先程まで余裕を見せていたアマラの顔が醜く歪んだ。
 その余裕のなさから、僕は今描き出した魔法陣が完成すれば、憐れな肉の塊に変わってしまったメナフを完全に消滅させることができると確信を持つことができた。

 怒りによって、僕の行動を邪魔しようとアマラは手を出したが、その手は僕の身体をすり抜けていった。

「鏡の世界には──触れれない。だろ?」

 先程のアマラの言葉に僕は意趣返しを行った。
 僕の言葉に顔を真っ赤にしたアマラは、プルプルと身体を震わすと、激昂した表情で全身に力を込めた。

「──もう、いいわ!揃いも揃って邪魔ばかり!!もう、ルールなんて知らない。今この瞬間にお前を殺せば、この世界は完全になくなるのだから!」

 アマラの振り上げた手が光を放った。
 ホログラムの様に空中に映っていた像が実体を伴い始める。
 ───神の受肉。
 アマラは禁じてであるはずの、世界への直接干渉を行おうとしたのだ。

『マスター!今止めたら術式が崩壊します!!』

 セライが叫ぶ。

「ユズキっ!!」

 皆が叫ぶ。
 例え僕が死んだとしても、この一撃だけは完成させないといけない。
 それが、僕をこの世界に導いてくれたセラ様に報いることになるのだから!

「あははっ!私の勝ちよ!!」

 ──くそっ、間に合わないか!?

「そこまでじゃ」

 頭上に見知らぬ声が響くと、アマラの振り下ろされた手が、突如空中で止まった。

 ──!?

 確かに、アマラの手は実体化されていた。
 しかし、その手は僕の頭上1cm程で強い力によって止められていた。
 僕は顔を上げる。
 見上げると、白髪の老人がアマラの腕を握っていた。握られたアマラの手は全く動かすことができず、驚愕の表情を浮かべた。

「ゼウス!何故元老院の貴方が!!」

 アマラの叫びにゼウスと呼ばれた白髪の老人は、僕を見るとニヤッと笑った。

「ほれっ、セラフィラルの愛し子よ。今のうちじゃ──」

 状況に全く動じないのか、ゼウスは茶目っ気たっぷりに僕にウインクした。

 ──!
 
 老人の言葉に、僕は魔法陣が完成していることにハッと気付かされた。僕は、完成した魔法陣を起動させるため、高々と剣を掲げた。

「『セラフィラルゲート』!!」

 雷鳴の如き光が瞬いたかと思うと、肉塊を封じ込めていた魔法陣が純白に輝き、天に向かって光が駆け上がった。

「──あっ」

 僕は、自分の身体の中から何かが抜け落ちる感覚を感じた。
 うっすらと白い光が、セラフィラルゲートの中へと吸い込まれていく。

「ぐ、グウッ──」

 レベル9999のメナフだった肉塊を消滅させる程の凄まじい魔力。
 僕は身体の中が空っぽになるほどの脱力感を覚えた。

「私の悲願がっ!」

 アマラの虚しい叫びが響く。

「綺麗⋯⋯」

 空に昇る光を見つめるイスカ達が無意識に呟いた。

「ウオオオッ!」

 最後の一滴まで振り絞るつもりで魔力を注ぎ込む。
 ゼウスはアマラを止めながら、僕の様子を見つめると口元に笑みを浮かべた。

 ──キンッ!
 突然、金属音に似た音が周囲に響き渡った。

「ほっ、人の身で開きおったわ」

 ゼウスが感心したように笑った。
 音と共にセラフィラルゲートの放つ光が消失する。

「何よあれは──!?」

 リズが白色の光が消えた先に残った物を確認して、顔を青ざめた。
 天に昇る光の中から現れたのは、宇宙まで届くかと思われる分厚い門であった。
 重厚かつ荘厳。僅かに金色に輝く門は、素晴らしい装飾が施されており、見る者を圧倒させた。

 ──ゴウンッ

 重々しく、その扉が僅かに開いた。

「ん!見て!!」

 セラフィラルゲートを発動させた時に、僕の身体から抜け出た白い光がフワフワとゲートの前で漂っていた。

「人の分際で、神の世界への扉を開くなんて──神を冒涜する行為だわ!」

「黙れ。そういうお主は、禁忌とされておる他の神が統べる世界への直接的な関与を行ったのじゃ。お主は許されて、神の子供達が許されぬ道理はあるまい」

「──ゼウス、これは違うのです⋯⋯。私は、セラフィラルのことを思って」

 ここまで来て、覆せるはずがないのに、アマラはゼウスに弁明を口にし始めた。
 アマラの口調と僕の知っている神の名前から察するに、ゼウスはアマラとは比べ物のない程に高位の神なのだろう。

「ふむ、おかしいのぉ。お主が言うセラフィラルに、儂は助けを求められたのじゃがのぅ」

 ゼウスはそう言うと、セラフィラルゲートの跡に残った扉を見つめた。

 僅かに開いた扉から、僕のセラフィラルゲートとは比べ物にならない、鳥肌の立つ程の力が溢れ出した。
 黄金に輝く光は、扉の前をフワフワと漂っていた光に注ぎ込まれると、白色の光を包み込む様に力を注ぎ込んだ。

「ユズキさん!見てください!!」

 イスカが眩い光の中を指差した。

「──あれはっ!」

 僕も気づいた。
 黄金の光の中に、うっすらと人影が像を結ぶのを。
 光はゆっくりと収まりを見せる。
 それと、対照的に人影がはっきりと分かるようになった。

 小柄な身体だ。

「あっ!」

 リズが驚いた様に叫んだ。
 像を結んだ光は、ゆっくりと動き出す。
 フワリと宙を舞うと、リズの隣に横たわるセラ様の亡骸の上に浮かんだ。
 そっと、光の人物の手が『消失エリミネーション』によって貫かれた胸元へと手を添えた。
 光は、ゆっくりと形を崩しながらセラ様の身体の中へと吸い込まれた。

「アマラ、お主の負けじゃよ」

 ゼウスが言葉を言い終えると、光は完全にセラ様の身体の中へと消えていった。

「──ケホッ」

 亡骸となっていたセラ様が、小さく咳き込んだ。

「──!!」

 皆が驚きと歓喜の表情を浮かべた。
 ほんのりと赤みを差したセラ様の頬。
 ゆっくりと、そのつぶらな瞳が見開かれようとしていた。
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