【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい

寿明結未

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71 アラーシュの反撃。

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――アラーシュside――

無事孫が二人も見つかり、息子の子であることもシッカリと確認できた翌朝、私は遅れながら商業ギルドにて、


「ナカース王国のダンノージュ侯爵家の店が、道具店サルビアとネイルサロンの二か所である。かの店主、カイルとライトは我がダンノージュ侯爵家の孫であり、修行の為に身分を偽り冒険者としての強さも求めさせていた」


と言う旨を伝えると、慌てふためいてカイルが商業ギルドで契約した書類を持ってこさせると、ワシ自らサインをし、血判を押した。
神殿契約の弱い類の書類だが、血判を押すことで「我こそが本来のオーナーである」と言う事を示すことが出来る。
同じ神殿契約の家系図を持っている為に出来る裏技のような物だ。


「本来早く来る予定だったのだが、ダンジョン活性化などで来るのが遅れてな。遅くなったが正式な契約をして貰えて良かったよ」
「いえ、滅相もありません!」
「では、これからも孫たちをよろしく頼むよ」


そう言って店の外に出ると、ワシは馬車に乗り込み今後の予定を執事であるブラウンから聞く。
昼からは会合が開かれ、この国が如何に発展したかなどの大まかな話のあとで、カイルの店をどの貴族がもらい受けるかの話し合いになりそうだ。
この際、暫く黙っておいて様子を見るのも一興だろう。

また、この国の国王にあまりいい思いをしていない他国の貴族や重要人物は多い。
その人々の前で、この国の国王がやった悪事を教えるのもまた一興。
やる事はたんまりありそうだ。

何処の国の貴族でもそうだが、貴族の家が行っている店を奪おうとすることは禁止されている。
それを堂々と語るこの国の国王と貴族たちに一泡吹かせてやるわ。
また、我が侯爵家にすり寄ろうとする貴族の選別もせねばならん。
まず潰すべき相手は、リディアの実家だろう。
リディアは昔、養女に欲しいと彼女の父に行ったところ拒否されたのだ。
その娘を平民に落としたとなれば、彼女の父もタダではすまない。
ましてや、義理の息子が愛妾にしようとしていることも公になれば、夫婦で参加している者たちからの批判は大きい事だろう。

まずは様子を見て、ジワジワ攻め落としてやろう。

赤い瞳が燃えるように光り、ワシは昼の会合場所――城へと脚を踏み込んだ。




国民は日々の生活に精一杯だというのに、城は煌びやかな作りになっているのもナンセンスだ。
国民を国民と思っていないのが良く伝わる。
カツカツと足音を立て、向かった会議室のような場所には、夫婦で参加している者たちが多く広く長いテーブルと一緒にズラリと紅茶担当だろうか、メイド達が並んでいた。
――こうして始まった会合だが、国王のコレデモカと言わんばかりの自慢話に飽きてきたころ、道具店サルビアとネイルサロン・サルビアの話が出てきた。


「ところで、最近この国では道具店サルビアと言う店と、そのオーナーが取り仕切る、ネイルサロン・サルビアと言うものがありましてな。あれだけの売り上げを伸ばしている店は早々ない。此処は一つ、貴族である我々こそが手に入れるべき店だと思うのだが、どうかね? マルシャン公爵」
「ええ、ええ。あれだけの売り上げを伸ばしているような店は、是非貴族である我々こそが持つべき店です。オーナーである若造を追い出し、その全てをもらい受ける義務がある」


ほほう……本当にクズばかりの王国のようだな。
ワシは紅茶を飲みながら話に耳を傾けると――。


「しかし、平民であろうとも一から築き上げた店を奪い取るのは、人道に反するのでは?」


そう答えたのは、別の貴族だ。
彼の言う事は最も、だが、彼のような考えの物は半数もおらず、殆どが国王とマルシャン公爵の方へと流れているようだ。
元々この国はダンジョンで成り立っている国だ。
貴族の収入と言うのも少ないのだろう。
故に、持っている平民のものを奪う。
それがまかり通っているのだと理解した。


「そう言う事を仰る方々は、道具店サルビアの持つ財産及び店を持つ事は許しませんぞ!」
「そもそも、その店はカイルと言う青年が始めた店だろう? 彼の承諾もなしにその様な横暴、許されるはずがありませんぞ!」
「所詮は庶民だ、直ぐ次の商売を始めるだろう。そうでなくても溝攫いなど仕事はいくらでもある」


うちの孫を馬鹿にする言い方に、そろそろワシも口を開くかと思い顔を上げると、この国の国王はワシに気が付き 「どう思われますかな? ダンノージュ侯爵」 と語りかけてきた。
これはいい。
存分に言いたいことを伝えよう。


「まずお聞きしたいことが」
「何でしょう」
「確か、国際法により、貴族及び他国の貴族の家の商売、財産をその国が奪う事は禁じられていましたな」
「その通りですがどうしたのです?」
「いえ……先ほどから話題になっている道具店サルビアやネイルサロン・サルビアの店主、カイルと、店員のライトはワシの孫でしてな。サルビアは我がダンノージュ侯爵家の家門でもある故、お解り頂けるかと思っていたのだが違ったようだ」


この言葉に、この国の国王と、国王に着いていた貴族達はざわめき、こちらを凝視してきた。


「他国でもこの国でもある話であろう? 友好国に跡継ぎである息子を領地をシッカリと回せるように、他国に店を構え儲けさせると言うのが」
「あ……あるにはありますが、している者など」
「それを、ワシは孫たちにこの友好国である国でさせたのだが、間違いだったようですなぁ」


ワシの言葉と鋭い目に、国王は目を反らし、他の貴族たちはオロオロとしているようだ。


「これでは、この国が友好国と言うのは嘘となる。持ち帰り、ナカース王国の陛下に進言せねばなりませんな」
「そそそそそそそ……それは困ります! 知らなかったのです! それに商業ギルドも、」
「本当は早めに来て登録を行いたかったのですが、丁度ダンジョン活性化で足止めを喰らいましてな。今朝、本当のオーナーはダンノージュ侯爵家であると言う登録を済ませてきたばかりですよ」
「そ、そうですか!」
「後は、孫たちから面白い話を聞きましてね? ここにいらっしゃる他国の貴族たちは覚えがあるだろうが、この国の女性の仕事の少なさ、仕事のし辛さと言うのが問題になったのを覚えてらおられますかな?」


そう問いかけると、結構な人数の他国に貴族が頷き「確かに話にあがりましたな」と言ってくれた。では、真実を話そうか。


「孫の経験談及び、話によると、女性の働き口は娼婦だそうですよ」


この言葉に他国に貴族及びその妻達は顔を顰め会場が騒めいた。


「実は、孫が沢山の娼館から娼婦を助け出す名目で買いましてね。その中の数人にネイリストになった者たちもいるそうです。まさか、他国の家の者が、この王国で問題となっている女性の健全なる職と言うのを用意する羽目になるとは思いもよりませんでしたよ」


笑顔でそう伝えると、国王は顔面蒼白で何とか言葉を出そうとしているが、言葉が出ないようだ。では続けて話をしよう。


「さらに、溝攫いして最低賃金以下の仕事をさせ、食うに困る様な生活をしている者たちも多くいたそうです。無論孫は彼らにも手を差し伸べ、サルビアで雇ったそうですよ。また、夫の暴力に逃げた女性と子供の保護もしたそうです。本来国がすべきことを、何故我がナカース王国の者がせねばならんのでしょうな?」


そこまで言うと、他国の貴族はこの国の王に厳しい視線を向けた。
ナカース王国の、しかも侯爵家の家が行っている商売を奪おうとした事。
女性の社会進出と言いつつ、娼婦にしていたこと。
国際法で決まっている最低賃金を払っていなかった事。
配偶者の暴力には、国が直ぐに保護をする事。
当たり前に他国では出来ていることが、何一つ出来ていなかったのだ。


「ところで、マルシャン公爵家には、リディアと言う娘が居ましたな? ワシが養女に欲しいと言った娘です。覚えておいでですね?」
「はひ!」
「その娘が……何故平民に落とされたのか、理由をお聞かせ願えますかな? 無論本人と周囲の者たちから話は既に聞いているので、確認の為に聞きたいのですが」
「そ……それは……」
「ああ、ついでに其方の義理の息子さんでしたかな? 彼はリディアを愛妾にしたいそうですな? 父親である貴方はご存じでしたかな?」


此処まで言うと、他国だけではなく自国の女性、妻達からの視線は射抜くような視線になった。
誰も助けようとはしないだろう。


「さぁ、教えてくだされ。ナカース王国の侯爵家が養女に欲しいとさえ言わせた素晴らしい人材を平民に落とし、その辺の貴族の愛人になれといったそうですなぁ。それが父親の言葉とは到底思えませんぞ? その平民となった義理の姉を愛妾にしたいというそちらの義理の息子は、一体何を考えているのか」
「それは……何とも、そのような事は……言ったような記憶は……」
「安心なさい。ワシがリディア嬢から聞いたのですから間違いはありませんぞ」


止めの一言。
実際にはまだ会っていないのだが、あの後追いかけてきたライトにより色々聞いたワシは、このネタを使わずにはおれんかったのだ。


「まぁ、平民に落とし今ではマルシャン家とは縁が切れた娘……そうですね?」
「はい!! もう我が公爵家とは縁が切れております!」
「それは良かった! では、我が侯爵家の跡取り息子、カイルの妻として頂いていこう」
「なんですと!?」
「縁は切れていると言ったのです。そちらと関係を持つ事は一生無いでしょうな」
「そ……そんな……」
「さて、サルビアを奪おうとした件、その他諸々ありますが、他国の貴族たちは自国に帰り、どう自国の王に進言なさいますか?」


こうなると最早この国の存亡すら危うくなるのだが、知った事ではなかった。
どこかの国の属国にするのはどうかと言う意見しか結局出なかったが、そうなった場合、王家と言うのはお飾りにしかならず、決められた金を貰い細々と存在するしかない。
流石に庇い立て出来る問題でもなく、会合は速やかに自国の王に伝えるべき問題であるとして纏まり、慌てふためいた国王が何とかしようとしたが最早無駄な事であった。


「待ってください! 皆さん話を!!」


そう言う国王の話など誰も聞かず、夜の晩餐会には不参加を表明し自国へと帰る貴族達。
戦争を起さぬための、国が国として成り立つために最低限、国民が持つべきモノを蔑ろにしたこの国は、近いうちに話し合いの末、どこかの国の属国へ落ちるだろう。


「ダンノージュ侯爵様! どうかお慈悲を!!」


そう叫んでもワシは振り向くことはせず、反対に孫たちに良い話が出来そうだと嬉しい気分になっていた。
執事のブラウンに「夜また向かうと告げてくれ」と言うと、ブラウンは嬉しそうに頷き馬車に乗り込み宿へと戻った。
そしてその夜――。
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