【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい

寿明結未

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172 アラーシュとの会話と各所の見回り。

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――カイルside――


何回も来ると慣れは出来るもので、祖父の家の通路を歩きながら何時ものように執務室へと案内される。
俺の登場に祖父は顔を上げると「よく来たな」と出迎えてくれたが、直ぐに人払いを済ませるとソファーに座るように指示を出した。


「問題でも起きたか?」
「ええ、随分とダンノージュ侯爵領の薬師協会は腐敗しているようですので、徹底的に潰しに掛からねばならないと思った次第です」
「ほう?」


そう告げると、本日あった出来事を話し、尚且つリディアに対し「小娘」と言って愚弄したことも話すと、祖父は大変いい笑顔で「それは潰さねばならんなぁ」と口にした。


「そこで、どうやら彼らは協会が規定しているスキルを持っていないのに協会を動かしていることが分かりましたので、リディアからこちらを借りてきました」
「スキルボードか。リディア嬢は何でも作れるな」
「ロストテクノロジー持ちですからね」
「どこにも所属していないロストテクノロジー持ちが我が家にいると思うと、教会の奴らの驕り等、どうでもよくなるわ。だが彼女を守る為にもワシも一肌脱ごう」
「と、言うと?」
「スキルボードは教会しか所持を許されていない。故に、ワシが教会に貸しを山のように持っているので、此れを使おうと思う。教会からスキルボードを借りて来てやろう。リディア嬢が持っている物と含めて数個な」
「なるほど、教会の持つスキルボードを借りてまで、不正が無いかをチェックすると言う大義名分が出来るわけですね? ですが宜しいのですか? ダンノージュ侯爵領の薬師協会や薬局が腐敗しているのが分かってしまいますよ」
「リディア嬢を守る為だ、安いものだ」
「……有難うございます」
「直ぐにワシも動こう。なに、一週間ほど借りるだけだ。それに、不正を暴くにしても監視員にはキッチリとした者を選び、神殿契約をさせる。買収など出来ない様にな」
「それが宜しいですね。もし不正があったらどうなさいます?」
「斬首刑だろう。そう法律で決まっている」
「しかし、薬師が減ればダンノージュ侯爵領の薬局問題が更に加速します」
「うむ、そこで本当に薬師として力を付けたいと思っている者は、監視を付けてスキルを上げさせる。それでダメなら斬首刑になるだけだ。まぁ上は腐っているようだから首と胴体が離れるがな」
「救済処置は必要ですからね、それでいいと思います」
「薬局の開店は明日からだったな。直ぐに動くとしよう」
「お願いします」
「ダンノージュ侯爵家の跡継ぎを愚弄した罪は大きい。それを解らせるためにも必要な処置だ」


そう言うと祖父も動き出し、俺もやるべきことがある為屋敷を後にしたのだが、果たして明日からどうなるのか、実に見ものだ。
だが、これ以上腐敗していることが無い事を祈りたいが、やはり父が駆け落ちした事もあって領の全てまでは祖父も手が回らないのだろう。
諸々落ち着いたら、ダンノージュ侯爵領全てを回って、色々対策を練りたいところだ。

そんな事を思いながら、今日もまた商業ギルドにくると職員はバタバタと俺の許へと駆け寄ってきた。


「いらっしゃいませカイル様、本日はどの様な案件でしょうか」
「絵師を雇いたい、男性でも女性でも構わないが9人から10人いればまずは大丈夫だ。後は製本所を一つ紹介して頂きたい、まともな運営をしている所を頼む。あとはパティシエ師を雇いたいがこちらは10人程欲しい。次に本や絵本を書ける小説師を2名ほど。後は子育て中の母親が望ましいが、計算や文字が書ける男女どちらでも構わない、4名ほど雇いたいが頼めるか?」
「分かりました、この案件ですと明後日には手配できますが」
「では明後日面接を行いたいので、朝から頼む。神殿契約を出来る者を頼むぞ」
「畏まりました」


こうして、必要な人材を頼んで明後日の朝一番に来れば、何とかなりそうだ。
問題は小説師だが……良い人材に出会えることを祈る。


こうして一通りの必要な商業ギルドでの用事が終わると、俺は久々に道具店サルビアへと向かった。
商店街は今も活気にあふれており、多くの人通りがあったがポイントカードの導入も本日からと言う事もあり、道具屋は冒険者で溢れていた。
既に水筒を買った者たちも多いようで、パーティで購入したのかワイワイと盛り上がっているようだ。


「これは入れないな……しょうがない、王太子領の焼肉店の様子を見に行こう」


余りの人出に身動きが出来ないほどだった為、裏路地のような場所に入ると直ぐに移動して王太子領に向かうと、焼肉店の前は恐ろしいまでの行列が並んでいた。
二店舗両方だ。
耳を立てて話を聞くと、昼の焼肉定食を食べた冒険者が夜の部にも来ているらしく、それが噂を読んでこの状態らしい。
夜の部までは時間がもう少しあるのだが、きっとビールが足りなくなるだろうと予想し、箱庭に戻るとリディアの元へと向かおうとしたその時だ。


「あ、カイル様。もしかしてビールの追加にでも来ましたか?」
「ああ」
「それでしたら、既に焼肉店のリーダーが二店舗同時に取りに来て、リディア様から受け取って居ましたよ」


やはりビールを取りに来ていたか……。
5000本あったビールは研修と昼の間に消えたらしい。
前もってリディアはビールに関しては多く作ってくれていたので助かったが、これからは毎日作る事になりそうだ。


「それと、子供達のスキルチェックが終わったらしく、お話があるとの事でした。それと、足ふみミシンの様子を見てきて欲しいと」
「分かった」


そう言うと王太子領にある布製造所へと向かうと、ガタガタと激しい音と振動を感じる。
どうやら足ふみミシンの音の様だ。


「サーシャ、居るか?」
「こちらに、どうなさいました?」
「ああ、足ふみミシンの具合はどうかとリディアが気にしていてな」
「見ての通りです。コツを覚えたら前の倍以上の速さで縫えています。子供用の服も大量に出来ていますので、箱庭用と孤児院用とで分けていた所です」
「それは助かる。先に孤児院に持って行こう。後はほっかりシリーズも孤児院用は出来ているか?」
「抜かりなく」


そう言ってズラリと並んだ服とほっかりシリーズを見せると、俺は感謝の言葉を告げてアイテムボックスに入れていくと、「差し支え無ければですが」とサーシャが口にする。


「リディア様に、子供のマネキンと大人用のマネキン男女で欲しいと伝えてください」
「幾つ欲しい?」
「出来れば男女で合計10個ほど。子供用も男女で4つあれば助かります。いつでも構いません」
「伝えておく、何時もすまないな」
「いえいえ、私たちの生きがいです!」


そう胸を張ったサーシャに頷き、鞄に全てを詰め込むと各孤児院を回ってほっかりシリーズと服を均等に渡し、戻る頃には夜になっていた。
孤児院からは、今度紙おむつを更に追加で欲しい事を伝えられたため、明日の昼には届くようにしなくてはならないだろう。
そんな事を思いつつリディアの元へ行くと――何やら揉めているようだ。
一体誰と誰が揉めているんだ?
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