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閑古鳥武器屋休業中
側近悪魔と使い魔
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生まれて初めて転移魔法というものに触れて辿り着いた魔王城、の一室。
内装からはあんまり「魔」という雰囲気がしなくて、見た感じ普通の城という印象を受けた。いや、実際に普通の城を見たことはないけど。小説で得たにわか知識ぐらいしか持ってないけど。
俺とルダセイクが降り立ったその部屋は俗に言う執務室?書斎?のような所で、デスクの上に大量の書類が山のように盛られていた。
そのデスクに一つの人影。肘を付いて両手を額に当てている、ライムグリーンの髪の……多分男性。頭からは矢印の形をした黒い角みたいなのが生えていて、人間じゃないことが見て取れた。魔王城にいる以上当たり前のことだけど。
時折聞こえてくる短い溜息にルダセイクは眉をひそめた後、その人に声をかけた。
「レオルガ」
「……ん?あぁ、帰っていたんですね、ルダセイク。積年の願いは成就出来ましたか?」
そう言いながら顔を上げた緑髪さんは知的で眼鏡なイケメンでした。
……魔王様といい、さっきの妖精といい、人外の皆様の顔面偏差値が高すぎて泣けてくる。俺にも少し分けてほしい。
「いや、まだだよ。ゆっくり育んでいるところさ。……レオルガが医者もお手上げな病気にかかっているとクーロンから聞いたんだが」
「病気……とはまた違う気がするのですが……。ところで、そこにいる人間は誰です?……もしや、例の?」
「ああ、そうだ。……アルジュ、彼はレオルガ。僕の優秀な側近だよ」
「へ、あっ、は、初めまして、アルジュです。えっと、よ、よろしくお願いします、レオリュガさん!」
「……変な呼び名にしないでもらえますか?」
「ひぃっ!すっ、すすすすみません!噛みました!」
「……レオルガ、アルジュを怖がらせるな」
「む……怖がらせるつもりは……。全く、人間とは脆弱なものですね」
確かにレオルガさんの眼光も怖かったけど、貴方のオーラも充分怖いです、魔王様。
「それより、その病気とは何だ。まさか呪いの類か?」
「いや……、それは有り得ません。呪いなら私にもすぐ分かります」
「……具体的にどんな症状が表れるのか教えてくれるか。そうしないと治す方法すら模索出来ない」
「一言で説明するのは難しいのですが……」
考え込みながらもレオルガ君が説明しようとした、その時。
開け放たれていた窓から一羽の鳥が飛び込んできた。鳥といっても雀や燕といった可愛らしい種じゃなくて、猛禽類に属すような大型の黒い鳥。
ビックリして思わずルダセイクの背に隠れてしまった自分が情けない。
部屋を旋回した鳥は我関せずといった風にばさりと羽音をたてて床に降り立つと、くるりとレオルガさんの方を向いた。
そして。
ぼわんという音と共に、
「ただいまオルちゃん!」
──黒目黒髪の爽やかイケメンへと姿を変えた。
「っ、えええええぇぇっ!!?えっ、あれ、鳥……だったよな!?」
「鳥人を見るのは初めてかい?彼は確かレオルガの使い魔の……クザリ、だったかな」
「ちょーじん……?」
情けなくも背に引っ付いたまま問いかけると、ルダセイクはちらりと俺に視線を向けた。……あれ。どことなく口元が緩んでいるような気が……いやいや、それはないな目の錯覚だ、うん。
「鳥の人、と書いて鳥人。読んで字の通り鳥にも人にもなれる種族だよ。攻撃能力は低いけど、視野が広くて諜報に長けているんだ」
「へぇ……そういう種族もいるんだな」
俺がルダセイクから人外講義を受けている傍らで、鳥人兼使い魔なクザリ君はレオルガさんに抱きついていた。
内装からはあんまり「魔」という雰囲気がしなくて、見た感じ普通の城という印象を受けた。いや、実際に普通の城を見たことはないけど。小説で得たにわか知識ぐらいしか持ってないけど。
俺とルダセイクが降り立ったその部屋は俗に言う執務室?書斎?のような所で、デスクの上に大量の書類が山のように盛られていた。
そのデスクに一つの人影。肘を付いて両手を額に当てている、ライムグリーンの髪の……多分男性。頭からは矢印の形をした黒い角みたいなのが生えていて、人間じゃないことが見て取れた。魔王城にいる以上当たり前のことだけど。
時折聞こえてくる短い溜息にルダセイクは眉をひそめた後、その人に声をかけた。
「レオルガ」
「……ん?あぁ、帰っていたんですね、ルダセイク。積年の願いは成就出来ましたか?」
そう言いながら顔を上げた緑髪さんは知的で眼鏡なイケメンでした。
……魔王様といい、さっきの妖精といい、人外の皆様の顔面偏差値が高すぎて泣けてくる。俺にも少し分けてほしい。
「いや、まだだよ。ゆっくり育んでいるところさ。……レオルガが医者もお手上げな病気にかかっているとクーロンから聞いたんだが」
「病気……とはまた違う気がするのですが……。ところで、そこにいる人間は誰です?……もしや、例の?」
「ああ、そうだ。……アルジュ、彼はレオルガ。僕の優秀な側近だよ」
「へ、あっ、は、初めまして、アルジュです。えっと、よ、よろしくお願いします、レオリュガさん!」
「……変な呼び名にしないでもらえますか?」
「ひぃっ!すっ、すすすすみません!噛みました!」
「……レオルガ、アルジュを怖がらせるな」
「む……怖がらせるつもりは……。全く、人間とは脆弱なものですね」
確かにレオルガさんの眼光も怖かったけど、貴方のオーラも充分怖いです、魔王様。
「それより、その病気とは何だ。まさか呪いの類か?」
「いや……、それは有り得ません。呪いなら私にもすぐ分かります」
「……具体的にどんな症状が表れるのか教えてくれるか。そうしないと治す方法すら模索出来ない」
「一言で説明するのは難しいのですが……」
考え込みながらもレオルガ君が説明しようとした、その時。
開け放たれていた窓から一羽の鳥が飛び込んできた。鳥といっても雀や燕といった可愛らしい種じゃなくて、猛禽類に属すような大型の黒い鳥。
ビックリして思わずルダセイクの背に隠れてしまった自分が情けない。
部屋を旋回した鳥は我関せずといった風にばさりと羽音をたてて床に降り立つと、くるりとレオルガさんの方を向いた。
そして。
ぼわんという音と共に、
「ただいまオルちゃん!」
──黒目黒髪の爽やかイケメンへと姿を変えた。
「っ、えええええぇぇっ!!?えっ、あれ、鳥……だったよな!?」
「鳥人を見るのは初めてかい?彼は確かレオルガの使い魔の……クザリ、だったかな」
「ちょーじん……?」
情けなくも背に引っ付いたまま問いかけると、ルダセイクはちらりと俺に視線を向けた。……あれ。どことなく口元が緩んでいるような気が……いやいや、それはないな目の錯覚だ、うん。
「鳥の人、と書いて鳥人。読んで字の通り鳥にも人にもなれる種族だよ。攻撃能力は低いけど、視野が広くて諜報に長けているんだ」
「へぇ……そういう種族もいるんだな」
俺がルダセイクから人外講義を受けている傍らで、鳥人兼使い魔なクザリ君はレオルガさんに抱きついていた。
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