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閑古鳥武器屋休業中
その病の名は
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………………。
……………………ん?
「っ、クザリ!離れなさい!魔力補給なら後でも出来るでしょう!?」
「無理無理。もう限界だし充電させてよオルちゃん」
「だったらせめて、人目のない所でしてください……!」
えー……と?
俺は一体何を見せられているんだろうか。使い魔って言ってたけど、主人の方が押されているというか、なんかこう、雰囲気がただならないというか。
視線をあちこちにやりつつ、どう反応していいのか困っていると、
「使い魔は主となった者から魔力を分け与えられることで、力をより強く発揮することが出来るんだ。ああやって身体を触れ合わせたり、体液を摂取したりと方法は色々あるけどね」
ルダセイクが分かりやすく説明してくれた。
成程、あれは魔力というモノをもらう行為なんだな。ちょっと気になる言葉もあったけど敢えてスルーしておこう。
「クザリッ、…………とにかく、今は駄目です。部屋に戻っていてください。仕事の報告も後で聞きますから」
「何、それって命令?」
「…………。はい、命令です」
「はいはい、っと。……なるべく早く来てよね~」
使い魔だから命令には逆らえないのか、とぼんやり考えていたら部屋を出て行こうとしているクザリ君と不意に目が合った。
戸惑う俺と悠然としているルダセイクを交互に見やって何かに納得したように頷いた後、クザリ君は軽く一礼して部屋から去っていく。……何も言われないのも、それはそれで困る。そして更に困ったことに、ルダセイクから離れるタイミングが掴めない。思考がクールダウンしたから余計にこの体勢を意識させられてしまう。……そ、そっとさりげなーく離れたら大丈夫、かな。
「…………はあ。行きましたか」
「相変わらず仲が良いな。羨ましい限りだよ」
「……そんな目で見ないでください。…………私の病気の原因はあいつなんですから。羨ましいと思われても困ります」
「それは……どういうことだい?」
ルダセイクとレオルガさんが話し始めたのを見計らって、そっとルダセイクの背中から離れることに成功した。
さっと適正距離を取って、改めて二人の会話に耳を傾ける。俺なんかが聞いたところで役には立たないだろうけど。
「……いつからだったかは覚えていないのですが、彼が私の傍にいると心臓が痛くなって動悸が激しくなるんです。だからといって会わなかったら会わなかったで妙に胸の奥がざわついて仕事に集中出来ません。攻撃されているわけでもないのに、体温まで異常に熱くなって……。特に魔力補給の時は」
「いいよ。もういい。ストップ、レオルガ。大体どころか全部分かったよ。その『病気』の理由も、解消法もね」
「え?」
レオルガさんの言葉を遮って、ルダセイクが呆れたような声音で言い放った。
……そっち方面には疎い俺でも、レオルガさんの病気が分かってしまった気がする。
あれ、でもそうなると男同士ってことに…………?
…………よし、考えないことにしよう。
「どうして僕の周りには鈍い奴が多いんだろうね……。レオルガ、君はクザリのことをどう思っているんだい?」
「どうも何も、クザリは私の使い魔ですよ」
「……質問を変えようか。もし、僕が彼を使い魔にしたい、と言ったらどうする?」
「はぁっ!?……っぐ、…………魔王の命令に逆らえるわけが、ないでしょう」
「ふうん……。じゃあ、そうさせてもらおうかな」
「えっ、ルダセイク、それは流石に…………や、やりすぎのような……」
冗談か本気か分からないルダセイクの言葉に、思わずごにょごにょと口を挟んでしまった。
お前は黙ってろという類の叱責が飛んでくるかと思ったけど、代わりに何故か頭を撫でられた。……何故に?
「アルジュが心配する必要はないよ。それに、使い魔なんてただの駒なんだから、レオルガもすぐに新しい使い魔を……」
「……っ、駒などではありません!クザリを駒扱いするなんて、いくらルダセイクでも許しませんよ!」
「…………へぇ、駒じゃないのなら何だって言うんだい?」
「クザリは、私の…………、私、の」
レオルガさんが戸惑っている様子を楽しげに眺める魔王様。挑発してレオルガさんに『病気』を自覚させようとしてることにようやく気付いた俺だけど、ルダセイクみたくこの状況を楽しむことなんて出来そうにない。
普通に心の中でレオルガさんって呼んでるけど、人外な悪魔さんだからね!多分魔法とかそんなんで一般人の俺なんかぷちっと潰せそうだし、余計なこと喋らないようにしないと。よし、傍観者に徹しようそうしよう。
「私の……──」
レオルガさんの白い肌がほのかに赤く染まっていく。悪魔でも血は赤いんだな、と変な所で知識を得ながら言葉の続きを待つ。
「……レオルガ、答えはもう出ているはずだよ。感じるままに素直な気持ちを吐き出せばいい。それがお前の『病気』の最大の理由だ」
「…………素直に、ですか」
ルダセイクの援護射撃で気持ちが固まったのか、レオルガさんは一つ小さく息を吸って。
「クザリは私の、…………友達、です」
「「……………………は?」」
……………………ん?
「っ、クザリ!離れなさい!魔力補給なら後でも出来るでしょう!?」
「無理無理。もう限界だし充電させてよオルちゃん」
「だったらせめて、人目のない所でしてください……!」
えー……と?
俺は一体何を見せられているんだろうか。使い魔って言ってたけど、主人の方が押されているというか、なんかこう、雰囲気がただならないというか。
視線をあちこちにやりつつ、どう反応していいのか困っていると、
「使い魔は主となった者から魔力を分け与えられることで、力をより強く発揮することが出来るんだ。ああやって身体を触れ合わせたり、体液を摂取したりと方法は色々あるけどね」
ルダセイクが分かりやすく説明してくれた。
成程、あれは魔力というモノをもらう行為なんだな。ちょっと気になる言葉もあったけど敢えてスルーしておこう。
「クザリッ、…………とにかく、今は駄目です。部屋に戻っていてください。仕事の報告も後で聞きますから」
「何、それって命令?」
「…………。はい、命令です」
「はいはい、っと。……なるべく早く来てよね~」
使い魔だから命令には逆らえないのか、とぼんやり考えていたら部屋を出て行こうとしているクザリ君と不意に目が合った。
戸惑う俺と悠然としているルダセイクを交互に見やって何かに納得したように頷いた後、クザリ君は軽く一礼して部屋から去っていく。……何も言われないのも、それはそれで困る。そして更に困ったことに、ルダセイクから離れるタイミングが掴めない。思考がクールダウンしたから余計にこの体勢を意識させられてしまう。……そ、そっとさりげなーく離れたら大丈夫、かな。
「…………はあ。行きましたか」
「相変わらず仲が良いな。羨ましい限りだよ」
「……そんな目で見ないでください。…………私の病気の原因はあいつなんですから。羨ましいと思われても困ります」
「それは……どういうことだい?」
ルダセイクとレオルガさんが話し始めたのを見計らって、そっとルダセイクの背中から離れることに成功した。
さっと適正距離を取って、改めて二人の会話に耳を傾ける。俺なんかが聞いたところで役には立たないだろうけど。
「……いつからだったかは覚えていないのですが、彼が私の傍にいると心臓が痛くなって動悸が激しくなるんです。だからといって会わなかったら会わなかったで妙に胸の奥がざわついて仕事に集中出来ません。攻撃されているわけでもないのに、体温まで異常に熱くなって……。特に魔力補給の時は」
「いいよ。もういい。ストップ、レオルガ。大体どころか全部分かったよ。その『病気』の理由も、解消法もね」
「え?」
レオルガさんの言葉を遮って、ルダセイクが呆れたような声音で言い放った。
……そっち方面には疎い俺でも、レオルガさんの病気が分かってしまった気がする。
あれ、でもそうなると男同士ってことに…………?
…………よし、考えないことにしよう。
「どうして僕の周りには鈍い奴が多いんだろうね……。レオルガ、君はクザリのことをどう思っているんだい?」
「どうも何も、クザリは私の使い魔ですよ」
「……質問を変えようか。もし、僕が彼を使い魔にしたい、と言ったらどうする?」
「はぁっ!?……っぐ、…………魔王の命令に逆らえるわけが、ないでしょう」
「ふうん……。じゃあ、そうさせてもらおうかな」
「えっ、ルダセイク、それは流石に…………や、やりすぎのような……」
冗談か本気か分からないルダセイクの言葉に、思わずごにょごにょと口を挟んでしまった。
お前は黙ってろという類の叱責が飛んでくるかと思ったけど、代わりに何故か頭を撫でられた。……何故に?
「アルジュが心配する必要はないよ。それに、使い魔なんてただの駒なんだから、レオルガもすぐに新しい使い魔を……」
「……っ、駒などではありません!クザリを駒扱いするなんて、いくらルダセイクでも許しませんよ!」
「…………へぇ、駒じゃないのなら何だって言うんだい?」
「クザリは、私の…………、私、の」
レオルガさんが戸惑っている様子を楽しげに眺める魔王様。挑発してレオルガさんに『病気』を自覚させようとしてることにようやく気付いた俺だけど、ルダセイクみたくこの状況を楽しむことなんて出来そうにない。
普通に心の中でレオルガさんって呼んでるけど、人外な悪魔さんだからね!多分魔法とかそんなんで一般人の俺なんかぷちっと潰せそうだし、余計なこと喋らないようにしないと。よし、傍観者に徹しようそうしよう。
「私の……──」
レオルガさんの白い肌がほのかに赤く染まっていく。悪魔でも血は赤いんだな、と変な所で知識を得ながら言葉の続きを待つ。
「……レオルガ、答えはもう出ているはずだよ。感じるままに素直な気持ちを吐き出せばいい。それがお前の『病気』の最大の理由だ」
「…………素直に、ですか」
ルダセイクの援護射撃で気持ちが固まったのか、レオルガさんは一つ小さく息を吸って。
「クザリは私の、…………友達、です」
「「……………………は?」」
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