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呪いの発現編
5、宴
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『いやぁ……お陰様で助かりました。これで心置きなく、農作業に戻れます』
村に戻ると、依頼主である村長が安堵した笑みで、感謝を述べた。
「いえ、俺は何もしてませんよ。バンディットベアを倒したのは、彼女ですから」
ユーリに示され、村長の期待の眼差しが、ミューへと向く。
「おぉ、そうでしたか! 本当に、本当にありがとうございます……!!」
「えぇっ!? え、えっと、あのぉ……っ!?」
ペコペコと頭を下げる村長に、ミューは驚き、慌てている。
「そういえば、村長さん」
「なんでしょう?」
困っているミューを見かね、ユーリが会話に割って入る。
「今回、討伐したバンディットベアの素材なんですが……」
「あぁ、そのことでしたら、お好きになさってください」
「ありがとうございます。ただ、肉に関しては持ち帰りが大変なのもあるので、少しだけ取ろうと思うんです。残りは是非、村の皆さんで好きにしていただければと……」
「良いのですか? 肉は味も良く、街で売れば、結構な値になると思いますが……」
ユーリは、ミューにどうするかと視線を送る。
彼女は少し迷った後、ユーリと意見が同じことを示すように、小さく頷いた。
村長は気を良くし、こう提案する。
「それはありがたい。でしたら、もうすぐ昼時なので、村のモノに調理させるとしましょう。お二人も是非、食べていかれてはどうですか?」
ユーリとミューは、互いに顔を見合わせ、厚意に甘えることにした。
村長の指示により、村でちょっとした宴が開かれる。
冒険者二人を主役に、小さな村中が沸き立ち、彼らを悩ませていた魔物を食べるのだ。
屋外で火を囲み、陽気な村人達が踊り、酒を飲む。
スパイスを利かせ、香ばしく焼き上げたバンディットベアの肉は、柔らかく美味だった。
他にも、新鮮な野菜をふんだんに使ったスープに、リンゴを絞ったジュースなど、豪勢な食事を二人は堪能する。
気弱なミューは、村人達から声を掛けられる度に身を強張らせ、挙動不審になってしまった。
それをユーリは横目に見ながら、村人たちとぎこちない交流をするミューを、温かな目で眺める。
やがて宴が終わると、二人は村人達に温かく見送られ、街へと戻っていく。
帰路を辿るミューの横顔は、達成感に満ち溢れ、笑っていた。
「初めての依頼はどうだった?」
「――楽しかったです」
「それは良かった。俺も無事に終わって、安心したよ」
「あ、あの、ユーリさんっ!」
「ん……?」
「きょ……今日は本当に、ありがとうございました!」
「お礼なんていいよ。俺は何もしてないんだし」
「そ、そんなこと、ないですっ! 私の代わりに手続きをしてくれたり、村の人との交渉もしてくれたじゃないですかっ!」
彼女は胸の前で持っている杖をギュっと握りしめ、珍しく大声を上げた。
「そう言われると、何もしてないわけでもない、か……」
「そうですっ! それに、バンディットベアの足跡を見つけたのも、ユーリさんですっ!!」
「あっ……」
確かにそうだ、とユーリはすっかり忘れていたことを、思い出す。
魔物の場所を村人から聞き、駆け付けた場所に、バンディットベアは既にいなかった。
そこにあった足跡等の痕跡を、ユーリが見つけ、捜索がスムーズにいったのは事実である。
魔物の討伐において行うこの当然の行為を、ユーリは何気なく行っていたため、特別何かをした、という感覚は彼になかった。
冒険者にとって、当たり前のことだが、ミューにとっては当たり前でない追跡技術。
それを認め、感謝されたユーリは喜び、自身を少し誇らしくも感じた。
(そんなことにも、いちいち感謝してくれるなんて、とても優しいんだな、この子は……)
ユーリが抱く、ミューのイメージが、更に良い方へと変わっていく。
「ありがとう、ミューさん。これからよろしくね……っ!」
「は……はいっ!!」
二人は、顔を見合わせて笑う。
こうして無事に、依頼は達成され、新しいパーティーは最初の一歩を踏み出すのであった――。
村に戻ると、依頼主である村長が安堵した笑みで、感謝を述べた。
「いえ、俺は何もしてませんよ。バンディットベアを倒したのは、彼女ですから」
ユーリに示され、村長の期待の眼差しが、ミューへと向く。
「おぉ、そうでしたか! 本当に、本当にありがとうございます……!!」
「えぇっ!? え、えっと、あのぉ……っ!?」
ペコペコと頭を下げる村長に、ミューは驚き、慌てている。
「そういえば、村長さん」
「なんでしょう?」
困っているミューを見かね、ユーリが会話に割って入る。
「今回、討伐したバンディットベアの素材なんですが……」
「あぁ、そのことでしたら、お好きになさってください」
「ありがとうございます。ただ、肉に関しては持ち帰りが大変なのもあるので、少しだけ取ろうと思うんです。残りは是非、村の皆さんで好きにしていただければと……」
「良いのですか? 肉は味も良く、街で売れば、結構な値になると思いますが……」
ユーリは、ミューにどうするかと視線を送る。
彼女は少し迷った後、ユーリと意見が同じことを示すように、小さく頷いた。
村長は気を良くし、こう提案する。
「それはありがたい。でしたら、もうすぐ昼時なので、村のモノに調理させるとしましょう。お二人も是非、食べていかれてはどうですか?」
ユーリとミューは、互いに顔を見合わせ、厚意に甘えることにした。
村長の指示により、村でちょっとした宴が開かれる。
冒険者二人を主役に、小さな村中が沸き立ち、彼らを悩ませていた魔物を食べるのだ。
屋外で火を囲み、陽気な村人達が踊り、酒を飲む。
スパイスを利かせ、香ばしく焼き上げたバンディットベアの肉は、柔らかく美味だった。
他にも、新鮮な野菜をふんだんに使ったスープに、リンゴを絞ったジュースなど、豪勢な食事を二人は堪能する。
気弱なミューは、村人達から声を掛けられる度に身を強張らせ、挙動不審になってしまった。
それをユーリは横目に見ながら、村人たちとぎこちない交流をするミューを、温かな目で眺める。
やがて宴が終わると、二人は村人達に温かく見送られ、街へと戻っていく。
帰路を辿るミューの横顔は、達成感に満ち溢れ、笑っていた。
「初めての依頼はどうだった?」
「――楽しかったです」
「それは良かった。俺も無事に終わって、安心したよ」
「あ、あの、ユーリさんっ!」
「ん……?」
「きょ……今日は本当に、ありがとうございました!」
「お礼なんていいよ。俺は何もしてないんだし」
「そ、そんなこと、ないですっ! 私の代わりに手続きをしてくれたり、村の人との交渉もしてくれたじゃないですかっ!」
彼女は胸の前で持っている杖をギュっと握りしめ、珍しく大声を上げた。
「そう言われると、何もしてないわけでもない、か……」
「そうですっ! それに、バンディットベアの足跡を見つけたのも、ユーリさんですっ!!」
「あっ……」
確かにそうだ、とユーリはすっかり忘れていたことを、思い出す。
魔物の場所を村人から聞き、駆け付けた場所に、バンディットベアは既にいなかった。
そこにあった足跡等の痕跡を、ユーリが見つけ、捜索がスムーズにいったのは事実である。
魔物の討伐において行うこの当然の行為を、ユーリは何気なく行っていたため、特別何かをした、という感覚は彼になかった。
冒険者にとって、当たり前のことだが、ミューにとっては当たり前でない追跡技術。
それを認め、感謝されたユーリは喜び、自身を少し誇らしくも感じた。
(そんなことにも、いちいち感謝してくれるなんて、とても優しいんだな、この子は……)
ユーリが抱く、ミューのイメージが、更に良い方へと変わっていく。
「ありがとう、ミューさん。これからよろしくね……っ!」
「は……はいっ!!」
二人は、顔を見合わせて笑う。
こうして無事に、依頼は達成され、新しいパーティーは最初の一歩を踏み出すのであった――。
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