推しの悪役令嬢を幸せにします!

みかん桜

文字の大きさ
22 / 44

オムライス定食

しおりを挟む
 こ、こ、これは!!!

 オムライスじゃないかっ!

 予想通りマイっていうのはお米のことで。14年ぶりのお米…ちょっと感動しちゃう。この嬉しさを伝えようと隣に座るルーク様に声をかけようとしたら、逆隣に座るお兄様がとんでもない事をボソッと呟いた。

「あれ? 今日はみそスープじゃないんだ」
「お、お、お、お兄様っ!」
「ちょっ、落ち着いて」
「い…いま、みそスープっておっしゃいました?」
「え、あ、うん。言ったよ…?」

 味噌もあったー!! 今日いただけないのは残念だけど、オムライスに味噌汁はちょっと違うもんね。さすがに庶民的になりすぎると思ったのかスープは具だくさんのクラムチャウダーで見栄えもいい。私的にはコーンスープが良かったな。

 円卓テーブルでお兄様の隣に座るニーナ様とその隣に座るセオドア様がちょっと驚いた顔で私を見ている…失礼、少し取り乱してしまったわ。セオドア様の隣に座るオーランドはニコニコとしているけど、あれは多分ニーナ様の驚き顔を脳内に刻み込んでいるわね。

 そんなことよりも。

「ルーク様、必ずお話通しておいてくださいませね」
「お話って?」
「実は…」
「ライナスには内緒だよ」

 耳元に近付いて反対されても困るでしょうって言われたけど、反対されるかな? むしろ内緒話している現状の方が不貞腐れそうな気が…。

「エレナは目新しい食べ物が好きだもんね」

 頷いたり、本当にね、とかみんなが言っていて、お兄様はマウントをとるつもりだったんだろうけど不発に終わってる。

 そもそも目新しいんじゃなくて懐かしいんだけどね。あぁ…王女殿下が転生者だったらいいのに。たとえ転生者じゃなかったとしても祖国の食べ物の話をたくさん教えていただきたいわ。

 オムライス定食を選んだのは私とセオドア様とオーランド。2人はオムライスよりも貝と野菜が沢山入ったクラムチャウダーを気に入ったようで、公爵家でも出してほしいと盛り上がっている。


「えっ! オーランド?」

 ルーク様達と同じように、ダンスの授業を欠席し早々とカフェテリアにやってきた生徒の一人が声をかけてきた。

「ご無沙汰しております」

 セオドア様に断りを入れてからナターシャに返事をして……えっ!? えっ!? ナターシャ!?

「ちょっと、そんなよそよそしい話し方しないでよ」
「申し訳ございません」

 ちょっとちょっと! オーランドってば主人公と知り合いだったの!?

「…………ハーロウ伯爵令嬢様」
「はぁ。またニーナ様ですか」
「何度も申し上げている通り、私は名前を呼ぶ許可を………」

「また始まったよ」
「えっ? またとは?」

 お兄様曰く、ナターシャは入学してから何かとニーナ様に突っかかっているみたい。一緒にいるとお兄様も巻き込まれることがあるから、物凄く面倒なんだそう。

「彼女はライナスの事が好きなのか、やたらと接点を作ろうとしているんだ。良くも悪くもライナスはエレナにしか興味がないから、軽くあしらっているけどね」

 まじか。

「別に僕のことを好きって感じはしないけどね。爵位目当てならルークを狙えばいいのに」

 確かにルーク様も整った顔で背も高くスタイルも良くてめちゃくちゃカッコいい。公爵家の次期当主だし総合的にみたらお兄様より優良物件。でも…妹の贔屓目なしにしてもお兄様もカッコいいよ?

 どちらにせよ見た目や権力だけで好きになる人って苦手だわ。漫画のナターシャもそれが目当てだったっけ? って、主人公がそんな子として描かれるわけないか。

 うーん、やっぱり転生者? でももしそうならニーナ様に突っかかりすぎているというか…お兄様の前で猫かぶらなくていいの? って変な心配をしちゃうくらい上手くできてない。

 何より伯爵令嬢のわりに礼儀がなってなさすぎる。動揺しすぎて気付くのに遅れてしまったけど、何勝手に同じテーブルに座ってるの? いや伯爵令嬢とか関係ないわ。久しぶりに会った人へ声をかけるだけならまだしも、断りなく同席するって前世の感覚でもおかしいよ。

「あの…学園では爵位は関係なく接していいのでしょうか?」
「平等は謳っているけど、彼女は意味を履き違えているんだろう。そもそも孤児院の子供達ですら同席の許可をとるのにね。とても貴族令嬢とは思えないよ」
「ですよね…ニーナ様も無視されたらいいのに」

 せっかく悪役令嬢にならないよう誘導してきたんですもの。ここで覆されたらたまったもんじゃないわ。

「注意したって意味がないし、無視すればいいとニーナにも言ってるんだけどね」

 ニーナ!!! ニーナ嬢じゃなくてニーナ!!! いつのまに!?

「お、お、お兄様っ!」
「えっ、なに?」
「うん。エレナ。何に興奮したのか手に取るように分かるけど、ちょっと落ち着こうか」

 一瞬でナターシャとかどうでも良くなっちゃったわ。未だにセオドア様とオーランドの間に座ってる無神経女とニーナ様が口論しているけど、現状なら悪役令嬢になることはないだろう。

 そういえば、オムライス定食選ばなかったんだ。

「オムライス定食って夜も選べるのですか?」
「料理長は昼しかいないけど、レシピ展開をしているから食べれるはずだよ」

 彼女は朝昼晩とカフェテリアで食事ができる。私と違って食べようと思えばいつでもお米が食べられる状況だから、毎回選ぶはずないってことか。

 まぁニーナ様とお兄様、それとルーク様に迷惑がかからないのであれば、彼女が転生者かどうかなんてどっちでもいいか。むしろ迷惑かけないのであれば転生者だったら是非お友達になりたい。ちょっと常識外れではあるけど。

「あの…どういう風に絡んでくるのかお手紙いただけますか? 心配ですし」
「心配しなくてもニーナ嬢が負けることはないよ」
「ルーク様のこともお兄様のことも、心配なので」
「エレナっ!」

 ちょっとお兄様、勢いよく抱きつくからルーク様にもたれかかってしまったじゃない。

 ん? なんか私………ナターシャに睨まれてる?




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢は反省しない!

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢リディス・アマリア・フォンテーヌは18歳の時に婚約者である王太子に婚約破棄を告げられる。その後馬車が事故に遭い、気づいたら神様を名乗る少年に16歳まで時を戻されていた。 性格を変えてまで王太子に気に入られようとは思わない。同じことを繰り返すのも馬鹿らしい。それならいっそ魔界で頂点に君臨し全ての国を支配下に置くというのが、良いかもしれない。リディスは決意する。魔界の皇子を私の美貌で虜にしてやろうと。

【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!

白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。 辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。 夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆  異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です) 《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆ 

残念な顔だとバカにされていた私が隣国の王子様に見初められました

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
公爵令嬢アンジェリカは六歳の誕生日までは天使のように可愛らしい子供だった。ところが突然、ロバのような顔になってしまう。残念な姿に成長した『残念姫』と呼ばれるアンジェリカ。友達は男爵家のウォルターただ一人。そんなある日、隣国から素敵な王子様が留学してきて……

もふもふ子犬の恩返し・獣人王子は子犬になっても愛しの王女を助けたい

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され
恋愛
カーラは小国モルガン王国の王女だ。でも、小国なので何かと大変だ。今国は北の大国ノース帝国と組んだ宰相に牛耳られており、カーラは宰相の息子のベンヤミンと婚約させられそうになっていた。そんな時に傷ついた子犬のころちゃんを拾う王女。 王女はころちゃんに癒やされるのだ。そんな時にいきなりいなくなるころちゃん。王女は必死に探すが見つからない。 王女の危機にさっそうと現れる白い騎士。でもその正体は…… もふもふされる子犬のころちゃんと王女の物語、どうぞお楽しみ下さい。

折角転生したのに、婚約者が好きすぎて困ります!

たぬきち25番
恋愛
ある日私は乙女ゲームのヒロインのライバル令嬢キャメロンとして転生していた。 なんと私は最推しのディラン王子の婚約者として転生したのだ!! 幸せすぎる~~~♡ たとえ振られる運命だとしてもディラン様の笑顔のためにライバル令嬢頑張ります!! ※主人公は婚約者が好きすぎる残念女子です。 ※気分転換に笑って頂けたら嬉しく思います。 短めのお話なので毎日更新 ※糖度高めなので胸やけにご注意下さい。 ※少しだけ塩分も含まれる箇所がございます。 《大変イチャイチャラブラブしてます!! 激甘、溺愛です!! お気を付け下さい!!》 ※他サイト様にも公開始めました!

実家を追い出され、薬草売りをして糊口をしのいでいた私は、薬草摘みが趣味の公爵様に見初められ、毎日二人でハーブティーを楽しんでいます

さら
恋愛
実家を追い出され、わずかな薬草を売って糊口をしのいでいた私。 生きるだけで精一杯だったはずが――ある日、薬草摘みが趣味という変わり者の公爵様に出会ってしまいました。 「君の草は、人を救う力を持っている」 そう言って見初められた私は、公爵様の屋敷で毎日一緒に薬草を摘み、ハーブティーを淹れる日々を送ることに。 不思議と気持ちが通じ合い、いつしか心も温められていく……。 華やかな社交界も、危険な戦いもないけれど、 薬草の香りに包まれて、ゆるやかに育まれるふたりの時間。 町の人々や子どもたちとの出会いを重ね、気づけば「薬草師リオナ」の名は、遠い土地へと広がっていき――。

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

追放令嬢の発酵工房 ~味覚を失った氷の辺境伯様が、私の『味噌スープ』で魔力回復(と溺愛)を始めました~

メルファン
恋愛
「貴様のような『腐敗令嬢』は王都に不要だ!」 公爵令嬢アリアは、前世の記憶を活かした「発酵・醸造」だけが生きがいの、少し変わった令嬢でした。 しかし、その趣味を「酸っぱい匂いだ」と婚約者の王太子殿下に忌避され、卒業パーティーの場で、派手な「聖女」を隣に置いた彼から婚約破棄と「北の辺境」への追放を言い渡されてしまいます。 「(北の辺境……! なんて素晴らしい響きでしょう!)」 王都の軟水と生ぬるい気候に満足できなかったアリアにとって、厳しい寒さとミネラル豊富な硬水が手に入る辺境は、むしろ最高の『仕込み』ができる夢の土地。 愛する『麹菌』だけをドレスに忍ばせ、彼女は喜んで追放を受け入れます。 辺境の廃墟でさっそく「発酵生活」を始めたアリア。 三週間かけて仕込んだ『味噌もどき』で「命のスープ」を味わっていると、氷のように美しい、しかし「生」の活力を一切感じさせない謎の男性と出会います。 「それを……私に、飲ませろ」 彼こそが、領地を守る呪いの代償で「味覚」を失い、生きる気力も魔力も枯渇しかけていた「氷の辺境伯」カシウスでした。 アリアのスープを一口飲んだ瞬間、カシウスの舌に、失われたはずの「味」が蘇ります。 「味が、する……!」 それは、彼の枯渇した魔力を湧き上がらせる、唯一の「命の味」でした。 「頼む、君の作ったあの『茶色いスープ』がないと、私は戦えない。君ごと私の城に来てくれ」 「腐敗」と捨てられた令嬢の地味な才能が、最強の辺境伯の「生きる意味」となる。 一方、アリアという「本物の活力源」を失った王都では、謎の「気力減退病」が蔓延し始めており……? 追放令嬢が、発酵と菌への愛だけで、氷の辺境伯様の胃袋と魔力(と心)を掴み取り、溺愛されるまでを描く、大逆転・発酵グルメロマンス!

処理中です...