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元気付けるための推し活
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「最近、元気がないね。やっぱり王女殿下とのお茶会で何かあった?」
「えっ? いえ…」
「そう…ならいいんだけど。もし何かあったのなら話してね。必ず力になるって約束するから」
「あ、ありがとうございます」
話していいものだろうか。でもなんて話すの? 私が転生者だって秘密のままで上手く伝えられる?
幼い頃に誘拐れた事実はないし、お兄様のことだって王女殿下から協力の要請があっただけ。王命ではない今のうちに、お父様に話してお任せすればいいだけの話。
だから、何故そんなに気にし続けるの? 気にしなくて大丈夫だよ。そう言われてしまうだけ。
「そうだ! 今週末に王都の貴族街へ行かない? 聞くところによると、ライナスとニーナ嬢が行くみたいなんだ」
「お兄様達がデート…?」
「そう。手カメラのチャンスがきっとたくさんあるよ。だから僕と一緒に行こう?」
「…はい。ありがとうございます」
*
*
*
「よしっ! 行くよ。実は2人がどこに行くか事前に調査済みなんだっ」
「? 何だか私よりもルーク様のほうが張り切っていませんか?」
「影になったみたいで楽しいじゃないか」
探偵、じゃないのが異世界って感じ。そんな私達の服装は示し合わせたようにお互い暗めの服。残念ながら真っ黒のドレスは持っていなかったの。
今日の私の気分は楽しみ半分、マイナス思考半分。せっかくの推し活なんだから全力で楽しまなきゃって分かってるんだけどね。
「あっ! いたよ。見て、腕を組んで歩いてる」
「えっ? 本当だ…」
同じ時間に出たらバレるからとお兄様達より少し遅く貴族街に着いたのに、案外早く2人を見つけられた。
「………。手カメラチャンスだ!」
「そうですね」
「エレナいいの? 逃しちゃうよ?」
「でも周りに人がたくさんいますので…」
「そっか…」
ど、どうしよう。影になったと楽しんでいる雰囲気を壊しちゃった。
「の、脳内にはちゃんと残しています!」
「うん。それにもしかしたら、人が少ないところでまたチャンスがくるかもしれないしねっ」
「はい」
なんだか今日のルーク様はいつもより元気? よね。
「お店に入ったみたいだけど、どうする? 僕たちも入る?」
「バレませんか?」
「広い店内だから大丈夫だよ」
「では…せっかくですし」
バレちゃったらバレちゃったでいいし。最近気温が上がってきたから外で待つの辛そうだし。って何私言い訳してるんだろう。
「あつ…」
「思っていたより人が多かったね。外で待つ?」
「だ、大丈夫です」
店内が涼しいのは前世でした。ニーナ様好きは変わらないし、前世の食事が好きなのも変わらない。でも久々に思考が前世に引っ張られるのは、明らかにあのお茶会のせいよね…。
「これ、可愛いです」
「本当だ。でもエレナにはこの色をつけてほしいな」
手渡されたのは緑の装飾が施されているブレスレット。よくよく見るとこのお店って私が前から気になっていたアクセサリーショップだ。それすら気付かずに入っていたなんて。
「ルーク様の目の色ですね」
「うん。付けてくれる?」
「はい」
こっちの私の目の色である、碧い装飾の物と重ねてつけるのも可愛いかも。
「なら買ってくるよ」
「えっ!? 自分で買います」
「ううん。贈らせてほしい」
「ですが…」
自分の色を贈る意味を知らないはずないのに。
「贈らせて。ね?」
「あ、ありがとうございます」
「うん。ちょっと待ってて」
ルーク様がいいならいいのかな? 私も何かお返ししたいけど…女性向けのこのお店で見つけるのは難しそうね。他のお店でいい物が見つかるといいな。
お兄様達が次に入ったのは文房具店。ここは私が気に入って入学用品を一式揃えたお店だけど、店内が狭いため外で様子をうかがう。
「風が気持ちいいです」
「夏ほど日差しも強くないしね」
「はい。先程のお店は少し暑かったです」
「人も多かったけど、店内にいた女性達がライナスを見て興奮していたから余計にね」
ん? 全然気付かなかった。お兄様カッコいいもんね。なんてたって国一番のイケメンだし。私はルーク様の方がカッコいいと思うけど。
「えっ?」
「ん?」
「あ、いえ…」
今まではお兄様もルーク様も同じくらいかっこいいと思っていたけど、いつの間にかルーク様の方が上になった…?
「エレナ? 顔が赤いけど、暑さにやられちゃった?」
「な、な、なんでもありませんっ」
近っ、近いよ。
「あっ、ライナス達が出てきたけどもう帰ったほうが…」
「だ、大丈夫です! 暑さにやられてませんっ」
「そう? 無理してない?」
「はいっ」
「分かった。でもまた調子悪そうにしていたら帰るからね」
急に意識しちゃった。とりあえず早く顔の赤みがおさまってほしい。
「お兄様?」
「えっ?」
「今お兄様と目があった気が…」
「きっと気のせいだよ」
そうなのかな? 視線を感じた方を見たらお兄様だったんだけどな。バレている気がする。まぁ、当たり前っちゃ当たり前よね。
前世と違って電柱があるわけでもなく、看板が立っていることもなく、建物の影に隠れるような場所もなく…見通しがいいこの通りでどうやって尾行するのかと思えば、結構堂々と尾行しているもんね。
そう思うと本物の影ってすごいわね。……まって、そもそも影が黒服っていうのが固定概念? 勝手に忍者の異世界版ってイメージが…。
「しまった! 変にドレスの色を意識しない方が背景に溶け込めた気がしてきましたっ」
「確かにそうだったかもね」
「あははっ、私達、影にはなれませんね?」
「……良かった。ようやく笑ったね」
「えっ?」
私の頬を撫で泣きそうな顔をしているルーク様。
あぁ…私、自分の事で精一杯だったから気が付かなかった。きっとルーク様以外にも周りに心配させてしまっていたんだわ。お兄様と目が合ったのも気の所為なんかじゃない。今日の推し活デートは私を元気付けるためだったのね。
……よしっ。どういう反応が返ってくるか不安だけど、ルーク様に全てを話そう。
「あの、ルーク様。個室の取れるカフェに入りませんか? 聞いてほしい話があります」
「ライナス達はいいの?」
「まずはルーク様だけに聞いていただきたいです。お兄様達に話すかどうか、ルーク様に決めていただきたいです」
「分かった。行こう」
***
デートの真相?
「ライナス、ちょっといいか? 最近エレナの元気がないんだ」
「あぁ。王女殿下と会った後からだよな」
「やはりそうだよな…俺が聞いても何もなかったと話してくれないんだ。メイドも何も聞いていないと言っていた。ニーナ嬢もだ」
「そうか…」
「それで、お願いがあるんだが、週末ニーナ嬢と王都貴族街でデートしてくれ」
「………分かった。エレナのためだ」
ルークとライナスの間でこんなやり取りがあったのかもしれない。
「えっ? いえ…」
「そう…ならいいんだけど。もし何かあったのなら話してね。必ず力になるって約束するから」
「あ、ありがとうございます」
話していいものだろうか。でもなんて話すの? 私が転生者だって秘密のままで上手く伝えられる?
幼い頃に誘拐れた事実はないし、お兄様のことだって王女殿下から協力の要請があっただけ。王命ではない今のうちに、お父様に話してお任せすればいいだけの話。
だから、何故そんなに気にし続けるの? 気にしなくて大丈夫だよ。そう言われてしまうだけ。
「そうだ! 今週末に王都の貴族街へ行かない? 聞くところによると、ライナスとニーナ嬢が行くみたいなんだ」
「お兄様達がデート…?」
「そう。手カメラのチャンスがきっとたくさんあるよ。だから僕と一緒に行こう?」
「…はい。ありがとうございます」
*
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「よしっ! 行くよ。実は2人がどこに行くか事前に調査済みなんだっ」
「? 何だか私よりもルーク様のほうが張り切っていませんか?」
「影になったみたいで楽しいじゃないか」
探偵、じゃないのが異世界って感じ。そんな私達の服装は示し合わせたようにお互い暗めの服。残念ながら真っ黒のドレスは持っていなかったの。
今日の私の気分は楽しみ半分、マイナス思考半分。せっかくの推し活なんだから全力で楽しまなきゃって分かってるんだけどね。
「あっ! いたよ。見て、腕を組んで歩いてる」
「えっ? 本当だ…」
同じ時間に出たらバレるからとお兄様達より少し遅く貴族街に着いたのに、案外早く2人を見つけられた。
「………。手カメラチャンスだ!」
「そうですね」
「エレナいいの? 逃しちゃうよ?」
「でも周りに人がたくさんいますので…」
「そっか…」
ど、どうしよう。影になったと楽しんでいる雰囲気を壊しちゃった。
「の、脳内にはちゃんと残しています!」
「うん。それにもしかしたら、人が少ないところでまたチャンスがくるかもしれないしねっ」
「はい」
なんだか今日のルーク様はいつもより元気? よね。
「お店に入ったみたいだけど、どうする? 僕たちも入る?」
「バレませんか?」
「広い店内だから大丈夫だよ」
「では…せっかくですし」
バレちゃったらバレちゃったでいいし。最近気温が上がってきたから外で待つの辛そうだし。って何私言い訳してるんだろう。
「あつ…」
「思っていたより人が多かったね。外で待つ?」
「だ、大丈夫です」
店内が涼しいのは前世でした。ニーナ様好きは変わらないし、前世の食事が好きなのも変わらない。でも久々に思考が前世に引っ張られるのは、明らかにあのお茶会のせいよね…。
「これ、可愛いです」
「本当だ。でもエレナにはこの色をつけてほしいな」
手渡されたのは緑の装飾が施されているブレスレット。よくよく見るとこのお店って私が前から気になっていたアクセサリーショップだ。それすら気付かずに入っていたなんて。
「ルーク様の目の色ですね」
「うん。付けてくれる?」
「はい」
こっちの私の目の色である、碧い装飾の物と重ねてつけるのも可愛いかも。
「なら買ってくるよ」
「えっ!? 自分で買います」
「ううん。贈らせてほしい」
「ですが…」
自分の色を贈る意味を知らないはずないのに。
「贈らせて。ね?」
「あ、ありがとうございます」
「うん。ちょっと待ってて」
ルーク様がいいならいいのかな? 私も何かお返ししたいけど…女性向けのこのお店で見つけるのは難しそうね。他のお店でいい物が見つかるといいな。
お兄様達が次に入ったのは文房具店。ここは私が気に入って入学用品を一式揃えたお店だけど、店内が狭いため外で様子をうかがう。
「風が気持ちいいです」
「夏ほど日差しも強くないしね」
「はい。先程のお店は少し暑かったです」
「人も多かったけど、店内にいた女性達がライナスを見て興奮していたから余計にね」
ん? 全然気付かなかった。お兄様カッコいいもんね。なんてたって国一番のイケメンだし。私はルーク様の方がカッコいいと思うけど。
「えっ?」
「ん?」
「あ、いえ…」
今まではお兄様もルーク様も同じくらいかっこいいと思っていたけど、いつの間にかルーク様の方が上になった…?
「エレナ? 顔が赤いけど、暑さにやられちゃった?」
「な、な、なんでもありませんっ」
近っ、近いよ。
「あっ、ライナス達が出てきたけどもう帰ったほうが…」
「だ、大丈夫です! 暑さにやられてませんっ」
「そう? 無理してない?」
「はいっ」
「分かった。でもまた調子悪そうにしていたら帰るからね」
急に意識しちゃった。とりあえず早く顔の赤みがおさまってほしい。
「お兄様?」
「えっ?」
「今お兄様と目があった気が…」
「きっと気のせいだよ」
そうなのかな? 視線を感じた方を見たらお兄様だったんだけどな。バレている気がする。まぁ、当たり前っちゃ当たり前よね。
前世と違って電柱があるわけでもなく、看板が立っていることもなく、建物の影に隠れるような場所もなく…見通しがいいこの通りでどうやって尾行するのかと思えば、結構堂々と尾行しているもんね。
そう思うと本物の影ってすごいわね。……まって、そもそも影が黒服っていうのが固定概念? 勝手に忍者の異世界版ってイメージが…。
「しまった! 変にドレスの色を意識しない方が背景に溶け込めた気がしてきましたっ」
「確かにそうだったかもね」
「あははっ、私達、影にはなれませんね?」
「……良かった。ようやく笑ったね」
「えっ?」
私の頬を撫で泣きそうな顔をしているルーク様。
あぁ…私、自分の事で精一杯だったから気が付かなかった。きっとルーク様以外にも周りに心配させてしまっていたんだわ。お兄様と目が合ったのも気の所為なんかじゃない。今日の推し活デートは私を元気付けるためだったのね。
……よしっ。どういう反応が返ってくるか不安だけど、ルーク様に全てを話そう。
「あの、ルーク様。個室の取れるカフェに入りませんか? 聞いてほしい話があります」
「ライナス達はいいの?」
「まずはルーク様だけに聞いていただきたいです。お兄様達に話すかどうか、ルーク様に決めていただきたいです」
「分かった。行こう」
***
デートの真相?
「ライナス、ちょっといいか? 最近エレナの元気がないんだ」
「あぁ。王女殿下と会った後からだよな」
「やはりそうだよな…俺が聞いても何もなかったと話してくれないんだ。メイドも何も聞いていないと言っていた。ニーナ嬢もだ」
「そうか…」
「それで、お願いがあるんだが、週末ニーナ嬢と王都貴族街でデートしてくれ」
「………分かった。エレナのためだ」
ルークとライナスの間でこんなやり取りがあったのかもしれない。
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