39 / 44
俺の婚約者 sideルーク
しおりを挟む
俺には12歳の時から婚約者がいる。
エレナ・マーリン。それが婚約者の名前。
本当はもっと早く婚約する予定だったが、妹大好き次期侯爵と娘大好き現侯爵がゴネたため、少し時間がかかってしまった。
物心が付いた時には既に始まっていた次期公爵となるための厳しい教育。別に両親の事は嫌いじゃない。上位貴族家にしては珍しく家族仲も良い方だとも思っている。ただ、毎日勉強漬けの毎日で、楽しいことなんて何もなかった。
そんな単調な毎日が色付いたのは、エレナ、君に出会ってからなんだ。
底抜けに明るい君の隣にいると、生きる活力になる。
エレナに初めて会ったのは7歳の時。友人であるマーリン侯爵家のライナス主催のお茶会で、だった。まだ6歳だった彼女には参加資格はなかったけれど、参加したかったのか、開催されていたガーデンに入り込んでいたんだ。
前世の記憶があると聞いた今からすれば、ただただニーナ嬢を見たくての行動だったと理解しているが。……完全に隠れてると思い込んでいたあの日のエレナ、あれは可愛かったな。
それに、俺にも可愛いと思う感情があることを知った出来事でもある。
それから約束通りお茶会に招待したり、ピクニックや孤児院へと一緒に行ったり、クッキーを一緒に作ったり…幼い頃からずっと一緒に過ごし、大切に大切にしてきた。
俺よりも同じ公爵家のニーナ嬢にご執心だったことにはイラつきも覚えたけど、ニーナ嬢の言動に一喜一憂する姿も可愛いと思うんだから重症だよな。
婚約したことを伝えたときですら、ニーナ嬢のことで頭が一杯で。まぁ、あの日は婚約者であることをまだ隠すつもりでいたから、敢えてライナスとニーナ嬢に夢中になっているタイミングで伝えたんだが。
もちろん手放すつもりなんて更々ない。婚約者だからではなく俺自身を好きになってほしくて隠してきたのに、ここまで時間がかかるとは…正直誤算だ。
ニーナ嬢に憧れるあまり、自身も侯爵令嬢として完璧な淑女となったエレナ。年々婚約者ではないからと遠慮しだすし。
そもそも普通は気が付くだろう。仮にも公爵家嫡男の俺に婚約者がいないはずないし、エレナ以外の人間全てが知っている事だぞ? 鈍感すぎるところが可愛い反面憎くもある。デートの誘いを断られないだけ良しとするべきか…。
前回はガラにもなく焦ってしようとした告白。仕切り直すからには完璧に、エレナにも好きになってもらってからと、ずっと機会を待っていた。
ようやくその時がきた。
*
*
*
「2年ぶりですね」
「あの時と咲いている花は違うけどね」
仕切り直しの場に選んだのは、前回と同じ温室サロン。ここにはもう一度来たいとエレナがずっと言っていたからね。もちろん料理は別のものを用意している。
「エレナが待ち望んでいた茶葉が手に入ったよ」
「本当ですか!? コレ、ニーナ様お気に入りの茶葉なんです」
知っているよ。販売元はクラーク公爵家が懇意にしている相手だったから、セオドアに融通してもらったからね。
「ふふ。嬉しいです」
「アップルパイも用意しているよ」
「わぁ! 本当ですか! オリヴィエ公爵領で収穫されるりんご、すごく好きなんです」
「ありがとう」
元々うちの領はりんごの収穫量が多かったけど、エレナがりんご好きと知ってからは品種改良も重ねてきた。これは昔一緒に行った孤児院で、エレナと仲良くなった孤児院出身の者達が、エレナのためにと協力してくれたおかげだ。
今日のりんごはアップルパイに一番合う物を使用している。
アップルパイを一口食べ、紅茶を口に含んだ後、意を決したエレナが口を開いた。
「ルーク様。あのっ、その…実はですね、えっと、その………お伝え、したいことが…あり、ます」
必死に言葉を紡ぐ姿が可愛い。ニヤけそうになる口元を手で隠し、俺から気持ちを伝えよう。
「奇遇だね。俺もあるんだ」
「っ!! ではっ、ル、ルーク様からどうぞっ」
あぁ、耳まで真赤にして…可愛すぎる。早くこの腕で抱き締めたい。……今までもフライングはしていたが、気持ちを通じあわせ、目一杯に甘やかし、愛でたい。
「では、遠慮なく」
従者に指示を出し、持ってきてもらったのは101本のバラの花束。
片膝を付き、誠心誠意君に伝えよう。
「エレナ。エレナとの出会いは私にとって特別なものだったんだ。私の色のない世界を色付かせてくれた。エレナの笑顔を見るだけで疲れが飛び、共に過ごす時間はこれ以上にないほどの幸せを感じるんだ。
エレナ、ルーク・オリヴィエの名において君を必ず幸せにすると誓おう。だからどうか、残りの人生を私と共に過ごしてほしい」
エレナ・マーリン。それが婚約者の名前。
本当はもっと早く婚約する予定だったが、妹大好き次期侯爵と娘大好き現侯爵がゴネたため、少し時間がかかってしまった。
物心が付いた時には既に始まっていた次期公爵となるための厳しい教育。別に両親の事は嫌いじゃない。上位貴族家にしては珍しく家族仲も良い方だとも思っている。ただ、毎日勉強漬けの毎日で、楽しいことなんて何もなかった。
そんな単調な毎日が色付いたのは、エレナ、君に出会ってからなんだ。
底抜けに明るい君の隣にいると、生きる活力になる。
エレナに初めて会ったのは7歳の時。友人であるマーリン侯爵家のライナス主催のお茶会で、だった。まだ6歳だった彼女には参加資格はなかったけれど、参加したかったのか、開催されていたガーデンに入り込んでいたんだ。
前世の記憶があると聞いた今からすれば、ただただニーナ嬢を見たくての行動だったと理解しているが。……完全に隠れてると思い込んでいたあの日のエレナ、あれは可愛かったな。
それに、俺にも可愛いと思う感情があることを知った出来事でもある。
それから約束通りお茶会に招待したり、ピクニックや孤児院へと一緒に行ったり、クッキーを一緒に作ったり…幼い頃からずっと一緒に過ごし、大切に大切にしてきた。
俺よりも同じ公爵家のニーナ嬢にご執心だったことにはイラつきも覚えたけど、ニーナ嬢の言動に一喜一憂する姿も可愛いと思うんだから重症だよな。
婚約したことを伝えたときですら、ニーナ嬢のことで頭が一杯で。まぁ、あの日は婚約者であることをまだ隠すつもりでいたから、敢えてライナスとニーナ嬢に夢中になっているタイミングで伝えたんだが。
もちろん手放すつもりなんて更々ない。婚約者だからではなく俺自身を好きになってほしくて隠してきたのに、ここまで時間がかかるとは…正直誤算だ。
ニーナ嬢に憧れるあまり、自身も侯爵令嬢として完璧な淑女となったエレナ。年々婚約者ではないからと遠慮しだすし。
そもそも普通は気が付くだろう。仮にも公爵家嫡男の俺に婚約者がいないはずないし、エレナ以外の人間全てが知っている事だぞ? 鈍感すぎるところが可愛い反面憎くもある。デートの誘いを断られないだけ良しとするべきか…。
前回はガラにもなく焦ってしようとした告白。仕切り直すからには完璧に、エレナにも好きになってもらってからと、ずっと機会を待っていた。
ようやくその時がきた。
*
*
*
「2年ぶりですね」
「あの時と咲いている花は違うけどね」
仕切り直しの場に選んだのは、前回と同じ温室サロン。ここにはもう一度来たいとエレナがずっと言っていたからね。もちろん料理は別のものを用意している。
「エレナが待ち望んでいた茶葉が手に入ったよ」
「本当ですか!? コレ、ニーナ様お気に入りの茶葉なんです」
知っているよ。販売元はクラーク公爵家が懇意にしている相手だったから、セオドアに融通してもらったからね。
「ふふ。嬉しいです」
「アップルパイも用意しているよ」
「わぁ! 本当ですか! オリヴィエ公爵領で収穫されるりんご、すごく好きなんです」
「ありがとう」
元々うちの領はりんごの収穫量が多かったけど、エレナがりんご好きと知ってからは品種改良も重ねてきた。これは昔一緒に行った孤児院で、エレナと仲良くなった孤児院出身の者達が、エレナのためにと協力してくれたおかげだ。
今日のりんごはアップルパイに一番合う物を使用している。
アップルパイを一口食べ、紅茶を口に含んだ後、意を決したエレナが口を開いた。
「ルーク様。あのっ、その…実はですね、えっと、その………お伝え、したいことが…あり、ます」
必死に言葉を紡ぐ姿が可愛い。ニヤけそうになる口元を手で隠し、俺から気持ちを伝えよう。
「奇遇だね。俺もあるんだ」
「っ!! ではっ、ル、ルーク様からどうぞっ」
あぁ、耳まで真赤にして…可愛すぎる。早くこの腕で抱き締めたい。……今までもフライングはしていたが、気持ちを通じあわせ、目一杯に甘やかし、愛でたい。
「では、遠慮なく」
従者に指示を出し、持ってきてもらったのは101本のバラの花束。
片膝を付き、誠心誠意君に伝えよう。
「エレナ。エレナとの出会いは私にとって特別なものだったんだ。私の色のない世界を色付かせてくれた。エレナの笑顔を見るだけで疲れが飛び、共に過ごす時間はこれ以上にないほどの幸せを感じるんだ。
エレナ、ルーク・オリヴィエの名において君を必ず幸せにすると誓おう。だからどうか、残りの人生を私と共に過ごしてほしい」
56
あなたにおすすめの小説
冷酷侯爵と政略結婚したら、実家がざまぁされました
鍛高譚
恋愛
「この結婚は、家のため。ただの政略結婚よ」
そう言い聞かせ、愛のない結婚を受け入れた公爵令嬢リゼット。
しかし、挙式後すぐに父が「婚約破棄しろ」と命じてきた!?
だが、夫であるアレクシス・フォン・シュヴァルツ侯爵は冷たく言い放つ。
「彼女を渡すつもりはない」
冷酷無慈悲と噂される侯爵が、なぜかリゼットを溺愛し始める!?
毎日甘やかされ、守られ、気づけば逃げ場なし!
さらに、父の不正が明るみに出て、公爵家は失墜――
リゼットを道具として利用しようとした者たちに、ざまぁの鉄槌が下される!
政略結婚から始まる、甘々溺愛ラブストーリー!
「愛なんてないはずなのに……どうしてこんなに大切にされるの?」
婚約破棄されたので田舎で猫と暮らします
たくわん
恋愛
社交界の華と謳われた伯爵令嬢セレスティアは、王太子から「完璧すぎて息が詰まる」と婚約破棄を告げられる。傷心のまま逃げるように向かったのは、亡き祖母が遺した田舎の小さな屋敷だった。
荒れ果てた屋敷、慣れない一人暮らし、そして庭に住みついた五匹の野良猫たち。途方に暮れるセレスティアの隣には、無愛想で人嫌いな青年医師・ノアが暮らしていた。
「この猫に構うな。人間嫌いだから」
冷たく突き放すノアだが、捨て猫を保護し、傷ついた動物を治療する彼の本当の姿を知るうちに、セレスティアの心は少しずつ惹かれていく。
猫の世話を通じて近づく二人。やがて明かされるノアの過去と、王都から届く縁談の催促。「完璧な令嬢」を脱ぎ捨てた先に待つ、本当の自分と本当の恋——。
引きこもり少女、御子になる~お世話係は過保護な王子様~
浅海 景
恋愛
オッドアイで生まれた透花は家族から厄介者扱いをされて引きこもりの生活を送っていた。ある日、双子の姉に突き飛ばされて頭を強打するが、目を覚ましたのは見覚えのない場所だった。ハウゼンヒルト神聖国の王子であるフィルから、世界を救う御子(みこ)だと告げられた透花は自分には無理だと否定するが、御子であるかどうかを判断するために教育を受けることに。
御子至上主義なフィルは透花を大切にしてくれるが、自分が御子だと信じていない透花はフィルの優しさは一時的なものだと自分に言い聞かせる。
「きっといつかはこの人もまた自分に嫌悪し離れていくのだから」
自己肯定感ゼロの少女が過保護な王子や人との関わりによって、徐々に自分を取り戻す物語。
契約結婚の相手が優しすぎて困ります
みみぢあん
恋愛
ペルサル伯爵の婚外子リアンナは、学園に通い淑女の教育を受けているが、帰宅すれば使用人のような生活をおくっていた。 学園の卒業が近くなったある日、リアンナは父親と変わらない年齢の男爵との婚約が決まる。 そんなリアンナにフラッドリー公爵家の後継者アルベールと契約結婚をしないかと持ちかけられた。
元王太子妃候補、現王宮の番犬(仮)
モンドール
恋愛
伯爵令嬢ルイーザは、幼い頃から王太子妃を目指し血の滲む努力をしてきた。勉学に励み、作法を学び、社交での人脈も作った。しかし、肝心の王太子の心は射止められず。
そんな中、何者かの手によって大型犬に姿を変えられてしまったルイーザは、暫く王宮で飼われる番犬の振りをすることになり──!?
「わん!」(なんでよ!)
(『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)
氷の騎士と陽だまりの薬師令嬢 ~呪われた最強騎士様を、没落貴族の私がこっそり全力で癒します!~
放浪人
恋愛
薬師として細々と暮らす没落貴族の令嬢リリア。ある夜、彼女は森で深手を負い倒れていた騎士団副団長アレクシスを偶然助ける。彼は「氷の騎士」と噂されるほど冷徹で近寄りがたい男だったが、リリアの作る薬とささやかな治癒魔法だけが、彼を蝕む古傷の痛みを和らげることができた。
「……お前の薬だけが、頼りだ」
秘密の治療を続けるうち、リリアはアレクシスの不器用な優しさや孤独に触れ、次第に惹かれていく。しかし、彼の立場を狙う政敵や、リリアの才能を妬む者の妨害が二人を襲う。身分違いの恋、迫りくる危機。リリアは愛する人を守るため、薬師としての知識と勇気を武器に立ち向かうことを決意する。
狂おしいほど愛しています、なのでよそへと嫁ぐことに致します
ちより
恋愛
侯爵令嬢のカレンは分別のあるレディだ。頭の中では初恋のエル様のことでいっぱいになりながらも、一切そんな素振りは見せない徹底ぶりだ。
愛するエル様、神々しくも真面目で思いやりあふれるエル様、その残り香だけで胸いっぱいですわ。
頭の中は常にエル様一筋のカレンだが、家同士が決めた結婚で、公爵家に嫁ぐことになる。愛のない形だけの結婚と思っているのは自分だけで、実は誰よりも公爵様から愛されていることに気づかない。
公爵様からの溺愛に、不器用な恋心が反応したら大変で……両思いに慣れません。
クラヴィスの華〜BADエンドが確定している乙女ゲー世界のモブに転生した私が攻略対象から溺愛されているワケ〜
アルト
恋愛
たった一つのトゥルーエンドを除き、どの攻略ルートであってもBADエンドが確定している乙女ゲーム「クラヴィスの華」。
そのゲームの本編にて、攻略対象である王子殿下の婚約者であった公爵令嬢に主人公は転生をしてしまう。
とは言っても、王子殿下の婚約者とはいえ、「クラヴィスの華」では冒頭付近に婚約を破棄され、グラフィックは勿論、声すら割り当てられておらず、名前だけ登場するというモブの中のモブとも言えるご令嬢。
主人公は、己の不幸フラグを叩き折りつつ、BADエンドしかない未来を変えるべく頑張っていたのだが、何故か次第に雲行きが怪しくなって行き────?
「────婚約破棄? 何故俺がお前との婚約を破棄しなきゃいけないんだ? ああ、そうだ。この肩書きも煩わしいな。いっそもう式をあげてしまおうか。ああ、心配はいらない。必要な事は俺が全て────」
「…………(わ、私はどこで間違っちゃったんだろうか)」
これは、どうにかして己の悲惨な末路を変えたい主人公による生存戦略転生記である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる