推しの悪役令嬢を幸せにします!

みかん桜

文字の大きさ
40 / 44

思いが通じる日

しおりを挟む
 王都の公園の中にある温室サロン。

 ここは2年前にルーク様からバラの花束を頂いた場所。ちょっとムッとしてしまう事もあったけど幸せな気持ちになったこの場所に、もう一度来たいと思っていた。……ルーク様と行っておいでと誰一人付き合ってくれなかったけど。


 そんな場所で、今日、ルーク様から101本のバラの花束を頂いた。


 あれ? コレ夢かな?


 今日は人生初の告白をするつもりだった…よね?

 目の前に片膝ついてる王子様がいるんですけど。

「エレナ。その…返事を貰えないだろうか…?」
「あっ! えっと。その。はい。こ、こちらこそ、よろしくお願いします?」

 慌ててバラの花束を受け取った。お、重っ。

「そこ疑問なんだ」
「ち、違うんです! 私も今日、ルーク様に思いを伝えようと思っていたので…告白する前に両思い、みたいな? 夢かな? みたいな…私何言ってるんだろう」

 落ち着くためにも温室内にあるソファーに横並びで座り、バラの花束も横に置かせてもらう。

「エレナの気持ちを聞かせてほしい」
「えっ!」

 で、ですよねぇ…。断られることはないと分かっていても、一度話の腰を折られ、好きって伝える勇気が戻ってこない。

「す…」
「…す?」
「す、す、……好き、です」
「うん。俺も好き」

 あ、はい。ルーク様、なんか甘くない? 何その笑顔…アイドルかよ。そもそも101本のバラって…意味知ってるんだよね? 愛されすぎだろ私。やばっ、こんなのニヤニヤしちゃうわ。

「私も、残りの人生をルーク様と共に過ごしたいと思ってました。だから、ずっとルーク様の婚約者の存在が気になっていて…」

 『好き』って直接的な言葉じゃなければ言える謎。

「エレナだよ。俺の婚約者」
「はい。婚約者にしてほしいです」
「じゃなくて。もう6年になるかな? 俺の婚約者はずっとエレナだよ」

 ………は? 聞いてないんですけど。

「みんな知ってるよ」
「みんなって、みんなですか?」
「オリヴィエ公爵家嫡男とマーリン侯爵令嬢の婚約だからね。貴族で知らない人の方が少ないんじゃないかな」

 そう言って私の抱きしめながら頭を撫でるルーク様。ふわふわした髪が可愛いって、ずっと触っていられるよ。じゃないよ。

「なんで教えてくださらなかったんですか!?」

 悩んでた日々はなんだったんだ…。

「うーん、言ったよ? 婚約してすぐの頃にね。ただ…エレナはニーナ嬢を見るのに必死だったから聞いてなかったのかもね」
「っ!!」

 私かー!

 いや待て待て、私が推し活命だって知っているくせに、タイミング悪すぎじゃない? ジト目でルーク様を見るも…。

「可愛い」

 う、嬉しいけど! 嬉しいけどさ。

「真っ赤だ。あー、可愛い。ごめんね? 婚約者だから良い関係を築くんじゃなく、俺自身を好きになった上で婚約したいと思ってほしかったんだ」
「やっぱり隠してたんじゃないですか」
「伝えたのは本当だよ? エレナが聞いていないから、俺のことを好きになるまで教えないでおこうと周りに口止めはしたけど」
「もうっ!」

 ポカポカとルーク様の胸を叩いて抗議するも、それすら嬉しいって顔で見つめられると…もう何も言えないじゃんか。

 2年前、私がサナさんの助言が嫌だと言ったから急遽告白は取りやめたけど、あの後ルーク様自身も準備が足りなかったと反省したらしい。

 次は確実に私を仕留めるため、私がルーク様を好きになってからにしようって決めてたんだって。

 私は昔から自覚なしにルーク様を好きだったらしいけど…ニーナ様が仰っていた通り、ルーク様は気付いてなかったことに驚くわ。

 私、自覚してから絶対態度に出てたし、それでバレちゃったんだろうなぁ。

 でもやっぱり、お父様もお母様もお兄様も、ニーナ様もソフィーもみーんな隠し続けるなんて酷いんじゃない? なんて考えていたら…


 ちゅっ。ちゅっ。ちゅっ。

「ル、ルーク様っ!」

 待って。幸せそうな顔をしたルーク様が顔中に口付けを落としてくるとか、心臓が破裂しそうなんですけど。 

「なに? 俺ずっと我慢してたんだけど」
「そんな事言われたって…ってちょっ、降ろしてください!」

 ドサクサに紛れてルーク様の膝の上に抱きかかえられてしまった。

「それは無理なお願いかな」
「うぅ…」
「ふっ。でも今日はここまでにしておくよ。これ以上するとエレナが茹でダコになっちゃうからね」

 なんて言ったくせに、一番長い口付けをされてしまい、完全にキャパオーバー。

 ~~~っ! もうっ! ファーストキスのロケーション、最高かよ。

 だ、だからっ! 頬を撫でないでー! よしっ、無だ。無になろう。無理だけど。



ーーーーーーーーーー
101本のバラの花束の意味:これ以上ないほど愛しています


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢は反省しない!

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢リディス・アマリア・フォンテーヌは18歳の時に婚約者である王太子に婚約破棄を告げられる。その後馬車が事故に遭い、気づいたら神様を名乗る少年に16歳まで時を戻されていた。 性格を変えてまで王太子に気に入られようとは思わない。同じことを繰り返すのも馬鹿らしい。それならいっそ魔界で頂点に君臨し全ての国を支配下に置くというのが、良いかもしれない。リディスは決意する。魔界の皇子を私の美貌で虜にしてやろうと。

【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!

白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。 辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。 夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆  異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です) 《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆ 

残念な顔だとバカにされていた私が隣国の王子様に見初められました

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
公爵令嬢アンジェリカは六歳の誕生日までは天使のように可愛らしい子供だった。ところが突然、ロバのような顔になってしまう。残念な姿に成長した『残念姫』と呼ばれるアンジェリカ。友達は男爵家のウォルターただ一人。そんなある日、隣国から素敵な王子様が留学してきて……

もふもふ子犬の恩返し・獣人王子は子犬になっても愛しの王女を助けたい

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され
恋愛
カーラは小国モルガン王国の王女だ。でも、小国なので何かと大変だ。今国は北の大国ノース帝国と組んだ宰相に牛耳られており、カーラは宰相の息子のベンヤミンと婚約させられそうになっていた。そんな時に傷ついた子犬のころちゃんを拾う王女。 王女はころちゃんに癒やされるのだ。そんな時にいきなりいなくなるころちゃん。王女は必死に探すが見つからない。 王女の危機にさっそうと現れる白い騎士。でもその正体は…… もふもふされる子犬のころちゃんと王女の物語、どうぞお楽しみ下さい。

折角転生したのに、婚約者が好きすぎて困ります!

たぬきち25番
恋愛
ある日私は乙女ゲームのヒロインのライバル令嬢キャメロンとして転生していた。 なんと私は最推しのディラン王子の婚約者として転生したのだ!! 幸せすぎる~~~♡ たとえ振られる運命だとしてもディラン様の笑顔のためにライバル令嬢頑張ります!! ※主人公は婚約者が好きすぎる残念女子です。 ※気分転換に笑って頂けたら嬉しく思います。 短めのお話なので毎日更新 ※糖度高めなので胸やけにご注意下さい。 ※少しだけ塩分も含まれる箇所がございます。 《大変イチャイチャラブラブしてます!! 激甘、溺愛です!! お気を付け下さい!!》 ※他サイト様にも公開始めました!

実家を追い出され、薬草売りをして糊口をしのいでいた私は、薬草摘みが趣味の公爵様に見初められ、毎日二人でハーブティーを楽しんでいます

さら
恋愛
実家を追い出され、わずかな薬草を売って糊口をしのいでいた私。 生きるだけで精一杯だったはずが――ある日、薬草摘みが趣味という変わり者の公爵様に出会ってしまいました。 「君の草は、人を救う力を持っている」 そう言って見初められた私は、公爵様の屋敷で毎日一緒に薬草を摘み、ハーブティーを淹れる日々を送ることに。 不思議と気持ちが通じ合い、いつしか心も温められていく……。 華やかな社交界も、危険な戦いもないけれど、 薬草の香りに包まれて、ゆるやかに育まれるふたりの時間。 町の人々や子どもたちとの出会いを重ね、気づけば「薬草師リオナ」の名は、遠い土地へと広がっていき――。

追放令嬢の発酵工房 ~味覚を失った氷の辺境伯様が、私の『味噌スープ』で魔力回復(と溺愛)を始めました~

メルファン
恋愛
「貴様のような『腐敗令嬢』は王都に不要だ!」 公爵令嬢アリアは、前世の記憶を活かした「発酵・醸造」だけが生きがいの、少し変わった令嬢でした。 しかし、その趣味を「酸っぱい匂いだ」と婚約者の王太子殿下に忌避され、卒業パーティーの場で、派手な「聖女」を隣に置いた彼から婚約破棄と「北の辺境」への追放を言い渡されてしまいます。 「(北の辺境……! なんて素晴らしい響きでしょう!)」 王都の軟水と生ぬるい気候に満足できなかったアリアにとって、厳しい寒さとミネラル豊富な硬水が手に入る辺境は、むしろ最高の『仕込み』ができる夢の土地。 愛する『麹菌』だけをドレスに忍ばせ、彼女は喜んで追放を受け入れます。 辺境の廃墟でさっそく「発酵生活」を始めたアリア。 三週間かけて仕込んだ『味噌もどき』で「命のスープ」を味わっていると、氷のように美しい、しかし「生」の活力を一切感じさせない謎の男性と出会います。 「それを……私に、飲ませろ」 彼こそが、領地を守る呪いの代償で「味覚」を失い、生きる気力も魔力も枯渇しかけていた「氷の辺境伯」カシウスでした。 アリアのスープを一口飲んだ瞬間、カシウスの舌に、失われたはずの「味」が蘇ります。 「味が、する……!」 それは、彼の枯渇した魔力を湧き上がらせる、唯一の「命の味」でした。 「頼む、君の作ったあの『茶色いスープ』がないと、私は戦えない。君ごと私の城に来てくれ」 「腐敗」と捨てられた令嬢の地味な才能が、最強の辺境伯の「生きる意味」となる。 一方、アリアという「本物の活力源」を失った王都では、謎の「気力減退病」が蔓延し始めており……? 追放令嬢が、発酵と菌への愛だけで、氷の辺境伯様の胃袋と魔力(と心)を掴み取り、溺愛されるまでを描く、大逆転・発酵グルメロマンス!

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

処理中です...