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推し友第一号の婚約
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「えっ!! そうだったの!?」
私は今、推し友メンバーでサロンに集まっている。………正確にはプラスルーク様。気を許しているメンバーだけだから、すこーし貴族令嬢らしからぬ大きな声を出してしまったのは黙認してほしい。
今回みんなを集めたのは珍しいことにオーランド。そう、私の推し友第一号であるオーランドから呼び出されたのだ。何故このメンバーでなのか、そして何故お兄様とニーナ様がいないのかは、とりあえず置いておこう。
なによりも。
「婚約おめでとう」
「ありがとうございます。エレナ様」
まさかオーランドが婚約するとは。男爵家の次男だし、婚約自体はおかしいことじゃない。ただ、彼はセオドア様の侍従…今は専属執事に昇格したんだっけ。だから上位貴族令嬢と婚約するとは、ここにいる誰も予想していなかっただろう。
オーランドだってどこかの貴族に婿入するのではなく、身分にこだわらずクラーク公爵家で働く女性、要するに職場結婚するつもりだって言っていたし。まぁ…公爵家の上級使用人の彼が接する機会が多い相手も同じように上級使用人だろうから、結局は貴族令嬢と結婚すると思っていたけど。
でもだからって、やっぱり幼馴染みとはいえ伯爵令嬢との婚約は驚きでしかないわ。しかも…ねぇ?
「オーランドも彼女のことがずっと好きだったの?」
「そうですね…初恋の相手ではありました。身分が違いすぎるので諦めたといいますか、クラーク公爵家でお世話になることが決まった時点で気持ちに蓋をしました」
相手はずーっとオーランドを想い続けていた…うん。その恋が実るなんて素敵な話よね。でも…
「もっと早く知りたかったわ」
正確にはもっと早く婚約してほしかった。そしたら私も悩まずに済んだのに。
ナターシャ・ハーロウ
まさか、主人公の想い人が幼馴染みの男爵令息、オーランド・ホルトだったとはね。
*
*
みんながサロンを出た後、ルーク様と私はもう少しその場に残った。
「あの…降ろしてもらえませんか?」
「なんで?」
なんでって…ここじゃ平常心を保てないからよ。
私が座っているのはルーク様の膝の上。りょ、両思いになってからよく膝に乗せられ抱きしめられるの。
「ルーク様は今後も推し活に参加されるのですか?」
「ダメ?」
「いえっ。参加者が増えるのは嬉しいですし」
「内容に興味はないけどエレナのそばにいたいからね」
っ/// これがお兄様とニーナ様がいなかった理由。オーランドが推し友に婚約報告するため呼んだ場に、ルーク様が私についてきたってだけなの。
本当はドキドキしてそれどころじゃないけれど、この際気になっている事を全て確認しておきたい。
「まさか彼女の想い人がお兄様でもなく、ルーク様でもなく、オーランドだったとは思いませんでした」
「ん? ライナスだけでなく俺も?」
「はい。だって…」
「エレナはオーランドと距離が近いからねぇ」
?? 確かにオーランドは異性って言うより推し友感が強すぎて、推しの話になると盛り上がってつい手を握ってしまったり、分かる~って肩を叩いてしまったりするけど…でもいつものメンバーしかいない時だけだよ?
他の人がいる時はちゃんと貴族令嬢の私しか出してないし…なにより今はルーク様とナターシャの関係を問いただしたいのであって、オーランドは関係ない。
「もう俺の婚約者だって知ったんだから、これからは距離感に気を付けないと…お仕置きが必要になるかもね?」
「おっ、お仕置きですか!?」
「うん。だから気を付けてね」
えっと…その笑顔、怖いんですが……。
「彼女がエレナに嫉妬する気持は手に取るように分かったから、少し手を貸すことにしたんだ」
「それってルーク様はオーランドに嫉妬してたってことですか?」
「そりゃあね」
う、嬉しい。
「ですが私は彼女に嫉妬されるほど関わりがないのですが…」
むしろ全くないのだが。
「オーランドから聞いていたらしいよ」
「?? 何をでしょう?」
初めて会った時、私が学園入学前にカフェテリアでオムライスを食べたあの日。オーランドが学園に来た理由が『私に誘われたから』。それを聞いて嫉妬して睨んできた、らしい。
私にぶつかってきたあの日、確かに私はその直前に推し友と集まっていた。オーランドがいるサロンから私が出てきたのを見たらしいけど…。
いやいやいや、めっちゃ迷惑! 完全に八つ当たりじゃないか。
「もちろんエレナを睨んだり、態とぶつかってきたりしたことを許すつもりはない。だけどこれ以上エレナに危害を加えさせないために、さっさとくっつけてしまおうと思ってね」
まさかの理由! オーランドやナターシャではなく私のためだったとは。
「では以前彼女と握手していたのは?」
これが一番聞きたかったのだ。
「握手? 記憶にないが……あぁ、オーランドとの仲を取り持つ約束をした時か。エレナ見ていたんだね。大丈夫、すぐ洗い流したから」
洗い流したんだ。嬉しいような、流石に彼女が不憫なような、反応に困るわ。でも良かった。
「完全に私の勘違いだったのですね」
「もしかして…嫉妬、してくれたの?」
「えっ! そ、それはその…………はい」
嬉しいと言って更に私をぎゅーっと抱きしめてくる。なんかもうどうでも良くなってきた。
ねぇナターシャ? オーランドが幸せそうだったから、あなたがしてきた数々の失礼な態度を自分が素直になれなかったせいだとオーランドが謝るから、あなた達を祝福するけど、あなたにオーランドは勿体ないって思ってしまうの。
オーランドが休暇で実家に戻った際、あなたにニーナ様が素敵だと、憧れだなんて話すからニーナ様に嫉妬してしまったのは仕方ないと思う。
好きな人から別の女性を褒める話を聞かされるなんて辛いもの。でもだからってニーナ様の幸せを壊すためにお兄様に近付き、婚約を解消させようとするのはやり過ぎよ。
ターゲットを私に変えた理由も理解はした。でもね、ニーナ様はもちろん私もあなたより爵位が上なの。睨んだりぶつかったり、処罰されていたっておかしくないの。そもそも貴族令嬢以前に人としてダメすぎ。
ルーク様は違うって言っていたけど、きっとナターシャはお兄様の時と同じようにルーク様に近付いたんだと思う。ただ芽が出る前に摘み取られただけで。あなたは私達が婚約していることを知ってたんでしょう? なら私達の婚約も解消させるつもりだったのよね?
だから今の私はあなたを許すことができない。
ルーク様が裏から手を回したおかげであなたの父親である伯爵を説得でき、継ぐ爵位を持たないオーランドと結婚が許されたこと、絶対に忘れないで。
いつか私があなたを許せるように、心からあなたの幸せを祝福できるように、今までしてきたことをしっかり反省し、オーランドの隣に立つに相応しい女性になってほしい。
私は今、推し友メンバーでサロンに集まっている。………正確にはプラスルーク様。気を許しているメンバーだけだから、すこーし貴族令嬢らしからぬ大きな声を出してしまったのは黙認してほしい。
今回みんなを集めたのは珍しいことにオーランド。そう、私の推し友第一号であるオーランドから呼び出されたのだ。何故このメンバーでなのか、そして何故お兄様とニーナ様がいないのかは、とりあえず置いておこう。
なによりも。
「婚約おめでとう」
「ありがとうございます。エレナ様」
まさかオーランドが婚約するとは。男爵家の次男だし、婚約自体はおかしいことじゃない。ただ、彼はセオドア様の侍従…今は専属執事に昇格したんだっけ。だから上位貴族令嬢と婚約するとは、ここにいる誰も予想していなかっただろう。
オーランドだってどこかの貴族に婿入するのではなく、身分にこだわらずクラーク公爵家で働く女性、要するに職場結婚するつもりだって言っていたし。まぁ…公爵家の上級使用人の彼が接する機会が多い相手も同じように上級使用人だろうから、結局は貴族令嬢と結婚すると思っていたけど。
でもだからって、やっぱり幼馴染みとはいえ伯爵令嬢との婚約は驚きでしかないわ。しかも…ねぇ?
「オーランドも彼女のことがずっと好きだったの?」
「そうですね…初恋の相手ではありました。身分が違いすぎるので諦めたといいますか、クラーク公爵家でお世話になることが決まった時点で気持ちに蓋をしました」
相手はずーっとオーランドを想い続けていた…うん。その恋が実るなんて素敵な話よね。でも…
「もっと早く知りたかったわ」
正確にはもっと早く婚約してほしかった。そしたら私も悩まずに済んだのに。
ナターシャ・ハーロウ
まさか、主人公の想い人が幼馴染みの男爵令息、オーランド・ホルトだったとはね。
*
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みんながサロンを出た後、ルーク様と私はもう少しその場に残った。
「あの…降ろしてもらえませんか?」
「なんで?」
なんでって…ここじゃ平常心を保てないからよ。
私が座っているのはルーク様の膝の上。りょ、両思いになってからよく膝に乗せられ抱きしめられるの。
「ルーク様は今後も推し活に参加されるのですか?」
「ダメ?」
「いえっ。参加者が増えるのは嬉しいですし」
「内容に興味はないけどエレナのそばにいたいからね」
っ/// これがお兄様とニーナ様がいなかった理由。オーランドが推し友に婚約報告するため呼んだ場に、ルーク様が私についてきたってだけなの。
本当はドキドキしてそれどころじゃないけれど、この際気になっている事を全て確認しておきたい。
「まさか彼女の想い人がお兄様でもなく、ルーク様でもなく、オーランドだったとは思いませんでした」
「ん? ライナスだけでなく俺も?」
「はい。だって…」
「エレナはオーランドと距離が近いからねぇ」
?? 確かにオーランドは異性って言うより推し友感が強すぎて、推しの話になると盛り上がってつい手を握ってしまったり、分かる~って肩を叩いてしまったりするけど…でもいつものメンバーしかいない時だけだよ?
他の人がいる時はちゃんと貴族令嬢の私しか出してないし…なにより今はルーク様とナターシャの関係を問いただしたいのであって、オーランドは関係ない。
「もう俺の婚約者だって知ったんだから、これからは距離感に気を付けないと…お仕置きが必要になるかもね?」
「おっ、お仕置きですか!?」
「うん。だから気を付けてね」
えっと…その笑顔、怖いんですが……。
「彼女がエレナに嫉妬する気持は手に取るように分かったから、少し手を貸すことにしたんだ」
「それってルーク様はオーランドに嫉妬してたってことですか?」
「そりゃあね」
う、嬉しい。
「ですが私は彼女に嫉妬されるほど関わりがないのですが…」
むしろ全くないのだが。
「オーランドから聞いていたらしいよ」
「?? 何をでしょう?」
初めて会った時、私が学園入学前にカフェテリアでオムライスを食べたあの日。オーランドが学園に来た理由が『私に誘われたから』。それを聞いて嫉妬して睨んできた、らしい。
私にぶつかってきたあの日、確かに私はその直前に推し友と集まっていた。オーランドがいるサロンから私が出てきたのを見たらしいけど…。
いやいやいや、めっちゃ迷惑! 完全に八つ当たりじゃないか。
「もちろんエレナを睨んだり、態とぶつかってきたりしたことを許すつもりはない。だけどこれ以上エレナに危害を加えさせないために、さっさとくっつけてしまおうと思ってね」
まさかの理由! オーランドやナターシャではなく私のためだったとは。
「では以前彼女と握手していたのは?」
これが一番聞きたかったのだ。
「握手? 記憶にないが……あぁ、オーランドとの仲を取り持つ約束をした時か。エレナ見ていたんだね。大丈夫、すぐ洗い流したから」
洗い流したんだ。嬉しいような、流石に彼女が不憫なような、反応に困るわ。でも良かった。
「完全に私の勘違いだったのですね」
「もしかして…嫉妬、してくれたの?」
「えっ! そ、それはその…………はい」
嬉しいと言って更に私をぎゅーっと抱きしめてくる。なんかもうどうでも良くなってきた。
ねぇナターシャ? オーランドが幸せそうだったから、あなたがしてきた数々の失礼な態度を自分が素直になれなかったせいだとオーランドが謝るから、あなた達を祝福するけど、あなたにオーランドは勿体ないって思ってしまうの。
オーランドが休暇で実家に戻った際、あなたにニーナ様が素敵だと、憧れだなんて話すからニーナ様に嫉妬してしまったのは仕方ないと思う。
好きな人から別の女性を褒める話を聞かされるなんて辛いもの。でもだからってニーナ様の幸せを壊すためにお兄様に近付き、婚約を解消させようとするのはやり過ぎよ。
ターゲットを私に変えた理由も理解はした。でもね、ニーナ様はもちろん私もあなたより爵位が上なの。睨んだりぶつかったり、処罰されていたっておかしくないの。そもそも貴族令嬢以前に人としてダメすぎ。
ルーク様は違うって言っていたけど、きっとナターシャはお兄様の時と同じようにルーク様に近付いたんだと思う。ただ芽が出る前に摘み取られただけで。あなたは私達が婚約していることを知ってたんでしょう? なら私達の婚約も解消させるつもりだったのよね?
だから今の私はあなたを許すことができない。
ルーク様が裏から手を回したおかげであなたの父親である伯爵を説得でき、継ぐ爵位を持たないオーランドと結婚が許されたこと、絶対に忘れないで。
いつか私があなたを許せるように、心からあなたの幸せを祝福できるように、今までしてきたことをしっかり反省し、オーランドの隣に立つに相応しい女性になってほしい。
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