推しの悪役令嬢を幸せにします!

みかん桜

文字の大きさ
41 / 44

推し友第一号の婚約

しおりを挟む
「えっ!! そうだったの!?」

 私は今、推し友メンバーでサロンに集まっている。………正確にはプラスルーク様。気を許しているメンバーだけだから、すこーし貴族令嬢らしからぬ大きな声を出してしまったのは黙認してほしい。

 今回みんなを集めたのは珍しいことにオーランド。そう、私の推し友第一号であるオーランドから呼び出されたのだ。何故このメンバーでなのか、そして何故お兄様とニーナ様がいないのかは、とりあえず置いておこう。

 なによりも。

「婚約おめでとう」
「ありがとうございます。エレナ様」

 まさかオーランドが婚約するとは。男爵家の次男だし、婚約自体はおかしいことじゃない。ただ、彼はセオドア様の侍従…今は専属執事に昇格したんだっけ。だから上位貴族令嬢と婚約するとは、ここにいる誰も予想していなかっただろう。

 オーランドだってどこかの貴族に婿入するのではなく、身分にこだわらずクラーク公爵家で働く女性、要するに職場結婚するつもりだって言っていたし。まぁ…公爵家の上級使用人の彼が接する機会が多い相手も同じように上級使用人だろうから、結局は貴族令嬢と結婚すると思っていたけど。

 でもだからって、やっぱり幼馴染みとはいえ伯爵令嬢との婚約は驚きでしかないわ。しかも…ねぇ?

「オーランドも彼女のことがずっと好きだったの?」
「そうですね…初恋の相手ではありました。身分が違いすぎるので諦めたといいますか、クラーク公爵家でお世話になることが決まった時点で気持ちに蓋をしました」

 相手はずーっとオーランドを想い続けていた…うん。その恋が実るなんて素敵な話よね。でも…

「もっと早く知りたかったわ」

 正確にはもっと早く婚約してほしかった。そしたら私も悩まずに済んだのに。


 ナターシャ・ハーロウ


 まさか、主人公の想い人が幼馴染みの男爵令息、オーランド・ホルトだったとはね。




 みんながサロンを出た後、ルーク様と私はもう少しその場に残った。

「あの…降ろしてもらえませんか?」
「なんで?」

 なんでって…ここじゃ平常心を保てないからよ。

 私が座っているのはルーク様の膝の上。りょ、両思いになってからよく膝に乗せられ抱きしめられるの。

「ルーク様は今後も推し活に参加されるのですか?」
「ダメ?」
「いえっ。参加者が増えるのは嬉しいですし」
「内容に興味はないけどエレナのそばにいたいからね」

 っ/// これがお兄様とニーナ様がいなかった理由。オーランドが推し友に婚約報告するため呼んだ場に、ルーク様が私についてきたってだけなの。


 本当はドキドキしてそれどころじゃないけれど、この際気になっている事を全て確認しておきたい。

「まさか彼女の想い人がお兄様でもなく、ルーク様でもなく、オーランドだったとは思いませんでした」
「ん? ライナスだけでなく俺も?」
「はい。だって…」
「エレナはオーランドと距離が近いからねぇ」

 ?? 確かにオーランドは異性って言うより推し友感が強すぎて、推しの話になると盛り上がってつい手を握ってしまったり、分かる~って肩を叩いてしまったりするけど…でもいつものメンバーしかいない時だけだよ?

 他の人がいる時はちゃんと貴族令嬢の私しか出してないし…なにより今はルーク様とナターシャの関係を問いただしたいのであって、オーランドは関係ない。

「もう俺の婚約者だって知ったんだから、これからは距離感に気を付けないと…お仕置きが必要になるかもね?」
「おっ、お仕置きですか!?」
「うん。だから気を付けてね」

 えっと…その笑顔、怖いんですが……。

「彼女がエレナに嫉妬する気持は手に取るように分かったから、少し手を貸すことにしたんだ」
「それってルーク様はオーランドに嫉妬してたってことですか?」
「そりゃあね」

 う、嬉しい。

「ですが私は彼女に嫉妬されるほど関わりがないのですが…」

 むしろ全くないのだが。

「オーランドから聞いていたらしいよ」
「?? 何をでしょう?」

 初めて会った時、私が学園入学前にカフェテリアでオムライスを食べたあの日。オーランドが学園に来た理由が『私に誘われたから』。それを聞いて嫉妬して睨んできた、らしい。

 私にぶつかってきたあの日、確かに私はその直前に推し友と集まっていた。オーランドがいるサロンから私が出てきたのを見たらしいけど…。

 いやいやいや、めっちゃ迷惑! 完全に八つ当たりじゃないか。

「もちろんエレナを睨んだり、態とぶつかってきたりしたことを許すつもりはない。だけどこれ以上エレナに危害を加えさせないために、さっさとくっつけてしまおうと思ってね」

 まさかの理由! オーランドやナターシャではなく私のためだったとは。

「では以前彼女と握手していたのは?」

 これが一番聞きたかったのだ。

「握手? 記憶にないが……あぁ、オーランドとの仲を取り持つ約束をした時か。エレナ見ていたんだね。大丈夫、すぐ洗い流したから」

 洗い流したんだ。嬉しいような、流石に彼女が不憫なような、反応に困るわ。でも良かった。

「完全に私の勘違いだったのですね」
「もしかして…嫉妬、してくれたの?」
「えっ! そ、それはその…………はい」

 嬉しいと言って更に私をぎゅーっと抱きしめてくる。なんかもうどうでも良くなってきた。



 ねぇナターシャ? オーランドが幸せそうだったから、あなたがしてきた数々の失礼な態度を自分が素直になれなかったせいだとオーランドが謝るから、あなた達を祝福するけど、あなたにオーランドは勿体ないって思ってしまうの。


 オーランドが休暇で実家に戻った際、あなたにニーナ様が素敵だと、憧れだなんて話すからニーナ様に嫉妬してしまったのは仕方ないと思う。

 好きな人から別の女性を褒める話を聞かされるなんて辛いもの。でもだからってニーナ様の幸せを壊すためにお兄様に近付き、婚約を解消させようとするのはやり過ぎよ。

 ターゲットを私に変えた理由も理解はした。でもね、ニーナ様はもちろん私もあなたより爵位が上なの。睨んだりぶつかったり、処罰されていたっておかしくないの。そもそも貴族令嬢以前に人としてダメすぎ。

 ルーク様は違うって言っていたけど、きっとナターシャはお兄様の時と同じようにルーク様に近付いたんだと思う。ただ芽が出る前に摘み取られただけで。あなたは私達が婚約していることを知ってたんでしょう? なら私達の婚約も解消させるつもりだったのよね?

 だから今の私はあなたを許すことができない。

 ルーク様が裏から手を回したおかげであなたの父親である伯爵を説得でき、継ぐ爵位を持たないオーランドと結婚が許されたこと、絶対に忘れないで。

 いつか私があなたを許せるように、心からあなたの幸せを祝福できるように、今までしてきたことをしっかり反省し、オーランドの隣に立つに相応しい女性になってほしい。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢は反省しない!

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢リディス・アマリア・フォンテーヌは18歳の時に婚約者である王太子に婚約破棄を告げられる。その後馬車が事故に遭い、気づいたら神様を名乗る少年に16歳まで時を戻されていた。 性格を変えてまで王太子に気に入られようとは思わない。同じことを繰り返すのも馬鹿らしい。それならいっそ魔界で頂点に君臨し全ての国を支配下に置くというのが、良いかもしれない。リディスは決意する。魔界の皇子を私の美貌で虜にしてやろうと。

【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!

白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。 辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。 夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆  異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です) 《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆ 

残念な顔だとバカにされていた私が隣国の王子様に見初められました

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
公爵令嬢アンジェリカは六歳の誕生日までは天使のように可愛らしい子供だった。ところが突然、ロバのような顔になってしまう。残念な姿に成長した『残念姫』と呼ばれるアンジェリカ。友達は男爵家のウォルターただ一人。そんなある日、隣国から素敵な王子様が留学してきて……

もふもふ子犬の恩返し・獣人王子は子犬になっても愛しの王女を助けたい

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され
恋愛
カーラは小国モルガン王国の王女だ。でも、小国なので何かと大変だ。今国は北の大国ノース帝国と組んだ宰相に牛耳られており、カーラは宰相の息子のベンヤミンと婚約させられそうになっていた。そんな時に傷ついた子犬のころちゃんを拾う王女。 王女はころちゃんに癒やされるのだ。そんな時にいきなりいなくなるころちゃん。王女は必死に探すが見つからない。 王女の危機にさっそうと現れる白い騎士。でもその正体は…… もふもふされる子犬のころちゃんと王女の物語、どうぞお楽しみ下さい。

折角転生したのに、婚約者が好きすぎて困ります!

たぬきち25番
恋愛
ある日私は乙女ゲームのヒロインのライバル令嬢キャメロンとして転生していた。 なんと私は最推しのディラン王子の婚約者として転生したのだ!! 幸せすぎる~~~♡ たとえ振られる運命だとしてもディラン様の笑顔のためにライバル令嬢頑張ります!! ※主人公は婚約者が好きすぎる残念女子です。 ※気分転換に笑って頂けたら嬉しく思います。 短めのお話なので毎日更新 ※糖度高めなので胸やけにご注意下さい。 ※少しだけ塩分も含まれる箇所がございます。 《大変イチャイチャラブラブしてます!! 激甘、溺愛です!! お気を付け下さい!!》 ※他サイト様にも公開始めました!

実家を追い出され、薬草売りをして糊口をしのいでいた私は、薬草摘みが趣味の公爵様に見初められ、毎日二人でハーブティーを楽しんでいます

さら
恋愛
実家を追い出され、わずかな薬草を売って糊口をしのいでいた私。 生きるだけで精一杯だったはずが――ある日、薬草摘みが趣味という変わり者の公爵様に出会ってしまいました。 「君の草は、人を救う力を持っている」 そう言って見初められた私は、公爵様の屋敷で毎日一緒に薬草を摘み、ハーブティーを淹れる日々を送ることに。 不思議と気持ちが通じ合い、いつしか心も温められていく……。 華やかな社交界も、危険な戦いもないけれど、 薬草の香りに包まれて、ゆるやかに育まれるふたりの時間。 町の人々や子どもたちとの出会いを重ね、気づけば「薬草師リオナ」の名は、遠い土地へと広がっていき――。

追放令嬢の発酵工房 ~味覚を失った氷の辺境伯様が、私の『味噌スープ』で魔力回復(と溺愛)を始めました~

メルファン
恋愛
「貴様のような『腐敗令嬢』は王都に不要だ!」 公爵令嬢アリアは、前世の記憶を活かした「発酵・醸造」だけが生きがいの、少し変わった令嬢でした。 しかし、その趣味を「酸っぱい匂いだ」と婚約者の王太子殿下に忌避され、卒業パーティーの場で、派手な「聖女」を隣に置いた彼から婚約破棄と「北の辺境」への追放を言い渡されてしまいます。 「(北の辺境……! なんて素晴らしい響きでしょう!)」 王都の軟水と生ぬるい気候に満足できなかったアリアにとって、厳しい寒さとミネラル豊富な硬水が手に入る辺境は、むしろ最高の『仕込み』ができる夢の土地。 愛する『麹菌』だけをドレスに忍ばせ、彼女は喜んで追放を受け入れます。 辺境の廃墟でさっそく「発酵生活」を始めたアリア。 三週間かけて仕込んだ『味噌もどき』で「命のスープ」を味わっていると、氷のように美しい、しかし「生」の活力を一切感じさせない謎の男性と出会います。 「それを……私に、飲ませろ」 彼こそが、領地を守る呪いの代償で「味覚」を失い、生きる気力も魔力も枯渇しかけていた「氷の辺境伯」カシウスでした。 アリアのスープを一口飲んだ瞬間、カシウスの舌に、失われたはずの「味」が蘇ります。 「味が、する……!」 それは、彼の枯渇した魔力を湧き上がらせる、唯一の「命の味」でした。 「頼む、君の作ったあの『茶色いスープ』がないと、私は戦えない。君ごと私の城に来てくれ」 「腐敗」と捨てられた令嬢の地味な才能が、最強の辺境伯の「生きる意味」となる。 一方、アリアという「本物の活力源」を失った王都では、謎の「気力減退病」が蔓延し始めており……? 追放令嬢が、発酵と菌への愛だけで、氷の辺境伯様の胃袋と魔力(と心)を掴み取り、溺愛されるまでを描く、大逆転・発酵グルメロマンス!

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

処理中です...