かつらぽーん

うりぼう

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かつらがぽーんと吹き飛ぶ

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彼がこの学園に現れてから早二週間。
わかりやすいぼさぼさのカツラを身に付けた彼は、光の早さでこの学園のシンボルともいえる生徒会その他諸々所謂美形連中を虜にした。
そして親衛隊の面々を敵に回し、ちゃちな嫌がらせを細々と幾千も受けていた。

今日もまた、びしょ濡れにされた上履きの変わりに来賓用のスリッパを履いて歩いていたところ、スリッパの後ろ部分を踏まれ派手に転び更にそのまま親衛隊隊長ズに校舎裏へと連行されたところである。

「何で連れてこられたかわかってるよね?」

第一声は見た目の愛らしさからは程遠い冷たく厳しいものだった。
続く言葉は容易に想像出来る。
生徒会の皆さんに近付くな身の程を弁えろお前なんかが傍にいて良い方々じゃないあんなに忠告したのにまだわかんないのかもっと痛い目に合いたいのか云々。
それに対し彼が思うことは単純明快。

(……やってらんねー)

である。
自分から生徒会その他諸々に近付いた覚えはない。
近付きたくもないと心の底から思って今まで全く関わりを持たなかったのに、ちょっかいを出してきたのは奴らの方だ。
大体生徒会の方々って同じ高校生に対してどんだけ敬意表してんだばかばかしい。
迷惑極まりないほんとくたばれ生徒会その他諸々。

そもそも自分がこんなわかりやすいカツラを被っているのは、素顔を隠すためではない。
夜の街で名を馳せたわけでも叔父または親族が理事長で襲われたら心配だとかなんとか言われたわけでもない彼がこんな格好をしているのには理由がある。

「なんとか言いなよ!」

くたばれくたばれとひたすら頭の中で唱えていたら、痺れを切らした親衛隊の一人が胸倉を掴んでもう一人の手が頭にかかった。

「これみよがしなカツラなんか被って!」
「どんだけ酷い素顔なのか見てあげるよ!」

ばしっ

「……あ」

すぱーん!!!

「「「………」」」

手がかけられたと同時に素晴らしい勢いで吹っ飛んでいったカツラ。
その下から現れたのは睫はまばたきをする度に風を起こせそうな程長く唇はぷっくりと艶めき肌は見るからにもちもちな超が付く程の美少年。
だけどその頭はつるつる。
繰り返す、その頭はつるつる。
剃り痕も見えない程にぴかぴかな頭頂部、ぼこぼこも何もないキレイな真ん丸もといつるっぱげに降り注ぐ太陽の光が反射してピカピカキラキラと眩しい。

「え?あれ?」
「ちょっと待っ、え?」
「ど、は?」

予想外のものが出てきて親衛隊の面々が目を丸くする中。

「………酷い」
「「「……!!!(ずっきーん!!!)」」」

ぽつりと呟く彼。
つるっぱげだけれどもそこは美形。
雫がたまりふるふると震える長い睫は儚く、至近距離でそれを目の当たりにした親衛隊長ズは胸を痛めた。

「病気で、仕方なく被ってるだけなのに……」

はらはらはらと涙する彼に為す術がわからずおろおろする。

「ご、ごめんまさかそんな理由があるなんて!」
「ほんとごめん!君があんまりにも生徒会の皆と仲良いから、ちょっと嫉妬したっていうか」
「わざとそんな格好して気をひいてるのかと思って」
「「「本当にすいません!!!」」」
「……」

ピシッと揃えで90度。
素晴らしい謝罪の角度に彼は口角を上げたが、それは本当に一瞬で、すぐさま悲しげな表情を作った。

「……俺こそ誤解させてすみません」
「「「そそそそんなめっそうもない!!!」」」
「生徒会のみんなには内緒にしてくれますか?知られたくなくて……」

ああそういえば随分迷惑そうにしていたのを見ていたはずなのになんで付き纏ってるなんて勘違いしちゃったんだろう!

そう覚醒する親衛隊長ズ。
即座に首が落ちるんじゃないかという位に縦に振る。

「「「も、もちろん!!!」」」
「ありがとうございます」
「「「!!!(きゅんっ)」」」

ふわりと微笑む彼。
儚さと優雅さと美しさと色々なものが混ざっているその微笑みに胸を撃ち抜かれる親衛隊長ズ。

(((俺達が守らなきゃ……!)))

そんな超ド級の見当違いな事を胸に刻み込む親衛隊長ズがいたとかいなかったとか。

(本当はそろそろくるかと思ってヅラオンヅラしてるだけだけどな。こいつら素直ーかわいータイプじゃないけど)

本当は仲間内でやったババ抜きで負けて、一ヶ月の間この格好で過ごすという罰ゲームをやっている最中の彼。
そしてなんだかみんな勘違いしているみたいだが実は転校生でもなんでもなく普通の在校生なのだが、彼の素顔を知る者はほとんどいない。
というのも、見た者を虜にするその容姿が、眼鏡とごくごく普通の髪型で何故か隠されてしまうからである。
元来の目立つ事の嫌いな性格もその一端かもしれない。
幸い同じクラスに親衛隊はいないし、生徒会その他諸々の連中も彼が名乗った偽名を信じている。

(いやしかしちょろいちょろい)

残りの罰ゲームはあと数日。
全てが終わった後の奴らの慌てっぷりを想像しただけで、込み上げる笑いが抑えきれない。
その後彼らの誓い通り親衛隊からの風当たりは劇的に和らぎしかもうざったい生徒会から庇ってくれて一石二鳥。
カツラの彼は親衛隊長様様だなあと、にやりとほくそ笑んでいた。



そして数日後。

「どこ行ったんだアイツ」
「俺達に黙っていなくなるなんて……」
「「きっと親衛隊の奴らがどこかに隠したんだよ!」」
「はああああ!?あんた達がしつこく追い回したからじゃないんですか!?」
「そうだそうだ!あんなに嫌がってたのに!」
「あの人がいなくなったのはあんた達のせいじゃないんですか!?」
「「「「ああ!?お前ら親衛隊のくせに……!」」」」
「「「ふんっ、あの人の素顔も知らないくせに」」」
「「「「ぐ……!」」」」

食堂で人目も憚らずに怒鳴り合う生徒会その他諸々と親衛隊長ズのその後ろを、例の彼が何食わぬ顔で通り過ぎたのに、奴らはこれっぽっちも気付かなかったという。

「よお、一ヶ月お疲れ」
「おー超疲れた」
「ふはっ、しょうがねえな、じゃあ俺がジュース奢ってやろう」
「ジュースじゃなくてメシ奢れ」
「悪い俺今金欠だから」
「嘘つけえええ!お前昨日も俺から巻き上げただろうがトランプで!」
「えー、知らないなあ、夢でも見てたんじゃない?」
「お前ほんと腹立つ一発殴らせろよボコらせろよ」
「んまっ口が悪いんだからこの子ったら!また罰ゲームでアレやらせんぞ」
「っ、てめえ……!」
「ほらジュース」
「ちくしょう、ありがと」
「ははっ、どういたしまして」

彼が友人とこんな会話がなされていた事も、当然奴らは知らない。

そして奴らが教室にまで来た時は……

「「「「おい、あいつは!?」」」」
「「「あの人は!?」」」
「「「「「こないだ遠縁の親戚に引き取られて転校しました」」」」」

口裏を合わせて皆でにっこりとそう告げる中に、ちゃっかりと彼の姿もあったらしい。




end.

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