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もうかつらは被りません
しおりを挟む「橋本恵ってどの子?」
放課後、帰りの会を終えた先生が立ち去るやいなややってきた人物に教室の中が一瞬の静寂に包まれる。
(……げ)
フルネームを呼ばれた恵は、その人物を見て眉を寄せる。
「おい、あれって会計さんじゃね?」
そう、恵を呼んだのは『めぐむ』を気に入っていた奴らの一人、会計だった。
チャラチャラとした外見と人懐こい笑みを浮かべ、出来が悪そうなのにその実成績は学年上位。
人は見た目によらないものである。
ちなみに前回和解した隊長さん達の一人はこの人の親衛隊である。
「まさかまた正体バレたのか?」
「いや、会計とは全然接触してない」
「そうだよなあ、隊長さん達にバレて以来罰ゲームもしてねえし」
「じゃあなんで来てんだよ会計さんが」
「知らねえよ」
「いやでも来てもおかしくねえよな」
「だよな、会長さんも隊長さん達も入り浸ってるもんな」
恵を含む周りがぼそぼそと囁き合う。
その間に痺れを切らしたらしい会計。
「いるの?いないの?いるなら出てきてよー。それか誰か指差して」
淡々と告げる会計に、教室中の視線が僅かに集まる。
それに気付いた会計が、ズカズカと教室に入ってきて恵の目の前でぴたりと足を止めた。
「君が橋本恵?」
「……」
確信を持って聞かれた問いに恵がひっそりと溜息を吐き頷く。
「そうですけど、オレに何か用ですか?」
「うん。悪いけどちょっと付き合ってくれる?」
聞いてはいるが、拒否を許さないその口調。
(ここで逃げてもどうせまた来るだろうしなあ)
すでに顔も名前もバレてしまった。
後からややこしい事になるのなら、面倒な事は早々に終わらせてしまおう。
恵はそう考え、にっこりと微笑む会計に素直に従った。
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