19 / 71
高塚くんの休日
しおりを挟む高塚くんの休日は、森くんに電話を掛けることから始まる。
「森ちゃんおはよー!今日超良い天気だよ!一緒に出掛けない?」
『無理。佐木と遊ぶから』
「う、浮気!?」
『アホか』
本日は(も、と言うべきか)きっぱりとお断りされガチャ切りされた模様。
「もー!」
ぶーと頬を膨らませる。
実は既に外に出ていた高塚くん。
仕方がないから石野くんでも呼ぼうかと思ったらこちらもすっぱりと断られてしまったので、結局一人ぶらぶらと街中を徘徊することになった。
顔だけ自慢なところは伊達じゃないらしく、道中女の子の視線を独り占めしていたのだが高塚くんの脳内はそれどころではない。
(あの服いいなあ森に似合いそう。鎖骨丸見え……やばい襲う絶対襲う!)
服屋を見ればそんな事を考え。
(あの帽子いいなあ、かわいいなあ、森が被ったらもっとかわいいんだろうなあ)
帽子を見てそう思い。
(あ、なんだよあのカップル腕なんか組みやがってー!オレだって森ちゃんと腕組んで歩きたいのに手だって恋人繋ぎとかしちゃったりしたいのにー!!)
道行くカップルを見ては羨ましがり。
その全てがやはり森くん一色に染まっていたのは言うまでもない。
そうこうしているうちに、ふととある眼鏡屋さんが目に入った。
(あーこれCMで流れてたやつだ)
普段眼鏡はかけないのだが、綺麗なグラデーションのカラフルなそれに興味が湧いた。
一つを手に取りかけてみる。
(おっ、いいじゃーん。今度伊達眼鏡でもしていこうかなあ)
それで森くんがときめいてくれたら嬉しいなあ、なんてありえない希望を抱く。
そして先程かけたのと同じシリーズの色違いを手に取って見てみる。
(これ森に似合いそうだなあ。ああでも森ちゃんかわいいからなあ、なんでも似合いそうだなあ)
にまにまと物色していると、後方から聞き覚のある声が。
「ほら絶対そうだって!」
「絶対そうだから関わりたくないんだろ!?」
(この声は!)
ギュインッと物凄い勢いで振り返るとそこにはやはり思った通りの可愛い可愛いあの子がいた。
隣にいるのが自分ではないというのが若干腹が立つが、会えないはずだったのに会えただけでも良しとしよう。
「あ」
「げ」
「やっぱり森だー!」
瞬間移動でもしたのかというスピードで森くんに駆け寄り抱き締め頬擦り。
尻尾をぶんぶんと振り回していそうな勢いで喜ぶ高塚くんに対し、出来ればこっそりひっそり且つ迅速にこの場を去りたかったであろう森くんは心底嫌そうな表情。
「やだもう何これ運命!?こんなとこで会えるなんてーっ」
「抱きつくな擦りよるなむしろ近寄るな痴漢ーッ!」
「い…ッ、たくも痒くもないぜ……!」
脛を爪先で蹴られながらも離れない高塚くんは、見慣れてはいたし面白いのだけれどやはり少し気持ち悪かった、とは傍らで見ていた佐木くんの談。
「……って、何かけてんのそれ?商品だろ?パクんの?」
「そんなわけないじゃん!」
「そのまま捕まっちまえばいいのに」
「やだよ。ていうかさ、どう?どう?似合う?」
ちくしょう美形は何したってサマになるな、と思いつつも口には出さない。
変わりにムッと眉を寄せ唇を尖らせる。
「え、ちょ、何、そんなかわいい顔したらちゅーしちゃうよ!?」
「やめろっつってんだろうがああああ!!!」
「あ!そうだ森、これかけてみて!」
「は?うわっ」
言うと同時にかけられる眼鏡。
「何だよ!?」
「っ、うわー超色っぽい超かわいい!」
「は?」
「森かわいいから絶対似合うと思ったんだよね!」
「……」
「うん、まあ九割惚れた欲目ってやつだな」
何言ってんだこいつ、どこに目付けてんだという森くんの視線に気付き答える佐木くん。
だがしかしおもしろいのでニヤニヤと笑みは絶やさない。
「はい!じゃあ次これ!」
「ちょっ、またお前は……」
抵抗したいけれども無理に押し返して万が一フレームを折ってしまったら、なんて考えると怖くて本領を発揮出来ない森くん。
心配しなくてもそうそうぶっ壊れたりはしない。
「うわ、うわ、家庭教師っぽいこれ!」
赤のフレームをかけた森くんに興奮した様子の高塚くん。
確かにどこぞの18歳未満お断りな映画にでも出てきそうな家庭教師のように見えなくもない。
あくまで眼鏡が、である。
「いいね、凄くいい!なんか色々教えてもらいたい!んでご褒美にちゅーとか……!」
「しねえぞ?」
「あ!こういうのどう!?一問正解でちゅー、二問正解でべろちゅーで五問正解したらフェラで全問正解したら突っ込んで良いとか!やだもうたまんないっ!」
「気持ち悪いいいい!!!てかお前バカだから一問どころか問題見ただけでギブアップだろうが!」
「ご褒美貰えるならしぬ気で頑張りますとも!」
「頑張ったところでなんもしねえよ!ふざけんなよ変態!」
「あ、だめ、その格好でそのセリフたまんない服剥きたい森ちゃん今から白いシャツ買いに行かない?胸元がばってあいてるやつ!」
「誰が行くか!」
白昼堂々下ネタ全開な高塚くんは、その容姿も相まって非常に目立ってはいたのだが、多くの視線に晒される事に慣れているのか全く気にする様子はなかった。
それはそうと。
(すっげえ面白いんだけどオレ完全に存在忘れられてるよな?な?どうすっかな、森には悪いけど帰っちゃおうかなあ、でもこのままウォッチングしてたい気もするなあ、悩むなあ。後ろからこっそり付いて行こうかなあ)
眼鏡をかけさせては妄想垂れ流す高塚くんと、それに文句たらたらでにこりともせず彼を足蹴にする森くんを目の前にして、ぽつんと立ち尽くしどうしたものかと真剣に悩む佐木くんがいた。
こうして高塚くんの一日は過ぎていく。
end
8
あなたにおすすめの小説
アイドルくん、俺の前では生活能力ゼロの甘えん坊でした。~俺の住み込みバイト先は後輩の高校生アイドルくんでした。
天音ねる(旧:えんとっぷ)
BL
家計を助けるため、住み込み家政婦バイトを始めた高校生・桜井智也。豪邸の家主は、寝癖頭によれよれTシャツの青年…と思いきや、その正体は学校の後輩でキラキラ王子様アイドル・橘圭吾だった!?
学校では完璧、家では生活能力ゼロ。そんな圭吾のギャップに振り回されながらも、世話を焼く日々にやりがいを感じる智也。
ステージの上では完璧な王子様なのに、家ではカップ麺すら作れない究極のポンコツ男子。
智也の作る温かい手料理に胃袋を掴まれた圭吾は、次第に心を許し、子犬のように懐いてくる。
「先輩、お腹すいた」「どこにも行かないで」
無防備な素顔と時折見せる寂しげな表情に、智也の心は絆されていく。
住む世界が違うはずの二人。秘密の契約から始まる、甘くて美味しい青春ラブストーリー!
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
【完結】幼馴染に告白されたけれど、実は俺の方がずっと前から好きだったんです 〜初恋のあわい~
上杉
BL
ずっとお前のことが好きだったんだ。
ある日、突然告白された西脇新汰(にしわきあらた)は驚いた。何故ならその相手は幼馴染の清宮理久(きよみやりく)だったから。思わずパニックになり新汰が返答できずにいると、理久はこう続ける。
「驚いていると思う。だけど少しずつ意識してほしい」
そう言って普段から次々とアプローチを繰り返してくるようになったが、実は新汰の方が昔から理久のことが好きで、それは今も続いている初恋だった。
完全に返答のタイミングを失ってしまった新汰が、気持ちを伝え完全な両想いになる日はやって来るのか?
初めから好き同士の高校生が送る青春小説です!お楽しみ下さい。
【完結】ネクラ実況者、人気配信者に狙われる
ちょんす
BL
自分の居場所がほしくて始めたゲーム実況。けれど、現実は甘くない。再生数は伸びず、コメントもほとんどつかない。いつしか実況は、夢を叶える手段ではなく、自分の無価値さを突きつける“鏡”のようになっていた。
そんなある日、届いた一通のDM。送信者の名前は、俺が心から尊敬している大人気実況者「桐山キリト」。まさかと思いながらも、なりすましだと決めつけて無視しようとした。……でも、その相手は、本物だった。
「一緒にコラボ配信、しない?」
顔も知らない。会ったこともない。でも、画面の向こうから届いた言葉が、少しずつ、俺の心を変えていく。
これは、ネクラ実況者と人気配信者の、すれ違いとまっすぐな好意が交差する、ネット発ラブストーリー。
※プロットや構成をAIに相談しながら制作しています。執筆・仕上げはすべて自分で行っています。
【完結】君の穿ったインソムニア
古都まとい
BL
建設会社の事務として働く佐野純平(さの じゅんぺい)は、上司のパワハラによって眠れない日々を過ごしていた。後輩の勧めで病院を受診した純平は不眠症の診断を受け、処方された薬を受け取りに薬局を訪れる。
純平が訪れた薬局には担当薬剤師制度があり、純平の担当薬剤師となったのは水瀬隼人(みなせ はやと)という茶髪の明るい青年だった。
「佐野さんの全部、俺が支えてあげますよ?」
陽キャ薬剤師×不眠症会社員の社会人BL。
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
【完結済】俺のモノだと言わない彼氏
竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?!
■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
【完結・BL】春樹の隣は、この先もずっと俺が良い【幼馴染】
彩華
BL
俺の名前は綾瀬葵。
高校デビューをすることもなく入学したと思えば、あっという間に高校最後の年になった。周囲にはカップル成立していく中、俺は変わらず彼女はいない。いわく、DTのまま。それにも理由がある。俺は、幼馴染の春樹が好きだから。だが同性相手に「好きだ」なんて言えるはずもなく、かといって気持ちを諦めることも出来ずにダラダラと片思いを続けること早数年なわけで……。
(これが最後のチャンスかもしれない)
流石に高校最後の年。進路によっては、もう春樹と一緒にいられる時間が少ないと思うと焦りが出る。だが、かといって長年幼馴染という一番近い距離でいた関係を壊したいかと問われれば、それは……と踏み込めない俺もいるわけで。
(できれば、春樹に彼女が出来ませんように)
そんなことを、ずっと思ってしまう俺だが……────。
*********
久しぶりに始めてみました
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる