陰キャ幼馴染がミスターコン代表に選ばれたので、俺が世界一イケメンにしてやります

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Lesson3 姿勢

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「次は……姿勢だ。」

髪型や眉毛は、整えてもらった。
眼科に行ってコンタクトに変えたこともあり、見た目は以前よりずっと垢抜けた。
だけど、陰キャ感が完全に消えたわけじゃない。このままじゃ、優勝は遠い。

「お前、身長高いんだから、猫背直したらめっちゃかっこいいぞ。何センチ?」

「182センチ……」

「デカすぎ! モデルじゃん」

俺は168センチ。並ぶと完全に見上げる感じ。
しかも足、長い。腰の位置どこ!?ってくらい違う。
これで姿勢がよくなったら、本当にスカウト来そうだ。

「いやいや、僕なんて……」

「そうやって俯くな! それがダメなんだよ!」

「ひゃっ……な、なんで怒るの!?」

「怒ってない! 指導だよ、指導!」

場所は、近所の公園。
人通りも少なくて、姿勢チェックにはちょうどいい。
悠里は木の根っこの上に立って、ぎこちなく胸を張っている。
まるで“気をつけ”をする新入生。

「……歩、なんか恥ずかしい。」

「見た目よくなりたいんだろ? 我慢しろ。」

「でも、公園で“胸張って!”って言われるの、なんか恥ずかしい……」

「うるさい、はい! 背中伸ばせ!」

「はいっ!」

俺は後ろに回って、彼の肩を軽く押す。
骨ばった肩の感触。厚めのパーカー越しでも分かる体温。
思ってたより、ちゃんと男の体してる。

「力抜け。背筋に変なクセついてる。」

「こ、こう……?」

「そう、それで顎引け。あと、胸——」

思わず前に回り込む。
見上げる形で、彼の胸元に手を置いた瞬間——
近い。
やばい。近すぎる。

「こ、ここ、張るんだよ。そう、まっすぐ——」

「……歩。」

「な、なに。」

「顔、赤いよ。」

「ち、ちがっ、これは日差しのせい!」

「夕方なのに?」

「うるさい!!」

悠里が、くすっと笑った。
その笑顔が、ずるい。前よりずっと自然になった。
“垢抜ける”って、外見だけじゃないのかもしれない。

「はい、鏡代わりに写真撮るから、スマホ見ろ。」

「え、僕、写真苦手……」

「いいから! はいチーズ!」

パシャ。

画面を見せると、悠里は目を見開いた。

「……これ、僕?」

「そうだよ。なんか、自信持ってる感じ出てるじゃん。」

「……すごい。姿勢だけで、全然違う。」

「な? 姿勢ナメたらアカンのよ。」

悠里は嬉しそうに笑う。
その笑顔を見て、俺はふと気づいた。
いつも、こんな風に笑えなかったよな。
どこか人の目を気にして、縮こまってた。

「ねぇ、歩。」

「ん?」

「僕、変わったかな。」

「変わったよ。普通に、かっこいい。」

「かっこいい……」

呟くように繰り返して、少し頬を赤らめる。
たぶん、夕日のせいじゃない。

「……あのさ。」

「ん?」

「こうやって、横に立たれると、僕の方が背高いの、すごい実感する。」

「そりゃあ、182だからな。」

「……守られてる気分、なくなった。」

「おい、俺そんなキャラだったか?」

「うん。ちょっと。……頼りたくなる。」

「……ずるいこと言うなよ。」

「え?」

「いや、なんでもない。」

胸がざわつく。
“教えてる側”だったのに、いつの間にか立場が逆転してる気がする。
見上げた先の悠里は、まっすぐ前を見ていた。
自信のある人の姿だ。

「なぁ、歩。」

「ん?」

「僕さ、歩に会えて、よかった。」

「……お、おう。」

「僕、こういうふうに誰かに見てもらえるの、初めてだから。」

その言葉が、不意に刺さる。
“見てもらう”って、簡単なようで難しい。
俺も昔、誰かにちゃんと見てほしかったから、わかる気がした。

「お前、これからもっとモテるぞ。」

「え?」

「垢抜けて、自信ついたら、絶対モテる。」

「……じゃあ、歩が責任取って。」

「は?」

「だって、歩が僕を変えたんだよ?」

「いや、それは……!」

悠里は、少し照れたように笑って、まっすぐ言った。

「だから、歩以外に見られるの、ちょっと嫌だな。」

夕日が落ちて、公園の影が長く伸びていく。
まっすぐになった姿勢の彼が、その中に立っていた。
まっすぐな背中が、まっすぐな気持ちみたいに見えて、
なんかもう、反則だ。

「と、とりあえず!!残りは!!」

俺は急いでスマホを差し出した。

「残りは、猫背改善トレーニングってのがいっぱいあるから、一番再生回数多いのを選んで、毎日やれ」

かなり大変だが、優勝のためならやらせる価値はある。

「あとは筋トレだ。2ヶ月あれば少しはマシになるだろう」

筋肉も魅力の一つ。ちょっとくらい大変でも、やる方が絶対いい。今は9月で、本番の11月だ。まだ間に合う。

「……やってみせる!!」

悠里の目がキラリと光った。やる気満々だ。

「……ねぇ、終わったら、ご褒美くれない?」

ちょっと控えめに、でも期待を込めて言う悠里。
その言葉に、胸がぐっと熱くなる。

「おう! なんでもやるぞ!」

頑張ってる悠里のためなら、全財産でも惜しくない。

「…ありがとう…」

微笑んだその顔。
少し恥ずかしそうで、でも嬉しそうで、俺の胸を刺す。

「じゃあ次は服装だ」

とはいえ、俺にファッションセンスはほぼゼロ。
店員さんに頼ることになるだろう。

「月末、服買いに行くぞ」

悠里、たぶんパーカーくらいしか持ってないんじゃないかと思う。このままだと優勝が遠のく。

「……うん。楽しみ」

笑ったその顔——ほんと、眩しい。
思わず俺も笑顔になった。
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