陰キャ幼馴染がミスターコン代表に選ばれたので、俺が世界一イケメンにしてやります

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Lesson5 歌

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「いや~悠里とカラオケ行くの、初じゃないか?楽しみだわ~」

ドリンクバーでジュースを注ぎながら言う。
機械の音と甘い炭酸の匂いが混ざる。

「僕、音楽聴くの好きだから……実は一人でカラオケ、よく行くんだ。」

悠里は手慣れた動きで、ドリンクバーのジュースをブレンドしている。
メロンソーダにカルピスを少し混ぜて……なんかやたら可愛い飲み方してる。

「お!いいじゃんいいじゃん。てことは、歌うまいパターンだな?」

「そ、そんなことないよ……」

そう言いながらも、悠里の目はちょっと楽しそうだった。

「じゃあ入れるね」

悠里はリモコンで曲を選ぶ。
男性バンドグループの数年前の名曲。疾走感があって、カラオケの定番だ。

イントロが流れる。悠里がマイクを持つ。
少し深呼吸をして――歌い出した瞬間、空気が変わった。

……う、うまい。

いや、“うまい”って言葉じゃ足りない。
声が柔らかくて、まっすぐで、胸の奥に響いてくる。
さっきまでのオドオドした悠里とは別人みたいに、堂々とした歌声だった。

しかも、歌っている間はずっと表情が穏やかで、楽しそうだった。

曲が終わり、静寂。
採点画面が出る。

「何点だろ……94点か。思ったより伸びなかったな……」

悠里は冷静に画面を見つめてる。
いやいやいや!? 俺なら80後半でガッツポーズだぞ!?

「ゆ、悠里!ミスターコンで披露する特技、決まったな……!!」

「……え?」

本気で驚いている。
まさか――自覚がないのか!?

「う、嘘だろ!? こんなに上手いのに!?」

「み、みんなこのくらい歌えないの?」

「歌えるわけないだろ!!」

俺は即答した。
この才能、眠らせておくのはもったいなさすぎる。
どうやら、悠里は“ヒトカラ勢”で、人とカラオケに行ったことがないみたいだ。

「とにかく! 一曲決めて、練習だ! 優勝の切り札にするぞ!」

「……じゃあ、この曲、歌おうかな」

悠里が入れたのは、人気バンドのマイナーなバラード曲。
繊細な恋の歌。意外だなと思った。

「いいじゃん。好きな曲歌うのが一番だからな! 毎日特訓だ。俺が付き合う!」

実はもう一つ理由がある。
悠里と二人で歌を聴ける時間が増える――それだけで十分な報酬だ。

「……やった。うん、頑張る!」

悠里は、嬉しそうに笑った。
その笑顔を見て、胸の奥が少し熱くなる。
放課後、俺たちは決まって駅前のカラオケに通った。
常連になりすぎて、受付の店員さんが「今日もお二人でですか?」と笑うくらいだ。

「じゃあ、音程合わせの練習しよっか」

「うん……昨日より声出るかも」

悠里は小さく咳払いして、マイクを構える。
発声から始まり、ハモリ練習、リズム取り。真剣そのものだった。

「いいな、今の声の抜け感。そこ、感情の乗せ方すごい自然だわ」

「……歩、プロデューサーみたいになってる」

からかうように笑う悠里。
それでも、アドバイスを受けるとすぐに直してくる。
成長スピードがえぐい。

ある日、俺が歌ってるとき、悠里がじっとこちらを見ていた。
「……歩も、うまくなったね」

「いや、お前が上達早いから引っ張られてるだけだよ」

そのとき、悠里がぽつりと呟いた。
「僕ね、人とこんなふうに何かを一緒に頑張るの、初めてなんだ」

マイクを持つ手が少し震えていた。
俺は一瞬、返す言葉を失う。

「……そうか。でも、今は俺がいるじゃん」
その言葉に、悠里がそっと笑った。

その笑顔は、あの初日の“ぎこちない微笑み”とは違っていた。



カラオケが終わると、帰り道で一緒にコンビニに寄るのが恒例になった。

「今日の点数、98点だったな」

「100点出したいね」

そんな何気ない会話の中で、自然に距離が縮まっていった。

ある夜、歌い終わったあと、悠里が俺の肩にもたれかかってきた。

「……疲れた。けど、すごく楽しい」

耳元に落ちたその声が、心臓の奥に直接届く。

「なぁ悠里、本番でさ、お前の歌を聴いたら……絶対みんな惚れるぞ」

「……歩は?」

「え?」

「歩も……少しは、惚れてくれる?」

冗談めかして言ったのに、顔は真っ赤だった。
俺も返事を飲み込んだまま、笑って誤魔化した。
だけど、心の奥では――もうとっくに、答えは決まっていた。

……よし。これで、俺にできることは全部やった。
あとは――こいつの努力次第だ。
そして、ミスターコン本番。“無名の男”は、確実に伝説になる。
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