【完結】幸せの終わり

彩華(あやはな)

文字の大きさ
3 / 7

3.

しおりを挟む
 エリカのは執事の有能な指示により無事に進行していた。
 僕はそれを受け入れるように葬儀に出る。

 ボーとしながら式が終わるのを待っていた。

 その間、僕は昨夜のことを思い出していた。

 生きていることを公表しようと言うとの彼女は首を振ったのだった。

 ベッドの上で艶かしく横たわっていた彼女はゆっくりと起き上がり僕に顔を向けた。シーツで胸元を隠した白い肌をみて先ほどまでの情事を思い起こしてしまい、思わず目を逸らす。

「自分を殺したもの・・・」
「それは・・・」
「貴方の信用にも関わってしまうわ」

 ーそれは君が・・・

「クリフ様。私はすべてをもってしても貴方を取り戻したかった。だから私は、私を殺したの」

 意を決したような呟きに視線を戻す。
 白い顔にかかる金色の髪が彼女の儚さを増長させていた。

 だが・・・。

「これが私の覚悟なの」

 僕を見るその目が次第に爛々と輝きを増している。
 彼女は僕に視線を合わせるように身を乗り出してきた。シーツがはだけ、形の良い双丘が現れる。
 見えているのさえ気にもかけず、僕に顔を近づけた。

「だから、誰にも言わないで。お願い。私は貴方だけに見ていてほしいの」

 赤い唇から溢れる熱い息が顔にかかり、白い指が僕の頬を辿る。

 彼女の声を聞いていると、何もかもどうでも良くなってきた気がして、僕は自然に頷いていた。



 
 参列に来ていた者は僕に声をかけてくることもなかったので、葬儀が終わるとすぐに屋敷に帰る。

 部屋に入ると、ソファーでくつろいでいた彼女が僕を見て微笑んできた。

 安心すると同時に不安が襲ってくる。
 もし、エリカが生きているとわかれば生存を隠蔽したとして罰せられるかもしれない。そうなれば、自分の将来は・・・と怖くなる。

 彼女は震えている近づいてくると僕を抱きしめた。

「生きているのが・・・わかると、罪に問われるかも・・・」
「大丈夫よ。貴方が言わなければわからないわ・・・。いえ、言っても誰も信じはしないわ」
「エリカ?」
「私は死んでいるのですもの」

 彼女は艶やかに笑う。
 それが悲しそうに僕は見え、彼女を抱きしめた。

「貴方さえいれば私は幸せなの」

 耳もとで聞こえる彼女の声に、ますます抱きしめる力を込めた。

「もう、どこにもいかないで。私だけを見て。私を感じて」

 泣きそうな声。
 
 僕はエリカの泣いた顔を見たことはない。いつもいつも笑っていた。控えめに僕の半歩後ろに立って・・・。
 大人しくて、激しい感情も我儘さえ言わなかったエリカの初めてお願い。

 
「抱いて。クリフ様・・・」

 僕は請われるまま、彼女を抱き上げベッドに下ろす。

 脱がせたドレスから現れるあられもない下着。
 ごくりと唾を飲んでしまった。

「エリカ」

 恥ずかしそうに顔を隠す彼女。

「お願い・・・」

 ー愛おしい

 なんで、僕は気づかなかったのだろうか?
 こんなに彼女を愛していたことに・・・。

 弾力のある太ももを触ればピクリと反応する。胸の細いリボンを解けば、形の良い乳房が現れ僕を魅了させた。

 一つ一つのことが初々しい。
 結婚当初より、恥ずかしいほどだった。

 すでに僕らは夫婦なのにー。

 それでも彼女のすべては僕のものだと改めて確認するように、僕は幾度も彼女を抱いた。

 彼女の歓喜の声に止まることはできず、自分が獣になったように思えるほどに。

 彼女の顔を見れば恍惚と笑っている。それがまた綺麗だと思い僕は嬉しく思ったのだった。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】亡くなった妻の微笑み

彩華(あやはな)
恋愛
僕は妻の妹と関係を持っている。 旅行から帰ってくると妻はいなかった。次の朝、妻カメリアは川の中で浮いているのが発見された。 それから屋敷では妻の姿を見るようになる。僕は妻の影を追うようになっていく。  ホラー的にも感じると思いますが、一応、恋愛です。     腹黒気分時にしたためたため真っ黒の作品です。お気をつけてください。 6話完結です。

〈完結〉優しくされても困ります

ごろごろみかん。
恋愛
ドM令嬢のチェリーディアは、ある日婚約者のロイドに婚約破棄を叩きつけられる。 衆人環視の元、罵られるチェリーディアはしかし……とても興奮していた。 そんな彼女に、思わぬ声がかかる。 *美人に蹴られたり殴られたりしたい(無自覚に)病んでるドMヒロインがヒーローの優しさに触れて困惑しながらも性癖に抗えないお話 *全10話

私に義弟が出来ました。

杏仁豆腐
恋愛
優希は一人っ子で母を5年前に亡くしていた。そんな時父が新しい再婚相手を見つけて結婚してしまう。しかもその相手にも子供がいたのだった。望まない義弟が出来てしまった。その義弟が私にいつもちょっかいを掛けてきて本当にうざいんだけど……。らぶらぶあまあまきゅんきゅんな短編です。宜しくお願いします。

【10話完結】 忘れ薬 〜忘れた筈のあの人は全身全霊をかけて私を取り戻しにきた〜

紬あおい
恋愛
愛する人のことを忘れられる薬。 絶望の中、それを口にしたセナ。 セナが目が覚めた時、愛する皇太子テオベルトのことだけを忘れていた。 記憶は失っても、心はあなたを忘れない、離したくない。 そして、あなたも私を求めていた。

満月の秘め事

富樫 聖夜
恋愛
子爵家令嬢エリアーナは半年前から満月の夜になると身体が熱くなるという謎の症状に悩まされていた。 そんな折、従兄弟のジオルドと満月の夜に舞踏会に出かけなければならないことになってしまい――?  アンソロジー本「秘密1」の別冊用に書いた短編です。BOOTH内でも同内容のものを置いております。

【4話完結】 君を愛することはないと、こっちから言ってみた

紬あおい
恋愛
皇女にべったりな護衛騎士の夫。 流行りの「君を愛することはない」と先に言ってやった。 ザマアミロ!はあ、スッキリした。 と思っていたら、夫が溺愛されたがってる…何で!?

恋の終わらせ方

ありがとうございました。さようなら
恋愛
由寿は10年以上。片思いを引きずっていた。 「30過ぎても相手が居なかったら結婚するか」 幼なじみの正己が失恋して、自棄酒に付き合っていた時に言われた戯れ言。それに縛られて続けて、気がつけば27になっていた。 その男から連絡が来る時は大体、フラれた時か、彼女と喧嘩した時だけ。 約束をすっぽかすのは当たり前。 酷い男なのにずっと好きで居続けた。 しかし、それも一つの電話で終わりを迎えた。 「俺、結婚するんだ」

ハーレムエンドを目の当たりにした公爵令嬢

基本二度寝
恋愛
「レンニアーネ。公爵家の令嬢、その家格だけで選ばれた君との婚約を破棄する」 この国の王太子殿下が、側近を侍らせて婚約者に告げた。 妃教育のために登城したレンニアーネの帰宅時にわざわざ彼の執務室に呼びつけられて。 王太子の側に見慣れぬ令嬢もいた。 レンニアーネの記憶にないと言うことは、伯爵家以下の令嬢なのだろう。 意味有りげに微笑む彼女に、レンニアーネは憐れみを見せた。 ※BL要素を含みます。 ※タイトル変更します。旧題【ハーレムエンドが幸せな結末であるとは限らない】

処理中です...