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7.とある記者の取材 最終話
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私がこれを調べようと思ったのは幼少期に体験したことがきっかけだった。
友人たち数名ででると噂になっている廃墟を探検したことがある。
庭は草がはびこり、外壁は蔦で覆われてた怪しい屋敷。もう長らく人は住んではおらず、幽霊屋敷として名高い空き家。
暗い室内の床は埃にまみれ、歩くたびに足跡がくっきり残った。くちかけているのか、歩くたびにギシギシと音を鳴らしている。
僕らはそこで見たのだ。
暗い室内だというのに、淡く光っている幽霊を。
悲鳴をあげ、みんな逃げた。
だが、私は腰を抜かし動けなかった。
そして僕を見た。彼女が笑っているのを。
その光景は美しかった・・・。
あの時・・・私は彼女に恋をしたのだ。
あれから僕は少しずつ彼女を調べた。
仲間だと思っていた友人らとは関係をたった。
あの時見た光景を教えたくなくて・・・。
あれからいく時もたった。
あの女性が誰だったのかわかったのは私が成人して心霊専用の記者になってからである。
50年前に亡くなった女性。エリカ・フローレンス、享年26歳。
現在のフロリアン商会の前進を作りあげた一人である、クリフ・フローレンス伯爵の奥方。
クリフ・フローレンスは、エリカが亡くなった3週間後に死亡していた。変死体だったらしい。
エリカ自身は病気を悲観しての自殺だったとされている。
だが、私は違うと思った。
病気を悲観して自殺した女性があんなに美しく笑ったりするものだろうか?と。この世に未練がある顔には見えなかったから。
私は地道に関係者を調べる。おかげで当時、執事をしていたという老人に会うことができた。最後に老人は涙を流して私に縋ってきた。
「奥様に安らかに眠って欲しい・・・」
ー彼女は慕われていたのか
そんな思いと同時にまだそこにいるのか私には不思議に思えた。
私は十数年ぶりに、他に手がかりがないかと例の屋敷へと行く。
屋敷は以前より損壊が激しくなっていた。
ゆっくり足元に気をつけながら部屋を探索していく。
私は足を止めた。
目の前には彼女がいた。
あの時に見た美しい女性がー。
彼女は僕に気付くと笑ってくれたように見えた。
「貴女はなぜ、まだここにいるのですか?」
彼女は答えない。だが、代わりに顔を動かし、廊下を歩いていく。
付いてこいと言われたような気になり跡を追った。
崩れそうな階段を上って、ついたのは一つの部屋だった。
部屋には男性らしき陰がいた。
彼はクリフ・ローレンスなのだろうか?
「エリカ、エリカ。ひとりにしないでくれ」
彼は彼女に気づくと縋り付くように抱きしめた。
彼女も優しく抱きしめ返す。
二つの異様な光景に息を呑んだ。
彼女の視線が一瞬机に向かうのを見る。私は急ぐように机に移動した。
埃だらけの机の上に一冊の本があった。
ハンカチで中を捲る。
そこにはクリフとモネへの恨みつらみがぎっしりと書かれていた。
聞いていたエリカ像とはかけ離れている。
最後のページには・・・
「あの二人が憎い。
モネの惨めな一生を与えてやりたい。クリフはずっとずっと永遠に私のものにして私から離れられないようにしたい。たとえ悪魔にこの命を売ってでも叶えたい・・・。」
血文字で書かれた言葉と見たこともない図形。
パンと本を閉じた。
心臓がバクバクいっている。
私は彼女を見た。
いつのまにか彼女は椅子に座わり、縋り付く男の頭を撫でている。彼女の姿はまるで聖母のようで、男は母親離れできない子供に見えた。
彼女は恍惚と笑っている。
私はゆっくりと後退りするように扉にむかう。部屋をでると、後ろも振り向かずに急いで屋敷を出た。何度か躓き穴に落ちたが、それどころではない。
私は汗を拭ぐいながら屋敷を見上げる。
あんな光景を目にして、執事だった男には悪いが「安らかに眠って欲しい」と彼女に言うことはできなかった。
彼女は、やっと愛しい男を手に入れたのだ。
そんな彼女の邪魔などできるわけがない。
女の妄執ほど怖いものはないと思った。
あんな恋焦がれる恋愛をしてみたい気もするが、無理だろう。いや、したくもない。
死んでもなお、縛られるような恋愛なんて・・・。
わたしは彼女の美しい顔を思い出し、身を震わせた後、ゆっくりと帰路についたー。
ーおわりー
友人たち数名ででると噂になっている廃墟を探検したことがある。
庭は草がはびこり、外壁は蔦で覆われてた怪しい屋敷。もう長らく人は住んではおらず、幽霊屋敷として名高い空き家。
暗い室内の床は埃にまみれ、歩くたびに足跡がくっきり残った。くちかけているのか、歩くたびにギシギシと音を鳴らしている。
僕らはそこで見たのだ。
暗い室内だというのに、淡く光っている幽霊を。
悲鳴をあげ、みんな逃げた。
だが、私は腰を抜かし動けなかった。
そして僕を見た。彼女が笑っているのを。
その光景は美しかった・・・。
あの時・・・私は彼女に恋をしたのだ。
あれから僕は少しずつ彼女を調べた。
仲間だと思っていた友人らとは関係をたった。
あの時見た光景を教えたくなくて・・・。
あれからいく時もたった。
あの女性が誰だったのかわかったのは私が成人して心霊専用の記者になってからである。
50年前に亡くなった女性。エリカ・フローレンス、享年26歳。
現在のフロリアン商会の前進を作りあげた一人である、クリフ・フローレンス伯爵の奥方。
クリフ・フローレンスは、エリカが亡くなった3週間後に死亡していた。変死体だったらしい。
エリカ自身は病気を悲観しての自殺だったとされている。
だが、私は違うと思った。
病気を悲観して自殺した女性があんなに美しく笑ったりするものだろうか?と。この世に未練がある顔には見えなかったから。
私は地道に関係者を調べる。おかげで当時、執事をしていたという老人に会うことができた。最後に老人は涙を流して私に縋ってきた。
「奥様に安らかに眠って欲しい・・・」
ー彼女は慕われていたのか
そんな思いと同時にまだそこにいるのか私には不思議に思えた。
私は十数年ぶりに、他に手がかりがないかと例の屋敷へと行く。
屋敷は以前より損壊が激しくなっていた。
ゆっくり足元に気をつけながら部屋を探索していく。
私は足を止めた。
目の前には彼女がいた。
あの時に見た美しい女性がー。
彼女は僕に気付くと笑ってくれたように見えた。
「貴女はなぜ、まだここにいるのですか?」
彼女は答えない。だが、代わりに顔を動かし、廊下を歩いていく。
付いてこいと言われたような気になり跡を追った。
崩れそうな階段を上って、ついたのは一つの部屋だった。
部屋には男性らしき陰がいた。
彼はクリフ・ローレンスなのだろうか?
「エリカ、エリカ。ひとりにしないでくれ」
彼は彼女に気づくと縋り付くように抱きしめた。
彼女も優しく抱きしめ返す。
二つの異様な光景に息を呑んだ。
彼女の視線が一瞬机に向かうのを見る。私は急ぐように机に移動した。
埃だらけの机の上に一冊の本があった。
ハンカチで中を捲る。
そこにはクリフとモネへの恨みつらみがぎっしりと書かれていた。
聞いていたエリカ像とはかけ離れている。
最後のページには・・・
「あの二人が憎い。
モネの惨めな一生を与えてやりたい。クリフはずっとずっと永遠に私のものにして私から離れられないようにしたい。たとえ悪魔にこの命を売ってでも叶えたい・・・。」
血文字で書かれた言葉と見たこともない図形。
パンと本を閉じた。
心臓がバクバクいっている。
私は彼女を見た。
いつのまにか彼女は椅子に座わり、縋り付く男の頭を撫でている。彼女の姿はまるで聖母のようで、男は母親離れできない子供に見えた。
彼女は恍惚と笑っている。
私はゆっくりと後退りするように扉にむかう。部屋をでると、後ろも振り向かずに急いで屋敷を出た。何度か躓き穴に落ちたが、それどころではない。
私は汗を拭ぐいながら屋敷を見上げる。
あんな光景を目にして、執事だった男には悪いが「安らかに眠って欲しい」と彼女に言うことはできなかった。
彼女は、やっと愛しい男を手に入れたのだ。
そんな彼女の邪魔などできるわけがない。
女の妄執ほど怖いものはないと思った。
あんな恋焦がれる恋愛をしてみたい気もするが、無理だろう。いや、したくもない。
死んでもなお、縛られるような恋愛なんて・・・。
わたしは彼女の美しい顔を思い出し、身を震わせた後、ゆっくりと帰路についたー。
ーおわりー
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